【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「さて、今年もこの季節がやって来ましたけど、今回はどうしましょうかね……」
「難しい顔してるけど、星大祭ブラックマーケットの事だよね? 夏の祭典の方は申込期間とっくに過ぎてるし」
「両方ですね。夏の祭典の方もガイアグループの企業枠で出せるので」
「あ、企業枠って事は、劇場版陰陽寮の日常*1関連か……」
「時期が時期ですし、陰陽師にちなんで真っ当な霊符でも作って並べますかね?」
「まあ作品が作品だからグッズと言えば納得されそうだけど、オカルトアイテムを思いっきり販売して大丈夫?」
「別に神社や寺の名前を出して販売する訳では無いですし、グッズ分類にすれば大丈夫でしょう」
「瑞樹がそれで良いなら良いんじゃない? 私は出品側より購入側だけどね~」
八月と言えば祭りの季節と言う事で、終末目前な今日この頃では有るけれど、それはそれとして祭りを中止にする訳にはいかないと、今年も変わらず祭りの準備が進められている。
私としても、終末に向けた準備の影響で開催出来ないなんて事は避けたいって事で、夏の祭典や星大祭の開催資金援助だったり、オカルト関係を含めた各種セキュリティなどの裏方作業も行ってきた。
まあそうして半ば運営側に回る事になった関係で、出品側としての用意がギリギリになってしまったのはちょっと反省点だけども。
そんな訳で余り時間を掛けずに用意出来るグッズとして、未覚醒者でも効果を得られる程度の守護を込めた霊符を作る事にして、翡翠の顔料――宝石に出来ない大きさだったり研磨の際に出る粉末を使った物――を墨に加え、ささっと手書きしていく。
「お、錬金釜で量産じゃなくて態々手書きするんだ」
「折角の公式グッズですからこのぐらいの手間は掛けようかと、翡翠を混ぜ合わせれば日本人なら未覚醒でも十分効果を発揮出来ますし」
「普通に売ったらいくらぐらいになるんだろ……」
「効果を考えると、購買などで売る場合は数百万は設定しないといけないでしょうね。祭典では千円か高くしても三千円ぐらいになると思いますが」
「んー他組織が聞いたら卒倒しそう」
「一般社会ではオカルト的な価値は商品価格に含みませんからねぇ。せいぜい翡翠の顔料と墨の素材辺りで費用を上乗せするぐらいですし」
いつもの様に私が工房に居る所へ、今日は学校の友人と遊びに行く予定が無いからとの事で、琴音が遊びに来たのが少し前。
特段用事という用事がある訳でも無いみたいだけど、適当に話しているだけでもまあ楽しい物で、話のネタに出て来た物を即興で作るなんてのもよく有る事。
今作った守護の霊符に関しても、話題が今月に行われる祭りの話になって思い付いたからってところで、まあ夏の祭典に出品する物については、最悪思い付かなければ時間加速異界にでも籠もって、用意すれば良いかと思っていたので、出品物が決まって良い感じですね。
「そうだ、陰陽寮の日常関連でグッズ造るならいっそのこと、ASMRみたいなのはどう? ほら、以前に三馬鹿ラスに頼まれてレコーディング*2してたし、瑞樹の声*3なら欲しい人多いんじゃない?」
「ボイス作品ですか、んー……確かに悪くはないですね。収録自体はそこまで掛けなくても良いでしょうし、陰陽寮の日常らしく授業メインで、クイズ形式の問題も入れて正解と不正解でいくつかのパターンも入れれば、商品として十分な形に成りそうです。守護の霊符と合わせて担当に持って行きましょうか」
「お、採用された。製品出来たら聞かせてね~」
琴音から追加で上がってきたアイディアも含めて木分身に持って行かせ、とりあえず今回ダメでも他に流用出来るだろうって事で、引き続き守護の霊符を作りつつ、別の木分身で台本の執筆に手を付ける。
そんな感じで、琴音と楽しく話ながら作業している本体の一方、一般の祭である夏の祭典とは異なり、霊能を全開に出来る方のお祭、星大祭ブラックマーケットの新作をどうしようかと考えている
