【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
星大祭、年に一度夏季に行われる星霊神社の祭りであり、一般にはガイアグループの城下町、山梨は富士山の麓にある都市の一大イベントと認識されている。
まあ規模は大きくても一般的には歴史が有る訳でも無いため、日本三大祭りに並ぶ程とはまだまだ言えないのは悔しいところだろうか。
いずれは三大祭りに名を連ねるほどになるのでは? とも言われているけど、今年中に来る終末の日以降の世界で、そもそも日本と言う枠組みが残っているかも不明な訳で……。
「世間的な星大祭の評判とか、終末後も祭りを出来るかとか、今考えていても仕方ないですかねぇ」
「気分を盛り上げてとは言わないけど、普通に雑談する感じなのもそれはそれでどうかな……って思うんですが?」
「いやいや、恵利香は私の性癖知っているでしょう? 雑談するぐらいの気持ちで抑えてないと色々と大変ですよ? 主に恵利香が」
「…………それもそうですね」
次の土日から星大祭の期間が始まると言う事で、各所で最後の追い込みをしている
ちなみに、本名
当時はまだ【木分身の術】を開発する前で、分身式神の私だと授乳は出来ないため、覚醒により母乳体質に変わった事の相談で、スケベ部に来ていた新人のエフィネキに支援も兼ねて、と言うのが依頼した経緯。
まあその頃の恵利香は中学生だったため、基本的には土日や祝日にバイトとして家に来て貰い、授乳の合間を使って琴音や綴に初歩の指導をして貰ったり、去年一気に子供が増えた時も、乳母として手助けして貰っていたのも有って、付き合いの長さ的にも互いの感情的にも割と深い関係だったりする。
「それにしても、レベルアップ毎に搾乳に掛かる時間がどんどん増えてるみたいですし、そろそろ何とかしないといけませんよ?」
「う゛っ、結構気持ち良いので搾乳自体は良いんですけど、毎回一時間近く掛かる様になったのは確かに……」
「時間掛かるからと搾乳しなかったら、それはそれで乳腺炎とかを発症する危険性もありますしねぇ。やっぱり時間加速の結界を張る道具渡しましょうか?」
「この全自動搾乳機*1も含めて色々と貰っちゃってますし、これ以上は流石に……っと、ふぅ、終わりました」
「一回で六十リットルを超えましたか。確かホルスタイン一頭の一日に出すミルク量が、平均二十から三十リットルですから一度に牛二頭分以上ですね。ん、甘味もコクもいつも通りとても美味しいですし、栄養は確り取れてるみたいですね」
「アハハ、【食没】習得出来てなければ、一日中常に何か食べてないといけなくなってましたよね……」
搾り終わった恵利香の母乳をグラスに注いでテイスティング、軽く揺らすと匂い立つほどの芳しいミルクの香りが漂い、一口含めばサラリとした舌触りだけど、まろやかなコクと心に染み渡る様な甘味が口一杯に広がる。
ちなみに母乳の味ってのは、体調や精神状態の変化などでも影響が出るため、母親の食生活や生活習慣などにより体調や精神状態が悪化していると、赤子が母乳を飲まなくなるので注意が必要だったりする。
つまり美味しい母乳だったと言う事は、恵利香の体調もそれだけ良いと言う事で、一時期みたいな栄養不足状態による体調不良が起きていない様子だし、その辺は一安心。
なお、母乳体質に関する問題が出たのは半終末に突入して少しした頃の事で、半終末前の恵利香は技術習得をメインに、レベルは必要な分を都度上げる感じで鍛練していて、私と琴音が手助けしてたと言ってもその頃のレベルは20ぐらいと、一般的な黒札としてもそこそこには強いと言った感じの立ち位置だった。
