【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
思い付きで品種改良やらしていたら、追加で壺中天地をもう一つ作るはめになったけどそれも終わり、その間に霊木として確り育った素材樹木も十分な量を確保できたので、ようやく元々の目的だった楽器製作に取りかかることにする。
それで、どんな楽器を作るのかって話だけど、弁才天とかそっち方面の権能というか能力を肖って使ってる事を考えるなら、楽器として最適なのは琵琶なんだろうけど、今の私には大きすぎるのと封神の方で石琵琶のキャラがいるから、なら別の楽器でもと思って思い付いたのが三味線だった。
まあこれも決して小さくはないんだけど、琵琶よりは胴体部分に細工して音を大きくしたりとか、色々仕込めるかなって思い付きもあり、材木がある程度確保出来始めた頃から少しずつ作成練習を続けていたんだけど、今日はついに本番の作成を始めようって訳である。
実際の所、当初予定していた木材はだいぶ前に用意できていて、いくつか完成まで行ってはいるんだけど、元々オカルト方面とは関係ない現実的に良い三味線の素材としての樹木を霊木として育てただけで、霊的装備として見るなら、今回作る予定の木材を使った方が能力の高い装備に成りそうって事で、作り直すと言うのが正しかったり。
「品種改良の中で偶然出来てしまった〝あらゆる果物が実る大樹〟とか言う樹木だけど、素材としてみるなら神主も驚くぐらいには性能が高いみたいなんだよね」
「何やら凄い樹木なのは分かるのだが、新しい方の壺中天地や品種改良実験用の方にも雑に生えてるから、正直有り難みなど欠片も無いがな」
「そりゃあの大樹が生えてるだけで周辺の植物生育速度上昇とか品質向上とかするからね。効果範囲が被らない程度に離して植えまくったよね」
まあそう言った訳で生命力の高い樹木ってのも在るし、様々な
そんなわけで、用意した木材を切ったり削ったりして三味線としての形に整え、胴体の内側には五行の術式付与による循環、棹の表側に陽、裏側に陰の術式を付与して陰陽の循環を作り、三味線の胴体内部で陰陽五行の循環と増幅を成立させ、演奏に合わせて増幅した属性による魔法攻撃を可能にする。
また、アーサー王伝説というか某運命で騎士トリスタンが持つフェイルノートのイメージで、〝無駄なしの弓と証されるのは弾いた弦の音が聞こえた相手を対象に、
「やっぱり属性の増幅はこっちの方が良いですね。音による物理属性攻撃の方も多少は威力上がってますし、この〝七曜*1〟がメイン装備で良さそうです。まあより上位の魔法が使える様になったらバージョンアップしていきましょう」
「結果的にだが試作品に成ってしまった三味線はどうする?」
「一応技術部と運営陣に渡しておきましょうか、もしかしたら何かに使うかも知れませんし」
と言うわけで、練習作や一つ前の完成品など、いくつか実用可能なレベルの三味線を技術部と運営陣の販売網に載せておく事に、まあ最悪ガチャの景品にでもするだろうと言う事で装備作成関連が一段落付いた後、最初に作った装備のレポートなどの資料や報告書を貰い、ショタおじ謹製の専用装備が渡されて以降の話が聞こえてこないスライムニキについて、今や同じペルソナ使いとなった事もありふと気になって序でに聞いてみたところ、明後日辺りに何やら相談があるとかで山梨支部の方へ来るのだとか。
「スライムニキが相談事ですか……、最初期頃に仲間用装備の購入申請来た時、技術部が相手側の性別とか考えずに、とりあえず一番良い装備として女性型式神用装備を送った事関連ですかね?報告書貰った時に聞いたら相手の方男性らしいですし」
「それは……、男に女性物を着せるのは色々問題が出ないのか?」
「霊的装備ですからね、未覚醒者なら確実に、覚醒者でも
「それはそれで問題な気もするが、いや装備が馴染むと言うのなら悪くはないのか?」
「後、報告書を貰った際の技術部の反応的に、スライムニキを女装沼に落として男の娘に仕立て上げようと画策している一派がいたらしいですが」
「瑞樹を前に言うのも何だが、技術部は頭がおかしいのか?」
「偏見混じりですが技術者の過半数はそんなもんだと思いますよ?私を含めて。まあその一派は援助物資として選ばれる様、その時点で最高性能の女性装備作ってたのでまだ健全な方でしょう。報告書を読む限りだと、スライムニキが女装するとシャドウを惹きつけてしまうみたいなのでお蔵入りになりましたが」
