【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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131:調査研究とメンテナンス

 タルタロスの攻略が終わってからおよそ一ヶ月、蓬莱島の位置を南海から日本近海まで移動させたり、高度を五千メートル程度まで上げたりなど、細々とした変更を行って居る間に暦も八月に変わり、蓬莱島も順当に夏の陽射しを浴びている頃、空調を効かせた工房内でとある素材の調査・研究が大詰めを迎えていた。

 

「生成実験と人工石での性質検査も終了、後はレポート作成して技術部に持って行けば良いですね」

 

 研究していた素材とは、少し前に翡翠の中から新発見された特殊な結晶構造の鉱物で、アマテラス石*1と名付けられた物質。

 アマテラス石の面白い所は、二種類の異なる結晶構造がコインの裏表の様に同時に含まれている所で、一方が見える時はもう片方が見えないと言う二面性の構造になって居る部分。

 鉱物学においては、理論的に存在すると予想されていたものの、実在を確認出来た世界初の鉱物でも有る。

 調査及び研究によって判明した霊的な性質としては、名前による影響が先なのか、或いはその性質により名称が引き寄せられたのか、アマテラス石の名前に相応しく太陽に関する〝蝕〟の概念を持つ宝石となっているのが判明した。

 より詳細に言うと、表裏一体の二面性が表す様に太陽と月の性質を同時に有しており、日蝕や月蝕の概念を持つ宝石になっている。

 またその二面性から、活性や男性的な力を示す陽の荒魂、沈静や女性的な力を示す陰の和魂の側面も持ち合わせており、陰陽を同時に扱う場合の触媒としても最上級と言える研究結果が出ている程。

 

 後、調査と研究に多少時間が掛かった理由としては、これまでにも結構な量の翡翠が産出されているにもかかわらず、先頃初めて発見された様に、アマテラス石が生成される条件の特定に時間が掛かり、人工的に生成する手順の確立に手間取ったからという物。

 と言うのも、元々異界内で産出した翡翠の中から発見された事から、現実的に存在するかの確認のため、他に翡翠が産出される地域へ向かって探す所から始めて、岡山県新見市の大佐山で採取した石から、同じ組成の鉱石を発見するまでに掛かった時間が主な要因。

 そうして異界産では無いアマテラス石を見つけられた事で、純粋な化学反応においても、翡翠の生成過程の変化でアマテラス石が生成されるとの確証を得て、翡翠の生成実験と変化させる条件の割り出しに着手したためと言ったところ。

 実際アプローチの方向が絞れれば、【未来視】や【確率操作】などを合わせる事で大筋を割り出せるため、完成に至るのは手間も時間もさほど掛からなかった。

 

 ともあれ、書き上がったレポートに人工生成したアマテラス石もそれなりの量を用意して、技術部に諸々を渡して一段落。

 用事が終わった事だし、悪魔娼館にでも顔を出しに行こうかと考えていたところ、何と表現するべきか、まるで理性と本能が鍔競り合う様な、細く絞り出された叫びが聞こえてくる。

 

「鶏の首を絞めたような声が聞こえてくるのは……ああ、式神製造班のデザイン相談室ですか。タイミングも良いですし、性癖診断システムのメンテナンスもして行きますかね」

 

 声の出所に意識を向けると、式神製造相談室のプレートが掛かっている複数の部屋の一つから聞こえている事に気付き、叫びの理由に見当を付ける。

 恐らくと言うか多分間違い無いだろうけど、式神製造班が導入した性癖診断システムで、依頼者本人も自覚していない性癖を知って葛藤でもしているのだろう。

 とりあえず式神製造班に連絡を入れて、予定の空いてる部屋へと向かう。

 

「フゥーハハハハ! 良く来たな探求ネキ!」

「おや、久しぶりですね凶真ニキ」

「こちらとしてはそこかしこで分身体を見かけるせいで、話す事は稀だが久しぶりと言う気分にはなれんがな。まあいい、それより性癖診断のメンテとは言うが、早々不具合が出るもんでも無いと思うんだが?」

「別に不具合の修正だけで無く、蓄積されたデータから精度をより高めるのもメンテナンスの範疇ですよ」

「それはまた、よりクリティカルな結果が出て悶絶する依頼者が増えそうだな!」

 

 愉快そうにと言うか、愉快な笑い声で出迎えてくれたのは、凶真ニキこと本名が岡部倫太郎な〝俺ら〟の一人。

 なお、本人的にはオカリン辺りのあだ名で呼ばれるのでも構わないらしいけど、一応呪術対策の名前隠しも兼ねて、対外的には鳳凰院凶真を名乗っているとの事。

 確か専用式神は声繋がりでガンダムエクシアのロボタイプにしていて、いずれ太陽炉を作りたいって事で色々と研究しており、研究費用稼ぎと技術向上のために技術開発班や式神製造班などへ積極的に参加しているらしい。