ある意味で私と琴音が庇護者になってた訳だから、そのままゆっくり鍛練するだけでも良かった話では有るんだけど、何度か地方依頼を受けたりした結果なのか、自衛能力の必要性も考えて一気にレベルを上げる事にして、レベル30の壁を超えて超人の域に至ったところ、それまでのレベル上昇による増加量を超えて母乳の量が一気に増えた上、異常な空腹感を覚える様になり、栄養バランスを考えた食事をどれだけ取っても、栄養失調の症状が現れる様になったと言うのが問題の経緯。
その際に覚醒して変化した恵利香の体質を医療班で検査して判明した事だけど、恵利香の母乳が出る体質は乳汁漏出症の様な、ホルモンバランスの変化による影響だけでは無く、超人の領域まで
どうやら、しょっぱい氷の塊を舐めて成長した【アウズンブラ】から四本の川になる程の乳が流れ出し、その乳が原初の巨人である【ユミル】を養ったとの伝承から、凍った塩水以外からの栄養吸収能力が極端に落ちていて、その上凍った塩水だけで人体を維持する栄養が補える訳も無く、【食没】を習得するまでは吸収効率の高い食材を常に食べ続ける必要が有るほどの事態になっていた。
まあ習得した後は摂取した栄養を一度マグネタイトとして体内に蓄える事で、間接的に必要な栄養を補給出来る様になったため、一日一回でも凍った塩水を舐めていれば普通に生活出来る様になった訳だけども。
「【食没】習得して十分な栄養を取れる様になったら、母乳の量も味も更に上がりましたけどね」
「私としては体調が戻った途端に、瑞樹さんに吸い尽くされるとは思いませんでしたけど」
「心配が解消されたのもそうですけど、とても美味しく感じたのですから仕方無いですね!」
「いやまあ瑞樹さんが喜んでくれるなら、それはそれで良いんですが……。兎も角、今日の本題に入りましょう!」
「今後も搾乳量はどんどん増える一方ですし、新商品開発して消費量も増やしたいところですね。まあエフィネキのミルクってだけで、購入する黒札は大量に湧いてる訳ですが」
「最初はちょっと恥ずかしかったですけどね……」
そう言って照れ笑いの表情を浮かべる恵利香は実に可愛らしく、リビドーが高まるのを感じるけど、今はその時では無いので霊力操作で鎮めておく。
私のバベル事情は兎も角、ガイア連合内ではエルフレダ名義でミルクを販売して、毎日大量に採れるミルクの処理と資金稼ぎをしている訳だけど、美味しいミルクとは言え母乳を購入する事に躊躇する人は普通に多く、時間停止の容器に保存しているとは言っても在庫は貯まる一方。
そんな訳で一部はチーズやバターなどの乳製品に加工したり、洋菓子系の材料として使ったりして、消費量を増やそうとしているのが最近の事で、今日こうしてスケベ部の一室に集まったのも、星大祭の区画として用意されている霊能関係向け屋台区画に、出店する屋台の商品開発と用意のため。
なお、性癖や趣味などに特化したアングラ系が集まるブラックマーケットは、スケベ部を始めとした趣味人な黒札が勝手に異界を用意した裏側な事に対して、屋台区画は祭りの運営側も関わる霊能関連の表側で、縁日の屋台的に霊能関係のあれこれを使った料理だったり、各種遊戯屋台なんかも出ている比較的健全な方の催し物。
まあ他にもオカルト系の催し物も色々有ったりするけど、今は屋台区画に出店する予定の、恵利香の屋台で売りに出す物について意識を戻そう。
「それで、今回は星大祭の表側で屋台をするって事ですけど、いつもの様にブラックマーケットじゃなくて良いんです?」
「ブラックマーケットの方だと販売数が伸びないんですよ。客層もいつも同じですし、まずは認知度を上げるのが必要だと思った感じです。運営には微妙な顔されましたけど……」
「乳製品と言えば同じですけど、母乳ってだけでいかがわしく感じる人は居ますよねぇ。まあそう感じる人って大概、授乳期の大変さとかを知らない、母乳=エッチなプレイみたいな偏見を持ってるむっつりスケベですが」