「私は会った事がないので分からないが、そんなに魅力的な人物なのか?」
「見た目は多少女性的な感じも有りますが、本人としては快闊で太陽の様な温かさを感じる男性ですね。シャドウってそのまま影で陰の属性ですからね、太陽の様な輝きを放つ男性で女性という属性盛り状態ならシャドウホイホイにも成りますよね。それで本人に戦闘能力があれば良いんですけど、適性
「文官が戦場に出なければならない事態ということか、それは確かに出来る限りの援助をするのも頷ける」
「私もペルソナ使いになりましたし、スライムニキの相談に立ち会える様お願いしてみますか」
ペルソナだしショタおじ案件だろうと判断して確認してみたところ、元々声を掛ける予定だったとの事なので参加することにして翌々日、相談はスライムニキの切実な願い*2から始まった。
「――っと、そんな感じで能力の方向性が真逆なため、一緒のチームを組むと能力が発揮出来ない事から分割する案がでた訳でして、マヨナカテレビの被害状況拡大に対処するには手数が必要な事もあり、俺とは別のパーティで攻略する事になるんですけど、大事な仲間なんです!だから俺のパーティ外になるけど!何とか装備やアイテムを融資していただけないでしょうか!!」
話によると、ショタおじ謹製の装備が完成した後しばらくの間は、多少時間は掛かっても何とか解決していけてたらしいんだけど、どういった理由かはまだ不明だけどマヨナカテレビの発生範囲が広がったのか被害者が急増したため、スライムニキの調査分析して攻略する手法では追いつかなくなってきたとの事。
そんな中で以前にシャドウ異界から救出した一人がペルソナ能力に目覚めていたらしく、協力を申し出てくれたから一緒のパーティで攻略する様になったまでは良かったんだけど、斥候偵察型のスライムニキパーティと、学校の後輩でもあるらしいその人物のデコイ&正面突破な能力資質が致命的に合わないのが問題点。
結果的に単騎でもある程度戦える後輩氏が別パーティで攻略する案が出た事から、せめて無事に戻ってこれるように装備やアイテムだけでも何とかしたい、と言うのがスライムニキが土下座してまで頼みに来た相談事だったらしい。
「う~~ん、また中々に厳しい事言ってくれるよねぇ?可能不可能で言えば普通に可能だし、ペルソナ使いの希少性を考えるとやってあげたい気持ちはあるんだけどね……」
「とは言えど、〝同じ霊能力者だから〟や〝地元を守るため〟と言う理由だけで渡せるほどに霊能装備は安くないのがな。序でに言うなら同様の理由で他の俺らに要望出されて捌ける程に数もない。それ故、転生者仲間同士やギリギリの範囲として、固定パーティメンバーまでぐらいなら融通するという落としどころにしている訳だが」
そう言って何とも決まりの悪そうな表情を浮かべるギルニキ、どうやら別件で来ていたらしいんだけど、相談の日取りを占術でこの日に決めたのがショタおじだったという事で、何かあるだろうと参加したそうな。
「でもスライムニキが分析して集めてくれるペルソナやシャドウの統計データはとても貴重だからね。ガイア連合として仲間内の過度な贔屓は禁止って事に決まったけど、情報の対価という面だけで見ても彼の要望は出来るだけ叶えてあげるべきだと思うよ」
「俺ら技術部としても興味あるからな、俺達転生者じゃない現地ペルソナ使いの詳しいデータや適正装備とか!つーわけで、多少強引な理由でも許可を出すべきだと思うぜ」
「現時点で判明してるだけで〝マヨナカテレビ〟と〝タルタロス〟、元々発生するだろうと予想している〝メメントス〟のことも考えると、ガイア連合員のみでは対処出来ない物量に対して、外部協力者の支援と運用による対処方法の模索、とでもしたら理由になりますかね?文句が出てくる様ならペルソナ覚醒用の修行を受けて頂いて、自分たちで対処に当たって頂く事を対案にしたら基本黙るでしょうし」
「であるな。嘴だけ突っ込んでくる連中には、代わりに矢面に立ちたいか聞けば賛同に回るだろう。そもそも〝俺ら〟で矢面に立ちたがる方が珍しいからな」
それでまあカヲルニキやエドニキが言った様に、ガイア連合というか運営陣側としては今後のGP上昇や終末に向けての対策を考えた場合、連合員のみでの対処はどう考えても無理ってのは意見が一致している訳で、その上でガイア連合というか〝俺ら〟の総意として〝終末後も出来るだけ現代文明の恩恵を維持して楽しく暮らしたい〟という思いがあるのも事実。