「夏の祭典の方は本体の方で目処が立ったから良いとして、ブラックマーケット用に新作食材の一つや二つは用意して置きたいところですよね……。スケベ部としての新商品は昔*4に創った食液触手植物*5を更に品種改造して、MBシリーズの一つとして創った荒蔦に、霊的五感拡張式触手リング*6を改良した八魔羅之触腕も有るので問題無いですし」
食欲界内を歩き回りつつ、星大祭ブラックマーケットで新しくカタログに追加したスケベ部としての新商品を思い浮かべる。
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・MB
SM用緊縛ロープなどでの被虐性愛により、耐久力及び体力の増強と回復力向上を行う装備、
食液触手植物を改造して創り出した、装備者の老廃物を糧に成長と維持を行う胴体装備型特殊植物。
蔦触手が装備者の望むままに多種多様な緊縛を行い、装備者の性的興奮度合いに応じて装備効果を高める。
また、老廃物吸収機能の一つとしてアナル尻尾型の触手も含まれており、霊力操作技術が有れば尻尾を手の様に扱う事も可能になっている。
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一つ目は改造植物であり特殊な防具にもなる荒蔦で、性癖としては認知度の高いマゾヒスト向けの装備、MBシリーズの一種として性能を持たせた物。
ちなみに他のMBシリーズはロープや皮革を素材とした物が多く、着脱や手入れが面倒との声はそれなりに聞くところ。
一部にはそれもまた良いって人も居たりはするのだけど、ただまあ面倒は少ない方が良いって事で、装備側に着脱機能や老廃物を吸収して綺麗にする機能を付けるのに、植物の性質が使い易かった感じ。
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・
男性器機能を持つ触手を任意の本数造り出し、操作可能にする腕輪。
装備者自身の肉体を変化させたりして造り出す肉触手は、太さや長さに形状を自由に変更可能で、肉としての温度や質量を持ち、鋭敏な感覚を装備者にも対象にも感じさせる。
また、触手の数が増える程に装備者の回復力を向上させ、触手の接触面積が多い程対象の回復力も向上させる。
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二つ目の品は純粋に触手プレイをするための道具で、肉触手を生やす場所は割と自由に出来るけど、腕輪からか両手の指を変化させるか、後はペニスやクリトリスを起点に変化させたり増やすのが扱い易いですかね?
後、生やした肉触手は基本的に、肉体のペニスより感覚が鋭敏な所が利点であり欠点で、霊力操作や霊的感覚に慣れていないと、三クリックも持たずに果てて意識を飛ばす危険性がある。
まあそれだけ受け取る快感が大きいと言う事ですから、上手く使えれば相手を快楽堕ちさせるのも簡単って訳ですけども。
「まあスケベ部としての活動については良いとして、最近新しい食材創って無いですからねぇ……っと、ふむ? ぶどうですか、そう言えば赤ワインはキリストの血とか呼ばれますし、面白い事が出来そうですね」
新しい食材の一つでも創ろうかと考えてたところ、丁度視界に入ってきたのはトリコ階層の一角、果樹園エリアに実る脳缶ニキが創りだしたぶどうの品種〝バプテスマ〟*7。
食欲界で地脈の濾過をしていた関係で、異界内に湧く穢教鳥に対する罠の一つとして植えていた物だけど、それらの情報から連想してアイディアが思い浮かび、ぶどうをベースにした新種を創り出す事に決める。
まあ流石に、バプテスマをベースに魔改造ってのは脳缶ニキに申し訳ないため、ベースにするのは一般のワイン用の品種にして、連想したアイディアの〝キリストの血〟に沿って創り出す品種の方向性を考える。
「普通に美味しいぶどうだとインパクトが足りない気もしますし、トリコ的な感じで絞った果汁が輸血に使える様な血になる感じにでもしてみますかね? 後はアイディア元的に、脳缶ニキのバプテスマみたいなメシア教を煽れる様な代物なら尚良しって事で」