「そう言う瑞樹さんは直接吸いたがるし、いかがわしい人じゃ無いんですか? まあ私も母乳が出る様になってから、毎日全部出さないと乳腺炎って言う炎症の病気になり易いの知りましたけど」
「エッチな事はそれとして好きですが、母乳自体はミルクの一種として料理人的に見てますよ。基本的に牛乳とかより甘味が強いですから、例えば生クリームを作る際のミルクに加えると、割合を調整すれば砂糖を使わない優しい甘さを出せて良いですし」
なお真面目な話として、乳房内にミルクがうっ滞*2する事で発症するうっ滞性乳腺炎、それから母乳に限らずミルクってのは栄養価が高い訳で、ミルクがうっ滞していると細菌が感染して繁殖する温床になり、化膿性乳腺炎と言う病気に進行する場合もある。
赤子への授乳だけでうっ滞が解消されるなら良いけど、ミルクの量が多い人ってのも居るし、体調によってはミルクの味(成分)が変化して赤子が授乳を拒否する場合もあり、そう言う時は搾乳して捨てるなんて事もしないといけなくなる。
本来なら赤子に与える物を捨てるってだけで文句を言う人も居るけど、現在の日本には母乳バンクなんて無いし、前世でも日本で設立され始めたのは2013年以降の事。
乳腺炎になってしまうとそれこそ授乳にも影響するため、予防としての搾乳は体調管理のためにも必要だし、搾乳した分を後で赤子に飲ませたら、その分だけ乳房にうっ滞して本末転倒になる話。
まあ結局のところ、何をしても文句を言う人は居るし捨てるのが勿体ないなら、有効活用しようって事で食材として使っている訳ですね。
「ともあれ、どう捉えるかは個人の問題として、表側(霊能関係)の屋台として販売するなら、喧伝はしなくても母乳を使ってる事自体は隠さず説明する必要が有りますよね」
「先に知ってても騒ぎ立てますけど、後から知ると余計に、ですもんね。生産者表示はいかがわしく思われそうですから、使用している素材の説明に留めるとして、売り子は簡易式神にでも任せた方が良いですかね?」
「性別を感じさせない様に、一反木綿とかデッサン人形みたいな式神を用意しましょうか」
「それじゃ後は売る物ですけど、屋台と言っても市場的な側面も有るみたいですし、保存の利くタイプのチーズは何種類か入れるとして、後は夏場に持ち歩いても大丈夫でお土産にも出来る物として、焼き菓子系は用意したいところです」
「屋台らしいその場で調理するタイプのは敢えて切ります? 興味を惹くのが目的なら香りで誘うのは常套手段ですが」
「パッと思い付くのがクレープぐらいなんですけど、クレープの屋台って確認したら結構出店するみたいで……」
「ある意味で差別化は出来てますが、他にクレープ屋が幾つも有るとなると倦厭される可能性も高いですか。興味を惹いて理解して貰うのが目的ですから、他と被らない方が良いのは確かですねぇ」
「ですね。出来るなら調理してその場でってのもやりたいですけど、なかなかこれって思うのが思い付かなくて……」
「焼き菓子系のをその場でってのも良いですけど、クレープとかの屋台向きの料理に比べれば調理工程が地味ですし、誘引力は落ちますよね。……ふむ、多分にネタ的ですけど、屋台的なインパクトもそこそこ有る料理を一つ思い付きました」
「えっ? 言ってて何ですけど、乳製品を使って早々被らない料理とかって有ります?」
「黒札だとネタ関係で、まず屋台とかでやろうとは思わないのが実はあるんですよ。
「キュケオーン……ですか?」
料理名に聞き覚えが無いのか首を傾げているが、キュケオーンと言うのは古代ギリシアで行われていた【女神デメテル】と【女神ペルセポネ】崇拝の儀式、エレウシスの秘儀で作られる断食の後に飲む飲料の事。
