【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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126:幻想月光領域タルタロス 3

 瑞樹が戦ってる方向からの流れ弾でギャグみたいに行動を潰され、アイギスの追撃でダウンした【ニュクス・アバター:女帝】に総攻撃を仕掛け、大きく体力を削るのに成功した後も適当にボコって体力を削り切る。

 そうして次の形態、また次の形態と、順番に大技をいれてサクサクとアルカナシフトさせて、恐らく折り返しになるだろう七つ目の【ニュクス・アバター:恋愛】まで、順調に【ニュクス・アバター】を倒していく。

 

「これでアルカナのⅥ番目、恋愛(ラヴァーズ)も撃破であります」

『報告します。【ニュクス・アバター:恋愛】までの解析結果から、各アルカナの耐性を累積させているのは確定と思われます。また、綴さんが耐性破壊込みで攻撃しているため影響は無かったみたいですが、火炎属性が反射耐性まで上がっている状態で、貫通効果を無効化する反応が微かに確認出来ました』

「あー【貫反の霊圧】って奴かな?*1

『恐らくそれに類似するスキルを持っていると推測しています。貫通効果を付与していない攻撃の場合は吸収相性になっているみたいですし、耐性の累積が吸収の次ぎまで行くと、耐性は吸収のままで貫通付きの攻撃には反射状態となる感じかと』

「予想通り耐性破壊しながらの攻撃が基本になりそうですね……」

「破壊した耐性が戻る速度も少しずつ早くなってるみたいだし、私はそっちに専念した方が良さそうね」

「じゃあ湯乃葉さんに無効ぐらいまで耐性破壊してもらって、耐性が回復する前に貫通で殴る感じで行こう。学習というか適応みたいな事してる感じもするから、弱点まで進めてると最後で耐性破壊出来なくなるかもしれないし」

『琴音さんの勘は無視出来ません。こちらはその点も踏まえて解析を続けます』

『あ、今来てる流れ弾の位置情報も送っておくね』

 

 【ニュクス・アバター:恋愛】から【ニュクス・アバター:戦車】へのアルカナシフトが終わったところで、さっき確認された吸収や反射が行われる仕組みを確認すると、どうやら春香が推測した様に【ニュクス・アバター】の耐性累積自体は吸収相性までで、反射段階まで累積した属性は貫通効果攻撃のみに反応して反射する状態になっていた。

 それに加えて反射段階から更に累積が進むと、概念強度が増すからか耐性破壊に対する抵抗が強くなり、貫通効果に反応する境目がわかり難くなっていたし、吸収段階から無効段階にまで耐性破壊するのに必要な力も増えてる始末。

 なのでまあ、とりあえず無効段階まで落とせばって感じたのは、手数的な面倒はあるけど変に反射されるよりはマシな結果だったってところかな。

 そんな訳でアルカナシフトされた後は、まともにダメージが通る様になるまで耐性破壊するところからって流れが出来た訳だけど、そうして【ニュクス・アバター】の解析がある程度進めば戦いも安定するって事で、無理しない範囲で迅速に体力を削って行く。

 序でに時折【ニュクス・アバター】の行動に合わせて飛んでくる流れ弾――瑞樹の事だから恐らく意図的に放ってるのを利用して、動きを制限させて被ダメを減らす事もしつつ、順調に【ニュクス・アバター】のアルカナシフトが進む。

 まあそれでも、基本的に回避の余地が無い規模の全体攻撃が飛んでくるから、ちょいちょい回復を挟む事も多くなってきて、それに加えて【ニュクス・アバター】の体力やレベルも最初の愚者から比べてかなり高くなってるのも有り、削る速度はだいぶ落ちてる。

 ああそれと、向こうにすれば影時間が終わるまで耐久していれば良い訳だし、あの手この手で時間稼ぎしに来る可能性も、一応は考えといた方が良いかな?

