【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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幕間:Q.面倒なギミックの対処法

「それじゃ盛大に行こうか! スピリットエボリューション!」

 

 琴姉がディースキャナを手にそう宣言すると、炎の渦が巻き起こって琴姉の姿を覆い隠した直後、炎が消えると変身した琴姉の姿が現れる。

 私は見た事が無いんだが、琴姉によるとガイアニが制作したデジモンフロンティアってアニメに登場する主人公側のキャラ、リーダーポジション的な少年が変身するアグニモンって言うデジモンをモデルに、女性が変身した場合の姿を師匠がデザインしたとか。

 元のデザインを知ってる裕奈によると、頭部の左右に生えてる角が髪留めみたいに細長く後ろに向かって伸びてたり、肩などの一部装甲が無くなって露出が多くなってるなどの違いが有るらしい。

 

アグニの火よ、邪悪を薪とし焼き払え

 

 師匠が編み出した言霊技法【混沌の言語(カオス・ワーズ)】を使い、琴姉が変身に使った【太陽 アグニ】のペルソナと、アグニモンの認知から火の概念を展開すると、周囲に在る琴姉が不要と判断した全てを燃やし始める。

 それは周囲の建物や道に敷き詰められている石畳、仕掛けられたトラップからループ空間自体に積み込まれている発情の概念など、文字通りに琴姉が制御可能な範囲に在る邪魔な物全てが燃えていく。

 そうして燃やす事による破壊が行われれば、当然として懲罰執行者も破壊規模に応じて大量に湧き出してくるんだが、空間に充満する発情の概念をも燃料とした火力は絶大で、琴姉が制御して燃やしている空間にシャドウや悪魔達が踏み込むと、瞬く間に燃え尽きていく。

 これが情報共有した後に琴姉から提案された方法であり、いくつかの追加検証をして行けそうだと判断して実行に移された、一切合切燃やして進むと言うもの凄くシンプルな手法である。

 まあ何も考えずに行う脳筋じゃなく、熟慮した上で詩乃への負担を排除しながら進むのに適した方法だからってのが、採用した一番の理由らしいんだがな。

 

「コレを見ると、【呪霊錠】を使った封印でレベル自体は同じぐらいっつっても、概念に関する理解と技量に天と地の差があるって良くわかるよなぁ……」

「浄化の火の概念で発情の状態異常を積み込んでる概念ごと燃やして、燃やせるならソレは燃料になるって概念を更に組み合わせて、8番区画内の発情概念自体を薪に火力を上げてるんだっけ?」

「概念を扱う基本は理屈が通せるか、だそうですわ。多少強引でも部分的にでも繋がるなら、後は認識の押し付け合いだとか」

「私にはその辺の感覚わからないけど、無茶苦茶な事してるってのは感じるわね……」

「概念関連を真面に扱うならレベル40前後は必要で御座るからな」

 

 追加の検証で行った事の1つが、浄化の火で8番区画の空間自体に積み込まれている発情の概念を燃やし、発情の状態異常の進行を防ぎながら行動出来るかって奴なんだが、この状態異常を燃やして防ぐって発想の部分がそもそも私らには無かった所なんだよなぁ……。

 私の得意な水撃属性で言えば、水垢離とかの穢れを禊する概念に聖水などの清める概念などが有る訳で、そこから応用すれば琴姉が燃やしてるみたいに洗い流す霧を作り出したり、侵入を防ぐ結界を張ったりとかも出来たと言う事。

 気付いた後の今なら、そこそこの練習は必要だけど出来る様になるだろうって感覚はあるんだが、恐らく琴姉が8番区画に引き寄せられたってのは、気付くまでかそこからの練習時間かの間で、琴姉にとって望ましくない結果に進む事になると運命力が働いたんだろう。

 それはイコールで私らにとっても良くない流れだったと言う事で、色んな意味で未熟さを痛感させられる。

 

