【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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幕間:家族と言う絆

「いざこうして付けて貰うと、何だか気恥ずかしいね」

「そうして照れてる可愛い琴音を見れただけでも、指輪を作った甲斐が有りましたね」

「――っ!? もうっ!」

 

 関係を示す証としての指輪が欲しいかとの話をした日の夜、朝に話したばかりだというのに既に出来上がってる辺り、相変わらずの師匠の規格外さを感じる所だが、今目の前で指輪を左手の薬指に嵌めて照れ笑いしてる二人を見ていると、どれだけ強くても年頃の女性らしさが亡くなった(誤字に非ず)訳では無いんだな、とも感じる話。

 まず最初に琴姉へ指輪が贈られた後、次は綴姉さんって所で、師匠と琴姉のどちらが指輪を嵌めるかで揉める何て一幕もあったけど、結局二人で一緒にする事にしたのか、左右から挟んで指輪を薬指に通している様子は、バカップルがイチャついてる様にしか見えんね。

 

「ふふ、次はマリッサの番ですよ」

「ちょっ?! 私にもそれやるのかよ!」

「もちろん! さあ神妙に左手を出せぇい!」

「マリッサは余り雰囲気を出すと照れて逃げを打ちますから、こうして抱き留めておかないと、ね?」

 

 ドタバタしていると言うか、イチャついていると言うか、主に琴姉を中心に騒がしく指輪を嵌めていく様を見ていると、ふとした瞬間に、師匠に抱きすくめられている感触に気付く。

 それと同時に師匠が耳元で囁く言葉に、顔が熱くなってくるのを感じ、無意識に身を捩ろうとして、身動きできない抱きしめられ方をしている事に更に気付く。

 

「いや流石に私でもここで逃げたりは――」

「マリッサの事だし、指輪だけ受け取って自分で嵌めるぐらいはしそうだよね~」

「うっ」

「ちなみにこの指輪、先に付けた人が相手の指に嵌める事で、効果対象のグループを設定する仕組みになってますから、最初の一人以外は相手に嵌めて貰う必要が有ります」

 

 琴姉に私がしようと思ってた行動を言い当てられた上、師匠に逃げ道を確りと塞がれていた事を知り、観念して左手を出すと、迫って来た勢いとは異なる優しい手つきで、二人が指輪を嵌めてくれる。

 サイズ自動調整の機能も付いているらしい指輪が、きゅっと薬指を締め付ける感触がした途端に、師匠や琴姉に綴姉さんなど、同じ指輪を付けた者同士が魂で繋がった事を感じ、自然と涙が溢れ出る程の温かさが私を満たしていく。

 

「マリッサも私や琴音と同じく、無意識に家族を求めている可能性は予想してましたが、これは予想以上でしたね」

「んっ?!」

「日本に渡ってくるまでの事を聞いた感じ、私らの中だと一番キツい経験したのは確かだしね。マリッサの心に空いた穴をギュウギュウに埋めるほどの愛を注いであげるから、幸せになる覚悟をしてよね!」

「プハッ――って今度は琴姉っ?! んぐっ」

 

 凄く優しい表情を浮かべた師匠が、舌を絡める情熱的なキスをしてきたと思えば、直後には琴姉が引き継いで唇を塞いでくる。

 唐突な行動はいつもの事だけど、今のそれがいつもと少し違う様に感じるのは、左手に在る指輪の影響だろうか。

 キスされる事での気持ちよさってだけじゃなく、文字通りに愛情が注がれていると魂魄で感じる様な、心を愛撫された様な感覚により体の力が抜けていくのが分かる。

 

「マリッサ真っ赤になってますけど、大丈夫ですの?」

「力が抜けてるだけみたいですから、少しすれば落ち着くでしょう。次はペリーヌですね」

「だね。じゃ指出して~」

 

 結局私がへたり込んでる間に指輪を嵌めていく儀式は終わった様で、腰砕けにされたのが私だけだったのが何だかモヤッとするな。

 まあこの後、影時間が終わった後には、昨夜に続いて愛し合う事になって、そんなモヤモヤした気持ちごと全部吹っ飛んだんだが……。

 

 そんな夜の話は置いといて、ダイオラマ魔法球と言う、これだけでも普通なら信じられないレベルの道具で、睡眠時間と体力を確保し朝食も食べ終われば、今日は弟子組で異界探索に行く予定って事で、持ってく物をいつもより入念に準備していく。

