【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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147:厄介なギミックも使い方次第

 ギミック対処を兼ねた新しい食材を創ったり、外に出られなくて暇していた琴音を外に出られる様にしたりした日から二日後。

 琴音からの追加情報で8番区画が良い感じの狩り場になりそうって事から、私の方でも調査したり専用の装備を用意したのが昨日の話。

 なお、私が装備などの用意をしてる間に8番区画で素材を狩り集めていた琴音は、今頃ベルベットルームに籠もって新しいペルソナの作成でもしている事だろう。

 まあそんな琴音の話は置いといて、8番区画で詩乃――弟子になったので敬称は外す事になった――が大きくレベルを上げた事に対抗心を燃やしたカズマ君の希望もあって、実際にレベル上げの狩り場として使ってみる事にしたのが今現在の状況だったりする。

 

「空間への概念蓄積状況に変化は無し、対策装備の方は十分機能してるみたいですし、後はどれだけ体力と気力が持つかって所ですねぇ……ズズッ」

「あの、瑞樹さん? 調査とか色々するって話だったのでは……?」

「大まかな調査は昨日で終わらせてますよ。今回はかなみさんを含めた3人のレベル上げがメインで、序でに比較調査をしてる感じですから、他の事をしながらでも問題無いですね。フー……ズルズル」

「だからって、人が戦ってる後ろでラーメン食ってんじゃねぇ!」

「動き回ってるから、豚骨の香りが空腹に響くなぁ……」

「ああ、食べたかったら言ってくれたら出しますよ? 料金は其処に書いてある通りですが。それと8番区画に出現する敵ぐらいなら、ご飯を食べながらの片手間でもお釣りが来る程度ですし」

 

 近くに湧いた懲罰執行者を【ナイフ】や【フォーク】で適当に処理しつつ、炭火で丸焼きにしたブラックシェボントレントを贅沢に盛り付けた特盛り豚骨ラーメンを啜る。

 チャーシューのガツンと濃厚な旨味と香りに負けない、こってりとした豚骨の旨味とそれらに混じる小麦の風味を楽しんだ後は、同じくブラックシェボントレントのチャーシューを賽の目に切って、ドンパッチソードなどの具材と一緒に炒めた大盛り炒飯をレンゲで一口。

 下味を付けて炊き上げた米を、ラードや(チー)油などの旨味の詰まった油で炒めた炒飯は、口に入れると適度にパラパラとほぐれ、あっさり目だけど具材と米の旨味を確りと感じさせ、口内に残るラーメンの後味と混ざって旨味の変化を奏でた後、拭い去る様にさっぱりとさせてくれる。

 炒飯で口内がリフレッシュした所で、今度はショゴスワームやミ=ゴ茸を使ったパリパリの焼き餃子を口に運ぶ。

 パリッと音をさせながら一口囓ると、一度乾燥させる事で旨味を凝縮させたミ=ゴ茸やショゴスワームなどから染み出した旨味のスープが、餡から溢れ出す。

 そこでラーメンを啜れば、また違った味のハーモニーが全身に響き渡り、食事と言う至福の時間を彩っていく。

 

「くそっ、美味そうに食いやがって……! 誠! あと何体だ?!」

「後10体!」

「あいよ! 今度こそアイツの方に行く前に、1匹残らずぶっ殺してやる! ペルソナッ!」

「そう言うなら破壊範囲をもう少し小さくしてくれないかな?! 1体か2体ずつならもう目標に届いてたはずなんだからね! ペルソナ!」

「ああカズくん! 攻撃するのは私がバフ掛けてからって言ってるでしょ!」

「いや~、男の子はこれぐらい元気なのが良いですね」

「元気というか、瑞樹さんがそんな料金表出した上に料理で煽ったから、荒れてるだけでは?」

「一杯動いてお腹を空かせて美味しい物を食べる。とても健康で良い事ですね♪」

 

 ナビ型だと遠隔でのサポートでも有る程度レベル上げ可能とは言え、現地に居た方が効率が良いのも確かな訳で。

 今回は私がかなみさんの護衛をしつつ、カズマ――君付けが嫌だと言う事で呼び捨てになった――と誠君の2人で主に戦って貰う感じで進み、適正レベルの区画が更地になったらわざと1番区画に戻ってのリセットを繰り返しているんだけど、ただ漫然と戦うだけだとモチベーションも下がるだろうって事で、ご褒美も兼ねて用意したのが、ジャンニキに鍛えられた調理技術で拵えた各種料理。

 意欲を刺激する為にタコ焼きだったり焼きそばだったりと、匂いだけでも空腹を刺激する様な料理をこの場で調理しながら食べていた訳だけど、男子中学生だけあってそれはもう張り切って戦ってるのを見るに、良い感じにやる気を引き出せている様子。

 なお料金表のメニューについては、一品でレベル10~20ぐらいの装備を一つ買えるぐらいの値段の物に抑えており、百体倒す毎に一食一割引と書いてあったりする。

 まあ簡単に言えば、千体倒せば食事一回分いくら食べても無料って事で、少年達が頑張って敵をしばき倒してたわけだけど、それもようやく目標に到達する。

 