「レベルが上がって色々出来る事も増えたって思ってたが、使い熟すには程遠いって事だよなぁ……」

「そりゃ私や瑞樹とかが教えてるって言っても、レベル31を超えて三ヶ月そこらで使い熟せるなら苦労はしないでしょ。こっちはこれでも5年以上鍛え続けてるんだし」

「うむ、反省は大事だが未熟を嘆くのは些か気負い過ぎで御座ろう」

「その通りなんだが、ここんところ上手く行ってたからな。……よし! 拠点に戻ったら師匠に良い鍛練方法が無いか聞いてみるか」

「鍛練なら私もご一緒致しますわよ。驕っていたつもりは御座いませんが、無意識にでも何とでもなると高を括っていた可能性もありますし、今一度基礎から見つめ直す良い機会なのかも知れませんわね」

「よっし、それじゃ出発前にも話してたけど、2番区画からは敵のレベルも丁度良いから、詩乃のレベリングをしていこうか」

「準備できてるわ。正直何もしてないと変な方向に意識が向くから、戦わせて貰える方がありがたいわね」

 

 1番区画を全部燃やしながら進んで2番区画へ入ると、琴姉が懲罰執行者の一部を燃やさず残す様にして、詩乃のレベリングを開始する。

 ちなみにこれは、いくらでも敵が湧いてくる環境を無駄にするのは勿体ないと琴姉が言いだしたのが発端だが、ただ歩いてるだけだと発情の影響の方に意識が向いてしまう詩乃の、ストレス発散と意識誘導を兼ねての物。

 琴姉が調整して残した敵を詩乃が次々と撃ち抜き、軽快に進む様子を見ると、発情の影響で疼いているだろう体の状況を意識の隅へ追いやれてるみたいだし、今んところは良い感じだろうか。

 

「数は多いが今の私らなら圧力的に倍でも行ける……か?」

「どうだろうねぇ、今は琴音が戦場を限定してくれてるから一方向だけ気にしてれば良いってのもあるだろうし」

「対多数戦を想定するとしたら、奇門遁甲術式辺りでしょうか。結界術と組み合わせれば戦場を限定するぐらいはできるかもしれませんわね」

「こっちは必死に攻撃して倒してるってのに、雑談しながら対処していて未熟とか、よく言えるわね……」

「それが残酷なレベル差って奴かにゃ~、今出て来てるのって詩乃より10は格上のシャドウや悪魔だし」

 

 詩乃のレベリングが開始されてからも順調に区画は進み、今は5番区画。

 出現する懲罰執行者のレベルは32前後になっていて、これは最初に調べた時の情報と変わらず、1番区画だとレベル12前後、2番区画では17前後と5刻みで平均レベルが上がっている。

 どうやら懲罰執行者の平均レベルは、8番区画内の人数に関係無く5刻みで増えるって事で確定して良さそうだな。

 まあそう言った検証は置いといて、詩乃のレベルだと1人で相手するには厳しいレベルまで上がって来たって事で、私らも戦闘に参加する事になったんだが、それならそれで「数体だけだと修業にならないよね」と言い出した琴姉。

 流石に進行方向からだけに限定されているとは言え、最低十数体の群れを相手に連戦する事になり、大量の敵を処理する事になれていない詩乃が、レベル差もあって苦戦している様子が見て取れる。

 とは言え、愚痴を言いながらも範囲攻撃の討ち漏らしを的確に落としていったりもしてるし、言う程余裕が無いって訳でもなさそう感じだな。

 

「後はこんな感じにシャドウが無限沸きする、タルタロスって認知異界に何度も潜ってたからな。この手の対処には流石に慣れてるって所だ」

「こんな地獄みたいな環境の異界が他にもあるの?!」

「と言いましても、私達や詩乃さんで対処出来る範囲に琴音さんが調整もしてくれておりますし、タルタロスに比べれば対処し易いですわね」

「これで対処し易いとか、本当にどんな地獄環境なのよそのタルタロスって……」

 

 通路を進んでるだけで前後から無限沸きするシャドウの群れと連戦したり、下手に分岐路へ入ると三方や四方からシャドウの群れに囲まれて、延々と戦い続ける羽目になったりする地獄……だろうか。

 