 蓬莱島だと師匠が色々と整備しているため、万一の場合でも生きて戻るぐらいは出来る設計になっているが、本来は引き込んだ者を生きて返さないのが基本で、どんな状況に陥るか分からない物ってのは、ここでの生活に慣れた今でも忘れてない。

 タルタロス探索はレベル上げのための修業目的だから別枠として、基本的に食欲界などの探索とシャドウ異界の探索を交互に行っており、前回が食欲界でレイヤ狩りをしたため、今回はシャドウ異界――メメントスの探索へ行く予定になってる。

 まあ、ペルソナ関係の突拍子の無さは普通の異界以上なんだし、いくら備えても過ぎると言う事は無いだろう。

 師匠に弟子入りした事で、COMPのストレージアプリ以外にも、収納バッグなんかの持ち運び出来る道具を手に入れられた訳だし、要心するに越したことはないってな。

 

「やっほーマリッサ、準備は出来てる?」

「ああ、バッチリな。今回はメメントスの探索だから、移動手段の方も師匠から借りてきてるぜ」

「おお! それは有り難いで御座るな」

「以前は私達のレベル的に、メメントスの浅い所が精一杯でしたが、30近くなった今ですとより奥へと進むべきですものね」

「メメントスはタルタロスとはまた別の意味で広大です。サポートや情報収集はいつもの様に私がしますから、聞き逃さない様にだけ注意して下さい」

 

 持ってく物の確認が終わって部屋を出ると、先に準備が終わってたのか裕奈が声を掛けてくる。

 と言うか、部屋から最後に出て来たのが私だったらしく、私ら弟子組が普段集まってるリビングルーム――私室の在る廊下と繋がってる談話室みたいな小部屋――には、三人が揃って寛いでた上に、師匠の式神である瑠璃の姿もあった。

 瑠璃は本来蓬莱島の電子網統括が役割のメインらしいんだが、現状の蓬莱島だと住民数もそう多くないのもあって、使役している電霊任せで事足りるため、空いた時間をペルソナのレベル上げも兼ねたナビサポートに来てくれている。

 師匠が作り出した式神だけあって、霊能者としては相当に格上なんだが、ペルソナに関しては生まれたばかりって事でまだまだ低く、私ら――と言うか主に裕奈と二代の、ペルソナ使い組の成長と足並みが揃っているため、師匠からの命令で一緒に行動しているってのが正確なところか。

 

「ういうい、そんじゃ早速行こうか、メメントス!」

「今日はいつもより奥へ行けるとなると、遭遇出来るシャドウのレベルも上がる訳で御座るし、腕がなるで御座るな」

「そう言えば、マリッサが借りてきた乗り物って何ですの?」

「見てのお楽しみって言いたいところだが、私も渡されて使い方を聞いただけだからまだ見てないんだよな。メメントスでは普通に使用されているって話だから、使うのには問題ないっぽいが……」

 

 そんなこんな話をしつつ玄関で靴を履いたら、玄関横にある転移室から巌戸台支部へと転移し、公共交通機関を使って承太郎ニキの支部へと移動する。

 ちなみに、直接承太郎ニキの支部へ転移すれば良いのでは? と思うのだが、承太郎ニキの所は一応支部扱いされてはいるものの、規模としては派出所程度だし、そもそも承太郎ニキからして組織運営には殆ど関わって居らず、承太郎ニキのチームをトップとしたペルソナ使い達の寄り合い所、と言うのが実態としては正しいらしい。

 そのため、転移陣やターミナルなどの移動手段は敢えて設置していないとの事。

 まあペルソナ使いは基本的に、黒札と繋がりが有る金札か、最低限金札と繋がりを持っている一般連合員なため、メメントスへ向かうなら巌戸台支部経由でターミナルを使えるのも有り、直接転移出来ない事自体は対して問題になっていないってのも、承太郎ニキの支部が今の規模で収まってる理由の一つらしいが……。

 

「相変わらずだだっ広いよねぇメメントス」

「大衆のパレスとか言う物で、帝都住民の集合的無意識が形作るシャドウ異界との事ですから、もう一つの帝都みたいな物ですし、広大なのも納得出来ますわね」

「マリッサが瑞樹殿から渡された乗り物とやらがようやく見れるで御座るな」

「おうちょっと待ってくれ、地面に置いてスイッチを押してっと」

 

 メメントスへ潜る前の顔出しをささっと済ませて異界に入ると、移動の足として師匠に渡された立方体――装甲護符展開型自動車*1を早速取り出し、起動スイッチを押す。

 出現したホロウィンドウに表示された展開可能な車体から、長距離移動と不整地を行く可能性を考えて、4WDのオフロード仕様を選択し、全員が乗っても余裕の有る大きさを選んで決定すると、立方体が瞬く間に確りとした装甲を持つ車に変化する。

