【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
元日早々の神事にかこつけた祭り騒ぎも恙なく終わり、提供した酒類で興味に火が付いた連中が動き回った事で予定よりも早く酒蔵の建設が進み、それに合わせて表向きの酒造とオカルト側の酒造に分けてどんな酒を造るのかの話し合いに結構な時間が掛かったものの、結局私が好き勝手造った酒の中から、ハクネキを筆頭に気に入った物をそれぞれで研究し、ダウングレードしたとしても自分たちで再現を目指すと言う話になったらしい。
まあ私の霊能が製造に絡んだ時点で微妙な失敗原因程度は無視されるっぽいから、技術の蓄積って意味では私が関わらない方がいいと言う判断は分からないでもないんだけど……。
「好き勝手に酒造してって要望は、あれ多種多様な酒を飲む口実が欲しいだけですよね。絶対」
ふと三ヶ月も前の事を思い返してしまったのは、車に揺られる時間がいい加減長くなってきたと言うのもあるだろうか。
「そりゃそうだろ、果実酒各種に焼酎リキュールどれもが特上品だからな。俺としちゃ和菓子リキュールシリーズを量産して欲しいんだが……、いっそ派出所に併設でもしてみるか?」
ポツリとこぼれた呟きに反応してくれた銀時ニキは、そっちもそれなりに暇を持て余していたのだろうか、会話のネタとして拾ってくれるたようだ。
「銀時ニキの甘党も大概ですよね。身体系状態異常無効のアクセでも体質自体が変化したら対処出来ないんですから、せめて〝ディスポイズン〟は定期的に使って下さいね」
「任せろ、週一で飲む様になってから糖尿病予備軍の診断はされなくなったからな」
こうして話している事から分かる様に、現在は銀時ニキや膝ニキと一緒に四国は香川へと向かっている途中だったりする。
年明け以降も慌ただしく色々やっていたら気が付けばもう四月の上旬、一年の四分の一が過ぎていた。
その間にやっていたこととしては、生産系だと前述した酒蔵建設関連と酒造、序でに味噌や醤油などの醸造も手を出したけど、そっちはそっちで食品加工系を専門にしたい技術部が引き継いで行った。
戦闘関連だと、星霊神社に来てからの食事情や
それと合わせて修行場異界での
まあちょいちょい会話のネタを変えながら話している中で、そんな事を考えていれば雰囲気からある程度は察せられるモノで。
「何か成長を実感して充実した顔してるけど、探求ネキの修行風景って控えめに言っても地獄だったと思うんだけど?」
銀時ニキと一緒に地方回りすることが多く、膝に爆弾を抱えている事から激しい修行をすることが出来ない膝ニキが、私の雰囲気の変化から何やら思い出したのか微妙に青い表情を浮かべる。
「あ、そんな顔してました?まあドモンニキと流派東方不敗を再現するために色々鍛錬してた時の事を思い出してたのは事実ですけど」
「あれそんな意図あったのね。つーかシャイニングフィンガー擬きとかは出来てたよな」
「【
「手ぬぐいで岩を貫通するレベルで様になってきた程度って……。修行勢というか修羅勢と言うべきではないのかな?」
膝ニキが銀時ニキと一緒に宇宙猫になってるけど、修羅勢というのはある意味言い得て妙かも知れない、修行場異界の奥へ向かい強くなることを目的とした人達ではあるけど、同時に飽きることなく戦い続けると言うことでもあるわけだし、多分今後一定を越えていく人達は修羅勢と呼ばれる事に成るんだろうね。
「まあ私の日常については置いといて、それより今回の派出所設置交渉の方ですけど、銀時ニキも膝ニキも良いんです?」
「あ?あーまぁ、しゃーねーだろ。前回でも何つーか、限界ギリギリどころか踏み越えてる感じだったしよ……」
「僕と銀時君で回った中で、既に滅んでしまっていた所を除くと、一番余裕が無さそうな場所だからね。それに、飛び回った事で現金の蓄えはそこそこ出来たから、そろそろ家族と落ち着いて暮らせる場所を用意したかったのもあるし。後はまあ、あの時の光景がちらついて罪悪感が湧いてくるのも否定出来ないけどね……」
「若干トラウマだけど寝覚めも悪いって所ですか。まあそう言う人情家な所は悪くないと思いますよ、私は。それにガイア連合としても、個人で持ち出しする分には好きに助ければ良いってスタンスですし」