となると必要になってくるのは、〝現代文明を維持するために必要な人員及び環境〟であり、そうなると様々な物資・素材を確保する一次産業、素材を加工する二次産業に従事する人員と、それらを悪魔など終末環境から守る人員とが必要になって――と、更に人員が必要になってくるわけでる。
そう言った理由があってギルニキを筆頭に財界ニキや政界ニキがショタおじと連携してガイア連合山梨支部を大本に、ガイア連合グループみたいな組織化を進めていたりするわけで、今回のスライムニキからの要望も実はその辺と絡めると、良い試金石になりそうと言う思惑も多分有るんだろう。
「と言うわけで、スライムニキの要望を叶える事自体は問題ない、と言う結論に落ち着きました。その代わりに、スライムニキにはその後輩氏と協力及び制御してのシャドウやマヨナカテレビ関連の調査、探索情報を定期的に報告し続ける義務が発生しますので、その点はお願いしますね。具体的には――」
それから色々話して条件を詰めて、運営陣代表としてちひろさんが細々とした説明をスライムニキに行っていく。
「足りない建物や人員はこちらで用意して置くからな。時間が足りないや場所がない等の言い訳はできんぞ?当然それらの管理責任者はスライムニキになる故、覚悟する事だな!」
台詞内容こそ厳しい文面だけど、実に楽しそうに笑顔で宣うギルニキを見るに、懸案事項の一つに適任者が現れたと大喜びなのだろう。
「とりあえず、建築祝いに僕から回復能力持ちで拠点防衛用の式神もプレゼントするから。存分に役立てて、きっちり功績立ててくれよな!」
「もちろん!融資してくれた恩を返すだけの働き、きっちりとやり遂げて見せます!」
そうしてスライムニキの地元にガイア連合の今後に向けた試金石として、派出所が設けられる事が決まり、手始めという事で表面上はカプセルホテル付き銭湯、地下に各種霊能用設備を備えた箱が用意される事になった。
「神主からのお届け物と、それに合わせて派出所の設備を完成させに来ましたよ」
「おお、探求ネキいらっしゃい」
「ちょっと待て響、そっちの女の子が言ってた連合の人なのか?そちらの女性じゃなく?」
「私は瑞樹の式神で久遠と言う。よろしく頼む」
「え、式神?響先輩本当の話です?」
「間違い無く探求ネキの式神だよ。まあとりあえず事務室の方に行こう」
相談を受けてからまず行われたのは提供する装備の作成、まあ最初は貸し出しでシャドウ異界から持ち帰った物の買い取り金額で装備を買い取る事も可能ってところだけど、そうして装備を整えたのが功を奏したようで新しい仲間もそれぞれ増えたそうな。
そして今回派出所となる場所の確保が出来たとの事で、表面上の稼働準備とは別に本来の目的である霊的拠点としての構築をするため、私の修行を兼ねてやって来たと言うわけである。
まあ現地に到着してスライムニキのパーティメンバーとも顔合わせした際に、色々と驚かれたのは然もあらんってとこかな、こっちも色々驚いたけど、主にスライムニキのパーティメンバー二人が女装男子って所とか。
「さて、それぞれ落ち着いたところで、まずは結界から張っていこうと思いますけど、スライムニキの調査ではこの地域に霊能組織はないって事で良いんですよね?」
「調査内容はショタおじ含めて運営の方も確認済みだし、根願寺の方でもこの地域に霊能組織がいた記録は無いって事だし、大丈夫」
「了解です。それじゃ仮拠点って事でもあるし、移設する事も考えて要石から円形に広げるとして……。うん、これでいこう、私の能力的に水場を起点にするのが一番効果高いので、風呂場に案内して貰って良いですか?」
「ああそれなら、建物の見取り図を渡された時に探求ネキを案内する様言われた場所があるよ」
どうやら私の修行がてらとすることで、スライムニキに掛かる負担を減らす提案をしていたことから、拠点の改装をする際に結界などを張りやすい設計にしてくれていた様で、案内された部屋へ入ると建物の各所へ繋がる水道管の集積地点になっていた。
「なるほど、ここなら建物全体に水を回せますし、結界の起点として丁度良いですね」
「じゃあ俺は事務室で書類仕事してるから、何かあったら声かけてよ」
そう言って、そそくさと退出していったスライムニキはやっぱり色々と忙しいのだろう、そもそも今回の派出所開設の切っ掛けが被害者の急増だし。