 

「おお結構デカい……って言うか、ゴツくない?」

「メメントスで使う場合のお勧めってオプションが有ったから、それを選んだ結果なんだが……確かにゴツいな。いや、クロスカントリーでも使われる様な4WDを選んだから、ある程度ゴツいのは当然っちゃ当然なんだが」

「それはメメントスだと、移動中にシャドウが跳び出してくる事も良く有るからかと思います。出現する度に降りて戦って乗ってとしていると、時間が掛かり探索範囲が広がらないため、跳ね飛ばして進める様に車体の強度を上げ、移動用のスキルなども搭載しているとの事です」

「ふむふむ、つまりは弱いシャドウを無視して進める様にと言う事で御座るな」

「あ、瑞樹様からのメッセージが付いてますわよ? えっと……移動距離が長くなるだろうからとの事で、移動攻撃兼逃走用の【爆裂5連ドリフト】*2に、ドロップ品などの回収用の【オートコレクト】*3を付けて置いたとの事らしいですわね」

「…………それは、シャドウを轢き殺しながらメメントスを爆走しろって事か?」

「恐らく?」

 

 ペリーヌが見つけた師匠からのメッセージを確認してみると、搭載されているスキルは二つだけ――そもそもスキル付きの乗り物ってだけで十分異常――だが、大ダメージを与えつつ逃走可能な攻撃スキルに、車で移動しながら倒してもドロップ品などを取りこぼさずに済むスキルと、ぶっ飛んだ内容が記されていた。

 

「マスターならそれぐらいは普通にするかと、それより運転は誰が? 私は索敵とナビゲートに専念しますので助手席が良いのですが」

「まあ渡されたのも有るし私がやるかな。裕奈とペリーヌは銃を使うし、二代なら車の屋根に乗って近距離の対処も出来るだろ」

「とりあえずはそれで行ってみる? 車の運転なんてした事無いから私は遠慮するけど」

「拙者もそれで構わぬで御座るが、マリッサは運転した事あるので御座るか?」

「ステイツでストリート生活してた頃に動かし方は覚えたな。師匠に弟子入りした後、日本で動かす場合のあれこれも教わったし、島内で練習もしたから問題ないぜ」

「私も一応扱えるぐらいには練習してますので、マリッサと交代で運転手を務めますわ」

「オッケー、それじゃ運転は二人に頼むから、代わりに迎撃は私と二代できっちりやるよ」

「承知したで御座る」

 

 そんな感じで分担も決まり、車に乗り込んでメメントスを走り出す。

 動力が違うからかガソリン車の様なエンジンのトルクは感じられないが、アクセルを踏んだ時の加速性とパワーは師匠が用意した物だけ有って流石の一言で、目に付くシャドウを次々に跳ね飛ばしても、抵抗による減速も起きず軽快に進んで行く。

 しばらくはシャドウを轢殺したり、ルーフを開けて裕奈やペリーヌが射撃訓練したり、二代が槍を振るって斬撃や刺突を飛ばしたりして、足を止めることなくメメントスを爆走していった訳だが、それも出現するシャドウのレベルが明確に格下な区域の間の話。

 以前来た時には、移動手段やレベルの事などから届かなかった領域に踏み込めば、車での移動により薙ぎ倒すと言う訳にはいかず、改めて本格的な今日の探索が始まる事になる。

 

「フハハッ、死にたい者から掛かってくるで御座る! 【覚悟の挑発】!」

「足付けての戦闘だからかテンション上がってるねぇ~」

「移動中も迎撃はしてたはずだが、やっぱ直接じゃないとストレス溜まってた感じか?」

「その様ですわね。一手に引き付けてくれるので、こちらとしては助かりますが」

「今居るのが終われば、しばらく追加は無さそうですので、頑張って下さい」

 

 メイン前衛の二代が暴れて、私が中衛ペリーヌが遊撃で削り、後衛の裕奈が全体を見て確実にトドメを刺し、瑠璃が増援や周辺のトラップなどが無いか確認する。

 弟子組でチームを組む様になってそろそろ三ヶ月ともなれば、連携も相応に熟れてくる物で、危なげなところも無く戦闘が終了し、瑠璃の探査に合わせて進んで行く。

 ちなみに当てもなく彷徨ってると言う訳では無く、私らみたいな外部協力者組がメメントスで行ってる探索の主目的は、月にそれなりの頻度で出現する〝パレス〟と呼ばれるメメントス内小異界の発見と攻略。