「この手の連戦はタルタロスが攻略されて以降久しぶりで、テンション上がるで御座るな!」

「それを純粋に言えるのは戦闘狂(バトルジャンキー)だけだからね? と言うか、二代は蓬莱島に移管されたタルタロスに頻繁に通ってるでしょ」

「ソロや野良で組んで行く事もあるが、やはり皆と共に戦うのが一番楽しいで御座るからな」

「私としては、忙しく戦い続けるのは疲れるので遠慮したいですわね」

「……!」

「詩乃はもう話す余裕も無いか……。まあレベル差的に仕方無いが、それでも的確に狙撃してるし、結構な割合で急所(クリティカル)撃ち抜いてチャンス作ってくれてるから、十分過ぎるぐらいに貢献してくれてるんだよなぁ」

 

 こうして見ると未だ残る発情の影響へ意識を向けさせない為に、戦闘へ意識を向けさせるって目的は果たせているみたいだが、それとはべつの問題が発生しそうな気がするんだが……、琴姉の事だしその辺は何とかなると直感でもしてるんだろうかね?

 まあ私が考えても答えは出ないから置いとくとして、それにしても詩乃の攻撃だとダメージが殆ど通らないぐらいにレベル差が出来た辺りから、急所(クリティカル)狙いの精密射撃に切り替えて、敵の攻撃タイミングを潰す方に戦い方をシフトさせたのを見ると、詩乃の戦闘センスはかなり高い感じがするな。

 射撃なら私らだと裕奈が専門だが、こっちは狙撃も一応出来る程度でメインは中~近距離の二丁拳銃とガンカタだし、狙撃のみなら普通に超えてそうだ。

 

「うんうん、良い感じに戦えたね。そろそろ8番の看板に到着するし、念のため看板に触れてから最後の一戦闘して、8番区画脱出、かな」

「いやいや琴姉、私らでもだいぶキツい連戦を良い感じで締めるのはどうなんだ? 詩乃なんか前とは別の理由で子鹿みたいに震えてるんだが?」

「あー……、少し間が空いた事で疲労を認識しちゃったか。認知異界だと精神が充実してれば肉体的な疲労とかは無視出来るんだけどねぇ」

「うむ、充実し過ぎて戦いの止め時を忘れてしまうのも良く有るで御座るからなぁ」

「それは二代みたいなは戦闘狂(バトルジャンキー)ぐらいじゃないかにゃ~」

「んじゃこれ以上無理させる必要も無いし、後は私がやりますか」

 

 正直どれだけの間戦っていたのかもわからなくなってきた頃、ようやく8番の看板が掛けられている建物の所に到着し、連戦が途切れた事で一気に疲労が襲い掛かる。

 まあタルタロスで似た様な状況に慣れてる私らはまだマシだし、戦いが大好きな二代や琴姉は疲れている様子も無いんだが、延々と戦い続ける状況を初めて経験した詩乃は、発情の影響を強く受けてた時とは別の理由で膝を震わせ、今にも崩れ落ちそうな状態になっている。

 どう見てもこれ以上は無理とわかる様子から、流石に琴姉もレベル上げを継続しようとは思わなかった様で、念のためと8番の看板にそれぞれが触れた後は、8番区画内を更地にする勢いで炎を燃え上がらせ、出現した懲罰執行者も湧くと同時に倒(リスキル)して行く。

 そうして更地になった8番目の区画を引き返して行くと、一件だけぽつんと存在する建物が見えてくる。

 

「燃やしたはずの建物が残ってる時点で、推測が正解だったと言う事ですわね……」

「こうなると笑えてくる違和感だよねぇ」

「これ、懲罰執行者に対処出来るなら、全て壊しながら進むのが一番速いってこったよな……」

「元からそう言ったゴリ押し出来る相手を捕らえる目的じゃないって事だろうね」

 

 見えてきたのは、8番目の区画に移動してきた時にもメニューボードを除いて全部燃やした建物と同じ外見の喫茶店で、区画移動していない証拠とも言える更地の空間に出現していると言う事は、推測した通りに条件を満たす事で出入り口の喫茶店が出現する仕組みだったと言う事だろう。

 

