【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
ショタおじから黒札のペルソナ使い各員に、一つの連絡が回されたのは六月のある日のこと。
通達された内容は、全力で戦闘する準備と、指定期間の間は連絡したら即応出来る様に予定を空けておくことの二点。
それは招集対象がペルソナ使い限定となってる事、更には具体的な日時や何と戦うための準備なのかが記されていない事から、ショタおじの思惑も察せられると言う訳で……。
「これはつまりそう言う事か、まあ私の方は良い感じにペルソナの作成に区切りが付いたから良いんだけど、瑞樹の方はどう?」
「私は実戦だと中々使う機会の少ない儀式用の触媒を用意するぐらいですかね。出来れば綴も連れて行きたい所ですけど、ショタおじからの指定ですから諦めますか」
まあつまりは、終末目前の現状としての不安要素である、〝邪神ニャルラトホテプ〟に類する連中を一纏めに焼いて、後顧の憂いを取り除こうと言う話。
とは言え、せいぜいちょっかいを掛けられる可能性が多少減る程度だろうけど、少しでも効果があるなら焼ける時に焼いておくべきなのがアレと言う物。
ペルソナ使いに限定しているのは、精神汚染の対策もあるだろうけど、恐らくは一網打尽にするための戦場を、電脳異界内に構築するからって所だろうか。
星霊神社へ事前に集合するわけでも無く、即応準備との記載だけですから、マヨナカテレビなりの応用で、認知異界に近付けた電脳異界を構築し、一気に人員を投入する算段でしょう。
「普段はシャドウ異界に関わってない組も呼んでるみたいだし、相手がアレの団体になるだろうって考えると、専用式神とかでの精神防御が出来てない人員は呼べないって所じゃない? それより、触媒の方は何が足りない感じ?」
「恐らく認知異界に近い場所での戦闘になるでしょうから、私達黒札の認知を使った儀式魔術を行うために、概念物質の生成をしようかと」
「何か取りに行くって訳じゃ無いなら、手伝えることは余りないかな……。んーじゃあ皆への説明は私の方からしておくよ」
「ではそちらはお願いします。指定期間まで多少時間はありますが、準備は早めに終わらせて置くべきですからね」
そんな訳で何時招集が掛かっても良い様に、該当期間の予定を空けたり、関係各所に影響が出ない様に調整したりを琴音と分担して行いつつ、個人的な準備の方も進めていく。
用意する触媒の方は、必要な概念を抽出し生命樹の枝葉と混ぜて物質化した物をベースに、認知異界での使用を考えて、ペルソナカードやシャドウからドロップしたフォルマと合わせて粒子化させ配合した物。
概念イメージを顕在化させた色鮮やかな触媒を、必要量毎に小分けにして容器に詰めれば準備は完了。
そうして即応出来る用意を調え終えて、表面上はいつも通りに過ごす事数日、ショタおじからの招集連絡が届く。
「想定通りネットを経由して電脳異界に潜り戦う感じですね。入場条件はこの掲示板に書き込みを行う事で、それによりアレを強制招待する訳ですか」
「オケオケ、それじゃ書き込んで行きますか!」
招集メールから飛んだ先の掲示板に書き込みを行い、決戦の舞台となる電脳異界へと転移すると、そこには数えたくも無い程のニャルラトホテプの群れが居て、楽しそうな表情を浮かべるショタおじと静かな怒りを湛えるカヲルニキの姿があった。
「呼んだ皆は集まったみたいだし、それじゃまずは【封絶】っと」
続々と集合する黒札のペルソナ使いを見て、呼びかけた全員が揃ったのを確認したのか、電脳異界自体に設定されてる存在固定や逃亡防止の防壁に追加して、ショタおじがニャルを逃がさない様に因果孤立結界――【封絶】を展開する。
元ネタは灼眼のシャナに登場する自在法で、内外の因果を断絶する仕様から、外部からは【封絶】の展開場所が〝存在しない場所〟となり、内部の観察や侵入はおろか、その場所を思い出したり、結界の存在に気付くことも困難になると言う代物。
