【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
南海の孤島が空を彷徨う浮遊島にクラスチェンジすると言う、正気が疑われる様な出来事も一週間も過ぎれば日常になる物で、
「私らだけで無く綴姉さんも呼ばれたってのは、何だろな……?」
「多分、何かしらの思い付きとは思いますが、瑞樹さんって割と突拍子も無い事もしますし、深く考えずその場その場で適応するしかないですよ」
そんないつもの日常に戻っていた所、師匠に呼び出しを受けて工房に来たら、相方として基本一纏めになってるペリーヌは兎も角、弟子組と呼ばれる時のもう二人――裕奈と二代まで来た上に、姉弟子ではあるけど期間的な部分とレベルの格差もあって、別枠扱いな綴姉さんまで呼ばれたとの話から、何のために呼ばれたのかが全く予想付かなくなったのがついさっき。
まあその疑問も結局は綴姉さんが言う様に、師匠が来なければ答えは出ないとの結論になり、大人しく喚び出された時間が来るのを待つ事にする。
「時間前ですけど皆揃ってますね」
「瑞樹さんに琴音ちゃんもですか?」
「ちょとした提案と説明のためにね~」
「提案ってどゆこと?」
「色々片付いて時間的な余裕も出来ましたので、習熟にはそれなりの時間や技量が必要になる代わり、有ると便利な魔眼の力を得たいかどうかですね」
「魔眼?」
「ああ、あれですか。余裕が出来たらと言っててすっかり忘れていましたよね、そう言えば……」
「元々は出産が終わった後にでもって思ってたはずだけど、思いっきり忘れてたよね~」
約束の時間頃になって、やって来た師匠と琴姉から集められた理由を聞くと、思い当たる節があったのか綴姉さんが納得の表情を浮かべる。
どうやら魔眼体質を付与する術式を師匠が去年に開発していたらしく、迫る終末の日を前にして、術式の移植や習熟に専念出来る時間の余裕が出来たからの提案との事。
「その魔眼についての資料がこれ……ですのね」
「【写輪眼】って、まさかNA○UTOのあれだったりするのか?」
「マリッサ正解! まあ私らって趣味と実益兼ねて創作の技再現とかもしてるからね。割とどうやって再現するか考える思考力とか、霊力操作の鍛練になるし」
「人が想像出来ることは必ず人が実現出来るとは言いますが、創作からヒントを得て術を編み出すと言うのもあるのですわね」
「SF作家ジュール・ヴェルヌの言葉ですね。技術の進歩や文化の発展を振り返る際に引用される事の多い言葉ですが、具体的な目標の想像と実現のために必要な順序を考えるのは、霊能方面でも重要な事ですからね」
「えっと、動体視力や霊視での解析能力の強化に、視線を合わせた相手への幻術や催眠も可能で、代わりに発動中は常に霊力が消費されるっと……あ、流石にう○は一族化はしないんだ……」
「作中では精神が不安定になって誰かに執着する程力が強くなりましたけど、その分問題も多くなりますからね。現実で考えるとメンヘラ化する縛りを入れて効果を高めるより、効果が低くても安定した方が良いですし」
「それはその通りで御座るな」
師匠の言葉には私もそりゃそうだとしか言えん、私もNA○UTOは普通に好きだから読んでるが、写輪眼の発現条件に愛情と喪失による精神の変化が関係しているとか、あの一族の設定が出て来た辺りでそりゃ問題起こすよなとしか思えんかったしな。
まあそんな漫画での話は置いといて、師匠から渡された【写輪眼】を付与する体質追加術式の資料を読むのに意識を戻す。
内容としては移植方法や魔眼としての効果、
「なあ師匠、移植方法の所に書いてある魂魄内の人体構造情報の書き換えって、結構な高等技術じゃないのか?」
「まあ人体構造情報は【リカーム】などの蘇生系術式で扱う物ですから、魂魄干渉と合わせて要求される技量は高くなりますね」
「もしかして蓬莱島で施術出来る様にするテストケースとかだったりしますの?」
「黒札同士でなら施術してる人もそれなりに居ますし、施術可能な人員の出張で対応出来ますから大々的にとまでは考えてませんけど、非時市でもこれぐらいの技術は対応出来る様になって欲しいって部分は有ります。ただまあ、今回は純粋に知る機会が少ないだろう強化手段の紹介と、師匠兼開発者として望むなら施術ぐらいはしようかと思い立ったからですね」