 メメントス攻略の最前線組は、橋頭堡を確保しながらひたすら奥へと進んで行っている訳だが、メメントス自体が大衆のパレスとも呼ばれている様に、メメントスの攻略には湧き出てくる小パレスも都度潰しながら、最奥の元凶までの道を切り開く必要が有るらしい。

 そんな訳で表層まで浮かんできたパレスを探し、潰してまた奥へ行ってとしていると、いくら時間があっても足りないって事で、承太郎ニキを中心とした上位の前線組が奥への道を切り開いてる間、レベル的に付いて行けない組やメメントスの探索に慣れていない外部組が、パレスの湧き潰しをする感じで、メメントスの攻略は進んでいる。

 

「皆さん、感知したパレスに到着しました。内部の情報収集を開始しますので、その間に準備をお願いします」

「お、もう着いたのか。それじゃ師匠から借りた奴を別形態で展開するか」

「そう言えば車体の形状選択で、キャンピングカーの様な物も有ったで御座るな」

「瑠璃はパレスの外からナビする訳だし、簡易拠点みたいに出来る奴を展開すればってな」

「それで出てくるのが小屋……と、車要素何処?」

「どうやら装甲護符でフロートパネルを再現しての浮遊と、車輪を底面に出しての移動も可能の様ですわね……」

「もうそこまでするなら車分類じゃなくても良いじゃん!」

「あ、車じゃないと【爆裂5連ドリフト】のスキルが使えないってさ」

「ドリフトしながら襲ってくる小屋とかどんなギャグだよ!」

 

 師匠のトンデモに裕奈がツッコミ入れてるのを聞きながら、ここまでの戦闘で使ったアイテムなどを、収納からポケットなどに補充して、咄嗟の時に使える様にしておく。

 師匠みたいにノータイムで、物品を手元に転移させる【アポート】が出来るなら要らない手間なんだが、生憎と数分の時間を掛けてなら兎も角、戦闘中に出来る程の技量はまだ無いため、こうした準備を怠るわけにはいかないってな。

 裕奈もツッコミを入れつつ準備の方は淀みなく進めており、瑠璃の方も展開された小屋に隠蔽の結界を追加するなどして、パレス探索に向けた用意が調っていく。

 

「現状で可能な範囲の情報収集が完了。確認出来たギミックは二つ、一つは侵入者をパレス内にランダム転移させること」

「単独行動の強制で御座るか、拙者達はそれぞれソロでもある程度動ける故、問題ないで御座るな」

「いや、私は結構キツいんだけど??」

「そう言うが、裕奈はキノネキからガンカタの手解き受けてるだろ?」

「体捌きとかの基本は教えて貰ってるけど、まだまだ基礎的な所だから何処まで通用するか不明なんだよね」

「少なくとも模擬戦で私やマリッサと打ち合えてますから、十分以上に通用すると思いますわよ」

「裕奈の場合は身近な比較対象が二代や琴姉で、感覚が麻痺してんじゃねぇのか?」

「そんなもんかな~」

「大丈夫だと思いますよ? それにこの指輪が有りますから、パレスに入ってから合流を目指すのも簡単でしょう。それより確認出来たもう一つのギミックですが……」

「あ、そっか、別に一人で攻略するって訳でも無いんだから合流すれば良いのか。んで、言い淀んでるけど何か面倒なギミックなの?」

「いえ、専用の装備でも無ければ、人間が活動するのがほぼ不可能な環境を踏破する必要があると言うだけで、今の私達であれば無視出来る物だったため、こんな偶然もあるのだと思っただけです」

「「あー……」」

 

 揃って気の抜けた様な声が出たけど、【極限環境適応】の効果も付いた指輪を受け取ったばかりの所に、環境ギミックがメインの異界となればなぁ……。

 

「つまり、分断される事が一応の懸念点で、他は今のところどうとでもなる感じか」

「皆さんが突入して、それぞれを中継点としてより詳細に探査を行えば、また別の情報も出てくるかと思いますが、ここから情報収集する限りではそうなります」

「では、ソロ戦闘で切り抜ける場合も考慮して準備をしたら、まずは合流を目標に内部環境を踏破して行く方針でよろしいですか?」

 

 ペリーヌが行動方針を軽くまとめたところで揃って頷きを返し、改めて準備を確認したら、パレスへと突入する。

 私が放り出された先は、視界の通らない暗黒の世界と全身に纏わり付く水の感触――恐らく深海辺りだろう。

 まあ視界が利かないとは言え、視覚を閉ざして周囲を感じ取る霊感の修業もさせられてるし、明かり無しでも近くの地形ぐらいなら分かるから何とかなるか。

 指輪の方に霊感を集中すれば、ペリーヌ・裕奈・二代の居る方向も感じ取れるから問題は無いな。

 