「最後にもう一幕でもあるかと思ったが、何もなかったで御座るな……」

「そりゃ8番出口系を元ネタにしてるんなら、脱出の条件満たしたならそのまま抜けて終わりでしょ。元ネタ的に騙して悪いが、みたいなもんでも無いし」

「そこで残念がってる戦闘狂(バトルジャンキー)は置いといて、さっさと拠点に戻りますかね~」

「だな。歩くのも難しそうな詩乃は体力が余ってる二代に運んで貰うとして、索敵ぐらいはこっちでやるか……かなみに連絡ついたらナビしてくれるか?」

「脱出できましたから瑞樹様に連絡致しましたが、かなみさんは【狂気耐性】の習得が終わった反動でお休み中との事ですわね」

「出てくる前にもう少しかな? って思ってたけど、やっぱり今日中にスキル習得まで行けたんだねぇ。後はカズマと誠君が終われば、攻略も本格化していく事になりそうだね」

 

 そうして〝出入り口となるメニューボード〟の前を通過すると、正解だったらしく8番区画からの脱出に成功する。

 意図的に見落としを誘発させたり、手遅れになるまで気付かせない様に細工したギミックを仕込むなど、作り出した者の悪辣さを感じる8番区画を考えると、いっそ拍子抜けする程に何の妨害も無く抜け出せた事に違和感を覚えるがな。

 ちなみに、後日琴姉が1人で8番区画へと向かい、敢えてループを発生させて延々と懲罰執行者を湧かせ、ペルソナカードや悪魔カードに各種フォルマを荒稼ぎしてきたり、なんて事が有ったのは……まあ余談か。

 ともあれ、8番区画に関する違和感は残るが、私らとしては脱出出来た事が一番で、次点としては反省すべき所や学び直しが必要と感じた所だったりと、色々な課題が見えた事だろう。

 それに琴姉が使ってた師匠の創ったディースキャナってのにも興味があるし、一般向けのでも良いから購入出来ないか聞いてみるかねぇ……。

 

「お帰りなさい、割と大変な罠空間に嵌まったみたいですね」

「たぶん名前を言いたくないアレが造ったっぽいループギミックだったよ。私でも一回は引っ掛けられそうな細工もされてたね」

「琴姉が来てくれなかったら私らは兎も角詩乃はヤバかったし、色々と反省する所の多い探索になったな。正式な報告書は後でまとめるが、とりあえずの探索結果はこんな感じだったぜ」

「なるほど、所々失敗もあったみたいですが、反省点と認識出来ているみたいですから細々と言うのは止めておきましょうか。見た感じと探索結果的に、初見で詩乃さんが今の状態になるのを防げた、と考えるのは無理がありますからね」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、罪悪感はどうしてもね~」

「脱出して緊張の糸が切れたのか眠っているが、発情の影響が続いている様子で御座るからなぁ」

 

 詩乃を背負ってる二代が、若干微妙な表情を浮かべてそう言うのは、、詩乃が時折もぞもぞと動いてるのが理由だろう。

 寝ているからこそなんだろうが、背負ってる状態で敏感な所を押し当てる様に動かれるのは、微妙な表情にもなるよなぁ……。

 

「何はともあれ、まずは詩乃さんを起こして解消させる事からですね♪」

「あ、何かウキウキしてると思ったら、理由付きで詩乃とエロい事出来るからか。そう言えば詩乃って瑞樹の好みにストライクしてるもんねぇ」

「そう言う琴音も割と好きなタイプでしょう? あ、マリッサ達も表面化してないだけで影響は蓄積されてますし、夕食前に発散して一度さっぱりしておきましょうか」

「気が合うってのはそうだけどね。んじゃ部屋行こっか」

 

 拠点に辿り着いて探索結果を粗方話し終わると、提出する報告書の作成などは後に回し、まずは治療――と言う名目でお楽しみの時間って所なのか、上機嫌な師匠と仕方なさそうにしつつもその実、ノリノリで私らの手を引っ張って行く琴姉により、師匠が自室に使ってる部屋へと連れ込まれる。

 その後ナニがあったのかは想像に任せるとして、一つ言えることは、詩乃が正式に私らの妹弟子になったって事か。

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