 後、生産系黒札としてはそこそこ以上に戦える実力持ちで、レベルも40は超えている所謂エンジョイ修羅勢。

 個人的な研究に関しては、凶真ニキが立ち上げた発明サークル、原作ネタを拝借した未来ガジェット研究所で、ラボメンと行って居るらしいけど、現状ではあまり資金獲得に繋がらない発明ばかりなためか、それぞれ別口で稼ぎつつ遊んでいるってのが近い様子。

 

 とまあそんな凶真ニキのあれこれについては横に置いておいて、ささっと性癖診断システムに蓄積されたデータ――診断結果に対する依頼者の納得度合いや性癖開花状況など――を確認し、システムの術式を調整していく。

 ちなみにこの性癖診断システムについては、去年の星大祭ブラックマーケットに出店した際、試験導入した逆物欲センサーガチャ*2から機能限定して発展させた術式の一つ。

 まあ逆物欲センサーガチャから、ここに置いてる性癖診断システムや悪魔娼館に設置した性癖ガチャみたいに、機能限定して派生させる事になったのは、星大祭で私の店に迷い込んできた給食ネキ*3に試しに進めてみたところ、本人的に内心色々と理由を付けて目を背けていたらしい性癖関連アイテムが、ピンポイントに排出されるなんて事態が起きた事から、ガイア連合立ち上げ当初から続く問題である〝嫁or婿式神に関する性癖の不一致〟を解消する一助にならないか? と思い付いたのが切っ掛けだったりする。

 実際、性癖診断システムを導入してからは、製作した式神の作り直し回数が劇的に減って、式神コア製造班以外の負担はだいぶ減少したとの事。

 

「凶真ニキの方は性癖診断(これ)使ってて何か問題とか有りました?」

「ん? 特には……ああいや、そう言えば一つあったな。まあちょっとした事なんだが、性癖に直面した事で自身のシャドウと対面する事になった奴がいたな」

「ああ、P4系列のシャドウなら確かに、性癖の否定でそうなる可能性も高くなりますか。システム側の不備と言うわけでは無いですが、その場で強制対面とならない様に結界ぐらいは追加しておきますかね」

「ペルソナ関連は適性が無いと対応し辛いから有り難い。……にしても、探求ネキは個人研究勢の割りに山梨支部で働いてるところをよく見るが、何か理由有るのか? 殆どの連中みたいな研究費用稼ぎって訳じゃ無いんだろうが」

「初期からの惰性って部分が大きいですかね。ガイア連合山梨支部として軌道に乗ってきた後は、新人や育ってきた後進に席を譲りましたけど、式神コア製造班みたいに成り手が非常に少ない部署も有りますし……」

「いつもお世話になっております!」

「凶真ニキも持ち回りで製造担当に入ってるんですから、気にしなくて良いですよ」

 

 深々と最敬礼する凶真ニキに軽く手を振って止めさせ、性癖診断でペルソナ案件にならない様にする結界の追加と、結界が発動したらペルソナ使いの素養があると言う訳なので、発動状況も確認出来る様にしてメンテナンスは完了。

 まあ余裕は有るし必要な作業であるとは言え、割り込みで部屋を長時間占拠する訳にはいかないって事で、凶真ニキに終わった事を伝えて製造班への業務連絡を回して部屋を出ると、今度は性癖診断システムのメンテナンスから思い浮かんだ性癖ガチャの稼働状況を確認するため、悪魔娼館へと移動する。

 結局の所、美波さんの居城でありスケベ部の活動拠点の一つでもある悪魔娼館へ行くのは同じとなったけど、特に当ても無く顔を出すだけの積もりよりは良いかと考え直し、収納に突っ込んでる中から適当な差し入れを見繕いながらいつもの様に部室へと向かう。

 

「おや、スリーパーニキ*4がこっちに居るのは珍しいですね?」

「久しぶり探求ネキ。ウチ管轄の色欲界と五車の里の報告に来た感じだね」

「なるほど。とりあえず差し入れいつもの所に置いておくので、好きにとって下さい」

「お、ラッキー! まあ恨まれたくはないし、一つ貰ったら連絡は回しとくか」

 