「結界を張る前に見取り図ですかね、水道管全体も使えるなら、それを加味した方法をとった方がいいですし」
スライムニキに渡されていたと言う見取り図や配管図を確認し、結界の構成を調整して要石を作成していく。
まあ要石と行っても文字通りの石ではなく、結界の起点となる楔としての意味合いのため、物としては注連縄のような物であり、上水管のパイプ入り口と下水管の出口側にそれぞれ取り付けて、配水管が巡らされている建物内を霊地とし、霊地を起点とした結界として展開させる。
それと、建物内を霊地に定義した事で、スクナヒコナから引っ張ってきた温泉の権能から、霊地内を流れる水に
いくら表面上は銭湯と言っても、普通に温泉が湧いたとするには工事の手間や行政への手続きなどが大変なことになるため、今回としては概念付与による建物内でのみ性質を変化させる方向にして、銭湯で使うお湯はボイラーで沸かす形になり、その分余計に費用が掛かってしまう訳だけど、その辺は銭湯を経営するだけでペイ出来るだろうと言う試算もあったりする。
「よし、これで建物内の霊地化と結界の展開完了。次は各種設備ですね、装備類の整備室と装備の試しを兼ねた訓練室、後はそれらの備品を収納する倉庫があれば最低限ってとこでしたね」
「最低限と言うよりも、十分な拠点設備だと思うのだがな」
「山梨支部だと更に修行場とか食料生産用の農場とか、最近は量産用の工場も建てる計画がありますし、拠点としては微妙では?」
「普通、拠点作成の話で都市計画のような規模の話はしないのではないか?」
「……それもそうですね。うーん前提となる感覚がズレてきてますかねぇ」
修行として色々やってるからか、何かをする時は基本その時点で出来る最大範囲に挑戦する癖が付いてしまっている感じでしょうか、別段私的に悪い事でもないですが、それはそれとして物事には適量というのも有るわけですし、土台としての結界に関してはこのままでも問題ないでしょうけど、設置する設備に関しては使用者であり、費用負担をするスライムニキと擦り合わせしてから設置した方が良さそうですね。
「ありがとうございます久遠、ちょっと感覚というか前提がズレてた気がしますので、一端スライムニキと認識の擦り合わせをしに行きましょうか」
「そうだな、道具は特に使う者に合わせるのが一番だろう」
そんなわけで、事務室へ向かいスライムニキ達と設置する設備について認識を擦り合わせると、やっぱり基準が大きくズレていた様で、スライムニキとしては装備の状態確認と元の状態まで修理出来れば十分との認識。
私としては装備の改良や改造も可能なぐらいを想定していたんだけど、スライムニキとしてはそんな技術ないし覚える余裕もないから、強化とかが必要なら技術部に依頼する予定との事。
訓練室に関しては、用途から考えてスライムニキの武器を振り回して確認出来る程度だとペルソナ召喚状態での確認が出来ないため、霊地化させた建物内の特性を応用した簡易異界として空間拡張することで、ペルソナ召喚状態でも動き回れる訓練室として構築する事にして、倉庫の方も同じく空間拡張することで在庫を多めに保管できる様にする。
「そもそも空間拡張なんてことまで可能とは思わなかったからね……」
「正直なところ、精神力を回復出来る水とか、入浴するだけで回復力向上するとかだけでも十分トンデモなのだが?」
「あー、それが普通の感覚ですよね、そう言えば。山梨支部の温泉だと更に解毒とか解呪の効果もありますからこの程度って認識してましたね。後、神主から異界作成技術を学んだ辺りから、結界と組み合わせればそれなりに色々出来る様になったから認識ズレてたかも、まあ認識はどうあれ使える物は使いますけど。あ、そう言えば山梨支部の外に出かけるからってことで、折角なら転移術がいけるか試そうと思ってたんでした」
「そういう所、探求ネキも〝俺ら〟って感じだよね。でも転移出来ると便利なのも事実だし、試せるなら試したくもなるかなー。家のココ・ジャンボも転移使えるから異界からの脱出とか助かってるし」
「そう言うことですね。まあ試すのは設備とかの設置が終わってからですが、という事で作業に戻りますね」
「了解、また何かあったら聞きに来てよ」
認識の擦り合わせも終わったので、改めて設備の設置に戻りまずは整備室の方へ、と言ってもこっちはアナライズ道具とMAGを注ぐ事で装備の修復を行う道具を設置するぐらいだけどね。
