【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
崩壊の始まりは日の出と共に始まったらしい。
葦原荘内に響く緊急事態のアラームに飛び起き、戦闘準備を確認していると、支部の管理をしている九十九式自動人形〝葦原〟の声が館内に響き渡る。
『巌戸台支部所属の各員に報告します。日の出を切っ掛けに帝都内各所で穢教鳥の出現が確認されました。事前の占術予想から、メシア教過激派による悪魔召喚プログラムを用いた召喚テロと判断されます。同時に、ガイア連合盟主より、予てより予想されていた終末の日が確定された旨の通達が行われました。通達内容はガイア連合のサイトからご確認下さい。また、これより帝都はメシア教過激派との戦場となりますため、葦原荘は対終末シェルターとして稼働を開始致します。巌戸台支部所属の各員に置かれましては、当シェルターへの残留、或いは帝都外への脱出等、各々後悔の無い選択をされますよう。――以上』
そこそこ長い話だったが、要は終末案件が動き出したから、巻き込まれたくないなら帝都外へ逃げるか、葦原荘の中に籠もっておけって事だな。
まあ放送の内容は兎も角として、防音の確りしている個室内からだと廊下を走る音が微かに聞こえるぐらいだが、既に慌ただしく動き出してるみたいだし、私もさっさと合流するとするか。
「ほぼ同時か、まあ琴姉は既に出てるっぽいが」
「夜明け前にはもう動き出してたみたいですわね」
「琴音は目的達成したらこっち見つけて合流するだろうから放置でいいでしょ。それより私らはどう動くん?」
「拙者と裕奈は、助けたい者達は既に保護し終わってるで御座るからなぁ……」
「私らとしては、優先順位的に後回しにしちゃったボドゲ部の後輩達をシェルターか、東京の外まで避難させたいかな。道中で倒せる悪魔は倒しつつって感じで」
美砂の言葉に続いて麻帆良堂の皆が同意の言葉を重ね、他に優先する意見も無いって事で、早速昨日と同じく私が車を運転して、ボドゲ部員の安否確認へと向かう。
ちなみに今ボドゲ部に所属している後輩達は、全員他県出身で学生寮住まいとの事。
そんな訳で可能な限り急いで来たんだが――
「ちっ、こりゃメシア教の召喚プログラムがここで使われたか?」
「危機感の無い学生が不用意に手を出したって可能性も考えられるけど、穢教鳥以外の悪魔が居る感じも無いし、メシアンが学生に紛れてたって考えた方が良さそうね」
「ナイちゃん達みたいな半終末後に避難してきたのが居ればメシアンへの警戒も出来ただろうけど、中高大一貫で人数多いし、紛れ込むのを防ぐってのは難しいよね~」
「考察は其処までにして、準備も終わったし突入するよ! まず目標はボドゲ部員の安否確認、道中遭遇する穢教鳥は適宜処理、安否を確認したら再度方針確認するけど、基本は穢教鳥を殲滅しながらの脱出、可能なら殲滅したいけど無理はしないって事で」
「承知! 前衛は任せて貰うで御座るよ!」
「私はサポートメインが良さそうですわね、不意打ち対策に【テトラジャ】*1掛けておきますわ」
こういう事態にもある程度慣れのある私らの動きに釣られて、美砂達も何とか準備を整えられたのを確認し、穢教鳥の気配が充満している学生寮へと突入する。
美砂達4人に関しては、葦原荘のダンジョンだったり近場の霊障案件とかで多少は慣れたと思ったけど、見慣れた学生寮が悪魔の巣窟と化してる状況は流石に衝撃だった様で、持ち直すまで多少時間が掛かりそうか。
つっても立ち直るまで待ってる余裕が有るかもわからん状況だし、今は兎に角救出対象の安否確認に急ぐしかないな。
「召喚プログラム経由故か、レベルは低いが数が多いで御座るな」
「事が起きて30分も経ってないはずなんだけど、男子の生存率は絶望的っぽいか……」
「男は殺して女は掠って犯すって感じだな、こりゃ」
突入してまず感じられたのは、そこら中から感じられる血の匂い。
次ぎに、死臭とも言えるそれらに混じって感じ取れたのは、これもまた嗅ぎ慣れたイカ臭い匂い。
それらの情報と穢教鳥とが合わされば、何が起きたかってのは大体わかる話で、急いで来たと言っても召喚されてる数が数だろう事から、男は殆どが召喚に必要なMAGを得るための生贄にでもされ、今は連れ去る女とここで摘まみ食いする女を選んでるって所かね。