大まかに方針が決まったところで、まずは輸血にも使える様な血液成分を生み出すぶどうを創るところから。
単純に血液的な果汁のぶどうをってだけならそう手間でも無い話だけど、輸血に使える前提となると問題となるのは血液型。
まあ一口に血液型と言っても、よく聞く分類でもABO式とRh式の二つが有り、一般では知られてない分類を数えると20以上は確かあったはずだけど、今回重要なのはそんな細かな分類の違いでは無く、〝誰にでも輸血可能な血液〟と言う条件を如何に満たすか。
ざっくりと言えば赤血球の型の違いである抗原と、血液中の液体成分である血漿に含まれる抗体が、輸血される側の血液と適合しない場合に起きる抗原抗体反応による赤血球の破壊、溶血が引き起こされるのが問題点になる。
「確かO型の赤血球はAとBどちらの抗原も無く、AB型の血漿は逆にAとBどちらの抗体も無い事から、緊急時の輸血にはO型の赤血球製剤、AB型の血漿製剤が投与されるんでしたっけ」
輸血と言うと採血した血液をそのまま投与する、医学用語で言う全血輸血をイメージしがちだけど、最近の医学では血液を遠心分離で赤血球や血漿などの成分毎に分けて製造する血液製剤――不要な成分を取り除いた輸血に適した状態の物――を使う、成分輸血が主流になっている。
まあ血液成分の内一つだけを輸血するなら、その成分だけ適合していれば良い訳で、拒絶反応のリスクを減らすなら当然と言えば当然な話。
「抗原抗体反応を引き起こさない組み合わせの血液、と言うのが一番良いんでしょうけど……。確か前世だとiPS細胞から血液を造る研究もされてたはずですし、本人の細胞から本人と同じ血液を造る様に、輸血される側と同じ血液型に変化する性質を持たせる方が早くて確実ですね?」
問題点と解決策をあれこれと考えている内に、ふと浮かんできたのは身も蓋もない話だけど、そもそも輸血する相手と同じ血液に変化させてしまえば良いと言う発想。
変化させる方法としては、血液をシュレディンガー状態にして、全ての血液型の可能性を同時に存在させ、輸血時に相手の血液型と同じ血液だった事に可能性を集束させる感じ。
この方法なら、物質として安定した状態の血液を別の血液型に変化させるよりは、変化にエネルギーを使わなくて済む。
「ぶどうを絞って得られる血液と同じ果汁はこれで良いとして、後は加熱などの加工をしたら造血作用のある美味しい食材になるようにするのと、メシア教へのトラップとしては【因果応報の
一番大事な部分が決まったところで、果肉や果汁は輸血可能な血液にする関係上、生食に向く性質とは言い難いため、何かしらの加工をすることで美味しくなる品種として調整。
それから脳缶ニキリスペクトの対メシア教としては、【因果応報の
具体的にはメシアンではまずクリア出来ず、人として頑張って生きていれば大きく外れる事も無い条件として、〝自立した意志を持つ
まあ流石に、条件からちょっとでも外れたら毒になるだと使い辛いため、条件から外れる程【悪因悪果の
「大体こんなところですかね。後は出来た種を植えて成長させて、収穫したぶどうが予定通りの性質になっているかの確認、それと思い浮かんだアイディア的に赤ワインも醸造してどうなるか調べましょうか。あ、ぶどうの品種名はバプテスマが創る切っ掛けになりましたし、サクラメント辺りが皮肉も効いて良いですかね」
脳缶ニキのバプテスマが切っ掛けとなれば、同じくバプテスマから醸造される赤ワインの〝喜劇〟の様に、今回新しく創り出したぶどうのサクラメントからも、ユーモア溢れる赤ワインを醸造せねば無作法と言う物。
一先ず実らせたサクラメントの収穫を行い、想定通りの性質が確認出来たらワイン造りの仕込みだけ終わらせて、農業部などに渡す資料の作成に取り掛かる。
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・サクラメント