要るだろうと思い造って持ってきていた装備改造用の炉や釜は、仕方ないので携帯型壺中天地の中で個人的に使うとして、訓練室や倉庫は利便性を考えて近くにまとめるって事なので、指定された向かいの部屋と隣の部屋それぞれの中を確認、余計な物が置かれていない事を確かめたら扉にそれぞれ簡易異界としての術式を組み込んだネームプレートを取り付ける。
倉庫の方は空間拡張と内部アイテムの状態保存を組み込んで終了、訓練室の方は空間拡張と内部で使用されたスキルなどのマグネタイトを吸収して簡易異界が壊れない様にしつつ、吸収した余剰分を霊地の維持コスト軽減に回せるように設定する。
「さてペルソナ召喚、わかりやすく【アギ】っと、うん、簡易異界の端に近付くほどマグネタイトへ分解されて吸収されているから大丈夫かな。久遠も物理スキルを試し打ちしてみて」
「了解した、では近距離の方が良いか、ペルソナ召喚、【ソニックパンチ】」
「物理スキル発動で発散された少量のマグネタイトも吸収されているみたいだし、訓練室の簡易異界も問題ないね」
少し前に久遠のレベルが16に上がって習得した【ソニックパンチ】を召喚したペルソナ側で発動させ、物理スキル発動時に微量発生するマグネタイトもきっちり回収出来てるのを確認して構築完了と判断、最後に各部屋のネームプレートを確認してスライムニキへ報告しに戻る。
「スライムニキー、設備の設置終わったから確認よろしく」
「こっちも一段落付いたところだし、早速行こうか」
事務室に顔を出すと、丁度タイミングが良かった様で、書類をまとめ終わったスライムニキ達全員揃って各種設備を確認して回る事に。
結界というか拠点の要となる注連縄についての注意とかも交えつつそれぞれの部屋を回り、拡張した訓練室に驚かれた後は、倉庫に初回の補給分を確認して貰いながら取り出していく。
「いやいや!明らかに容量どころか出し入れすら不可能だろ、その壺!」
「俺も今回探求ネキが補給品まで持ってくると聞いてどうやって?と思って調べたら、何か持ち運べる異界内蔵の壺を開発したとか聞いてどういうことかと思ったんだけど、こういうことか」
「とりあえず、消耗品は以上ですね。武器の方は好みやら適正やら有るので基本的な武器種をメインに数を用意してます。一応趣味武器に入りそうな物もいくつかありますけど」
「あの、見た感じ凄く本物っぽいんだけど、銃刀法とか大丈夫なの?」
「模造刀の規格に合わせたジュラルミン製で、刃紋もメッキによる物なので大丈夫ですよ。シャドウ異界としては本物ほどでは無いですけど、ここまで迫真に迫っていれば十分な威力を発揮してくれるはずです。後は遠距離攻撃用に作った銃がよく使われているみたいなので、威力と射程向上のために散弾銃型を新しく用意しました」
スライムニキの報告書を読んだ限りだと、基本的に戦闘力の低いスライムニキのパーティとしては、決め手に出来る程の威力は無いけど遠距離から属性攻撃で牽制出来るのは有用と言った評価みたいなので、決め手に出来るレベルの物として用意したのがこの
もちろん銃刀法に抵触しない様、撃鉄部分を弾丸作製術式のパーツに変えているため、実弾を入れても使用出来ない構造にしてあるけど、それ以外は銃身も含めて金属製の部品も使用した本格的な見た目の模造銃となっている。
「――と、こんな感じの仕組みになってますので、一射毎のポンプアクションは必要ですが、単体への威力も複数体への攻撃もある程度確保出来たかと思います」
「これはまた、とんでもないのが出てきたね……」
「その分前の木製リボルバー模型より一発当たりに消費する精神力が多いので、気を付けて下さいね。まあ派出所の水でもボトルに入れて持って行けば多少マシになるかと思いますけど」
「そうか……、拳銃の方も助かってるし、これも上手く使って響を守るさ」
そう言って散弾銃を手に取る不知火さんからは、格好のこともあってスライムニキを一途に思う乙女な気配を感じるが、多分間違いというわけでも無いのだろうね。
「次ぎですけど、防具関連は女性用と男性用をいくつかサイズ違いで持ってきてます。何か最初に装備の要請受けた時とりあえず一番性能が高いやつって事で女性用送られたみたいなので……。ただまあ見た感じ女性用のままで良さそうですねぇ」
「む?瑞樹は以前、女性用装備を男性が使う様な不一致は良くないとか言ってなかったか?」
