【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
九月一日。
蓬莱島では昨年に外部解放区画への受け入れを開始した日であり、今年は
とは言え、学びの園自体は通常の学校とはシステムが異なり、明確な入学式も卒業式も存在せず、学びたければいつでも好きに学び始めて構わないし、卒業するかは個々人の裁量によって決める形になる。
基本的に学徒証が無効にならない限りは、蓬莱島から離れたとしても学びに戻ってくる事も可能で、〝生きている限り学びの
学びの園では、学問毎に対応出来る人員が任意で開く講義を受講するか、教師用に知識を入れた九十九式自動人形達に頼んで授業を受けるか、或いは学内に有る図書館などの施設を使って、個々人の学びたい内容を好きに学んでいくと言うのが基本方針。
なおもちろんの事、講師をしている者もまた学徒であり、時には講師と生徒が入れ替わるなんて事もあるし、学徒同士で学び合い教え合うのも推奨されている。
ある意味では、私自身も教えたり学んだり出来る場所として造り上げた蓬莱島が、目標とする環境として一つの完成を迎えたとも言えるだろうか。
「先月は山梨で夏祭りをしましたが、蓬莱島でも何か祭りをしたいですね。食欲の秋と言いますし」
「瑞樹さんって割と唐突に、思い付きを呟く事が有りますよね?」
「まあ普段から色々やってるし、木分身で物理的にも並列思考し続けてるからねぇ」
「それより、飯食ってる時に食欲の秋とか言い出すのはどうなんだ師匠?」
「琴音に聞いたけど、確か瑞樹さん達って【食没】だかの技能で実質的に空腹とか満腹とか無くなってるんだよね? 食欲……?」
「空腹から来る欲求は無いですが、美味しい物を食べたいと言う欲求はちゃんと残ってますよ」
「美味しいご飯は活力で御座るからな!」
「生きる活力ならお酒も忘れちゃいけないわね」
「うむ、美味しい酒と食事を楽しめるのは良いことだな」
「お二人は瑞樹様の式神で仲魔ですので問題無いでしょうけれど、朝からお酒と言うのもどうかと……」
節目の日とは言え、何かしら式典などをするつもりも無いため、いつも通りな朝食の時間。
今朝は気まぐれにイギリス風で、数種類のパンやシリアルにスコーン、カリカリに焼いたベーコンの葉や以前に給食ネキとアリスニキ*1が共同で創り出した特化型ウインナース*2各種。
卵の方は、島を拠点化し始めた当初辺りから育てて来た結果、無事(?)に霊鳥化した烏骨鶏達の無精卵を使った目玉焼きやオムレツなどに、野菜類はサラダから大トロ大豆などの豆類と一緒に炒めた物を複数。
それから燻製にした魚介類を薄切りにした物やフルーツ各種と言った具合の、所謂フル・ブレックファスト。
まあ本式みたいに一皿に全てを盛り付けると言った事はしておらず、各々好きに取り分けて食べる形だから、イギリス風の朝食って訳だけども。
それに、朝食付け合わせの飲み物だと、食前と食後に紅茶や珈琲って所だけど、この辺も個人の好みで好きに持ち出す方式なため、久遠や湯乃葉は食事に合いそうな酒を選んで飲んでるし、私も今回はワインな気分だったので、余計にイギリスのブレックファストとは呼べない気がする。
ともあれ賑やかな朝食が終わって、汚れ物も【浄化】の術でさっと片付けたら、今日から二学期が始まる琴音達、月光館学園の学生組は学校へと向かい、他もそれぞれの予定に合わせて行動を開始する。
皆がいなくなった後の部屋で、食後のティータイムに蓬莱島産の紅茶を楽しみながら、朝食の時に思い立った蓬莱島の秋祭りについて考えを巡らせる。
「蓬莱島的に、年中何かしら収穫してるので収穫祭って名目はちょっと合いませんが、食欲界と名付けた大異界を擁している以上、食欲の秋にちなんだ祭りの一つも開催したいところ……」
現状終末が近付いているとは言え、蓬莱島については地脈からも離した浮遊島になってる関係上、予定されている終末案件での影響はほぼ無いし、終末の日自体も予想では十月の末か十一月の初め頃。