ちなみにこの【封絶】は、灼眼のシャナ関連の再現をいくつかしている破魔ネキと、合同で再現研究をした術式の一つ。
未覚醒者が気付けないのは当然として、覚醒者でもよほど探し出す事に適性が高くないとまず気付けない上、結界内では原作通りに炎が舞い散っているため、火炎弱点だと内部に居るだけで削られていくおまけ付きだったりする。
そんな鮮やかな炎が舞い散る中で、一矢報いようとするニャルラトホテプの群れと、この機会にニャルへ打撃を与えておきたいカヲルニキを筆頭とした私達の戦いが幕を開ける。
「よっし、ニャル焼き祭り! アイギス行くよ!」
「今回は綴さんが居ない事に注意するであります」
「では私は儀式に取り掛かりますから、久遠は護衛よろしく」
「いつも通りに守り通してみせるとも」
早速と前線に向かって行く琴音とアイギスを見送り、電脳異界のあちこちで戦いが始まってるのを横目に、儀式場を手早く整えて、守りを久遠に任せ用意した触媒を取り出し術式を展開して行く。
「舞い散る炎の世界に更なる熱を追加しましょうか。さあ、
「湧き上がる血の滾り ヒートクリムゾン」
詠唱を続けながら、色鮮やかな砂状触媒の容器を、魔法陣に三カ所ある空白の一つへと投げる。
「全てを灼き尽くす ファイヤーレッド そして 全てなる臨界点 バーニングゴールド」
続けて二つ目、三つ目の触媒も同様に空白箇所へと投げ入れたら、立体魔法陣が螺旋回転を始め、螺旋運動により触媒のソイルが活性化し、鮮やかな輝きを放ち始める。
「血潮を燃やせ 召喚獣! 【
立体魔法陣の螺旋回転が更に速度を上げて爆縮した直後、三つの触媒それぞれの輝きを放つ光が螺旋を描きながら上空へと昇り、混ざり合って一つの存在を顕現させる。
『もっと、熱くなれよおおおおおおおおおおおお!!』
燃え盛る様な熱い言霊と共に出現し、莫大な熱量を放つのは、前世で鉄板ネタまで至ったとある人物を模した召喚体。
黒札であれば太陽神と呼んでも納得されるだろう知名度を誇る、熱血の代名詞。
今世では残念な事に生まれていないらしく、今回の様な黒札だけの戦場でも無ければ、認知による補正が無くなるため殆ど効果を発揮出来ないが、今に限って言えばニャルとの相性的にも効果抜群と言えるだろう。
使用した術式は、以前にセツニキがブーストニキやショタおじと一緒に組み上げたFF式召喚術式*1をベースに、より原作再現を目指した【FF:U式召喚術】。
これは特殊分霊を用いた悪魔合体をトリガーにするFF式召喚術式から、悪魔合体を概念触媒の融合に置き換え、触媒の組み合わせにより召喚体を構築する様にし、悪魔の力を使いたい時のみ喚び出して、行使させる【陰陽道系召喚術】の技法により、構築した召喚体を依り代に権能を振るう、と言う術になる。
なお触媒のソイルに関しては、こんな感じの代物。
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・ソイル
FF:Uに登場する螺旋運動によって力を解放する命の結晶で、様々な色彩を湛えた砂状の物質を再現した物。
生命樹の素材をベースに、様々な概念を込めて粒子化させた触媒で、生命進化の螺旋により力を活性化させる特徴を持つ。
ちなみに原作で召喚獣を呼ぶために使われるソイルは、人間を含めた命その物であり、人々の無念の集合体との事らしい。
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セツニキのFF式召喚術式が、低レベルの金札や銀札でも扱える特級の切り札なら、こっちはレベル31以上で扱える様になる切り札級儀式魔術と言ったところか。
私の場合だと久遠が護衛してくれている上に、
ただ、FF式召喚術式だと一回の発動に特殊分霊二体と千マッカが必要になるため、一回分の触媒三つの費用なら【FF:U式召喚術】の方が安く済むし、喚び出す対象毎の特殊分霊を二体ずつ確保する必要が有るのと比べて、対象毎に組み合わせが変わるだけで、触媒自体は共通な所は利点だろうか。
ちなみに、今回召喚した【