「それは基本的に未覚醒者とか低レベルの異能者についてですね。高レベルだったり、或いはペルソナ使いだと事情が異なりますし」
「ちょ、ちょっと待って探求ネキ、何か聞き捨てならない話が聞こえたんだけど?!女装する羽目になる以上に更に問題があったりするの?!」
「ペルソナ使いには関係のない話ですよ?そもそも霊能装備ってのは装備者の肉体や霊体、精神に少なからず影響があります。そうで無いと霊的な影響力なんて持てないですからね。なので未覚醒者や覚醒したばかりだと自身の霊格が弱いので、装備からの影響を強く受けて肉体や霊体、精神が変質する可能性があるんですよ。ただペルソナ使いの場合は、ペルソナとして本質の形が定まっていますので、装備の影響で変質するってのは本人が望まない限り起きないんです。スライムニキも何度か女性用のを装備したって聞きましたけど、性格とかが変わったりはしてないですよね?」
「まあ確かに?あ、でも女装してるから女性らしく振る舞おうとして、慣れるのが早かったのはそう言う影響のせい?」
「でしょうね。表面上だけでもそう在ろうと思ったのなら、女性的な演技が上手になったりってのはあると思いますね。度合いが深くなると肉体的にも女性に寄っていくので、そのつもりがないなら自己認識だけでも男性であると定義する方が良いかと」
そう言いつつスライムニキのパーティメンバーへ視線を向けると、何とも微妙な表情を浮かべる不知火さん(女装)と、何やら微妙に嬉しそうな表情を浮かべる未来さん(女装)がいた。
「まあその辺は兎も角、装備的に女性用装備の方が性能が高いのも事実なので、どうするかは自身の心と状況を鑑みて決めれば良いかと。それじゃこれで拠点構築の方は一端完了で良いですかね?」
「ああうん、費用とかその辺は計算して定期報告と一緒に上げておくから」
「では事務所の方で設備構築に使用したものとかの書類渡しますね」
悩ましげな表情を浮かべるお二人を余所にスライムニキと事務所へ戻り、今回使用した物についてや使用した術の概要と効果など、今後の拠点作成において掛かる費用を計算する際、参考にされる資料を用意していく。
必要な書類のやり取りや報告にあたり、互いに不明な点などを付き合わせて書類を作成し、諸々が終わった頃にはそろそろ夕方に差し掛かろうかという時間になっていた。
「書類作成とかも手伝って貰ってありがとう、助かったよ」
「こっちも色々と勉強になりましたので、それじゃ私はそろそろ帰りますね」
「うん、まあ久遠さんもいるし俺よりレベルが高いから大丈夫だろうとは思うけど、気を付けて」
スライムニキ達に見送られて派出所から離れしばらく歩き、人気の無い山を少し登ったところで足を止める。
「この辺で良いですかね」
適当な樹の根元に念のため目印となる楔石を埋め込み、転移術の準備に取りかかる。
今回挑戦するのはショタおじが使うのと同じ地脈を通り道とする転移で、今埋め込んだのと同じ楔を自室に置いてあるため、それを目印に転移するという方式になる。
「んー、地脈の流れと目印と……うん、いけそう。久遠もこっちに」
「わかった」
「【トラポート】!」
感覚的にいけると分かった事もあり、久遠と手を繋いだ状態で術を発動させる。
ぐっと引っ張られる感覚がした次の瞬間には、山の中から山梨支部の自室に転移が完了していた。
「ふぅ、成功ですね。スキルとしても【トラポート】が確り構築された感覚がありますし、今後はもう少し転移がし易くなりそうです」
「おめでとう瑞樹」
こうして転移術も可能になった事だし、観光兼ねて色々回ってみるのも在りかな?まあスライムニキの地元で手が回らなそうなら手伝いにも行けるってだけでも十分だけど。
なお、フェイルノートの概念が効果を発揮する対象は、演奏者が敵と判断した相手のみとなる様に術式で制御している。
弾倉部分に属性を指定する模造弾丸を装填して持ち手部分をスライドさせる事により、弾丸が生成され発射可能となる仕組みになっている。
また、安全装置部分に作製される弾丸の種類をバード、バック、スラッグの三種類から選択する仕組みと、装填可能な三発の内どの弾倉の弾丸を作製するのか選択可能となっている。
ちなみに、傍目からは金属を使用した本物に見えるが、撃鉄部分は弾丸作製術式のパーツになっているため、実弾を入れても使用は出来ない模造品と主張可能な構造にしている。