【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「まずは本日の祭り開催にあたり準備に奔走してくれた学徒達、並びに祭りへ参加頂いた皆様へ感謝を、メインの催しは希望者による狩猟採取競技、それからその競技にて得られた食材を用いた料理大会の二つ。その他にも有志により企画されたイベントが島内各地で行われる予定ですので、存分に祭りを楽しみましょう。それでは、これより第一回グルメ狩猟祭を開催します!」
十月に入って最初の木曜日。
私のメイン属性が木行だったり、Thursdayが元はトールの日(Thors day)が変化した言葉で、豊穣に縁があったりする事から選んだ祭りの開催日。
島の所有者で主催者として流石に挨拶ぐらいは、と一応軽く開催の宣言を行い、その後は島民有志による祭り運営委員会が引き継ぎ、司会がメインイベントの一つである食欲界での狩猟と採取の競技説明に移る。
競技は84倍に時間加速した食欲界の内部で、現実では二時間、異界内だと一週間の長丁場になる狩猟採取サバイバル。
参加者は食料以外の持ち込みは自由だけど、開始と同時に食欲界のいくつか設定したエリア内にランダム転移する事になっていて、異界内の各所に設置されている回収ボックスを探し出し、食材を納入する事でポイントを獲得。
全体での合計ポイントと個人毎のポイントによる達成報酬の他、納入重量や売却金額に狩猟数や採取数などを集計して、各種順位報酬を配布すると言う形。
ちなみに祭り用に新しく創った
そんな一週間のサバイバル模様は、イベント会場に投影してる大画面だったり、ネット経由で視聴可能になっていて、参加者が希望すれば配信も可能にしているけど、異界内との時間差があるため場面を切り抜いての表示になるのは難点か。
かと言って現実時間で一週間もとなると、今度は終わるのを待つ間にダレるのが眼に見えてるし、サバイバル参加者が祭りのもう一つのメインイベント、料理大会に参加出来ないと言うのもどうかと思うため、希望者には後で映像データを渡す感じにしましょうかね。
「さて、参加者の転移は終わりましたし、異界内とこちらでは時間の流れが異なりますから、直ぐに大量の食材が送られてくる事になるでしょうね」
「確認致しましたところ、未解体の物から雑に解体された物、手当たり次第に採取した物と思われる各種食材が既に倉庫へ続々と追加されております――以上」
「予想よりも参加者が多かったですし、運良く回収ボックスを直ぐに見つけた人もそれなりに居たみたいですねぇ」
競技を開始して参加者全員を食欲界に転送した後、一分もすれば異界内では一時間以上が経過している訳で、狩猟・採取された食材を収納する倉庫には、既に次々と食材が送られて来ていた様子。
祭り運営委員の一人が料理大会の説明をしている裏で、倉庫に送られて来た食材を仕分けする担当者達が動き出し、多少慌ただしい感じで料理大会の方もスタートを切る事になる。
なおこちらの競技については、倉庫へ送られてくる食材達を兎に角調理し、サバイバルから帰還した参加者達に振る舞う料理を作り上げるのが主目的で、出来上がった料理の量に応じた全体での合計ポイントと、個人毎のポイントによる達成報酬が有るのはサバイバル側と同じ。
出来上がった料理の味や調理した量など、各種部門毎の順位報酬が有るのも同じだけど、作るのが料理だけに最低限料金を取れるぐらいには美味しく出来てることが、ポイントに加算される条件になっているって所は注意点ですね。
まあ、味覚は個人差や嗜好の差異も有るため、一律で美味しさを決定するのは難しい所だけど、少なくとも【アナライズ】で料理と認識出来る程度に完成していれば大丈夫でしょう。
【アナライズ】は術者が知らない情報も見抜ける様に、術者の知識からだけでは無く、人類の集合的無意識とか