そう考えると、十月の初めぐらいなら今から準備しても余裕を持って開催出来るはず。
島民の負担を考えると盛大にって訳にはいかないでしょうけど、共同体としての意識を醸成するにも祭りは欠かせないですから、出来るだけ多くの島民が参加出来る祭りにしたいところですが……。
「食欲界での狩猟と、狩猟や採取した物を使っての料理大会でもしますかね? 名称は……余り捻ってもわかりにくいですし、グルメ狩猟祭とでもしますか」
とは言え、祭りの企画を考えるのは良いけれど、こう言うのは参加する全員で楽しめる物で無ければ意味がない訳で、一先ずは祭りを計画している事を政務ギルド経由で発信して、反応を見るところからですかね。
実施するとなれば準備に駆り出されることになりますし、個人から団体まで各々の予定も都合もある訳ですから。
まあ基本的には、やりたい人達だけでやるつもりですが、参加希望者の数が余りに少なければ、主目的である共同体の意識醸成には逆にマイナスになりますし、企画は見送りですね。
一応今のところ考えてるのは、島民を二つのチームに分けて、食欲界から集めてくる食材の量を競う狩猟部門と、そうして集まった食材を使った料理大会の二つだけど、反応が良ければ祭りの規模やイベントの数を増やすのも有りですが……。
島民が祭りの開催にどう思うかが不明な状況で、アレコレと考えるのは無駄になる可能性も有るため、そこそこで思考を切り上げ、政務ギルドにグルメ狩猟祭の実施について意見を募集する通知を張り出させる。
「まあ最低限の内容は出しましたし、他のイベントだとか細かいことを考えるのは、一週間ほど様子を見てからですね。それまでは……食欲の秋らしく、新しい食材でも創り出してみますかね?」
しばらくは島民の反応を見るための待ち時間になるのが決まったし、合間時間を使って祭りを実施する事になった場合の目玉となる新食材でも用意しようかと思い立ち、どんな食材にしようかと考える。
とりあえず純粋に喜ばれそうな食材は最低限一つ用意するとして、何かネタになりそうな面白い物も欲しいとは思うところ。
「そう言えば、アリスニキと給食ネキがチョ鋼*3とか言う、武器式神達が食べるとチョコの味がする合金作り出してましたっけ……、魔法生物にすれば金属も食べられるなんて創作話も有りますし、食べられる金属生物とか面白そうですね? 魚宝アナザを食べていれば味覚が拡張されますから、【食没】も習得していれば金属だろうとMAGに分解して栄養に出来ますし」
とりあえずネタ枠として金属系魔法生物を創るのは決定として、普通に喜ばれそうな食材の方はどんな物が良いかと考える。
祭り用に食いでの有る食材となると、候補に挙がってくるのはやはりベヒモスやリヴァイアサンにジズ辺りの、巨大生物な訳だけど、フード悪魔として存在するこれらを食欲界用に創るのは、何と言うか手間が掛かる割りに面白くないと思うところ。
まあ巨大な食材を狩猟するのは祭りの目玉として良いと思うので、モンハン階層の方で
「魚介で考えると、ベースにする候補はマグロ、蟹、ホタテに牡蠣、敢えての鮫辺りですかね」
魚介関連の方は引き続き考えつつ、一先ずは創り出すのが決定している老山龍の構築に着手する。
まあ老山龍は巨大な古龍と言っても、特殊な能力を持っている訳では無く、ただ大きく強靱な肉体と強固な鱗を持つと言うだけなので、必要な要素を組み合わせた後はある程度成長するまで放置になるため、早々に一区切り着けるところまで作業を終わらせる。
後は放置しておけば大丈夫な段階まで進んだところで、多少手軽に狩猟出来て、美味しい魚介はどんな物が良いかと改めて考え、とりあえず候補に挙げた中からマグロと鮫を掛け合わせてみようかと考えたところ、そう言えば魚宝アナザを創り出した関係で、トリコ階層の生息域に万華マグロ*5が居たのを思い出す。
「美味しいマグロと考えれば、万華マグロでとりあえず十分と言うか、漁獲難易度の問題で島民には余り知られていないですし、祭りの期間は多少取り易くするだけでも良さそうですね……。それはそれとして新しい魚介をどうするかですが」