まあ秘儀と言われるだけあって、儀式で使われるキュケオーンの具体的なレシピは残っていないため、一部の黒札を除いて日本での認知度が低いのも当然と言えば当然の話。
一応キュケオーンの語源から〝かき混ぜて濃くする、混ぜ合わせる〟と言った意味で有る事、それと伝承に置ける描写から、大麦の挽き割り粉とミントなどを調合する半液体状の飲み物、所謂大麦粥の様な料理とされている物。
「――っと、こんな感じの料理ですね。黒札の間では前世の一部ゲーム関連で扱われたネタの影響で、微妙な扱いをされてますが」
「そんな料理もあるんですね……あれ? でも今の話だとミルクを使った料理って訳では無いみたいですけど?」
「キュケオーンに使う材料って、伝承上の描写でも色々とあって、煮込む時に水を使う場合も有ればワインを使う場合も有りますし、山羊のチーズを摺り下ろして加えたり蜂蜜を入れたり、魔法のポーションを入れるなんてのもあったりします。まあ実際のところを当の悪魔に聞いた限りだと、特定の料理名と言うよりは大麦を粥の様に煮込んだ物をベースに、色々とアレンジする料理の総称、と言うのが正しいみたいですね*3」
「しれっと失われているはずのレシピを聞き出してるのは横に置いておきますが、そのアレンジ部分にミルクを使う感じですか」
「基本的にはそんな感じを想定してますね。単純に消化吸収に良い料理ってのも良いですし、ミント意外にもハーブやスパイスを入れて霊薬方向にするのも面白そうですし」
「色々出来そうですが、まずは消化吸収に良い美味しい物を目指したいです。アレンジするなら確りとしたベースが必要ですから!」
そんな訳で、まずは基本となる味を目指して、恵利香の母乳を材料に加えたキュケオーン作りに取り掛かる。
使う大麦は、収量の多さから主食用に栽培される六条オオムギを、皮ごと美味しく食べられる霊草として、品種改良して創り出した〝六霊大麦〟*4。
ちなみに大麦は、元々皮と実が糊状のもので固着していて剥がすのが難しい穀物で、突然変異により揉むだけで簡単に皮が剥がれるハダカムギと呼ばれる品種が生まれ、現在の食用として主に使われるのはハダカムギの方だけど、単純に霊草化してしまえばそれで十分なハダカムギでは、改造のし甲斐が無いって事で、六条オオムギがベースになった経緯があったりする。
まあそれは兎も角、ガイア連合農業部でも栽培していて、購買部での購入も可能な六霊大麦をいくつかのパターンに分けて用意する。
「大麦は出来上がりの食感を比較するために、乾燥状態そのままと半分ぐらいまで挽き割りにした物、それから全粒粉にした物の三種類に分けて煮込む事にして、後は同じパターンだけど焙煎した場合の変化も見てみましょうか」
「煮込む時に使う水は星祭神社の星の水*5で良いんですよね?」
「汲みに行けるなら安価で最良の水の一つですからね。後はある程度水分が飛んで消化しやすい感じまで煮込んだら、一旦冷やしてからミルクを投入して、弱火で味を馴染ませればとりあえずオッケーですね」
「ミントの方はどうしましょう? キュケオーンの話的に飾り付けに乗せると言うより、ハーブとして確り食べる感じっぽい気がしますけど……」
「それなら葉っぱをチラしてみる分を先に取り分けて、残った方にミントの葉を加えて加熱してみましょうか」
と言う事で、大麦の挽き具合や焙煎の状態別に六種類と、ミントを乗せるだけか加えて一煮立ちさせるかの二種を合わせて、十二種類のキュケオーン候補が出来上がる。
「大麦の粒が残っている物は食感が楽しいですけど、食べるのにスプーンは欲しくなりますし、飲み物より食事って感じが強いですね」
「恵利香の母乳の甘味も合わさって、どれも甘いミルク粥って感じで美味しいですが、屋台で出すならストロー付きで挽き割りにした物の方が良さそうですね。ミントも葉っぱとして残ってるより、いっそ擂り潰して混ぜ込んでしまうのも良いかもですねぇ」