「更に支援を重ねていきますよ!」
召喚獣の効果が発揮されるまでの間に、次の支援準備として木分身を作り出し、木分身の私それぞれがギターやベース、ドラムにキーボードなどの様々な楽器を構え、本体の私と合わせて一人楽団を構成する。
まあこんな儀式していれば、ニャルにとっても良い的だろうけど、そこは長年私の護衛を務めてる久遠が防ぐし、楽団の準備が調えばどうとでもなる訳で。
「私を止めるには些か速さが足りなかった用ですね!」
「俺が遅い? 俺がスロウリィ!?」
「テメェがアニキの名言語ってんじゃねぇ!」
「さあ戦場を整えましょうか! 【焔舞台】!」
認知異界でもある電脳異界に黒札が大量に居るからか、ニャルからネタ台詞が飛び出してくる何て事も有ったけど、直後にはそれにキレた他の黒札に殴り飛ばされ、邪魔される事無く楽団が始動する。
最初の一音にオーケストラル・ヒット*2を奏で、音の衝撃を叩き付けることで接近するニャルを弾き飛ばし、旋律を詠唱とする楽団儀式魔術【焔舞台】を発動させる。
曲の内容は、前世で地球温暖歌なんて呼ばれたりもした楽曲のメドレーで、【焔舞台】の効果は全能力を強化する【ラスタキャンディ】や、一時的に耐性を変化させる【太陽結界】*3のバフに、衝撃属性の音に火炎と核熱を複合させた【
これにより【
「おいおい、太陽の化身に温暖歌かよ! こりゃ熱くなってきたな!」
「しゃあ【マハラギダイン】! ニャルが良く焼けるぜ!」
「テンション上がってくるなぁ!」
「「「ギャアァァァーー!」」」
私の対ニャルラトホテプ用布陣が完成する頃には、他の支援も次々と重ねられ、勢いを増したアタッカーが景気よくニャルを焼き払っていく。
とは言え、威力マシマシの炎で焼いていると言っても、流石に全てを完封とは行かない様で、アタッカーやタンクを担当している組は少なからず反撃を受けており、時には耐性の穴を突かれてバステを受けたり、ダウンする者も出てしまっている。
『スライムニキ、次はあっちとそっちにパトラストーン、その後向こうに反魂香、それが終わったらフォローの続きお願いね』
「了解したけどこれ俺ら居る必要あった?!」
「ニャルに目を付けられる可能性がほぼ無い状態で、ニャルと戦う経験を積むには丁度良いって所でしょう。拠点の防御は私もしますので、スライムニキは回復アイテム配るのとフォローに集中して下さいな」
まあ準備不足な人達や運悪くバステを受けた人達には、予め回復アイテムなどを持たせたスライムニキに、フォローに回って貰っているため、多少やられるのも経験として済む範囲と言ったところ。
そんな感じで舞い散る炎と燃え上がる大地の中、普段からニャルに苦労する私達の蹂躙劇が繰り広げられ、時間としては十曲分にも満たない間に、ショタおじの封絶に囚われたニャルは全て燃え尽きる事となった。
「うん、討ち漏らしは無いね。それじゃ皆お疲れ様、ここに入るために使った掲示板が埋まれば退出になるから、後は適当に埋めちゃってね」
「「お疲れ~」」
ショタおじからの連絡により決行されたニャル焼き祭りも、電脳異界に捉えた分の全てを焼き尽くした事を確認したショタおじの宣言により作戦終了。
招集された面々が三々五々に散らばる中、普段は主にニャルへの警戒から中々集まれない、ペルソナ組の幹部級と呼ばれる面々で輪を囲む。
「改めてお疲れ様、これでしばらくは大人しくなるかな」
「乙~、新規でのちょっかいは減ると思いたいね!」
「だな、確実に関わってると分かってるメメントスやタルタロスだと何かしら有るだろうが、カヲルニキの方は多少余裕が出来るんじゃねぇか?」
「多分? ドイツになったロシアでいつものチョビ髭が動いてる情報を得てるから、この後直ぐに行く予定だけど、細々としたのは減ってくれるんじゃないかな」
「カヲルニキが丹念に焼いてくれていても、あちこちで遭遇報告上がってますからねぇ」
「俺の方だと話は聞かないけど、そんなに?」
「ペルソナ関連以外でもニャルは出てくるからね」