 部屋に入って目に付いたのは、普段は山梨支部より地方で趣味を満喫してる事の多い、エンジョイ勢スケベ部員の一人であるスリーパーニキ。

 そう言えば、紆余曲折有ってスケベ部が管理下に置くことになった五車の里――対魔忍衆の地元で、現在はスケベ部管理の歓楽街になっている場所――で、スリーパーニキが趣味活動()していた事から、咎めはしない代わりに定期報告する様にと美波さんに言われていたっけ。

 まあ趣味活動と言っても、スリーパーニキのそれは催眠パパ活みたいな物で、一般社会的には普通にアウトな内容だけど、終末後を見据えた霊能界隈で考えると、批難されるどころかそれで囲われた女の子達を羨む現地霊能者が多い程。

 言ってしまえば黒札の庇護下にある上、生まれた子供は確実に強くなれる才能持ちとなれば、終末後の地域防衛戦力として期待出来る訳だから、現地霊能者達に取っては多数女の子を囲って子作りしてくれるのは、願ったり叶ったりでしょう。

 

「後は五車の里にも性癖ガチャを置いて欲しいって要望が出てるから、その辺の確認ってところ」

「五車の里は戦後に根切りされた後、復興するために外法で淫魔の力を借りてますし、性癖ガチャみたいなのは欲しくなりますか」

「そう言う事、ミナミィネキに聞いたら探求ネキから許可貰えって言われたし、会えて良かったよ」

「ガチャシステム自体は構いませんけど、中身の方はどうする予定です? 後、確か粗悪品が出回ったりと問題も起きてるみたいですが」

「中身は五車の里で作った物がメインで、レア枠にスケベ部製を入れる予定かな。粗悪品の方は対魔忍衆の下っ端が発端になってるのを把握してるけど、言った所で頭対魔忍してるからね……。当面は売買を許可制にして、ウチが許可証を発行していない店を利用したら、各種サポートを受けられない様に契約させる予定だね」

「力だけは他の地方霊能組織より高めですけど、政治や経済面に疎い所の改善はまだまだですか……」

「正直その辺は改善する気が有るのか疑問だよ。何度注意しても似た様な失敗繰り返すし……」

 

 上がってきた要望に関しては、販売形態を増やすと言うだけのため、出し渋る必要も無い事から許可を出すのは構わないのだけど、前々から五車の里周辺で問題になってた件について聞いて見ると、案の定な調査結果だったらしくスリーパーニキが深々とため息を吐く。

 五車の里のメイン戦力である対魔忍衆だけど、どうにも力は有っても思考力が足りない手合いが多く、根拠の足りない自信で行動して失敗するケースが散見される事から、黒札でも特に前世で対魔忍シリーズを知っている者ほど使う〝頭対魔忍〟と言うネットミームが、概念的に影響しているのでは無いか? とまで懸念される程。

 まあ実際のところは確認のしようも無いし、綴やその両親である秋山分家の三人みたいに、同じく淫魔の力を借りた血筋でもまともな思考力を持ってる者達も居る訳で、結局育った環境と本人の気質によるものと言った所だろう。

 

「まあガチャの中身の当てが有るなら大丈夫ですかね。丁度性癖ガチャのメンテとアプデをしようと思ってましたから、それが終わったら筐体込みで用意しておきますよ」

「筐体も用意してくれるのは助かるね。でも、メンテは兎も角アプデ?」

「今はガチャ結果を見て受け付けから景品を取り出してますけど、結果を知られたくない人や取り出す手間とかの問題がありますからね。こんな感じにMAG物質化で一回使い切りの収納カプセルを作り、ガチャに投入した景品を自動でカプセルに封入する形式に変更しようかと思い付きまして」

「うわ、またとんでもない技術が出て来た……」

 

 霊力を物質化させてよくあるガチャポンのカプセルみたいな球体を作り、カプセルを構成するMAGを使った物品封入の術式を組み込む事で、どんな物でも一種類一個収納可能な代わりに、一度開封するとカプセル自体が消滅すると言う収納道具を取り出す。

 ちなみに、ケースや袋などに複数詰め込んだ物を一個として封入する事も可能なため、やろうと思えばコンテナをカプセルに入れて持ち運ぶなんて事も可能だったりする。

 で、性癖ガチャの筐体自体にこの封入カプセルを作る仕組みを追加して、景品投入用のストレージアプリと合わせて補充の手間を減らすと言うのが、今回予定しているアップデートの内容。

 

「GPが上がってきて使える素材も増えましたから、このぐらいならそこまで難しくも無いんですけどね。――っと、利用データからの術式改良は終わりましたから、まずはこっちに置く分のバージョンアップですね」

「話ながらよく出来るね……」

「術師系にとってマルチタスクは必須技能ですからねぇ」

 