まあ二人の反応からも分かる様に、今回私が一緒に車で向かっている理由の一つは地方霊能組織である〝大赦〟が前回やらかした事が関係してたりする訳で、流石に全裸で土下座してなりふり構わず救いを求める様な組織が今後も出てこられては困るのが正直なところ。
私も含めて前世〝俺ら〟的に非情になりきれないって部分は少なからずあるわけで、だからといって無償でどこもかしこも救うなんてのは物理的にも心情的にも無理だし、実利的にもやってはいけない事ってのも事実。
そう言った経緯もあって、個人で持ち出しして派出所を設置すること自体は良いとしても、なりふり構わず縋り付けば何とかなるなんて思わせる様な前例を作るわけにも行かないため、全裸土下座みたいな人の迷惑を顧みない様な行動で派遣員(俺ら)への無体を行った相手に相応の罰というか、そう言うことをしでかしたら新技術の人柱にされても文句を言えない立場になるよ?と言った前例を作るのが目的で付いて来た訳だったりする。
「まあ俺らの事情は分かってるだろうから良いとして、だ。探求ネキの新技術ってのは大丈夫なのか?運営陣の方でゴーサイン出たって事は、問題無いって判断されたんだろうけどよ。これから長い付き合いになるだろう相手に恨まれる様な事は勘弁して欲しいんだが……」
「ああ、新技術って言っても動物実験までは成功してますし、神主にも確認して人相手でも問題無い事は確認してますよ。神主自身も可能な技術ですし」
「技術自体は確立されててショタおじからの許可も出てるなら、まあ……良いのかな?でも、それなら何故新技術って言い方を?」
「一応私が人相手にするのは初めてなので、形式的には医薬品の治験みたいなものってのが一つ、対外的に人柱と罰のイメージを持たせる目的が一つ。後は神主なら手を握るぐらいでも可能でしょうけど、私は初めてやるから房中術を絡めたやり方になるのもあって、厳密にショタおじが同じ方法での実績があるわけじゃないので、ある意味新技術ってのも間違いじゃないのもありますね」
「そうだった、コイツもミナミィネキの同類だった……」
「ふぅ……、僕は聞かなかったことにするよ。さて、そろそろ橋も終わりだね」
何やら二人の中でなかったことにされた感じも有るけど、それはこの際どちらでも良いことなので置いておくとして、それなりに長かった移動時間もようやく終わりが見えてきた。
流石に香川へ到着した時間が遅かった事もあり、予定通りに宿で一泊し、訪問予定を告げていた翌日に大赦の社へと向かう。
「――つー訳で、この辺に〝スーパーうどんマウンテン〟と名付けされた大異界が出来たって根願寺から聞いたからよ、この地にうちらガイア連合の派出所作るがいいか?お代は……(払えるもんなんて無いだろうし)異界攻略2回ぐらいでいいだろ」
流石に地方霊能組織として、曲がりなりにも体裁を保っていただけはあるのだろう、大異界発生も認識していた様で――もしかしたら大赦から根願寺へと報告された可能性もあるが――銀時ニキ達がこうしてやって来た事への不信感は無さそう、というか凄い歓迎の気配がするね、特に後ろに控えてる中学生ぐらいに見える女の子二人から。
「ガイア連合の方々がこの地に拠点を作られると言うことであれば、私達がどうこうできる物でもありませんので、そこは良いのですが、派出所を建てる事によるデメリットなどはございますでしょうか?」
「え?派出所建てるデメリット聞いちゃう?まあ上の方から聞かれたら説明しろって言われてるから説明するが、派出所を作ると地脈の力を派出所に集中させるから周囲に異界が発生し難くなるし、野良の悪魔が周囲に出てこなくなるらしい。つまり野良の異能者が発生し難くなるって事だな、霊能組織としては新人の確保が難しくなるだろうが……」
交渉の責任者として説明している銀時ニキが何というかばつの悪そうな表情を浮かべているのに対し、説明が進むに連れて大赦の代表――浅間さんと言ったっけ?――の表情というか気配も含めて感謝というか喜びに満ちあふれていくのが何とも不思議な光景だよね。
要求する側が負担を強いる事を苦々しく思っているのに、要求される側がむしろウェルカムな状況ってのも。