「なるほど、手札を増やせる意味でも拙者は是非頼みたいで御座るな」
「あっさりと決めたね二代、良いの? 純粋に槍術を極めるんだと思ってたけど」
「拘りは有るで御座るが、それは戦いに勝ち生き残ってこそで御座るからな」
「それもそっか、私も射撃と近接戦闘で有利になりそうだから貰えるなら貰いたいかな~」
二代と裕奈があっさりと魔眼の移植を受け入れているが、まあ資料に有る基本性能だけでも、施術を受けられるならまあ頼むよなって。
とは言えそれも、【房中術】と【霊質強化術】で
資料だとそもそもの【写輪眼】自体が、レベル10以上でないと発動すら出来ないって辺り、どんだけの費用が掛かるか想像付かない施術を行っても、まともに扱える覚醒者がどんだけ居るかって話にもなる。
「私も霊視での解析能力向上ってのは魅力的だし、折角師匠が言ってくれたんだからお願いするぜ」
「ええ、私も是非にお願い致したい所ですわ」
「では全員了承した事ですし、ささっと施術を終わらせて習熟訓練に入りましょうか」
師匠がそう言って施術に取り掛かると、一人当たり一分も掛からず本当にさっと作業が終わり、気が付けば私の中に魔眼の種みたいな物が植えられていて、種が芽吹いて根を張る様に、魂魄へと術式が広がり定着して行くのが感じられる。
「ん~少し違和感は有るけど、【写輪眼】だけなら問題無いかな。万華鏡の方はちょっと時間掛かりそう」
「万華鏡は資料に書いてある内容的に、レベル50までの経験を最適化させて進化するのが元々みたいですし、私も琴音ちゃんも既に100以上になっている分、時間が掛かるのでは?」
「綴の認識で合ってますね。私が自分に施した時も最適化作業に時間が掛かりましたし」
「これが少しの違和感で済むって、やっぱ琴音が高レベルだから? 私結構辛いんだけど……」
「だよな? こう、痛くは無いんだが、目の奥辺りを触られてるって言うか……」
「その辺は痛みやらに慣れてるってだけかな~」
「確かに、違和感は強いで御座るが、頭部に攻撃を受けた時とかを考えると、耐えられない程では御座らんな」
「嫌な慣れですわね……」
施術自体は数分程度で終わったけど、それから目が造り変わっていく違和感に耐える事だいたい三十分、ようやく【写輪眼】の定着が終わり一息付く。
定着するまでは違和感が凄かったものの、終わってみれば元々魔眼を持っていたかの様に、少し意識するだけで【写輪眼】を発動出来る辺り、師匠の技術が凄いんだろうけど別の違和感を感じる所だな……。
「何つーかちょっと前まで無かった魔眼が、生まれた時から持ってたみたいに感じるのは、違和感が無い事が違和感だよなぁ……」
「あ、それわかる! さっきまで目に違和感が有ったのが嘘みたいで、何かもにょるよねぇ」
「この違和感の無さが、人体構造情報を書き換える方式になった理由でしょうか……?」
「そうですね。ペリーヌが言う様に、生来から持っている様に感じる程の違和感の無さは、人体構造情報から書き換えをした事によるメリットの一つです。まあ元々は、別途造った魔眼自体を移植しても、高レベルになると造った魔眼自体の強度が追いつかず、武器などの装備と同じ様に戦闘中に壊れるケースが何度も確認されたからで、その対策として魔眼体質にする方法を開発した感じになりますね」
「ああなるほど、埋め込んだ魔眼は道具ですから道具としての耐久力しか有りませんが、体質として発現した魔眼なら肉体としての強度ですから、レベルの上昇に合わせて強化されていくって事ですか」
「そう言えば掲示板で、移植した魔眼が戦闘の速度に耐えきれず壊れた、なんて話もあったっけ」
「黒札の高レベルが使う魔眼って……それいくらするんだ?」
「レベル二桁後半で使う装備ですから、大体二十から三十万マッカぐらいですかね? まあそれより、【写輪眼】も定着し終わったみたいですから、習熟訓練しましょうか」
「オッケー、そんじゃ軽く組み手でもしよっか」
何つーかマッカで二十万とかする装備が壊れるのをさらっと流す辺り、私らと師匠ではやっぱ価値観が結構ズレてんだな……。
いやまあ超機人とか言う巨大なロボットを個人でいくつも造ってたりするし、蓬莱島も師匠個人の持ち物だしで今更な話か。
そんな価値観の違いなんかは兎も角、習熟訓練の組み手に集中するかね。
