【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
月光が支配する領域に太陽の光が出現するのを確認し、上手く状況が推移しているのを感じ取る。
そして漆黒と金色が混ざり合った闇の光と何処までも昏い人の闇が、月光の世界を塗りつぶす様に侵食する領域。
「見事な膠着状態で、ネガティブマインドとしては想定外、異界の核となった悪魔の【夜魔 ニュクス】には好都合と言ったところですかね。私としては想定通りですが」
タルタロス最深部で三つの戦闘領域が構築されているのを、【夜魔 ニュクス】である月の表面を走り回りながら眺める。
本体の【
元々影時間と言う時間制限から、【夜魔 ニュクス】が時間稼ぎの手を打ってくるのは予想出来る話で、【夜魔 ニュクス】が時間稼ぎしている間に
突入前の作戦的には普通に倒して封印の方針で話していましたが、封印作業を一任されてる私としては、初めから時間稼ぎされる事を前提として、封印作業を行う予定で準備を進めていたりする。
木分身の私が月面に居るのも、本体が
「
琴音が【ニュクス・アバター:死神】を倒す度に【夜魔 ニュクス】の力が削れて、干渉可能な異界の範囲が広がっていくのを確認しつつ、削りを加速させるために【
とは言え、影時間とタルタロスに掛かっていた朝日に類する事象での強制退出とは異なり、【
探求者:色々調べた所、エレボスの復活ギミックその物は無意識領域内で有る限りどうしようも無いとわかりましたので、代わりにタルタロス内に出現する為の経路を閉じる方向で対処しようと思います。
ハム子:あ、って事は対処するのは月だけか
探求者:【夜魔 ニュクス】と【邪神】が問題で、無意識領域自体は防衛反応と漁夫の利出来ればってところでしょう。
黒先生:情報が端的で枝葉がわかりにくいですが、エレボスやネガティブマインドは本来戦う相手では無い感じですか?
探求者:封印作業が後は削りだけになったので言ってしまいますが、このタルタロス異界は集合的無意識へ干渉するための儀式場として、【邪神 ニャルラトホテプ】によって作られたゲーム盤です。
なので集合的無意識との繋がりを削れば、追加で出現したエレボスぐらいなら弾き出せるので、綴はそのままこの異界との繋がりごと焼き切る感じで燃やして下さい。
黒先生:わかりました、次で燃やします。
チャットへ書き込んで情報伝達が終わった直後、綴の戦っている辺りが一際煌々と光を放ち、月面まで伝わって来る程の莫大な熱量を迸らせて【
それに合わせて異界構造への干渉を行い、【
「これで【
これもまた本体が遊びに見せかけて放ったタネマシンガンに紛れさせ、【夜魔 ニュクス】の月面に漂着させた生命樹の種を成長させて、陰陽の釣り合いを取る事で封印とする術式を本格的に稼働させていく。
流石に生命樹が成長して行くとなると隠蔽なんて無理なため、他の下準備が終わるまでは後回しにせざるを得ませんでしたし、漸く大詰めに漕ぎ着けたってところですね。
生命樹の成長により急速に増大する陽の力と、【ニュクス・アバター:死神】の撃破と復活で削られていく陰の力の比率を確認しつつ、【夜魔 ニュクス】も流石に体へ根を張られると反応する様で、攻撃してこようとする動きを月面に描いておいた封印術式で抑える作業に掛かる。
本体の方では相変わらず
「となると、後気を付けるべきは封印直前のタイミングですね」
好事魔多しとも言う様に、順調な時ほど予期せぬトラブルは起きる物だし、何なら強制的に
そうこう考えながら警戒している内に、もう何度目かもわからない【ニュクス・アバター:死神】の撃破が行われ、事態が動き出す。
「クックック、色々と想定とは異なる事態が起きた時はどうしようかと思いましたが、まあまあ許容範囲内ですかね? 後は必死に頑張ってる皆さんを涙を呑んで倒させて貰って、私の完全勝利とさせて貰いましょうか!」