「夏の炎天下ですから、ミント風味で甘くて冷たい飲み物の方が喜ばれそうですよね」
「それならいっそ、大麦を麦芽にして砂糖を使わない甘さで押してみましょうか」
それぞれ試食してみた感想としては、食事として満足感があるのは粒そのままで煮込んだパターンの物で、焙煎による香ばしさは好みの範疇だろうけど、食事としてはそのままで飲み物なら焙煎している方が私としては好みだろうか。
飲み物としては全粒粉の物が飲みやすいけど、ちょっとした食感も楽しみたいなら粗めに挽き割りするのも良いだろうから、この辺は追加する素材との兼ね合いで決めるのが良さそうなところ。
一先ず各材料の分量や工程毎に掛けた時間などもまとめたレシピに、互いの感想とかを書き出してデータをまとめ終わったら、甘くて冷たい飲み物としての方向性で次の試作に取り掛かる。
まずは時間加速を使って、六霊大麦の発芽と乾燥まで行って麦芽を作成、続いて麦芽を焙煎して風味と香りを立たせたら、直ぐに製粉して星の水を加え軽く煮込む。
焦げ付かない様にかき混ぜながら加熱して、トロみが出て来た所でミルクを投入し、軽くふつふつとするぐらいまで一度温度を上げたら火から下ろす。
加熱作業が終わったところで、余熱が残っている内に擂り潰したミントを加え、かき混ぜて馴染ませながら冷まし、粗熱が取れたら撹拌を止めて、冷蔵庫なり【ブフ】などの氷結系術式で更に冷やせば、冷製キュケオーン(ドリンク)の完成。
「ふむふむ、大麦を麦芽にする工程を加えただけですが、冷やしても確りと甘味を感じられますし、ベースとしてだけで無くこのままでも売りになれそうですね」
「冷やす前のも少し飲みましたけど、温かいと逆に感じる甘さが強くて飲みにくい気がしますね……」
「冬とかにホットで提供する場合は、ワインや水で割って甘味を抑える感じになりますかね? まあ今は星大祭で売り出す分ですから、ホットの場合にどうするかはまたその時になって考えましょう」
「そうですね。じゃあ今回作ったレシピはプレーンとして売る分にするとして、どんなアレンジを加えましょうか」
「その辺は屋台を出す恵利香がメインに考えるべきですし、その間にプレーンの霊薬効果を調べておきますね」
「あ! 確かにそれも必要でした。瑞樹さんお願いします」
売りに出すキュケオーンの基本形が出来た所で、味のバリエーションを作るは恵利香に任せ、霊薬としての効能解析に取り掛かる。
まあ使用している材料が材料だけに、意図して術式を込めたりしなくても色々と効果を持った霊薬になるし、エレウシスの秘儀だったり魔女キルケーの逸話だったりと、概念が積み重なる下地の有る料理な訳で……。
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・冷たいミルクのキュケオーン
麦芽にした六霊大麦を星の水で煮込み、母乳と摺り下ろしたミントを加えて混ぜ合わせ冷やした飲み物で、焙煎した麦芽の香ばしさとミルクの柔らかな香り、後味をさっぱりとさせるミントの風味が融合し、麦芽とミルク由来の甘さが重奏を奏でる一品。
絶食状態でも負担無く栄養補給出来るぐらいに消化吸収に優れ、胃腸の機能を整えたり消化不良などの諸症状を和らげる効能を持つ。
効果:飢餓状態の回復、体力と霊力の回復力向上(中)・耐暑(小)を付与(一時間)
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いつも作ってる購買部など向けの商品概要としたらこんな感じで、断食の終わりに飲む事からだろう飢餓状態を回復する効果と、食事バフ的な一定時間付与される効果が確認出来た。