まずは互いに労いの言葉から近況へと話題を移し、適当に掲示板への書き込みも行いながら、互いに把握出来てなかったニャルの動きなども共有して行く。
ニャル関連は意識し過ぎるのは問題だけど、知らない事もまた問題に繋がるため、何処でどんな事件が起きていたかの概要ぐらいは知っておき、適度に警戒を続けられる様にしておかないといけないのが面倒な話。
「――っと、直近で遭遇した三月の事件概要はこんな感じですね。後は……、そろそろ最深部に到達できそうなタルタロスでも遭遇する可能性が高いってところですか」
「タルタロスの方は順調な様でなにより、一つ片付くなら数ヶ月後に予定している終末までに他も目処が付くかな? 時間的に厳しいなら
「どうだろうな、タルタロスみたいな時間制限は無いがメメントスも広い。最近はパレス攻略人員も増えてきたから多少奥へ行けてるが……」
「マヨナカテレビの方は大本の調査もまだまだです。やっぱり俺も――」
「ペルソナに覚醒した新人の教育はスライムニキに任せてますから、進みが悪くても仕方無いですね」
「いやいや、遅れてるのは俺の所為だし、ここは責任を持って前線での調査を――」
「ああ、黒札でペルソナに覚醒した子達の指導なんかも頼んでるし、スライムニキは前線に出られる人員を増やす事に注力して貰う方が良いからね!」
「スライムニキの発作はいつもの事として、さっきしれっと言って掲示板にも何か書き込んでるけど、終末の予定日きまったの?」
毎度の如く申し訳なさそうな表情に決意を込めて、前線へと突撃しそうな気配を漂わせるスライムニキに、後方仕事を押し込む場面なんかも有りつつ、そんな毎度の事はスルーして琴音がショタおじに問いかける。
「ああそれ? GPの活性状況も踏まえて、今年中にはリミットが来る感じだからね。探求ネキの拠点で行ってた地脈の濾過も止めて貰ったし、詳細な日程はまだ決まってないけど、恐らく九月か十月にはってところかな」
「つまり最短三ヶ月って事か……。電脳異界を使った攻略レイドの検討を進めた方が良さそうだな」
「あ、承太郎ニキもそう思う? 俺が担当するマヨナカテレビもその期日だと間に合わないかな……」
「タルタロスの方は最後に予想外のギミックでも無ければ、来月には攻略出来ると思いますね。封印のための依り代はショタおじの確認も通ってますから、後は辿り着くだけですので」
「いや~、旅行中だろうと影時間にはタルタロス行って、休み無く進めてきたおかげだよね」
「それに加えて、影時間に巻き込まれるパターンはありますが、マヨナカテレビやメメントスみたいに、タルタロス内に救助対象が居たり、対処しに戻らないといけないギミックが無かったのもあるでしょうね。出現するシャドウの数は他二つより大幅に多いですが……」
「そう聞くとまだタルタロスの方が対処し易い様に感じるけど、あの物量と最後の宇宙空間を突破出来てるのが可笑しいと思うのは、俺だけ……?」
「ペルソナのレベルが上がれば極限環境での活動も可能だが、消費霊力と仲間を考えると、俺らのチームだと厳しいだろうな」
「ボクなら何とかなるだろうけど、アイツを追いかけながらだと確実に時間が足りなかっただろうね」
「つまりタルタロスの方は上手くピースが嵌まったって事かな。最悪でもペルソナ能力が使えなくなるぐらいだろうし、気負わずに頑張ってね」
掲示板の方でショタおじが爆弾を投下していた*6けど、終末の時点でシャドウ異界が攻略出来ていない場合、シャドウ系異界を造り出してる〝集合的無意識〟に干渉できる悪魔によって、シャドウ異界の在る場所付近に居る人間やその関係者がシャドウ化や廃人化する可能性が高いとか。
それに、ペルソナ使いの一部と専用式神による概念侵食防御がされている黒札以外は、ペルソナが使えなくなったり、ペルソナが強制シャドウ化して襲い掛かってくる可能性まで有るとの事。
こうしてニャル焼き討ち祭りは、終末の予定日が大まかに決まったとのタイムリミット付きで、特大の爆弾が最後に投下されて幕を閉じる事になる。