「そんな程度の影響でしたら、是非建設をお願いしたいぐらいです!むしろもっと規模を大きくすることは出来ませんか?」
「はぁ?!いや、そうするとあんたら大赦の神社に張られてる結界に重なるじゃねーか」
「家の神社の結界など対して効果も無い状態ですし、最悪神社を壊すなり移設するなりしますので――」
「何言ってんだコイツ、あーガイア連合としてもそこまでやるのはめんどくせぇからな!そんならあれだ、どうせならガイア連合の下部組織にでもなるか?そしたら神社の所有権の譲渡や絶対服従することになるぞ?」
この必死さというか、なり振りの構わなさを感じさせる回答と、現状を理解しているのに自分たちの足元というか神社の結界に関する理解が足りていないのを考えると、運営に貰ってきた情報通りって事で良さそうかな。
これまで各地の霊能組織から来た依頼の対処や、連絡途絶になった地方を調査した結果を運営でまとめて、過去視系統異能も使った事で分かった事実だけど、戦後日本でメシア教による霊能者刈りが行われて、当時根願寺と繋がりのあった霊能組織はほぼ全て、才能ある霊能者が根切りにされていたらしいんだよね。
更に根切りと合わせて霊能関連の技術書とかも殆ど焚書されたみたいで、地方霊能組織としての枠が残っていても、実体はほぼ素人集団なんて所が多いってのが、地方派遣された人達の共通見解だったり。
ただ、そんな中でも多少は技術を復刻できた組織もあって、そういう所は変に自意識過剰か、多少でも現状が見えてしまった事でガンギマリになってるかの両極端になる傾向がある様で、大赦はどうやら後者側の様子。
多分覚醒の儀式っぽいのは暫定でも復刻させられたから、浅間さんも含めて一応覚醒している範囲の人はいるけど、技術関連は殆ど全滅したままなうえ、メシア教のせいで才能が無い血筋だけを残された事に気付いていて、このままだとこの地方一帯が確実に滅ぶと察せられているからこその態度、と考えると筋は通るかな。
銀時ニキが話をしている間に、運営に貰った情報を元にこっそりと去年から鍛えてきた過去視やサイコメトリー系の術を使い情報を集めていたところで、銀時ニキが何やら阿呆なこと言い出したので慌てて止めることに。
「おら!即決で足舐めでもしてみろ!やれるもんなら考えん――」
「阿呆ですか貴方は!!」
コメディ体質というか悪ノリする性質というか、シリアスな空気に耐えきれなかった様子の銀時ニキがおふざけして、前回のトラウマを自分で抉る様な冗談をかました所にツッコミのハリセン(呪符ハリセン打撃属性)を叩き込む。
それと、私と同時ぐらいに動き出して、全裸で足舐めかまそうとしていた浅間さんにもチョップかまして服を着させ、的中した不安の対処のために場の主導権を握ることに。
「銀時ニキは前回の事で反省してないんですか?全裸で土下座することも辞さない覚悟ガンギマリ勢相手に、あんな事言ったらどうなるかぐらい想像して下さい。とりあえず正座して反省して置く様に、良いですね?コホン、では改めて、ガイア連合技術部所属の瑞樹と言います。今回の派出所設置に伴い、設置場所の検討と結界及び設備の用意を担当します。序でに、前回の事を踏まえて男性陣のみではまた変な前例を作られかねない、とガイア連合運営陣からの判断も有り、現場判断するための権限も込みで同行することになりました。まあ実際前回の二の舞になりそうでしたし、運営陣の判断は間違って無かったようですね?」
「え、えっと……その……」
場の主導権を握るためとは言え、威圧も込めて霊力を開放した影響でだいぶ萎縮させてしまった様で、組織の長として返答しようとした浅間さんはまだしも、後ろで控えていた子達は気絶してしまった子も出る始末だった。
「まあ細かい話は後で伝えるとしますが、とりあえずガイア連合というか一般社会とも関わりのある組織として、全裸で土下座されるなんて社会通念的に風評被害受けそうな事をされるのは困りますし、他の地方霊能組織に真似されても困るんですよね。ただでさえ犯罪すれすれの勧誘してくる地方組織もいたりして、場合によっては根願寺とも情報共有して取り潰しに動かないといけない事態もあったりしましたし」