 

「よっし【ニュクス・アバター:剛毅】撃破! リロード版が混じってるなら次の刑死者は更に面倒になるね」

「行動回数を増やすタイプのスキルを持っている可能性が有るんですよね? どの様な方式で増やすのかを見極める所からですか」

「私達の時繋ぎの腕輪は恒常的な認識行動時間の加速*2だけど、相手の認識行動時間を遅くするタイプや霊力(MAG)を消費して時を止めるに等しい程の自己加速をするタイプ、或いはそれらを複合させるパターンも有るものねぇ」

『時間停止レベルの加速だと、承太郎ニキとマスターが可能ですね』

『話している間に変化は終わった見たいですけど、観測出来る範囲で時間干渉は起きてないみたいです。【ニュクス・アバター:刑死者】レベルは160、恐らくMAG消費での瞬間的な加速か停滞を起こすタイプと思われます』

「となると時間耐性は上げといた方が良いか、ペルソナチェンジ【星 アイオーン】」

 

 【甲縛式O.S. 超越進化する切り札(リミットブレイク・ワイルドカード)】にセットする一つ目のペルソナを切り替えて、時間干渉耐性を強化したところで、【ニュクス・アバター:刑死者】が動き出す。

 

――【刑死の超克】*3【ヒートライザ】【ヒートライザ】【刑死の超克】【ヒートライザ】【アカシャアーツ】*4【メギドラオン】*5

 

 動き出すと同時に瞬間的に加速した【ニュクス・アバター:刑死者】が、自己バフを積み上げ始めたのを時間干渉耐性で何とか察知し、妨害を掛けようとこちらが動き出した事で積み込みを切り上げたのか、【アカシャアーツ】と【メギドラオン】の全体攻撃が襲い掛かってくる。

 

「もう完全にモト劇場*6じゃん! 時間干渉耐性上げてなかったらデバフとコンセまでされてたでしょこれ!」

「兎も角、バフ解除とペルソナシフトで消えたデバフを掛け直すわね。【デカジャ】【ランダマイザ】」

「これ少なくとも次の死神も使ってくるとなると、今まで以上に速攻する必要が有りそうですね。【火天の構え】【ファイジャ剣みだれうち】!」

「ここからは最大火力が必要でありますな。武装データロード、装甲護符展開、動力炉の出力を臨界まで上昇し通常兵装から撃滅兵装へと移行、戦域が地球上並びに非戦闘地域でない事を確認、プロテクト解除コード〝これは明日を生きるための戦いである(The struggle for survival)〟、プロテクト解除確認、陽電子対消滅砲*7構築完了。いくであります【バレットセット】【ワンショットキル】」

 

 バフの解除とデバフを掛けて、綴さんの八連撃で【ニュクス・アバター:刑死者】の体勢が崩れた所へ、アイギスの超機人〝黒麒麟〟に搭載された最大火力が着弾する。

 色々な危険性から使用制限が掛かってるだけあって、瞬間的な火力はこれまでの比では無く、レベルが160まで上昇して体力も相応に増えてるはずの【ニュクス・アバター:刑死者】が、ほぼ瀕死の様相を呈している。

 まあ威力が絶大な分、一度発射すると動力炉を再度臨界まで出力上昇させるのに時間が掛かるから、連射は出来ないらしいんだけど、ぶっちゃけそんな事デメリットにもならないぐらいの威力だと思う。

 

「ほぼ即死な威力に驚くべきか、陽電子対消滅砲使っての一撃でも動ける体力に驚くべきか、もうわからんよね」

「対消滅弾受けても動ける方が驚きでは?」

「レベル160って悪魔の本体だったりするレベルよ? 十分驚くべき威力だと思うわ」

「試射の時よりも威力上昇しているでありますが、再使用に十秒ほど掛かる点は変わらないであります」

「十秒でリチャージって考えれば十分早いと思うよ。ともあれ今の形態はトドメ刺して、恐らく最終形態だろう次ぎに備えよっか」

 

 再度劇場されたり、可能かわからないけど回復されたりすると面倒だしって事で、動きが鈍い内に残りの体力を削り切ると、【ニュクス・アバター】がペルソナシフトを始めると同時に、周囲の気配が急激に暗く淀んだ物に変化していく。

 

『新たな敵性反応出現! 後ろです!』

 