「おや、どの邪神が来るかと思えばニャル子アバターですか。生憎手元にはオリハルコン製のフォークしか有りませんがお一つどうぞ」
「うおっとぉ! いきなりノータイムでフォーク刺しに来るとかなんばしょっとね!」
「邪神にはフォークを馳走するのが邪神ハンターの礼儀と決まってますので」
「んな恐ろしい礼儀初めて聞きましたよ!」
外なる神の括りにある概念存在で、ナイアルラトホテップ、ニャルラトホテプ、チクタクマン、這い寄る混沌に無貌の神など様々な呼び名が有り、時と場合と個体それぞれで目的も立場も趣味嗜好も異なると言う、対応方法を構築出来ない極めて厄介な存在である。
まあ最近は創作から連想するイメージが影響してか、いくつかのアバターにおいては多少の傾向を類推出来る様なったため、決め打ちも安心も出来はしないけど行動推測の材料ぐらいにはなっていたりする。
特にニャル子と呼称される銀髪美少女な姿については、ゲームなどの娯楽に傾倒していて、遊び相手や駒的な面が強く自身の楽しみが減らない様に程度の思惑だろうとは言え、割と人類が絶滅しない様に行動するぐらいには、まだマシな行動原理をしている分類になる。
ただ、まだマシな程度であって、別に人類の味方でも無ければ、その行動によって悍ましい過程や結果が引き起こされる事も多いため、警戒対象で有る事も変わりはしないけども。
「まあ現状において敵対が確定している相手に斟酌する必要性も無いですし」
「くっ、ですが思惑通りこの場面になった時点で私の勝ちは決まった様な物! 私の仕込んだ鍵を持ったままここまで来た事を後悔する事ですね!」
そう勝ち誇った表情で宣言し力を行使する様子のニャル子を余所に、封印作業を進めつつ次の行動に合わせた一手を準備しておく。
「…………あれぇ? 確かに鍵の反応は有るのに何故起動しない?!」
「琴音の魂に埋め込まれた鍵なんて、とっくに対処しているに決まっているでしょう。今残っているのは貴方を誘き寄せるために、機能している様にカモフラージュしたデコイですよ。縁を辿って来る分霊を潰しておかないと安心出来ませんからねぇ」
「私がのこのこと誘き出されたですと!? ペルソナを暴走させて手駒にするつもりでしたが失敗ですか……。ですが鍵は所詮、機能すれば儲け程度のおまけ! まだ私の本命は途切れていない! 無意識領域の深奥に直接干渉出来る様になった今、勝ちは私の物ですよ!」
「ではそこにトラップカードオープン【ATフィールド】! この
先程ニャル子が鍵の仕掛けを動かそうとしていた間に、用意していた術式をデュエル風に効果説明まで加える事で、術式の効果を更に強化して発動する。
まあ
想像するだけで実行出来る【
仮に本体の方へ向かわれても対処する方法自体はある物の、不確定要素はどうしても出てくるため、ちょっとした手間で打てる手段があるなら打っておくと言う事ですね。
「トラップカードなど何時の間に?! 自分の手番以外でのカードセットはルール違反でしょ!」
「おや、私はちゃんと貴方が鍵への干渉を試みた時に準備をしていましたよ?」
「いやいや、私のターンはまだ終わってません! 手番が移っていないカードのプレイは無効です!」
「これは可笑しな事を言いますね。現実はターン制では無くリアルタイムバトルですよ?」
「うがー! あの手この手で邪魔してくれますねホントに!」
「そう言う貴方も態々私の前に姿を現したのは、封印作業を邪魔するためでしょう」
「作業を止める処か、遅らせるぐらいしか出来てないのは本当に何なんですかねぇ? これでも私、かなり高位の分霊何ですけど」
そもそもマーカーとしての鍵を埋め込まれていた琴音の前に現れるなら兎も角、封印作業をしている