資料にも書いてあったが、【写輪眼】に慣れるまでは発動中の消費霊力量も多くなるって話だしな。
そうしてある程度上昇した動体視力や霊視解析能力に慣れるまで、【写輪眼】を発動しながらの組み手を繰り返し、結局一日がかりで近接戦闘の修業をしたのと同じ事になった日の翌日。
昨日の内に最適化が終わって、段階が進んだ綴姉さんと琴姉が【万華鏡写輪眼】の習熟に移る事になったため、私ら四人は師匠達と別れての習熟訓練を行う事にして、師匠の家の中でもちょっと特殊な部屋に集まる。
「簡易異界の調整終わりましたわ」
「こっちも京都沖でのデータ入力終わったぜ」
「ホイホイ、投影範囲は飛空艇周辺にして置いたよ~」
「休憩用スペースに机と椅子、菓子類も用意しておいたで御座る」
この部屋は異界化を応用して、映像記録などをバーチャルリアリティの様に室内へ再現し、体感出来る場所になっている。
まああくまでも映像再現だから干渉したりは出来ないんだが、水や空気なんかは現実そのままだし、攻撃などの射線に入ってしまうと多少とは言えダメージを受けるから、純粋に鑑賞を楽しむなら二代が用意した様に、専用の休憩スペースが必要なのは注意点だな。
今日のところは、師匠に連れて行かれた四月頃の京都沖で、海産物保護のための悪魔討伐戦に参加した時の記録*1から、【写輪眼】の習熟訓練を兼ねて、空戦技術の参考に出来そうな情報を改めて洗い出そうってところ。
一応カリキュラムを作るための研究として何度も見返してはいるんだが、【写輪眼】を通す事で今まで気付けなかった新しい発見があるかも? って訳だな。
「最初の方は飛ばして、穢教鳥が出て来た辺りからで良いよね?」
「おう、となると此処からだな」
「講義で何度も使っているだけ有ってよく覚えてますわね。――っと、早速前は気付けませんでしたけれど、接敵前に瑞樹様が結界を追加してますわね」
「むっ? 結界では御座るが、防御方面では無さそうで御座るな」
「直ぐに解析は無理っぽそうだし、一旦止めて調べる?」
「だな、調べやすい様に近付けるぞ」
まさか再生し始めた直後に止めることになるとは思わなかったが、思惑通り気付けてなかった物を早速見つけられたのは、幸先が良いと思う事にしておくか。
何度も見返してきた映像で今まで気付けなかった時点で、霊視能力が足りてなかったって事だし、【写輪眼】で底上げ出来たのは真面目に有り難い話だよなぁ……。
「二代さんが言う様に防御的な効果は有りませんわね。効果発動の条件は……相対的な位置の変化と、これは意識状態を調べる物も組み合わされてますわね?」
「効果内容は転移系か? 片方が甲板上に紐付けられてるな」
「あ、もしかして気絶状態とかでの落下防止?」
「セーフティネットと言うところで御座るな。落ちない様にと気を付けては居たが、思えば瑞樹殿が万一への備えをしていない訳が無いで御座るな」
「そりゃそうだわな、考えて見りゃ師匠がその辺の対策してない訳がねぇか。つーかこの場合はその辺今まで気付けてなかったのが問題だなぁ……」
「あー……、墜落した時の救助って方向は色々検討してたけど、自動回収する感じの対策って検討もしてなかったっけ」
「検討していないと言うよりも、考慮に入れられる程技術が育っていないと言う方が正しいですわね。今こうして瑞樹様が発動した結界を解析出来ていますが、実用するなら飛空艇その物に組み込むぐらいしないと難しいですわよ?」
「転移系統となれば、難易度も察して余り有るで御座ろう」
あれこれ意見を交わしながら結界の解析を進め、所感も含めた記録を残し終わった所で、再生を再開する。
場面は海上の艦隊から巨大な鮫が穢教鳥に襲い掛かったり、自立稼働する巨大ロボットが変形して演奏を始めたりなど、一気に戦場が混沌とし始めた所へと移る。
「何度見返しても思うが、黒札の人らは実に個性的だよな……」
「いや~、呼びかけで集まった人達のレベルが高いからってだけだと思うよ? 実銃愛好部のサバゲーで、まだ低レベルの黒札だとテンプレ的な装備だったし」
「個性的と言えば、蜻蛉みたいな羽を生やした黒光りしているの*2と、ナマズっぽいの*3とデフォルメされた二頭身な生もの*4が一組になって暴れ回ってるのも、奇妙な光景で御座るな」