魚の方はマグロが有るし、被せてインパクトが落ちるのもって事で、メインは貝類にするとしてまだ再現していないトリコ食材から選ぶ事に。
「貝類で捕獲難易度も考慮するとしたら……、泡美と薔薇牡蠣辺りですかね」
少し記憶を探って出て来た二つを創る事にして、原作の設定に沿った生態を構築していく。
泡美の方は、多くのミネラルを含み真珠のような光沢を持つ美しい泡と、その泡に包まれた最上級のコラーゲンを含む中身と言う構成のため、貝が泡を作り出す仕組みと、泡が簡単には割れない性質を持たせる。
薔薇牡蠣の方は、原作設定だと人口養殖できないほどに繊細らしいけど、トリコ世界の海という割と魔境な環境で絶滅せず生存出来てることを考えると、人間と言う生物が長時間近くに居ると衰弱する生態と解釈すれば、ある程度納得がいくところ。
そんな訳で、トリコ世界的に人間から発生される何かが影響するのだろうと思うが、この世界で考えれば人間の生体マグネタイトとの相性が悪いと設定し、周辺のMAGを吸収する事で旨味を増す様に性質を組み込んだ牡蠣の品種を創り出す。
「これで貝類もトリコ階層に登録して、自然と増える様に設定すれば大丈夫ですね。
祭りに向けた準備も兼ねた、食欲の秋らしい真面目な方の新作食材が終わった所で、先に思い付いてはいたけど、ちょっと時間が掛かりそうなため後回しにした金属生命食材の創造に取り掛かる。
参考にするのは、合金を作る際にチョコレートの概念も混ぜ込まれたチョ鋼と、機動武闘伝Gガンダムに登場するDG細胞ことアルティメット細胞。
既に現物があるチョ鋼については、技術部のデータベースからの情報と、購買部で資料用にいくつか購入してるので良いとして、そこそこ研究する必要が有るのはGガンでも屈指の超技術の結晶で、自己増殖・自己再生・自己進化能力を兼ね備えた金属細胞の再現。
原作の設定では、精神感応物質としての特性をより先鋭化させた物で、同じ金属の機械だけで無く、有機物にも入り込んで物質構造を記憶し、破損を修復する事も可能なある種万能細胞とも呼べる代物である。
「Gガンって気とか精神エネルギーとかが普通に存在する設定ですから、実は割とメガテン世界とも親和性が有るんですよね……」
とは言えあくまでも参考にするだけで、アルティメット細胞その物の再現を目指す訳では無いため、せいぜい自己増殖と自己再生能力を持つ金属細胞の完成を目指す程度。
正直な話、仮に自己進化能力まで再現出来たとすると、下手しなくてもグルメ細胞みたいな異常進化を促す結果に成りかねないため、搭載するとしても生物としての環境適応進化ぐらいだろうか。
後は、他の物質などへの侵食なども出来ない様にして、安全性の確保も重要なところ。
「大まかな方向性は決まりましたし、まずは金属細胞を創り出す所からですね」
使用する素材は、精神感応金属として何度も使ってるオリハルコンと、作品によっては精神感応特性を持つこともあるミスリル、それから多数の創作で無機生命体として登場するケイ素系の素材をいくつか。
これは、地球上の生命体が利用している元素である炭素と同じ様に、理論的には生命体を構成し得る元素ではないか? とされているのがケイ素だからと言う物。
そのため、創作により積み重ねられた概念も利用し、式神やゴーレムなどの術式を応用することで、ケイ素をベースに無機生命体の基礎を創り出そうと言う話。
「ケイ素に鉄やオリハルコン、ミスリルなどを加えた合金を作り、マグネタイトを取り込んで生体反応を起こす様に術式を構築、後は蓄えたマグネタイト量に応じて旨味を増す仕組みと、合金の組成による味の変化を確認すれば一区切りですかね」
最初は金属生命体の造形を実在の動植物に寄せる事で、味の傾向も寄せようかと思いもしたけど、それなら普通に実在の動植物を食べれば良い訳で。
折角の金属生命体なのだからと言う事で、金属だからこその味を追求してみる事に。