状況的に私達が最深部へ突入した少し後ぐらいにはこの邪神の分霊も侵入して、丁度良いタイミングを狙っていたと思われる。
恐らく本体での隠蔽と【圏境】で封印作業の大部分を隠し通せていなければ、封印術式への細工ぐらいはされていただろう事は想像に難くない。
実際
「超越に至った人の可能性を甘く見すぎでは? 続いて速攻魔法【ハリセンスロー】! この魔法効果によるダメージは発生しない代わり、対象一体を強制ダウンさせる!」
「ぎゃー! って言うかもっと真面目に戦うつもりは無いんですか!」
「悪魔を相手に戦いのペースを渡すとか何の冗談です?」
正々堂々と戦えと糾弾する様な台詞を放つニャル子だが、そもそも戦いにおいて相手の
ましてや悪魔の、特に【邪神 ニャルラトホテプ】相手に正々堂々など有り得ないし、どうこう言うニャル子自体、精神干渉や封印術式への干渉、タルタロス内へ手駒を呼び込むための経路構築など、文句を言う裏で色々と手を出しているのだから、油断など出来る訳も無い。
表面上はギャグかシリアルっぽい戦いで互いに時間稼ぎをしている風を装い、裏で行われる様々な干渉を防ぐ暗闘が続き――
「くっ、埒が明きませんね。こうなったら力尽くで――」
「残念ながらこれでチェックメイトです【絶招・通天砲】*1!」
「――しまっ!?」
先にしびれを切らしたと言うか、こちらの対処が段々と遅れ始めて来てはいたけど、それでも
だが、高位分霊な【邪神 ニャルラトホテプ】が妨害出来ない程に封印作業が進んでいると言う事は、私以外の手が空くタイミングでもあると言う事。
「よっしタイミングバッチリ! 合体して行くよ!」
「了解であります。黒麒麟変形、超機人
「ターゲットロック! メス・アッシャー*2、ダブル・シュート!」
月面の各地で今も【圏境】で隠れ、封印作業を進めている
両肩に展開される二本の砲身から膨大な重力エネルギーが放出され、命中したニャル子を中心にブラックホールの様な超重力空間が発生し、重力崩壊の衝撃が迸る。
元ネタはスパロボの第三次αに登場する機体、ディス・アストラナガンの武装メス・アッシャー。
この武装を再現するにあたっては、ディス・アストラナガンの更に元になった機体であるアストラナガンから、アキシオン・キャノンの設定〝宇宙に漂うダークマターの構成物質とされるアキシオンを目標にぶつけ、ブラックホール並の超重力空間へのワームホールを発生させて叩き落す〟と言うのを参考にした物。
まあ前世でも今世でもアキシオンって素粒子は未発見だし、その性質も仮説段階で、超重力を発生させられるのかは不明と言う事もあり、武器としては【
「流石に邪神となるとあの攻撃でも一撃とはいきませんよね。なので、これで仕留めます! 【火天の構え】【焔刃・燎原神楽】」
重力崩壊の衝撃でニャル子の
際限無く上昇する熱量が一振り毎に【邪神 ニャルラトホテプ】を切り焼き、存在の一欠片も残さず燃やし尽くす。
「最後はあっさりとした感じでしたけど、運否天賦する様な戦いなど無いなら無い方が良いですしねぇ。っと、さてこれで【夜魔 ニュクス】の封印は完了、タルタロスと影時間は私の管理下と言う事で、蓬莱島の方に移しますかね」
最後の懸念材料だったこの世界でのタルタロスや影時間の始まりとなる存在、琴音に鍵を埋め込んだ【邪神 ニャルラトホテプ】の誘い出しと討伐が完了し、異界の核となっている【夜魔 ニュクス】の高位分霊も、【ニュクス・アバター】による妨害以外の行動を封殺して封印完了。
異界の制御権を私が確保したことで、
「本体も【
【夜魔 ニュクス】の封印として月面に聳える生命樹を見上げると、丁度大樹の根元にいる私の方へと降りてくる琴音達の機体が視界に映る。
出迎えるために歩む死の世界である
それは
こうして私達の、〝死〟と言う概念その物との長い戦いは、細々とした後始末は残っているけど、一応の区切りを迎える事になる。