「ある意味納得と言えば納得出来る効果ですかね。想定より若干質が高い様にも思えますが……ああなるほど、意識はしてませんでしたが、
「えっ!? 生贄ですか??」
「生贄と言っても別に命を取る必要は無いですからね。まあ生命の根源として認識されている血液を使う関係で、命を奪う連中も多いですが」
「鶏の生き血と使うとか、黒魔術的なイメージでありますよね」
「色々な認識と概念の積み重ねも有りますし、マグネタイトが多く含まれているってのもありますからねぇ」
とは言え、血液にマグネタイトが多く含まれているのも、生贄だとかに使われた歴史が認識と概念を強化した結果なのか、元からそうだったから使われる様になったのかは、検証の方法も無いので置いておくとして、血液が生命の根源と認識されていて、生贄の供物として使われているのがポイント。
「まあ私的には、血液が生命の根源として使えるなら、血液から生成されて赤子を育てる母乳も、命を育むと言う点から血液と同等かそれ以上に生命の根源と言えるのでは? と思ったりする訳なんですよね。試して見たら割と、血液の代わりにミルクで代用可能だったりしましたし」
「えっ……そうなんですか?」
「血の契約みたいな、本人の血液自体が必要な場合は流石に無理でしたけど、生命の触媒として血液を使う場合は、ミルクでも同等以上の結果に成りましたから、生命系統の触媒としてのポテンシャルは高いですよ」
まあ今回のキュケオーン作りの時に、生命の触媒として扱いながら作ってた訳では無いし、恵利香との共同作業だった事も有って、影響していたとしても誤差の範囲ぐらいだろうとは思うんだけど、生贄関係でもう一つ、私の中で思い当たる仮説が有ったりする。
「後は、生贄の事をスケープゴートと言ったりもしますが、作業に入る前にも話していた様に、伝承の中で使われたキュケオーンの素材に山羊のチーズもありますし、この辺が連想ゲームして影響が重複した可能性もありますね。一つ一つの影響は誤差範囲でも、複数重なれば有意な差が出る事は考えられる事ですし」
「スケープゴートで山羊の連想はわかりますけど、山羊のチーズは使ってませんよね? 流石に乳製品繋がりの連想だと弱い気がしますが……」
「確証がある様な仮説では無いですが、連想の元は山羊の方ですね。スケープゴートと言うのは一神教の聖書由来の言葉で、元々の意味としては旧約聖書のレビ記16章で規定されるユダヤ教の祭日、贖罪の日と呼ばれる日に人々の苦難や行ってきた罪を背負わせて荒野に放った山羊の事です」
ちなみにだけど、ユダヤ教にはメシアが来臨して人々を救うとの預言から、メシア思想があったりする上に、出自や血縁よりも神の下僕となり神との契約を守るならユダヤ教徒になれ、反対に代々続くユダヤ教徒でも偶像崇拝などの罪を犯せば教徒では無くなるらしく、メシア教が出来上がる下地は、一神教系列の最初から存在していたとわかる話。
「ユダヤ教はそれを信仰する者をユダヤ人と呼び、唯一神を讃える者だけが救われると言う選民思想を含む宗教で、教徒としての行動が重視される事も多い関係から、信仰に反する行動をした者は神の祝福から漏れる――つまりはユダヤ人では無くなるとする事も有ります。*6で、前置きが長くなりましたが、スケープゴートの言葉が生まれた紀元前当時の生活環境で、食肉にもなる山羊を荒野に放つなんて事を本当にしていたのか? と言う疑問が浮かんだ訳ですね」
「ゴートって言ってますし、山羊を生贄にしていたのは事実では?」