寮内に出現していた穢教鳥のレベルは大体5~10ぐらいだが、一般人だらけの学生寮なら十分以上の脅威だろうし、男共を生贄に使った事で数も多い。
仮に寮住まいしてる覚醒者が居たとしても、昨日の今日で裕奈達みたいに所属している組織に集まってる可能性が高く、メシアン共としては動き易い場所の一つだったって訳だ。
事実、帝都内の各地で穢教鳥出現の情報が来て、直ぐに学生寮へとやって来たから、準備などの時間を入れても大体20分、多く見積もっても30分は掛かっていないんだが、学生寮内をサーチして確認出来た生命反応は数十人程度。
聞いたところ男女合わせて200以上は生活してるらしい寮内で、既に半数以下って事は、私らが到着した時にはもう手遅れだった可能性が高いって事だしな。
「ボドゲ部の後輩で女子は一人だったか?」
「ええ、詩乃って子が一人だけで後は男子ね」
「状況的に生きてる可能性が高いのはその子かな……、まずはその子の部屋を目指そうか」
「部屋ならウチしっとる! 五階の七号室!」
「では階段から行くで御座る!」
感性が一般人寄りな4人の中で、最初に復活したのは割と精神的にタフな所のある亜子で、二年生の詩乃とは結構仲が良かったらしく、互いの部屋に遊びに行く事も何度もあったんだとか。
場所がわかれば途中の生命反応を確認しなくて済む分行動も早く出来る訳で、階段の途中に居る穢教鳥を遠距離攻撃持ちで排除しつつ駆け上がる。
まあ二代は駆け上がる処か、壁や手すりを三角飛びしながら、空中で穢教鳥に攻撃を仕掛けてたりするが、遠距離攻撃手段が少ないからと良くやるよホントに。
二代の曲芸染みた行動は兎も角、裕奈が的確に穢教鳥を撃ち落とすおかげで、止まる事無く寮内を駆け抜け、そろそろ目的の部屋って所で、何やら興奮してる様子の男の声が聞こえてくる。
「――やっぱりメシア教は正しかったんだ! 朝田さんも天使様に祝福して貰ったから気持ち良いでしょ! これからは天使様の楽園で好きなだけ子作り出来るんだ!」
自己陶酔してる感じが良くわかる声と内容から、学生寮の事態を引き起こした主犯の一人ってのは確定として、救出対象が敵の目標だったってのは驚きだが、或いはだからこそまだ連れ去れて無く、命だけは助けられそうってのも良いのか悪いのか。
まあんな思考は横に置いて、先行する二代がドアをぶち破る事を提案してきたのに頷きを返し、直後に槍でドアが切り開かれた所に裕奈が突入。
声の主に素早く神経弾を撃ち込んで
「一応確保したけど、これ情報持ってるかな?」
「怪しいところだが、無駄に道返し玉使うよりは良いで御座ろう。それより羽根を入れられてるかはわからんが、メシア教被害者対応マニュアルに沿って、まずはドリンクタイプのガイアカレーを飲ませる所からで御座るな」
「被害者の対応はお二人に任せますわ。とりあえず近寄ってくる穢教鳥の気配もありませんし、私はCOMPの方調べて見ます」
「そんじゃ私は粗末なもんぶら下げてるこれの尋問するかね。どうせたいした情報は出てこねぇだろうが」
「あんた達行動が早過ぎるわよ!」
「レベル差が倍以上有るんだし、仕方無いとナイちゃん思うかな~」
「こっちは、追いかける、のも、一苦労、なんだけど……!」
追加の穢教鳥が出てこないか警戒しつつ、裕奈と二代が後輩さん――朝田詩乃って人の治療、ペリーヌと私で学生寮に起きた事態に関する情報が何か得られないか調べ始めたところ、麻帆良堂のメンバーも追いついて来たので、全員部屋に入った所で扉を閉めて、簡単な隠蔽結界と消音結界を展開しておく。
ちなみに消音まで入れたのは、殺されてこそいなかったが穢教鳥に【
治療の方に4人が加わった所で、魔女の2人には尋問の方に参加して貰い、師匠から教わったレシピで作った自白効果のある丹薬を眠ってる男の口に押し込んで飲ませる。
そんで殴り起こしてから尋問してみた所、学生寮内に出てきてた穢教鳥のレベルが低かった事から予想してた通り、メシアンとしては下っ端も下っ端で、数人の男子学生がメシア教からCOMPを渡され、人間牧場に連れて行く女の確保と、五島陸将に対抗する戦力確保として穢教鳥を召喚する生贄を用意する代わりに、連れて行く女を1人好きにして良いと言われたらしい。
んで、今日の決行日時になったから真っ先に生贄としてメシアン以外の男を殺して、穢教鳥が女達に【
「わかりやすく下衆なメシアンだったな」
「メシアンが良くやる行動で捻りも無かったわね。別に変わり種なんて欲しくないし、1秒でも早く死んで欲しいけど」