「家族……か、思い返せばグランマが生きてた頃が、家族らしい生活をしてた最後だったかね」

 

 同じ異界内では無いから瑠璃の居場所の方向は分からないが、繋がってることだけは感じ取れるし、それは蓬莱島に居る師匠達も同じ。

 今こうしてパレス内に一人放り出されても、独りじゃないと伝えてくれる家族の絆が、私に力をくれる気がする。

 

「気恥ずかしくて口にも顔にも出せないし、考える事もしない様にしてるが……心を許せる相手が居るってのは良いもんだな――うん、変な事考える前にパレス攻略に集中するか」

 

 多分というか、ほぼ確実に顔が赤くなってる感じがするが、今は他に誰も居ないし、合流する頃には元に戻ってるだろうから大丈夫。

 気持ちを切り替えて、一番近い距離に居る裕奈の方向へと足を進め、道中何度かシャドウと交戦しつつ移動していると、深海エリアには似つかわしくない様な、ある意味相応しいとも思える様な場所を目にする。

 

「何だあれ、ゴミ山……いや沈没船か?」

 

 最初に感じたのは、ペットボトルなどの所謂海洋ゴミが積もってる外観で、ゆっくり近付きつつ観察を続けて感じ取ったのが船と思われる形状。

 深海と言う環境も合わせれば、何かしらパレス攻略に関する情報が拾えそうって事で、合流は一旦後回しにして調査を開始する。

 

「一通り見て回ったが霊感に引っ掛かる様な物品は無しっと、何かありそうな気はするんだがな……」

 

 多少時間を掛けて見て回ったものの、特に力の籠もった何かがあるわけでも無く、強いて挙げるならあちこちにゴミが積まれてたのが気になるぐらいか。

 沈没船内でも相変わらず出てくるシャドウを倒しながら進んでいると、掴み損ねたフォルマが船体に触れた際、微かな鳴動が発生したのを感じ取る。

 

「これ、もしかしてゴミか何かがギミックに関係してるのか?」

『マリッサさんの考えは当たりの様です』

「うおっ?! 瑠璃からの念話は出来るのかよ!」

『パレスの解析に専念してましたので、今まではナビゲート出来てませんでしたが、皆さんの位置は把握出来てます。解析の方が終わりましたので、これから中心部へのルートをナビゲートして行きます。それと、このパレスの主についても特定が出来ましたから、皆さんが目的地に到達する頃合いを見計らって予告状を出しておきます』

「あー、そういやパレスを攻略するには、主になった人物を改心させるか、精神を殺すかする必要があるんだっけか」

『一応メメントス攻略へのプラス要素的に、改心させる方が影響が大きいため推奨されてますが、パレスの主となった人物の特定は難しいのもありますので、残り続けるよりは殺してでも攻略する方針になっています』

 

 これまでは他のチームがメインで攻略してるパレスの手伝いぐらいで、私らが最初から最後までってのは今回が初めてだったから確認してみたが、他のチームだと運良く人物が特定出来た場合以外は、普通に主を討伐して精神的に殺す手段を取っているらしい。

 まあパレスの主になってる時点で、一般社会だと何かしらの犯罪をしてるぐらいには精神がねじ曲がってるらしいから、一般人への被害拡大を阻止する観点でも、放置するより処理してしまう方が良いって事だな。

 

「了解、そんじゃさっさと合流して攻略するか」

 

 その後は特に語ることも無く順当にパレスを攻略し、主になってた人物も改心したらしいんだが、後で聞いたところによると、主になってたのは所謂エコテロリストに分類される人物だった様で、メシア教過激派に同調して騒ぎを起こす計画を立てていたとか。

 今回に関しては別に改心させずに殺しても良かったのでは? と思う所だが、どの道改心しようがしまいが、メシア教過激派と繋がっていた時点で、まともに生きていける訳も無いから関係無いか。

*1
宝玉型五行器を主動力兼車体構築、動作制御装置とした自動車。

車体の形状はプリセットパターンから選択するか、後から設計図を追加する事も可能。

*2
P2より、100%属性で単体に大ダメージと共に瀕死の追加効果を与え、術者は戦闘より離脱する。

*3
機体出力の影響範囲にあるドロップ品や収集可能品を【サイ(念動)】により回収するアプリスキル。

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