「言葉として残っている以上、始めは山羊を使っていたのは事実としてあるとは思いますが、時代が進んで新約聖書のマタイによる福音書25章にある〝羊と山羊のたとえ〟において、善行を積んだ人々を羊、善行を積まなかった、或いは悪行を積んだ人々を山羊との比喩表現をしていて、今でも一神教では迷える子羊なんて表現をしたりしますが、逆の見方をすれば羊は信者、山羊は背信者や罪人の隠語と考える事も出来る訳ですね」
「えっと、つまりは山羊と言う事にした罪人を生贄にした?」
「古代ギリシアの方では、スケープゴートと同じ意味合いのパルマコスと言う言葉がありまして、こっちはより直接的に共同体の中から外れた者を生贄として、罪や汚れを押しつけて石打ちしたり、国外追放する呪術的な儀式が行われていたとの事ですね。欧州圏は神話伝承が互いに影響し合う割合が大きいですから、スケープゴートやパルマコスも同様と考えるのは、そこまで突拍子も無い話ではないと思うところですね。まあ山羊と言う事にした罪人の女性を性処理の道具にした、ぐらいの事は普通に有っただろうとは思いますが、流石に山羊代わりの家畜として管理して、母乳を絞ってチーズなどを作ってたとかまで行くと、発想が飛躍し過ぎかもですけどね」
突飛な発想とは思いもするけど、現実的にメシア教では人間牧場とか作られてる訳で、一神教系列の始まりに当たる地域な上に古代の環境と考えると、現代よりは覚醒者も居ただろう事を踏まえると、無いと言い切るのも難しい感じのするところ。
「ともあれ、欧州圏では山羊のミルクも一般的に利用されていますが、山羊をそう言った女性の隠語として扱った可能性も一応は理屈として通る訳ですから、先に話した母乳を生命の根源とする見立ても合わされば、微弱でも生贄としての概念が蓄積して、効能を押し上げる結果になったと推測される感じですね」
「それで生贄の概念って事ですか……」
「生贄を強要するのは私も嫌いですから、不要なら今後作る際には気を付けて弾けば良いですよ。使える物は使って効果を上げるなら、意識して霊力を込めながら作れば良いですからね」
「うーん、生贄と言われると微妙な気持ちになりますけど、効果が上がるのは良い事ですし……」
「まあ色々とフレーバー作りながら考えていきましょうか」
「それもそうですね」
そんな訳で、調べた結果ちょっと微妙な空気になったりもしたけど、星大祭に向けた恵利香の準備も順調に進み、最終的には使える物は使う事に決めた様で、販売する冷たいミルクのキュケオーンの基本的な効果は、飢餓状態の回復に、食事バフとして二時間の間体力と霊力の回復力を大向上し、耐暑能力を小上昇させる付与効果を持つ飲み物となり、追加フレーバーとして集中力向上のチョコミルク味や睡眠耐性上昇のカフェオレ味など、いくつもの商品が出来上がって、屋台側として売る分には問題無い状況に漕ぎ着けた。
後は実際に屋台を見たお客さんがどう考えるかと言うところだけど、こればかりは個々人の問題なため何とも言えないところだけど、商品開発に関わった者として、何より友人として上手く行く事を願うばかりですね。
・エフィネキ
ロッテのおもちゃ! に登場する
身長は165cmとそこそこ有り、スリーサイズはエルフレダと同じく113-63-91のOカップ(トップとアンダーの差が45cm)。
本霊は北欧神話に登場する最初の牛である【アウズンブラ】で、覚醒と同時に母乳の出る体質に変化した事から、スケベ部に所属する事になった。
霊能の傾向はヒーラー兼バッファのため、戦闘では式神に前衛やアタッカーを任せるタイプで、現在のレベルは43。
レベルの上昇に伴いより美味しく栄養満点な母乳が出る様になったのは嬉しいが、母乳の量もレベルに比例して増える事が最近の悩み。
なお、スケベ部での商品販売などをしているため、基本的には山梨支部で生活しているが、偶に蓬莱島へ泊まりに来る百合の園の一員である。
専用式神は同じくロッテのおもちゃ! からグリゼルダ・レギンハルド。