【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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142:祭りが終わって日常(いつも)に戻って

「それでは、以上をもって第一回グルメ狩猟祭を閉幕とします。明日いっぱいまでは会場をこのままにしておきますので、後夜祭などをしたい人達は自己責任でどうぞ」

 

 閉幕の宣言に合わせて、祭りの成功を表す様に万雷の喝采が会場を震わせる。

 個人的には準備期間だとか開催中の事とかで、色々と反省点のあるイベントだったけれど、それでもこれだけの人達が楽しんでくれたのだから、実施して良かったと思えるところ。

 サバイバルイベントで収穫された大量の食材達は、大部分が調理されて参加者達の胃袋を満たしましたし、残った物はこの後も騒ぎたい連中が消費する事でしょう。黒札のデビルシフター組とかも残って騒ぐみたいですし。

 そんな祭りの日が終わった翌日、祭りの最中に完成したモルス油やサンサングラミー、偶発的に誕生したセンチュリースープの調査など、諸々の作業を行う傍ら、考えるのは次ぎに作ろうと考えている物の事。

 まあ具体的に言えば、キノの誕生日に贈るプレゼントの事だけども……。

 

「キノに渡した指輪はキノの彼女達向けも含めてますから、琴音達に渡したのとちょっと違いますし、結納とは違いますけど守り刀でも打ちますかね? キノの銃特化具合的に普通の刀を渡しても使い熟すのは難しいでしょうし……、精霊を憑依させて付喪神化でもさせますか。付喪神関連のスキル持ってますし」

 

 一先ず案が出来たので、試しに一本作刀してみる。

 なお、効果面を優先するとは言っても、本体である短刀自体の性能も良いに越したことは無いため、素材を含めて厳選していく。

 普段なら素材自体の性能も考えて、特殊な合金辺りを使うところだけど、守り刀としての概念を強化する観点から考えると、古式に則って和鋼を用いるのが良いだろうか。

 

「原料の砂鉄……は刀鍛冶を専門にしてる人達が使ってる物を購入すれば良いとして、製鉄するならたたら吹きになるでしょうし、とりあえず木炭を作りましょうか」

 

 最終的には付喪神化させて、神秘と概念を重ねていくのも含め、たたら吹きでの製鉄から作刀に至るまでの全てを儀式として成立させていく事にし、まずは木炭を作る所から始める。

 使う木材は、異界の要に据えて巨大な世界樹に成長した生命樹の枝。

 太さからしてそこらの丸太を優に超える直径数十メートル、長さは下手したらキロ単位になる様な枝をある程度の大きさに切り分け、私の起源である【エンキ/エア】が持つ大地と水の権能を捏ね合わせて造った土窯に敷き詰める。

 窯内に充満させた霊力(MAG)が逃げない様に陣を敷き、窯に火を入れて蒸し焼きにしながら、追加で霊力(MAG)を窯に注ぎ込み、炭焼きの過程で霊力(MAG)を凝縮させていく。

 出来上がった世界樹の木炭の出来を確認したら、次は炭焼き窯と同じ様に権能を用いてたたら吹きの炉を造り、製鉄に取り掛かる。

 時間加速した異界その物を一つの儀式場に仕立て、炭焼きからたたら吹き、そして作刀に至るまでを完結させる。

 その二つ目、三日三晩を掛けて行った製鉄作業が終わりを迎える。

 

「和鋼の中でも最上位の物を玉鋼と呼ぶ様になったのは近代、明治以降になってからですが、宝石の事を玉とも呼ぶ様に、宝石にも思える輝きを放つ鋼は玉と呼びたくもなりますね。まあ玉鋼の玉が何に由来しているのかは、諸説あって確定してないのですが」

 

 そこそこ出来上がった和鋼の中から特に質の良い玉鋼を選り分けたら、いよいよメインの作刀へと移る事になる訳だけど、普通の刀鍛冶と異なるのは此処から。

 儀式として手順を組むのなら受け継がれてきた技法に沿って、金床や金槌などの道具を使い作刀して行くべきなのはその通りだけど、私自身は鍛冶に高い才能を持っていたり、起源となる本霊にその手の逸話がある訳でも無いため、より良い物を作るとなると霊能を多方面に使用した方法になる。

 晴彦ニキ*1みたいな鍛冶を専門とする黒札なら、道具を使う方が素材の変化を細かく感じ取れたりするだろうけど、突出した才能を持つ訳ではない私が小さな変化も感じ取れる様にするには、道具と言うフィルターは邪魔になる訳で……。