「用済みのコレは喜劇*2を飲ませれば後は適当に処理しても大丈夫だけど、他のメシアンはどうしよっか」
「再利用防止を考えるなら、中身入りの喜劇でぶん殴った方が早いだろ*3。救出対象も到着時点で1人を残して手遅れってのが確定したし、序でだからメシアンと穢教鳥は殲滅してから次を考えるのが良いんじゃないか?」
「私もそれに賛成だけど、コレの処理は詩乃がしたいかも知れないから聞いてから決めましょ」
「それもそうだね~」
「だな、まあ一応喜劇は飲ませとくか、確か栓を開けた奴があったはずだし」
って事で、最後に喜劇を一杯分飲ませた後、聞けるだけの情報は聞いたので【ドルミナー】で再度眠らせ、治療の様子へと視線を向けるが、どうやら被害者の後輩さんはだいぶ芯の強い女性だったみたいだな。
「ソレ、もう撃っても大丈夫なのよね?」
「おう構わんぞ、殺した方が良いじゃなく、殺しておかないといけないタイプの奴だからな」
「ありがと、今まで色々悩んでたけど、銃を見てこんなに頼もしく思えたのは始めてよ」
その手に裕奈が使ってたグロックを構え、躊躇いも興奮も無く冷静に引き金を絞る様子は、怒りが一周回って水鏡の様に凪いだ感じだろうか。
乾いた音を立てて銃弾が男の心臓を貫き、明確な意志を持って殺した事が切っ掛けになったのか、体から湧き上がる様に一体のペルソナが浮かび上がり、高らかに名を告げる。
《我は汝、汝は我 我はナスノヨイチ、古今無双の弓取りなり!》
「コレも一応は覚醒してたから、ワンチャン覚醒するかな? とは思ってたけど、まさかペルソナ使いに覚醒するとはね」
「
「説明はもちろんするけど、それより学生寮を襲ってる奴らをどうにかするのが先……かな?」
「女子生徒の殆どが穢教鳥に既に連れ掠われた後みたいだけど、其処のゴミと同じメシアンがまだ何匹か居るみたいだし、それだけでも処理して安全を確保してからよ」
「つーこって、美砂達はこれからメシアン狩りな。半ば悪魔みたいなもんだし殺人童貞切るには丁度良いだろ、どうせ東京から脱出するまでの間に何度も殺さないといけない場面に遭遇するだろうしな」
「ですわね。対メシアンの武器として効果の高い喜劇のボトルはまだまだありますから、仮に割れてしまっても大丈夫ですわ」
行きがけの駄賃にぶっ殺してこいと言われるとは予想してなかったのか、まだまだ一般人寄りな四人が驚いた顔をしているが、朝田が今さっきぶっ殺した状況を見て覚悟を決めたんだろう、少し間を置いて頷きを返す。
んな訳で、朝田への説明と護衛に二代とペリーヌにマルガの3人を残し、他で寮内に居るメシアンの処理に向かう。
なお、学生寮に居る穢教鳥は既に数える程になっていて、それはつまり女子生徒の運び出しが殆ど終わっているって事。
そんでもって私らが居る事は気付いて居るのに、この事態を手引きしたメシアン学生は未だに寮内に留まっているってのは、つまり捨て駒として置いていったって事だろうな。
「――っせい!」
「おお、ナイススイング! くぎみー」
「くぎみー言わない、……ったく」
「嫌な感触だけどさ、脅威となる害獣を殺すって奴、サブカルでよく言うみたいに慣れちゃダメだけど、割切らないといけないよね」
「あはは……、ウチもまだ感触残ってるけど、心を鬼にしてってのはこう言う時の事なのかなぁ……。この子みたいに理不尽に色々奪われるのを減らす為に、必要な事だって……」
「裕奈もそうだったけど、殺しに関する意識って銃社会育ちの私らとは感覚が違うんだろうな」
「ナイちゃんは生まれも育ちも魔女の里だからマリッサとも感覚が違うと思うけど、殺すための道具が身近に有るかどうかってのは大きいんじゃないかな~」
「私も銃で殺した時はまだしも、鈍器とかで殺した時は手に感触が返ってくる分精神にくるよ、やっぱり。ここのメシアンみたいに明確に消さないとって思う奴については流石に割り切れるようになったけどね」
「そうなると、最初っから躊躇いの無かった二代が例外だったって事か」
「殺し技を含む槍術を相伝してる家だしそりゃねぇ……。精神修養の目的で家畜の屠殺をした事もあるって聞いた事有るし」
「師匠も言ってたけど、やっぱ死を忌避しすぎるってのも問題だよなぁ。特にこれからは」
円が喜劇のボトルを思いっきり振り回して、私らが部屋に入ってきたのも気付かない程に夢中で腰を振ってる