 スリーパーニキの呆れた様な視線を受け流しつつ、改良した性癖ガチャの術式を組み込んだ新しい筐体の構築に取り掛かる。

 まあ素材の加工で生じる諸々の問題は結界などで対処出来るのもあり、時間としては大体十分前後ぐらいで組み上げも終わる。

 後は用意しておいたアプリに景品を収納したら、試運転として十連や単発を数回試して問題無い事を確認する。

 ちなみに試運転した性癖ガチャから出て来たのは、排卵剤や妊婦用の胎児保護結界に搾乳機などで、まあ私の性癖範囲の物ばかりでしたから、弄った術式は大丈夫でしょう。

 

「新しい筐体はこれで十分ですね。今置いてるのと入れ替えたら、古い方を改造して五車の里の方に回しましょうか」

「了解、それじゃ五車の里へ持ってく準備をしておく。……それにしてもよく躊躇せず性癖ガチャ回せるね?」

「オープンにするつもりは無いですけど、別に知られて困る様な事でも無いですからね。他人に強要する訳でも無いですし、頼めばプレイに付き合ってくれる相手も居ますし、この辺はスリーパーニキも同じでは?」

「いやそりゃ、個人的な趣味活動で楽しんでる事は否定しないけどさ……はぁ、まあ良いか。それじゃ俺は五車の里に連絡入れてくる」

「性癖ガチャの改造が終わったら梱包してその辺に置いときますね」

 

 バージョンアップが終わった性癖ガチャの筐体を木分身が設置しに行っている間に、試運転で排出された分をストレージに戻して置き、その間に木分身が回収した悪魔娼館に設置していた旧式の改造に取り掛かる。

 

「五車の里に置く分ですし、序でに変に手を加えたり劣化品の材料にして加工したりすると、性癖含めて当人がしてきた罪状を背中に表示する仕掛けも入れておきますかね。真っ当な技術が有れば解除出来るぐらいの難易度にしておけば、考えの足りない者を炙り出せるでしょう」

 

 なお、性癖ガチャに追加で仕込んだ契約によって、五車の里に所属する人員の約二割が文字通りに罪状を背負うことに成ったのだが、それはまた別の話。

*1
現実において、岡山県新見市の大佐山地域で採取されたヒスイ輝石から発見され、2025年8月7日に発表された新鉱物。

拙作世界線では『【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち』様の〝九重静の終末対策12〟より、糸魚川市の異界から産出する翡翠の中から発見された。

*2
『ファッション無惨様のごちゃサマライフ』様の〝とある黒札の性癖がブッ壊れた話02〟より、星大祭のブラックマーケットで探求ネキが店に置いていたガチャシステム。

望んでいる物ほど手に入らない〝物欲センサー概念〟を逆手に取り、利用者の深層心理から本人も気付いていないor目を逸らしている欲望を曝け出させると言う代物。

*3
『ファッション無惨様のごちゃサマライフ』様より、調理部所属の黒札。

*4
本家様の『小ネタ 対魔忍系現地霊能組織VS催眠エロ種俺たち』より、インキュバスのデビルシフター。拙作世界線では使用されてるAAから名前を設定。




・アマテラス石
日本の国石であるヒスイ輝石の中から発見された黒緑色の鉱物であり、二種類の異なる結晶構造を同時に含む特徴を持つ。
この結晶構造はコインの表と裏の様に、一方が見える時はもう片方が見えないと言う二面性の構造になっている物で、理論的には予想されていたものの、実際の鉱物として確認されたのはアマテラス石が初めて。
二面性を示す特異な結晶構造から、神道に置ける概念〝荒魂〟〝和魂〟の二面性になぞらえて、天照大神から石の名称に採用された。
拙作世界線においては、活性や男性的な力を示す陽の荒魂、沈静や女性的な力を示す陰の和魂の側面が有り、太陽に関する二面性を同時に含む性質から日食や月食などの〝蝕〟の概念を有する鉱物で、太陽と月の特性を併せ持つ特殊な宝石と独自解釈。

オリキャラ紹介
・凶真ニキ
 本名は岡部倫太郎で原作持ちな黒札の一人、コテハンも原作から付けた物で、山梨支部の技術部所属。
 デジタル技術部所属で電脳異界関連に携わっているダルニキ*1は同郷の親友。
 元ネタ同様にオタク気質や発明家気質は強いが、資金稼ぎ方面の能力は低いため、個人研究では無く支部に所属してサークル活動をしている。
 専用式神は声繋がりでガンダムエクシア、目下の目標は太陽炉を創り出す事。

*1
本家様の『小ネタ 電脳異界開発』より

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