 

「この方法の参考元は、終わりのクロニクルでしたっけ」

 

 その作中において、名前が力を持つ概念の世界出身者達が、一本の剣を鍛え上げる為に行った方法。

 どれだけの高熱を放つ状態であっても、武器として製造途中の物ならば、生身で振れても傷を負うことは無いと言う、概念の力の下で行われた遮る物の無い被造物との対話をもって完成させる、文字通りの直接鍛造。

 本来なら生身で触れる事など到底叶わない高熱の鋼、常人が対話するために必要な道具をノイズとして排除し、二本の腕でもって鍛え折り重ねる。

 守り刀として望む守護の願いを霊力(MAG)に載せ、鋼に練り込む様に鍛え折り重ねる。

 工程を繰り返し、幾層にも鋼を、守護の概念を折り重ね、物質としての鋼が持ち得る領域を超えて霊力(MAG)を注ぎ、重ね合わせて圧縮させていく。

 鋼の内側から霊力(MAG)の光が溢れ出してもなお重ね、術式を織り込み、鍛え上げる。

 

「現状の限界はこの辺ですかね」

 

 出来上がったのは、玉鋼を鍛え上げた鋼の短刀で在りながら、幾重にも積み重ね織り込んだ概念(MAG)により、透き通る様な輝きを放つ一振り。

 刃を研ぎ拵えを整えて、一先ずの完成となった守り刀の出来を確認する。

 

「試作って事で、とりあえず守護の概念を詰め込めるだけ詰め込みましたが……、守り刀として考えるならこのままで良さそうですね」

 

 とりあえず限界を試して、その後組み込む能力の調整とかを考えていた訳だけど、試作で完成した守り刀を見た感じ、下手に他の要素を混ぜるより、純化させた方が良さそうに見えてくる。

 ちなみに性能的には、守り刀の別名称である枕刀の概念も合わさって、就寝中や不意打ちなどの、認識外の脅威から守る能力と、万能を含めた全属性のダメージを三割カットする能力と言った所だろうか。

 積み重ねた概念から考えると、全属性とは言え無効では無く三割減だし、認識外からの防御――不意打ち無効の様な物との二つだけと言うのは、一見すると数が少なく効果も弱く見える。

 まあ実際のところは、効果範囲を絞る事でよほどの事――ショタおじクラスからの直接攻撃とか――でも無ければ、貫通出来ないだろう概念強度になっているんだけども。

 

「後はこの守り刀を付喪神化させれば完了……ですが、付喪神の性質上ある程度時間が必要になるんですよねぇ」

 

 付喪神は九十九神と表される事もある様に、九十九の年月を経た道具が百年目に精霊(霊魂)を宿し、妖怪変化へと至った存在の事。

 実際には厳密に九十九年必要って訳では無く、年月を経る事で霊性や神秘などとも呼ぶ霊力(MAG)との親和性が高まり、【外道 スライム】にも成りきれない程度の雑霊が依り代にした事で、道具の性質に沿った怪異を起こす化生になる、と言うのが基本的な発生過程。

 なので、付喪神化させるなら種族精霊の悪魔でも宿せば成立させる事が可能なのだけど、それは依り代が普通の道具ならとの但し書きが付く。

 今回の守り刀みたいに元から霊格の高い道具だと、単に精霊を宿すだけでは意志持つ魔剣みたいな感じに成り、道具側が主体となってしまうため、付喪神として成立しない。

 道具が変化して誕生する付喪神だけど、主体はあくまでも宿った精霊(霊魂)の方と言う話。

 そのため、守り刀に宿す精霊が主導権を得られる様に調整する必要がある訳で、それには付喪神の発生経緯をなぞり、ある程度以上の時間を経過させるのが一番と言う事になる。

 

「付喪神として精霊を宿せるまでは、祭壇でも造って奉りつつ時間加速させておくとして、経過を待つ間は何をしてましょうかね」

 

 現状でも外よりは時間加速している異界内に、守り刀を安置する祭壇と更に時間を加速させる陣を用意して、後は待つだけとなった所で、その待ち時間をどうしようかと考える。

 まあ一度外に出てお茶でも飲んでいれば直ぐに十分な時間が経過するだろうけど、現状何度か試作するつもりで精錬し、そこそこの量が残ってる玉鋼も有る訳で、何か造ろうかとも思うところ。