「簡易式神と呼ばれている兵員ですわね。隊列組んで戦える戦力と言う意味でも普通に驚異的ですわ。レベルもこの頃の私達と同じで20前後はあるとの事ですもの」
「この辺は戦場に慣れるために甲板から遠距離攻撃してただけだし、幼女ネキが顔見せに来た後ぐらいまでは飛空艇以外の所の解析がメインだな」
海上で多数の黒札が使っているデモニカだったり、個人毎の術技など、【写輪眼】で何とか理解出来る範囲のもあれば、それでも取っ掛かりすらわからない物もあり、適時止めながらの議論にも結構な時間を掛けた後、一応の本題の一つである空中戦の方へと視点を移す。
切り替えた場面では、本人の霊能で飛行していたり専用の装備を用意してたりする黒札達の光景が広がっており、楽しそうにヘビィボウガン――風樹轟雷重砲を放つ師匠の姿も見える。
「幼女ネキを含めて数人空に上がってきて、余裕が出来たから私とペリーヌも空中戦に参加し始める辺りだが……、やっぱ師匠に取っては殆ど遊びだよな? これ」
「転落防止の結界を含めて、いくつか防御方面の保険は追加されておりますけれど、攻撃面ではヘビィボウガンだけに限定しておりますから、手加減に手加減を重ねていますわね」
「瑞樹さん的に手加減しているのは確かだろうけど、射撃一回で穢教鳥が複数まとめて吹き飛んでるし、【排熱噴射機構】だっけ? 穢教鳥が犇めいてる空域にぽっかりと穴が空く威力のビームを撃ち出した時には二度見したよね」
「聞くところによると瑞樹殿が使うからの威力では無く、装備自体に由来するほぼ固定威力砲撃で、射撃時に敵味方の選別も可能と言う代物との事だが、恐ろしいのは決戦兵器と言われても納得する
「重量が結構あるらしいから、普段使いし難いってのはあるんだろうが……モンハンの武器って考えると非時市の方で作れる様になりたいよなぁ」
「食欲界にモンハン階層有るんだし、ライトボウガンとかも含めて素材採取と武器製造は出来る様になりたいよねぇ……。足りない能力を装備で補うってのは普通の事だし」
師匠が抱え持つ風樹轟雷重砲からビームの様な熱線が放射され、射線上の空域に綺麗な穴が空くのを眺めた後、箒に乗った私とストライカーユニットを履いて飛ぶペリーヌの動きを改めて見ていく。
まあ空を飛べるとは言うが、本格的な空中戦なんて初めてなペリーヌはもちろんの事、何度か経験してはいても敵の数的にこの規模の戦場は初めてな私も、割と危ない場面が多い反省点ばかりの状況が映し出されている訳だがな。
「拙者は余り見返してないため割と新鮮に感じる所だが、マリッサやペリーヌ的にはどうで御座る?」
「ストライカーユニットの稼働に関して、まだ見えていなかった部分が有ったのは確かですわね」
「私の方も箒の稼働状況で参考になる部分が新しく見つかったぐらいで、空中戦に関しては研究会で討論した以上のは出てこねぇかな」
「私達の動き自体は粗探しで数回も見直せばそれ以上なんて出てこないよね~」
「それもそうで御座るな」
つーことで私らの動き自体の再確認はそこそこで終わらせ、他の空中戦している黒札達や琴姉などの動きを観察する方に集中して行く。
映し出すのは文字通り、雲霞の如く湧き出し続ける穢教鳥を次々に撃ち落とし続け、縦横無尽に飛び回る面々の様子。
【写輪眼】で向上した動体視力や霊視解析能力で漸く認識出来る様になった動きを、何度も巻き戻しては複数の角度から確認し、参考に出来そうな物を探して議論を重ねる。
まあ正直空中戦自体の参考としては、個人技能に寄るところが多すぎて微妙な点も多いって結論だったが、その分個人技量は高い訳だし、個人的な参考としては得るものも多い。
「っと、デカイ花火が弾けたからそろそろラストだな」
「細かく見ていけばまだまだ得られる物は有るんだろうけど、もう結構良い時間になってきてるし、後はそのまま流す?」
「私はそれで良いですわ。マリッサが花火と呼んだアレ、リン様は置き【
「後は巨大な合体ロボと海中異界での決戦で決着で御座るが……、拙者達の手が届く範囲では無いで御座るな」
「そんじゃこのまま上空の穢教鳥狩りで、参考に出来そうな物探しつつ流して終わりにするか」
それにしても、霊視解析能力が一段上がるだけで見えるモノが格段に広がったってのは、それだけ私らの
映像資料見終わって今回見つけた内容をまとめ終わったら、レベル上げと鍛練を兼ねて移設されたタルタロスに行くのでも提案してみるか?