ワイン用のぶどう品種から創りだした幻想植物で、血の様に赤いぶどう。
果実を絞ると血液と同じ成分の液体になるが、果汁の血液型は一種のシュレディンガー状態となっており、全ての血液型の可能性を保持しているため、輸血する際には投与先と同じ血液型だった事に確率が収束し、全血輸血を行う事が可能になる。
また、ドライフルーツなどに加工すれば造血作用の有る食品となるため、輸血作業が難しい場合の応急手当としても使う事が出来る。
生の果肉と果汁は、血液としての性質が強いため食用には向かないが、加工する事で鉄臭さが消えて果物としての甘味と香りが強くなる。
【因果応報の
なお、【因果応報の
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新しい加工用ぶどうの品種、サクラメントの大まかな説明はこんな感じとして、さっと乾燥させてドライフルーツにしたサクラメントを食べてみると、生の時に強かった鉄分の匂いは薄れてぶどうの甘い匂いが強くなり、トロっと絡み付く様な甘味と鉄分の渋味が合わさって旨味を創り出す。
食べた感じからすると、乾燥の工程に拘れば更に美味しくなるだろうと思わせるポテンシャルを感じるし、作業を進めてるワインへの期待も高まると言うもの。
「本格的なものは異界内で環境を整えてから醸造するとして、今回は時間加速も行っての試作品ですね」
拠点内に用意している工房の一つ、醸造関連で使っている設備の一角で、ドライフルーツにしたサクラメントの試食をしつつ、仕込みをしていた赤ワインの状況確認や工程を早めるための時間加速を行い、頃合いを見計らって熟成前に調べる分を取り分け、熟成による変化を見るために複数の素材で造った樽に分けて保存して行く。
まあ熟成の方は味の変化を見るためで、醸造した赤ワインの効能自体は大きく変化しないと思われるけども。
「よし、赤ワインになっても【因果応報の
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・赤ワイン〝聖杯〟
サクラメントから醸造した赤ワインで、血液としての性質を併せ持つ文字通りのブラッドワイン。
赤ワインを〝キリストの血〟と称する事から、正しく血液でもあるワインのため〝聖杯〟と命名された。
輸血にも使えはするが、アルコール成分も含むため飲用による造血作用がメイン。
また、血と酒の性質を併せ持つ事から、それぞれを用いる儀式などの触媒としては最上級の物。
なお【因果応報の
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出来たワインの性能としてはこんな感じで、品名には皮肉を込めて〝聖杯〟と命名してみた。
それと熟成させた方は、血液的な性質が影響してか生命樹で造った樽が一番味や香りが良く、性能自体も向上する様子。
とりあえず本格的に醸造する時用の大樽は用意するとして、出来たサクラメントと赤ワインをブラックマーケット用のカタログに追加して一区切り。
「突貫でしたけど、祭典の方も星大祭ブラックマーケットの方も品は出来上がりましたし、後は販売数に余裕を持たせられる程度まで量産に取り掛かりましょうかね」
なお、探求ネキは面白がって数パターン収録した模様。
体液吸収の過程で取り込まれたMAGは果実として結実するため、特殊なフォルマとして使用することも可能。
なお、血液に含まれるヘモグロビンに触れると樹皮が割れ、催淫効果と止血作用のある樹液が塗布されるため、万一の場合も出血死のような事故は起こらない。
触手の多様な動きを筋繊維で実現するのが難しい事から念動による動作を主軸にし、それを可能にするための霊的五感拡張術式を組み込んだ物。
触手のタイプは実体となる元を組み込む植物タイプと肉棒タイプ、マグネタイト成形による多様な形状が可能な霊体タイプの三種類が存在する。
ちなみに、使用者に伝わる感覚としては植物<肉棒<霊体の順に感覚が鋭く、鮮明になる。