実際根願寺へ送られた救援依頼を回された形で地方へ行って、救援を出した地方霊能組織に媚薬を盛られるのはまだ良い方で、異界攻略後に毒を盛って成果を横取りしようとした組織なんてのもあったりして、最悪根願寺にも話を通したうえで、〝悪魔により一族全てが滅んでいた〟ことになった地方もあったりする。
そんな話をすれば最悪の可能性を考えてしまうのも仕方ないことで、私の話が進むにつれて青ざめていく大赦の人達には申し訳ないが、今後の手間を減らすと言うか見せしめの一環に利用させて貰う事は、さっきのやらかしで確定したので諦めて欲しい。
まあ元々そのつもりだったと言うのは言わぬが花でしょう、どの道やらかすだろうって予想で私が来てたわけだし。
「とは言え、貴女方の事情を何も知らない訳でも無いですし、こちらの二人がココに拠点を作るための働きかけをしていた事もあります。そのためガイア連合運営陣としては、今後の続発予防と同じ事が起きた時の罰則を明確化するために、ガイア連合技術部が開発した新技術のテストケースになって頂こうという結論になりました」
「そ、それは……所謂人柱、と言う物では……」
「性質としては医薬品の治験みたいな物ですね。まあ治験の方は志願者を対象にしますが、こちらは強制という点で罰則の意味合いにする物です。我々は民間団体ですから、法に則った罰則を与える権限なんてありませんからね。なので、こちらにも得が有り罰則として機能する物として、新技術の被験者として徴用するという罰則を設けることになり、その前例として貴女方大赦の方から数名に受けていただくことになります。今後ガイア連合員に無体を働いたら、人体実験の人柱にされても文句を言えないという前例として、ね」
多少露悪的な言い回しと雰囲気作りの演技も合わさってか、浅間さんを含め悲壮な覚悟を決めた人達がいるけど、まあ実際の内容含めた話をするまではそのまま勘違いして貰うことにしよう。
「そ、それでこの地が安寧となるのであれば……、謹んで承らせて頂きます」
「その覚悟、受け取りましょう。では話の詳細を詰めることにしますけど、その前に他の方々は別室で休んでいて貰いましょうか。ここから先の話は技術部側の話ですし、銀時ニキはこれから長い付き合いになるだろう方達との交流も大事でしょうし」
そうして他の人達が別室へ移動し、浅間さんと私と護衛の久遠の三人になったところで、雰囲気作りを止めて普段通りの気配に戻す。
「さて、対外的なイメージ作りとしての印象操作はもういいですかねぇ」
「へ?あ、あれ?さっきまでの背筋が凍る様な気配は演技なんです?!」
「演技六割、呆れ三割、怒り一割ぐらいですかね。全裸で土下座される側の気持ちを考えないのかってのと、そんな事する奴本気でいたんだってのが無いと言えば嘘になりますし」
「うぐっ」
「ま、その辺の話は置いておいて、本題の治験というか浅間さんに受けてもらう技術に付いての説明ですね」
「……はい」
演技は止めたとは言え、人柱にするって話自体は嘘じゃないと思い直した様で、再び覚悟を示す様な表情へと戻る。
「ガイア連合の新技術と言いましたが、実際の所は私が構築したもので【霊質強化術*3】と名付けた術式です。動物実験までは成功していて、後は実際に人への行使が正常に行えるか確認する意味合いで治験というわけですね」
「そ、それは一体どういう術なんです?後、命への危険とかはどの程度……」
「命の危険は別に無いですね。術に失敗したら何も変化が起きないだけですし、成功したら霊能の才能限界を拡張出来るって術ですが」
「それは本当に!!?」
まあ流石に聞き捨てならない話しだろうし、態度が180度ひっくり返るのも分からないでもないが、身を乗り出されると話を続け辛いので落ち着いて欲しい。
「落ち着いて貰ったところで説明を続けますね?」
「……はい」
強制的に落ち着いて貰ったところで説明の続き、そもそもこの術の基本部分としては、私が性別を改造したり自身のスキル構成を弄ったりしている〝魂魄〟への干渉が出発点。