 

「ふむ……そう言えば、伝説の魔槍を探し求めたら、実は畑で栽培していた、なんて設定の小説ありましたっけ」

 

 それなりに時間を掛ける必要が有る物で、何か面白い物はないかと思考を巡らせていたところ、思い浮かんで来たのは前世で読んだ小説の設定の一つ。

 だいぶうろ覚えだけど、物語の中で何度か描写されていた伝説の魔槍が、実は先代の魔王だかによって畑で栽培されていた物って展開は、妙に記憶に残っている。

 まあそれだけ読んだ当時は衝撃的だったと言う事なんだけど、今世の私であればそれを再現出来ると言うのも、何だか面白いと思うところ。

 

「よしっ、それでは武器の種みたいな感じで創ってみますか」

 

 創る物の方向性が決まった所で、玉鋼を使った武器作成を行いつつ、具体的にどんな感じの植物にするかを考えていく。

 植物みたいに育ちながら、最終的には金属としての性質を確りと持たせる事を考え、ベースには合金樹や金属樹から獲れる種を採用。

 金属との親和性を持ちつつ樹木から草本――所謂根菜や多年草などの植物――へと変化させ、成長に合わせて地中や大気中のMAGを吸収し、基本的には根っこが刃などの部分、茎が持ち手の部分となる様に設計。

 武器としての性能は、土地の栄養やMAGの濃度などにより変化する感じにして、育つ武器の種類がわかり易い様に、成長して実った種は武器毎の形状にする。

 種の発芽から次代の種を実らせるまでの一連の流れを決めたら、実際に種の改造に取り掛かる。

 

「成長過程などは一旦レシピカード*2として保存した後、霊符として転写した物を作っておくとして、基本は同じだけど種類が複数ある物を創る時は、やっぱりアトリエ式錬金釜が楽ですねぇ」

 

 取り出したアトリエ式錬金釜に合金樹と金属樹の種、玉鋼で造った刀を一本、レシピカードから転写した霊符を入れかき混ぜる。

 大部分は、レシピカードから転写した霊符の設計図が構築の流れを作ってくれるため、変数である武器の種類に合わせた調整をしたら、日本刀の形を模した武器の種が出来上がる。

 続いて、槍や斧などの近接武器各種の種を創ったり、手裏剣などの投擲武器用に複数個同時に実らせるタイプも創っていく。

 

「さて、後は実際に栽培して種の収穫まで確認すれば完了ですが、その前に守り刀を確認しておきますか」

 

 まあ武器の製造や種を創ったりまでは兎も角、流石に今居る異界内で植物の栽培まですると、儀式場としてる異界への影響も出てくるため、栽培確認は専用の異界で行うとして、移動前に安置していた守り刀の様子を見に行く。

 どうやら武器の種に使う各種武器の製造だったり、植物の生態を設計したりで良い感じに時間も経っていた様で、付喪神となるのに十分なぐらいの年月を蓄積している様子。

 流石にそこらに在る雑霊では霊格負けするけど、悪魔として種族名が付くぐらいの霊格があれば、付喪神へと変化させられる感じだろうか。

 

「宿す霊魂は……守り刀ですし、種族御魂のニギミタマ辺りが良いですかね」

 

 色々と使い道が多い事から、修業場異界で見つけては封魔管にストックしている御魂の一体を取り出し、守り刀に宿して付喪神へと変化させる。

 問題無く変化が完了したのを確認し、長期間経過させる関係から、保存用に処理を施した白木の鞘に収めていた守り刀を、キノに渡すための拵えに戻して再度確認を行う。

 

「元の性能に加えて、自動修復や身代わりに、魔除けや邪気払いの効果が増えましたか。まあ概念強度としては其処まで高く無いですが、付喪神としてのレベルが上がれば色々強化されていくでしょうし、十分ですね」

 

 付喪神への変化を含めて全ての工程が完了したところで、守り刀に〝姫守(ひなもり)〟の名前を与え完成とする。

 なお名称に関しては、キノの可愛らしいさと合法ロリな見た目を姫(雛)と見立て、姫(雛)を守る刀と言う事で、字は姫守、読みをひなもりとした感じ。

 

「キノの誕生日プレゼントはこれで良いとして、武器の種の確認に行きますか」

 