 瑠璃ちゃんの警告に背後の状況を確認すると、暗く淀んだ気配の中からナニかが滲み出てくるのが見える。

 それは何と例えれば良いかわからない悍ましい姿をしていた。

 巨大な胴体の両端にはそれぞれ頭が生えており、その二つある頭から生える大きく歪な二本の角と、煌々と赤く光る双眸が不気味さを引き立たせる。

 胴体からは獣の前足か屈強な男の両腕にも見える二本の足と、女性の足にも見える細く華奢な二本の足が生えており、見ているだけで不快感を掻き立てる。

 それは人間の男と女を歪に混ぜ合わせて四つ足の獣にした様な、冒涜的な姿をしていた。

 

『解析出ました! レベル160のアルカナは愚者、ネガティブマインド(ニャルラトホテプ)と類似したパターンを確認した事から、恐らく【人類の自滅願望(エレボス)】と思われます!』

「可能性として考えてたからとか言わないよね、流石に! 陣形変更! こっちは私が対処するから【人類の自滅願望(エレボス)】はアイギスと綴さんで接近阻止! アバターと言ってもニュクスと接触した時点で詰みになる可能性が有るから気を付けて! 湯乃葉さんは両方の補助お願い、ナビ組は瑞樹の方に状況伝えて!」

 

 状況的には割と想定通りの最悪パターン。

 ワンチャン【人類の自滅願望(エレボス)】は出てこずに済んだりしないかと思ってたんだけど、そんな都合の良いことは無かったみたい。

 新しく出現したアレは、P3で主人公が命を犠牲にしてニュクスを封印しなければならなかった理由であり、その本質は集合的無意識の負の側面であるネガティブマインド(ニャルラトホテプ)と類似した、死に安易に触れようとする無意識の欲望であり、集合的無意識の一部。

 そもそもP3の世界では、太古の地球に飛来して〝死〟を授けた超存在が【ニュクス】と呼ばれるモノの正体で、月と一体化して眠りについているとの設定になっている。

 この設定の発想元になったと思われるのは、恐らく〝月がどうやって誕生したのか?〟と言う仮説の一つであるジャイアント・インパクト説――原始地球に火星サイズの天体が衝突し、その衝撃で飛び散った物質が月になったと言う物――で、本当の意味でP3と同じ世界線だった場合は、この月が誕生する際に死の概念をもたらした超存在が飛来している事になる。

 

 ただ、この点に関しては瑞樹が直接現実の月を調査して、【ニュクス】に類する超存在が同化していない事を確認しているため、この世界ではニュクスが目覚める事による回避不能の絶滅、と言う事態は発生しない。

 しかしながら、P3の世界線ではそう言う事実があると言う事と、この世界の影時間とタルタロスが、複数の世界線に跨がって存在し得る性質を持つ、【邪神 ニャルラトホテプ】により創り出された異界であり、ゲーム盤(舞台)であると言うのがここで問題になる。

 それは実際がどうであれ、認識として〝そうで在る〟と定められると、黒も白になるのが概念や認知異界の性質である事から、【ニュクス】に【人類の自滅願望(エレボス)】が触れる=人類の絶滅、と定義されている可能性も有るという事。

 そんな訳だから、兎にも角にも【ニュクス・アバター】と【人類の自滅願望(エレボス)】が接近しない様に陣形を整えたところで、ペルソナシフトが終わって予想通りに【ニュクス・アバター:死神】が姿を現す。

 

――【運命の車輪】

「【人類の自滅願望(エレボス)】の出現タイミングがマジで悪意しか感じ無い! ペルソナチェンジ――ってあれ?!」

 

――【刑死の超克】【ヒートライザ】【ヒートライザ】【刑死の超克】【ヒートライザ】【ヒートライザ】【刑死の超克】【夜の女王】【コンセントレイト】【メギドラオン】

 

「ぐぅっ……」

探求者:ニャルが妨害に【運命の車輪】使いましたけど、その効果は解除しておきました。

「って瑞樹からのチャット? ――不発したのはニャルの妨害か! ああもう、【メシアライザー】ペルソナチェンジ【太陽 ヴィシュヌ】!」

 