「料理の方は投票による美味しさ部門の順位も有りますし、態と不味く作る様な人は居ないと思いたいですが、外部からの参加者も居ますから、折角の祭りで盛り下がる様な真似をするのが居ないかだけは注意しておきましょうか」
料理大会の方も開始となった所で、流石に賞品を用意する主催者がメインイベントに参加する訳にもいかないため、適当に会場内を見て回る事に。
ちなみに、琴音は綴や私の本体に子供達と一緒に祭りを回っているのと同時に、影分身の方で招待した麻帆良堂のメンバーを案内していて、弟子組四人はマルガとマルゴットを誘ってサバイバルの方に参加している。
仕事と家族団らんを両立出来る分身系術式の有り難みを噛み締めながら、普段町を歩くときと同じ様にある程度認識を誤魔化して、ギガサイト内や周辺で行われている有志のイベントなどにも顔を出していく。
その途中、メインの料理大会で味より量を優先し過ぎて、辛うじて料理判定では有るものの、作った本人すら食べられない様なゴミ一歩手前を納品しようとする者を見つけ、ポイント対象の条件に制作者が飲食可能な物、と言う項目を追加する事になったのは余談ですかね……。
まあ収穫祭であり感謝祭と言う主旨を忘れて、効率だけで行動した阿呆には、自身が作り出した物を食べ終わるまで参加不可の刑に処しましたが。
会場内の見回りをしている方の私が、そんな細かいルールの追加で仕事が増えたりしている一方、食欲界内でサバイバルイベントの監視をしている方の私は、死亡した参加者を回収して24時間経過に合わせて復活させる蘇生ポイントへ移動させたり、動画映えする場面を切り抜いて映像編集し、ギガサイト内や島内各所のモニタに流す動画を作成したりと、少々忙しいけど充実した趣味時間を満喫していた。
今回の祭り自体は、蓬莱島に移住してきた学徒達の共同体意識を醸成するのが目的の一つではあるけど、島自体に関して言えば、普段から食欲界を利用するために余所の黒札や金札なども一時滞在している訳で、準備期間は兎も角、参加側で島民以外を閉め出す理由も無い話。
とは言え、レベル50超えてる様な黒札も結構な数参加申請してきたため、そのままだと順位報酬が島民に渡ることは無いし、そもそも用意した賞品自体レベル50以下向けの物で、多くの黒札にとっては対して有用でも無いって事で、レベル50を超えてる場合は順位計算から除外する感じになったのだけども。
まあその辺もあって、調理や解体などの技術が必要な料理大会の方の外部参加者は、そこそこと言ったところだったけど、覚醒さえしていれば何とかなるサバイバルの方は、普段から食欲界に来てる黒札を含めて結構な数が参加していて、そんな参加者達の様子を眺めているだけでも、企画した甲斐が有ったと思えるところ。
「おや、今回は幼女ネキが直接メロウコーラの収穫に来ましたか、イズナちゃんに向けてドヤ顔してる姿も可愛らしくて、相変わらず絵になりますね。少し前には、
島内のモニタやネットで閲覧出来る様に動画を編集する途中、トラブルに事欠かない幼女ネキの映像を見つけたので、見所になる部分をささっとまとめていく。
現在の異界内はそろそろ折り返しと言った日数だけど、その数日分だけでもまあ面白い場面がいくつも有るのは流石と言った所で、老山龍をタイマンで殴り倒したかと思えば、最後のトドメを刺した際に勢い余って頭から崖に突っ込み、結果として山中の空洞に繋がる洞窟を作る事になり、その奥で環境再現による実験をしていたモルス油*1とサンサングラミー*2を発見していた。
正直な所、まだ技術部のデータベースにも上げていない実験途中の産物だったのだけど、どうやら幼女ネキが発見した辺りで上手く再現が成功していたみたいで、後で【過去視】などを使って調べて見たら、幼女ネキが近くで戦った際の影響が最後の一押しとなって完成したと判明し、どんな運命を手繰ればそうなるのかと、首を傾げることになったりもしましたが……。