 異界内に設置した道具などを片付けて、回収忘れも無いのを確認し、異界を閉じて後片付けも終わったら、植物の栽培実験に使っている異界へと移動する。

 栽培用に環境を整えている区画で各武器の種を畑に植えたら、結界に霊力を注いで時間加速を開始。

 結界内のマグネタイト濃度や生育状況のデータを確認しつつ、早送りの様に急速成長する様子を見守ることしばらく、無事に花を咲かせて種を付ける所まで行ったため、結界を解除して各種データを保存する。

 

「実った種を植えてもう一度正常に育つかの確認はするとして、武器の方は確りと育ってますね」

 

 種を実らせて枯れた草の茎を握り地面から引き抜くと、僅かに反りを持つスラリとした日本刀が現れる。

 確りと栄養を蓄えた土壌で育てただけあって、レベル帯としては大体30後半ぐらいの霊刀と言った所か。

 生育期間は土地周辺のマグネタイト濃度によって前後するみたいで、GP10までなら大体一ヶ月、GP20なら半分の二週間と、GPが10上がる毎に生育期間が半減して行く様子。

 

「宝玉ピスタチオみたいに、取り込んだマグネタイトを内部で循環させて増幅する機能と、マグネタイトを栄養に変換する機能を持たせたのは正解でしたね。下手したら植えた周囲を急速に荒廃させる環境破壊植物になる所でした……」

 

 周囲のマグネタイト濃度によって生育期間が短くなると言う事は、その分短期間に周囲の栄養やマグネタイトを急速に吸収すると言う訳で、MAG増幅機能や栄養変換機能が無かったら、土地の栄養も周辺のマグネタイトも枯渇させながら育つなんて事になってたかもしれない。

 まあ其処まで環境破壊する前に吸収可能な範囲から栄養やマグネタイトが枯渇して、成長出来なくなって枯れるだろうとは思うけども……。

 兎も角、アトリエ式錬金釜で作成した第一弾の種は無事に育ち、収穫した武器も十分実用に耐える性能となったのを確認して、先程収穫した種で第二弾の栽培を開始する。

 

「いくつか環境を変えての栽培実験も終わりましたし、データをまとめて購買部と農業部に話をしに行きますかね」

 

 第二弾も普通に成功で終わり、土地の栄養が少ない場合やマグネタイト濃度が低い場合など、環境を変えてのデータも集まったところで、武器の種の作成を完了とする。

 ちなみに、購買部で販売する際の概要説明はこんな感じ。

――――――――――

・武器の種

種を植えることで、種の形と同じ種類の武器が根っこに形成される幻想植物。

種類は片手武器や両手武器に投擲武器などが有り、投擲武器に関しては根っこに複数個形成されます。

収穫時期は、花が咲いて種が出来た後、葉っぱや茎が枯れ始める辺りで、種を植えた場所周辺のマグネタイト濃度(GPの数値)により、種植えから収穫までの期間が変化します。

※GP10以下は約一ヶ月、GPが10増える毎に栽培期間が半減します。

周囲のマグネタイト濃度や土地の栄養状況、日照や水分量などにより、収穫出来る武器の性能も変化する点にはご注意下さい。

――――――――――

 なお、基本的に栽培して収穫出来る武器は、元にした武器の玉鋼と同じ素材だけど、マグネタイト濃度が十分なら種と一緒に金属を埋めれば、その金属を使った武器になるし、その後実った種を植えれば、新しい金属を使った武器の状態を受け継ぐのを確認している。

 そのため、例えばレベル上限が低い現地民でも、武器の種を使えば普段扱えない種類の金属を使った、そこそこの性能の武器を収穫可能だったりする。

 まあそこそことは言ってもガイア連合(私達)基準なので、レベル上限の低い現地民としては十分以上の性能だろうとは思うけども。

 

「よし、データのアップロードは完了。それじゃまずは農業部の方ですね」

 

 足取り軽く山梨へと転移して敷地内を歩く。

 いつも騒がしい気配の漂う山梨第一支部も、十月に入ってから心なしか騒がしさの質が変化している様に感じるのは、いよいよ終末予定日まで一ヶ月を切ったからだろうか。

 泣いても笑っても終末の時は目前、せめて心置きなくその時を迎えられる様に、私は今日も心のままに生きていく。

*1
『【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録』様より、武器製造班でも初期からの無茶ぶりに応えてきた事で、修羅勢扱いされている古参の鍛冶師の一人。

*2
拙作の〝122:創ってから考えるのも割とある事〟にて登場した、設計図を霊符として転写可能にする道具。

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