 本当なら形態変化が終わる前にしておこうと思ったペルソナチェンジが、何故か不発した事で【ニュクス・アバター:死神】の劇場から大ダメージ受ける事になったけど、直後に届いた瑞樹からのメッセージで理由が判明。

 正直に最悪のタイミングだったのは、流石のネガティブマインド(ニャルラトホテプ)か。

 出鼻を挫かれて機体のあちこちに発生した故障は装甲護符で補修して対処するとして、大ダメージと【エレボス】からの攻撃で対処が手一杯になってる綴さん達の方に、【メシアライザー】を飛ばして回復しておく。

 モビルトレースシステム(機操術式)な私の機体と違って、人機合一方式の綴さんとアイギス、情報接続加工で機体が化身の一つになってる湯乃葉さんは、回復魔法で機体毎回復出来るのが良いよね。

 まあその代わり私や久遠さんのモビルトレースシステム(機操術式)みたいに、コックピットが簡易異界になってたりはしないから、他の人を相乗りさせられないとか、搭乗中は飲食系の回復アイテムが使えないとかのデメリットも有るんだけどね。

 

黒先生:ああそれで、琴音ちゃんがミスしたのは珍しいと思ったら道理で……

ロボ乙女:回復感謝であります琴音さん

酒仙狐:アレの妨害って事なら仕方無いわよねぇ

「っと、今は戦いに集中!」

ハム子:真面目にタイミング最悪だったけど陣形は崩れなかったし、ナビ組の解析で追加情報出るまではこのまま様子見でお願い!

「連絡はこれでよしっと、んじゃギア上げて行こうか【進化超克する三相一体(トリムールティ・ドライブ)*8!」

 

 チャットに連絡を書き込んでから、一つ気合いを入れ直して発動したのは、以前に三月の件で使った再現技から更に踏み込んで構築した概念スキル。

 人として進化の二重螺旋を土台とする瑞樹とは異なり、人の意志が進化と超克のサイクルを回す三相一体の三重螺旋。

 その本領は、私の心が挫けない限り、どんな困難だろうと踏み越え、乗り越え、打破する人の意志の力。

 

「さてと、それじゃあ……人の恐ろしさを存分に味あわせてあげようか!」

*1
自身が生存してる間、味方の属性反射が貫通に対しても効果を発揮する。D2メガテンより。

*2
10秒が経過する間に、40秒分の行動を可能にする自己加速みたいな物。

*3
P3リロードのハングドマンや、ニュクス・アバターの刑死者や死神の形態時に使用する行動回数増加スキル。

*4
敵全体に打撃属性で大ダメージを1~2回与える。

*5
敵全体に万能属性で特大ダメージを与える。

*6
真・女神転生Ⅲ-NOCTURNEの【魔王モト】が有名な、行動回数増加スキルを組み合わせた戦闘パターン。

運が悪いとプレイヤーに行動ターンが回らず、全滅するまで行動回数増加とバフや攻撃を繰り返す様から、モト劇場と呼ばれる。

*7
臨界出力まで上げた動力炉のエネルギーを霊子刻印弾頭に集束させ、着弾時に弾頭の半分を陽電子に変化させて対消滅反応を引き起こす事で、対消滅により生じるエネルギーで対象を撃滅する特殊兵装。

なお、弾頭の陽電子変化は50%~100%まで変更可能。

その性質上から地球上での使用は不可となっており、異界内や宇宙空間でのみ使用可能なプロテクトがされている。

武装の元ネタとしては色々な作品が有るが、有名処は新世紀エヴァンゲリオンのポジトロンライフル。

*8
進化と超克の概念に特化する【太陽 ヴィシュヌ】を含めたO.S.中にのみ発動可能な固有スキル。

自身を〝人間である〟と定義し、人間のあらゆる可能性を得る。

人を〝進化する存在〟と定義し、あらゆる進化の可能性を得る。

進化を〝超克する事〟と定義し、あらゆる困難を打破する力を得る。

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