そんな感じで、楽しそうに動き回る幼女ネキの名場面や珍場面の切り抜き動画を作り、再生フォルダに移動させた後、次ぎに目に留まったのは、トリコ層の海で釣りをしている弟子組に麻帆良堂のマルガとマルゴットを加えた六人。
どうやらアトリエ式錬金釜を持ち込んでいたみたいで、結構大きめで頑丈な船を作り、祭り期間中は取りやすく設定してた万華マグロをメインターゲットに狩猟している様子。
水着姿の美少女(一人は褌にサラシ姿)が、マグロの一本釣りをしていたり、素潜りして泡美や薔薇牡蠣、コンブスネーク*3にわかめ蛇*4などを採取しており、ハプニング的な物は無くても十分に魅力的な画面が出来上がっている。
まあトリコ層の海も結構危険な生物は居る訳で、時々鰐鮫*5やワーナーシャーク*6が襲ってきたり、10m近くまで成長したハムフィッシュ*7が岩場から突進してきたりと、船を守りながらだったり水中での大立ち回りが起きたりもするため、動画映えする絵には事欠かない。
各人の活躍場面とか、夜に焚き火を囲んで話している場面など、日常と非日常を織り込んだイメージムービーみたいな感じに編集し終わると、また他の参加者達の映像編集へと取り掛かる。
そうしてイベントの運営をしつつ、見応えのある場面の映像編集を行って、現実側の会場やネットに流すのを繰り返している内に、そろそろ七日間のサバイバル期間も終わりが近付いてくる。
個人や少人数チームでのハイライトだと、ランダム転移でベジタブルスカイへの登攀に挑戦する事になった人達の奮闘だったり、遊びに来ていたキノネキが異常成長したキリン*8と遭遇戦してる場面など色々有ったし、大人数での場面で言えば、レベル20にも届かない島民達がレイドを組んで、老山龍の討伐を見事に達成した所など、実にドラマチックで見応えのある場面が展開されていた。
それらの動画編集が概ね終わり、最終日も異界内時間で残り数時間、最後のスパートとばかりに難易度の高い場所へと挑戦する者達も居て、蘇生作業が忙しかった状態も落ち着いて来た頃の事、大体の映像では大きな変化も無くなってきたんだけど、ある意味で良く見慣れた三人組と一人の女の子の映像が目に留まる。
私が企画製作している〝笑ってはいけない人生録〟でお馴染みの、ナチュラルボーンコメディアンな三馬鹿ラス*9と、夏の星大祭でも一緒にレイド戦イベントに参加していたドクターネキ*10が今回も一緒に参加していて、イベント中の一週間でも方々でハプニングを引き起こしていた訳だけど、どうやら最後まで飽きさせるつもりは無いらしい。
最終日の一行が向かったのは、広域移動方法を持たない参加者のために、イベント期間中だけ設置したランダム転移陣で飛ばされた先、〝グリル高地〟のフィールド名を付けた垂直に切り立つテーブルマウンテン。
高地の中心に近付く程地面の熱量が上がり、自生する植物や動物などが、勝手に加熱調理される様な過酷な環境だけど、流石に環境対策はしてきてたみたいで、良い感じに焼き上げられた木の実などを摘まみ食いしつつ、回収していく一行の状況が変化したのは、三馬鹿ラスが唐突に水を撒き始めたのが切っ掛け。
恐らくは、上がり続ける地面の熱を気化熱で下げ様としたって所でしょうが、もちろんの事そんな方法で熱量が下がる訳も無く、逆に水が蒸発して発生した水蒸気に蒸される結果となって、いつもの如く互いに責任を押しつけ罵り合うコントが始まり、そこに一カ所へ大量の水を撒いたのが原因で、一行の居た場所が崩落し地中へと転げ落ちる事に。
ドクターネキだけは何とか守りながら落ちていった一行が辿り着いたのは、グリル高地内部に出来ていた大空洞。
ちなみに此処は、私が意図して作った地形という訳では無く、雨水の浸食と高熱を放つ地形が影響して、偶発的に出来上がったと言う場所。