星霊神社にやって来た最初期から行っていた魂の認識ってのは、肉体や霊体、精神と言った自身を構成する魂魄を認識し理解する行為で、その理解が進む中でスキルの在り方に干渉したりって事も出来る様になったわけだけど、この魂魄を正しく認識して解析出来るって事は、魂魄の器自体に干渉して器の大きさを広げることも出来るんじゃないかって所から、ショタおじに聞いたら普通に可能と答えが返ってきた時は頭を抱えたよね。
その際に教えて貰ったのが、所謂〝神の試練と祝福による英雄の誕生〟という儀式、神が英雄候補へ力を貸し与え、その力を制御して試練を突破出来れば、祝福として付与され英雄へ至り、失敗したら命を落とすというもの。
これと魂魄の話を合わせて考えると、英雄候補の魂魄へ限界以上に神の力を注ぎ、神の力によって魂魄がひび割れたり破損して隙間が出来た所に、神の力を制御して埋め立て出来る素質があれば、才能が拡張されて英雄の誕生、素質がなければ破損した所から力が抜け落ちて、命を落とすと言うことなのだろう。
「――という訳で、神の試練と祝福による英雄誕生の儀式と、私の魂魄を認識し解析出来る技術を合わせることで、対象の魂魄に合わせた隙間を創り出して埋め立てる事により、才能の限界を拡張すると言う術になる訳ですね」
「それって、普通に秘術とか秘奥とか或いは奇跡とか呼ばれる類いのものでは?と言うか、普通に神が英雄を生み出す神話再現ですよね??」
「神話だろうと伝承だろうと使える物は使うだけですね。と言うか実際に人に使って望んだ結果が出るのかを知るのが目的ですし、そうやって技術を積み重ねることで見えてくるものがあるんですよ。と言うわけで、これから浅間さんには術を受けてもらう訳ですが、何分初めて人に実施する関係上より確実性の高い方法をとろうと思うんですよね」
「と、言いますと?」
「実は、私が一番得意な魂魄認識へのアプローチって房中術なんですよね」
「へ?」
「と言うわけで、この後浅間さんと房中術しながら【霊質強化術】を施します。正直こうして見ていると種乞いとかゴミ箱のティッシュを回収したりとか、知ったらトラウマになりそうな事もやらかしそうな気配がするんですよね」
過去視やサイコメトリー系で感じ取った覚悟の決まり方とかを見た感じ、それでどうにかなるならやるみたいな感覚を受けるんですよね、この人と言うか大赦の大人組。
「いや、でも瑞樹さんは女性では……」
「私両性具有で男性機能もありますので」
ゴミ箱のティッシュの辺りですっと視線を逸らした所に半眼を向けつつ、ある意味至極当然な疑問に証拠の確認もさせて納得させる。
「銀時ニキは純情派ですし膝ニキは妻帯者ですから、そう言った事に巻き込んで欲しくないんですよね。とは言え、大赦として焦りがあるのは分かるので、それならいっそ私が事の序でに仕込みますので、貴女の他に乳母役の人を一人か二人選んで下さい。その代わりあの二人に過度のストレスを与える様な事を大赦主導でやらない様に、友奈さんでしたっけ?あの子ぐらいの自由恋愛を否定はしませんけどね」
説明も終わったところでやること自体は決定事項だし、大赦としても拒否する内容でもないためさっさと動き出し、大赦的には人数が多い方が良い様で乳母役を二人選定する間に、分身を出して社の結界などについて調査をさせ、浅間智さんと乳母役に選ばれた立花誾さん、小西霊子さんの三人に【霊質強化術】と【房中術】込みでの仕込みと定着まで施し終わったのが数時間後、昼食も頂いたところで分身の調査も終わり、改めて集まって話し合いを再開させる事になった。
「ちょっと探求ネキ?何かあちらさんえらく艶々してらっしゃるんですけど?何してらしたんです?!」
「ナニしてましたねぇ」
「もうヤだこのお子様」
「まあ向こうでも数時間前まで悲壮な気配してた少女達が宇宙猫なってますけど、まあその辺の説明はあちらで勝手にやるでしょうし、こちらはこちらのやるべき事しましょうか」
肩を落とす銀時ニキと苦笑の様な微妙な表情を浮かべる膝ニキを余所に、今後の動きについて話を擦り合わせていく。
「――では、まず社の結界を修復し祭神である神樹ククノチとの交渉の場を設け、しかる後に派出所の場所を選定し社の結界と合わせる形で地域の守護を行うのを当面の目標とし、大目標としては現在ガイア連合グループとして企業再編が進んでいるジュネスの誘致による支部設立と、支部を起点とした周辺一帯の結界強化と言ったところですね」