覚醒してから今日までの約2ヶ月で、悪魔を相手にした戦闘は何度も繰り返してきた4人だけど、タイミング的に良い感じの
まあ多少は悩んで居られるぐらいの余裕があるだけマシかね? ペルソナ使いに覚醒した朝田ほどでは無くても、2ヶ月の修業で痛みも含めて色々と経験してるし、精神的にもそこそこタフには成ってるだろうしな。
今は
「よっと、コイツでラストだな」
「メシアンは殺せば良いから楽だけど、助けた8人は……葦原荘で受け入れしてくれるかな?」
「無理しない範囲で助けられるだけは助けようって方針だったけど、近くのシェルターに避難誘導するぐらいで、今回みたいな身動き出来ないレベルの救助は考えて無かったよねぇ」
「瑞樹さんが支部長なんだし、聞いて見たら良いんじゃ?」
「師匠は普段あちこちに居る分身も回収して、昨日から電脳異界って所行ってるからな……。まあ連絡着くかわからんが、一応メール送ってみるか。ここ出る段階になっても返ってこなかったら、近くにある別のシェルターにでも運ぶって事で良いんじゃないか」
「出来てもそれぐらいか……」
学生寮内に残っていた最後のメシアンを処理し終わり、穢教鳥も完全に居なくなったのを確認して、学生寮が一応は安全地帯となった所で、後回しにしていた問題へと目を向ける。
まあ簡単に言えば、
一番簡単なのは、直ぐ近くにある巌戸台支部こと葦原荘に連れて行く事だが、あそこ少し前に漸くガイア連合の銀札も宿泊とか部屋を借りたり出来る様になったぐらい、住むことを制限してる支部だからなぁ……。
依頼を受けたり食堂を利用するとかぐらいなら、登録したての銅札でも一応可能にはなってるが、それも銀札のと同じで七月ぐらいからと最近の話。
そんな支部に覚醒者でも無い一般人を避難させて良いのか? って思う所なんだが――
「うおっ、もう返信きた。時間加速してるって聞いてたが、どんだけ時間差有るんだ……?」
「端末操作して1秒も経ってないよね?」
「でもまあ、連絡着くってわかっただけ良いんじゃない? それよりなんて書いてあった?」
「ちょいまち、……なるほど、とりあえず助けた8人については葦原荘に連れてって良いらしい。つーか琴姉も未覚醒の友人を避難させてるらしいし、終末後を考えたらメシアン並に酷いのでも無ければ避難を拒まない様にしてるとさ」
「あー……、もしかしてナイちゃん達が葦原荘を出た後にでも伝達された感じ?」
「アプリの所属支部からの連絡に詳細は書いてるらしい。まあ開いてみたら、更新されたの私らがここに突入した頃辺りだったが」
そりゃ見落としもするかって感じはあるが、この後どうするかって考え始めた時に、確認の一つでもしとけばって話なんだよなぁ。
とは言え、情報の見落としを無くすってのは流石に無理のある話だが、そう言ったのに気付けるかってのが生死を分けることもあるのがこの業界な訳で、ちょっと気を引き締め直すべきだろうな。
「ま、見落としてた事の反省はするとして、助けた8人をどうするかも決まったし、後は詩乃がどうしたいか聞いてから次の行動だね」
ちょっと微妙な空気になった所を裕奈がまとめ直し、救助した8人は師匠に教わって作った一反木綿型簡易式神に乗せて運び、朝田の部屋へと戻ると、そこでは既に荷物も収納し終わって、少し広く感じる部屋になっていた。
「戻ったか、こちらは既に準備も終わっているで御座る」
「あ、この後どうするかってのもう決めたんだ」
「はい、先輩達に色々と説明して貰いましたので、東京以外もこれから大変になるみたいだし、実家に居る母の様子を見に行こうかと」
「お、説明終わってどうすんのかも決まってるのか、そんじゃ一旦葦原荘にこの人らを置きに行くから、その後東京の外まで送ってく感じだな」
寮内の
ともあれ、日が昇ってから2時間経つかどうかって間でもうこんな事態が起きてるってのは、今日は一日が凄く長く感じられる事になりそうだな……。
オリキャラ紹介
・朝田 詩乃
SAOヒロインの一人の、現実での姿と似た容姿を持つ少女。
原作持ちの因果が働いたのか、過去に母を守る為に強盗から銃を奪って撃ち殺した事があり、それがトラウマになっていたが、自分を性的に襲ってきたメシアンを撃ち殺した際に克服し、ペルソナ使いに覚醒した。
ペルソナ発動時は、叛逆モードの様に見た目が変化し、GGOのシノンみたいな感じになる。
ペルソナは【月 ナスノヨイチ】