「一先ず出来上がったのは、某竜のクエストに出るメタルなスライムから目と口を無くした様な物ですが……ふむ、弾力はあるのにカリカリとしていて、面白い食感ですね。味を表現するのは難しいですけど……」
周囲のMAGを取り込んで旨味を増しているため、十分に美味しい食材ではあるのだけど、既存の食材とは根本が異なる為に、どうしても表現に困る味わいを感じる。
後はまあ当然の事だけど、金属は金属であるため、食べるには金属を噛み砕けるだけの力なり、技術なりが必要なのも難点ではあるだろうか。
「でもまあ、美味しい金属生命体の雛形は出来ましたし、後はいくつか造形のテンプレートを作って、生息環境で多様な合金化をさせることで、バリエーションを増やす感じにしましょうか」
こうして出来上がったのがメタルクリーチャー*8シリーズで、最初に創り出したのは小型のスライム、中型の蜥蜴、大型の猪の三種類。
なお、金属で構成されているとは言え生命体ではあるため、模倣する生物に合わせて、毛・皮・筋肉・骨なども構築しており、部位毎に金属の配合や硬度に強靱性なども変化するし、無機物を取り込む事で体内の組成が少しずつ変化していったりもする生態になっている。
後は、無機物を取り込む事で体積が元の1.5~2倍ぐらいになると、分裂して個体数を増やす性質を持っていて、見た目は動物を模しているけれど、基本的にはスライムやアメーバみたいな生き物と言うのが正しいだろうか。
「金属細胞としての働きは十分、DG細胞やグルメ細胞みたいな急激な進化をする様な様子は無し、【未来視】で可能性未来の観測でも異常進化が起きる様子は無いですから大丈夫ですね。生物概念が定着すれば、環境への適応進化ぐらいはするみたいですが、許容範囲でしょう」
出来上がったメタルクリーチャー各種は、ある程度まで個体数が増えたところで、食欲界のトリコ階層に放流してダンジョンコアにも登録をして一区切り。
今回創り上げた新食材各種の情報を、いつもの様にまとめて技術部のデータベースにアップしたら、育つまで放置していた
昼食……は既に過ぎてしまってるので、夕食には間に合うように解体していく。
「
ちなみに、後で調べたところ
が、モンハン階層で良く狩猟されている飛竜種の肉も、ドラゴンの肉と言う分類だからか効果の差こそあれ同様の効果があるため、
まあ効果の桁が違うのを考えれば、割と一点特化した効能という可能性もありそうだけど、その辺はまた追々他の食材と合わせて調べましょうかね。
オリハルコン1割、霊鉄8割、グレート・テオブロマ素材のチョコレート1割を配合して作り出された幻想金属。
高い強度と衝撃吸収性を持ち、また治癒系のスキルや術式とも相性が良い上に、防具や装身具に使えば生命維持作用を発揮する。
またある種の素材捕食能力持ちのシキガミにとっては、この金属自体が非常に良質なチョコレートのように美味に感じられるとか。
海域に溶け込む旨味成分を取り込み濃縮させる性質を持たせた事で、成長過程の違いにより同じ品種で在りながら様々な味を楽しめる魚となった。
真珠のような光沢を持つ泡は良質のアミノ酸で構成されており、泡の中にある身は最上級のコラーゲンを含んでいる。
泡美から抽出されたエキスは細胞の活性化に大きな役割をもたらし、肌のキメを整え、なめらかにする美肌効果を持つため、美容食として食される。
原作において〝人口養殖できないほどに繊細〟とされている事から、人のMAGに長時間触れると弱り味が落ちる代わりに、人以外のMAGを吸収する事で旨味を増す性質を持たせた。
捕獲の際には、素早くノッキングしてMAGを吸収出来なくする事で、鮮度と美味しさを保つ事が出来る。
そのまま食べても美味しいが、レモンの果汁を垂らせば風味が増して更に美味しくなる。
自己増殖と自己再生能力を持ち、無機物を取り込む事で体内の組成を変化させ、自身の質量が一定量を超えると、体を分裂させる事により個体数を増やす生態をしている。
なお、トリコ食材を再現した〝魚宝アナザ〟を食べる事で味覚を拡張し、【食没】などで分解・吸収する方法があるのなら、食材として美味しく頂く事が可能。