「はい、こちらとしてはそうなれば最良と思います。とは言えメシア教共により焚書にされたせいで大赦に残された資料は極わずか、結界について等重要なものは特に念入りに焼かれた様で……」
「あ、結界の方についてはこちらで調べたので大丈夫です。一応とは言えまだ残ってますし、解析して類似する方式から当てはめれば元の構成も推測出来ますので」
「調べたって、いつの間に……」
「それは、秘密です」
私の分身に関しては別に知られても問題無いんだけど、態々説明するのも面倒なので秘密と言うことにして、結界を修復する間に派出所の候補地をいくつかピックアップして貰う。
そんでもって結界の修復も終わり、大赦の社殿にて祭神の神樹ククノチとの交渉へと入った訳だが――。
「うむ!まあ状況的に仕方ないだろ、社の結界も修復してくれた様だし、基本的にはその案で構わんが、可能なら俺の分霊を置いておける異界でも用意してくれると助かるな」
「では今もいくつか異界があるでしょうし、場所的に良さそうな所を見繕って分霊用の異界を構築しましょう。準備が出来ましたら降霊用の依り代も含めて用意しますので、異界内部の改造は実際に分霊を降霊した後と言うことで」
「良き交渉であった。ではまた会おう!」
そんな感じで割とさっくり決まり、今度は現在見つかってる異界の場所確認やらで時間が取られる事になったが、これまでの事を考えれば大赦としてはとても気が楽な仕事だったそうな。
なお、交渉の裏話として、私が三人に仕込んだことを気付いていた様で、どうやら今後の展望として氏子の可能性を見出せたのも大きかった様子。
結局、一番の懸念事項であった祭神との交渉が問題無くクリアされた事もあり、その後の経緯は割とスムーズに行ったが、建物の改装と言った物理的なものについて時間が掛かる部分はどうしようも無く、【トラポート】で山梨支部と行き来していた私は兎も角、大赦周辺での活動をメインとしていく銀時ニキや膝ニキは色々と大変だったらしい。
まあその分、私は異界の構築やククノチ分霊の依り代となる式神ボディ作成、派出所の改装が終わったら大赦の結界に合わせた結界を構築して、各種設備を設置、序でにククノチ分霊の異界に許可を貰って各種農作物を植えて、生産収穫出来る体勢を作ったりしていた。
「ねえ銀さん」
「おう、何だ?」
「この雑に繁茂してるネギ、私の使ってる武器より力を感じるんですけど……」
「ああ、ドンパッチソードな、敵の意表を突くと打撃力と混乱付与率が上がるらしい。序でに美味いぞ、うどんの薬味にしてくれってさ」
「あの茶褐色のカビみたいなのが表面に生えそろった樹木は?」
「
「あの人香川を何だと思ってるんです?」
「安心しろ、こいつらは香川とは関係なく思い付きで生み出された植物たちだ。うどんの材料に丁度良いと植えていったのは確かだがな」
「それじゃあさっきからもしゃもしゃしてる葉っぱは何です?」
「
「あ、ホントだ、甘くて美味しい……。ねえ銀さん、あの人何なんです?」
「俺らの中でも弾けてる方のヤベー奴だな」
そんな一幕もあったらしいけど、それは銀時ニキの物語である。
気を込めた掌打を放つ基本技であり、集中させた気により相手を麻痺させる効果も持つ。習熟すると気弾として放つことも可能となる。
切り倒すのも困難な堅さを持ち、枝や幹は削り節として出汁が取れ、肉厚の葉っぱは薄くスライスして刺身にしたり表面を炙ってタタキ風に食べる事も可能。
秋頃には種として団栗を実らせるので、伐採するなら秋以降が望ましい、素材として最上になるのは冬だが、その分堅さも増すため、相応の道具か技量を必要とする。
なお、団栗はアク抜きせずに食用可能となっており、小麦系加工食品と組み合わせる事で風味を豊かにする特性がある。
本来は蔦の樹液を集め煮詰めて作られる物であるが、煮詰める必要無く高い糖度を誇る樹液を大量に採取可能で、樹液を絞った後の蔓からは繊維を取りだす事が出来、引張強度の高い糸や布が作成可能。
秋から冬にかけて大きくなる塊根からは上質な葛粉が精製可能で、葉っぱは煮出すと甘味のあるお茶となり、乾燥させて粉末にすると砂糖の様に使用出来る。