なお、サバイバルイベントを始めるまでは、地底湖が有るだけで他には特に何も無い空洞だったのだが、どうやら多数の参加者が移動してきたり、その際に他地域の種子が運ばれてきた事、それから採取物や狩猟対象の枯渇を防ぐために、マグネタイト消費でのリポップや生育速度の向上を行っていたのが重なったのか、グリル大空洞と名付けた方が良いぐらいには、動植物が蠢くフィールドが出来上がっていた様子。
三馬鹿ラス一行は、そんな生態系も未調整なフィールドに突っ込むことになった訳だけど、ギャグ補正とでも言うべきか何と言うか、妙に勢い良く転がってくる大岩に追いかけられるピンチになったかと思えば、ドクターネキが連れている式神のゾイドが踏み抜いた地面から、間欠泉が噴き出して三馬鹿ラスが吹き飛ばされた拍子に、大岩に見えていた物が実は岩マジロ*11と判明。
ドクターネキが間欠泉の噴き出した地点を拡張して、三馬鹿ラスが岩マジロを誘導し熱湯に落とすと言う機転を利かせて倒したり、大きな成果に喜んではしゃいだところ、岩マジロを落とすために広げた穴が更に崩れ、熱湯の地下水脈に流されて更に地中深くへと落ちていくハプニング。
そうして流れ着いた先は、グリル高地の熱を使って創り出した環境系食材、マグマーカロニグラタン*12が広がるマグマの海。
クロマニキがとっさの機転で【リフトマ】を発動した事で、辛うじてマグマダイブを回避した後、どうにかマグマーカロニグラタンも回収するのに成功した一行は、その後もギャグコメの様な展開の数々を繰り広げ、これまた私も把握していなかったオーロラが立ち上る地底湖へと到達する。
どうやらグリル高地の熱と、サバイバルイベントを通して種々様々な食材が持ち込まれた事、そこに三馬鹿ラス一行があちこちで水害を発生させた事が奇跡的に噛み合って、センチュリースープ*13が誕生していたと言うのは、後々調べて判明した事。
そんな訳でイベント最終日の見所は、センチュリースープを飲んでみだらなニヤけ顔になった三馬鹿ラスの映像になり、一行が回収ポイントまで何とか帰還した辺りで、サバイバルイベントも幕を閉じる事になった。
油が生成される環境を再現する事で、食欲界の山中に油の池としてサンサングラミーと合わせて再現している。
特徴としては、サラサラで油切れがよく、ゴマ油のような濃厚でコクのある風味を持ち、加えてこの油で食材を揚げても全く汚れないという優れた性質を持つ。
天敵の存在しない洞窟内で育つ事から、強い生物が近付くだけでショック死して、急速に色が黒ずみ食べられなくなる特殊調理食材。
熱を加えると、身体の表面から極上の昆布の様な、旨味成分たっぷりの出汁が取れるため、出汁を取るための食材としてよく用いられる。
体の表面から極上のわかめの様な、旨味成分たっぷりの出汁が取れる。
ワニ並の強力な顎を持ち、一度喰らいついた獲物は決して離さずにそのまま捕食してしまう。
肉は高級で、刺身でも癖なく食べられる。
無類の強度と切れ味を誇る歯を持つため、その歯は金物の原料や装飾品として重宝される。
身は強さ相応に旨味が詰まっているが、劣化速度が早い事から、食材として扱うには適切なノッキング技術が求められるため、捕獲難易度が高い。
胴体部分はハムのように脂がのっており、海底の塩気が効いた絶妙な味をしている。
強力な攻撃力と強固な防御力を兼ね備えた猛獣で、大きく育つ程に捕獲は困難となるが、成長している程に美味しさを増す。
グラグラと煮え立つグラタンのマグマで、温度に比例して旨味も高くなる。
数多の先人たちが己の美味なる食材を冷凍保存していた氷が原料で、一世紀に一度、メタンハイドレードの発生によって氷が解凍されることから〝センチュリー(世紀)〟の名前が付けられたという代物。
全ての灰汁を取り除いているため、一見すると何も無い様に見える程の澄み切ったスープで、オーロラが立ち昇る程に無数の食材の旨味が凝縮されており、極めて濃厚な味でありながら喉越しはしつこくなく、飲むと美味しすぎて顔がにやけてしまう。