「おっしゃあ! コレでメシだろ!? なあっ!」

「カウント間違いはしてないはずだから、今ので千体終わったはず!」

「お疲れ様、ちゃんと千体討伐を完了してますよ。それじゃ調理しますから注文決まったら言って下さいね」

「あれ? さっきまで特盛りのラーメン食べてたはずなのに、もう無くなってる……」

「さっきまでは匂いを届けるのが目的なのでゆっくり食べてただけですから、あれぐらいなら直ぐに食べ終わりますよ」

「かなみ、んなことよりメシだメシッ! とりあえずさっきアンタが食ってたラーメンと炒飯に餃子な!」

「ボクは普通サイズの豚骨ラーメンとタコ焼き、それから唐揚げとご飯もお願いします!」

「はいはい、直ぐ出来ますよ。っと、かなみさんはどうします?」

「えっと……それじゃあこのカルボナーラで」

 

 注文された料理を手早く仕上げて配膳すると、よほどお腹が空いていたのか食前の挨拶もそこそこにがっつく男子2人。

 しばらく――と言っても【食没】を習得してたり暴食系の覚醒者だったりもしないため、せいぜい大食いの一般人ぐらい――の間料理を作り続けると満腹になった様で、3人とも満足そうに椅子へ背を預ける。

 そんな3人の成長状況を確認すると、食事前までのレベリングで吸収したMAGも定着して、レベルは20目前と言ったところ。

 この後も同じ様に集中して狩りが出来れば、夕食の時間までには詩乃に追いつける感じだろうか。

 詩乃は8番区画を攻略した時に色々と経験した結果、レベル30も見えてくるぐらいまで一気に上がったし、まとめて行動させるならレベル差は少ない方が良いですから、3人にはこのまま高いモチベーションを維持してレベリングを頑張って貰いたいところですね。

 

「食事も終わって一息吐くタイミングですし、今のうちにこの後の狩りに向けた話でもしましょうか」

「あん? 狩りに向けた話だぁ?」

「ペルソナ使いとしてオーソドックスな誠君は、自身でやり易い方法を探っていく感じになるので相談を受け付けるぐらいですが、カズマは最初から無意識に【魔装術】を使って右腕とペルソナを一体化させてますからね。ある程度レベルが上がって霊感などが向上してきたでしょうから、そろそろより効率的な力の使い方を教えて、実戦の中で磨くのが良いかと思いまして」

「あ、やっぱりカズくんの戦い方って特殊だったんだ」

「うーん、この場合の普通ってのは良い事なのかどうなのか……」

「誠君は色々と考えてしまう質みたいですし、手札を増やせると考えれば良い事でしょう。やれる事が決まってる特化型は、一つを極められる代わりに応用が難しいですからね」

「前もそのマソウジュツって名前聞いた気がするんだが、俺がペルソナ発動すると右腕が変わる奴の事なのか?」

「そうですね、まずは【魔装術】についての説明からしましょうか」

 

 と言う事で【魔装術】についての簡単な説明と、全身を変化させた姿を見せる事にする。

 なお、今回付けてきたペルソナは、近接系の指導も出来る様に【剛毅 アルケイデス】を選んでいるため、【魔装術】での全身変化も物理戦闘を主体にしたイメージで構成した物で、身長は元と変わらない180cm前後のままだけど、普段より筋肉質な体に籠手や脛当てなどを部分的に纏う戦士、と言った感じになる。

 

「まず【魔装術】と言っても、悪魔の力を物質化して身に纏う悪魔変身能力者(デビルシフター)を模倣した技術と、ペルソナや悪魔の力を霊体に纏い、意思の力で潜在能力を引き出し制御する完成形の技術の2つが有り、カズマが行ってるのは後者の方になりますね。まあ無意識にやってるためか、今のところは両方の中間みたいな感じになってますが」

「ペルソナ発動するとカズマの右腕に鎧みたいなのが出来ますから、物質化して身に纏うってのはわかりますけど、霊体……ですか?」

「肉体と魂を繋ぐ霊的な体であり、魂を保護する殻みたいな物ですね。肉体と霊体は互いに影響を与え合うため、例えば肉体が欠損したとしても、霊体が無事なら【ディア】などの回復魔法で手足を新たに生やす事も可能ですし、逆に霊体が欠損しても肉体側が無事なら、肉体に合わせて霊体を修復する事も可能だったりします。そして完成形の【魔装術】は、この霊体にペルソナや悪魔の力を纏わせる事で、纏わせた力に術者自身の能力を加えた力を十全に発揮出来る姿へと、こんな感じに肉体ごと霊体を変化させる技術になります」

「ほぉ……随分戦い甲斐のある姿じゃねぇか」

「わっ、体格が増したと言うか、大きくなった様に感じます……」

「今付けているペルソナが【剛毅 アルケイデス】ですから変化はそれほど大きく無いですが、筋肉量や骨の強度、神経の伝達速度などは物理法則を軽く超える性能になってますよ。まあ1番大きな変化は服装でしょうけどね」

 

 普段は仙人らしさも考えて、ゆったりとした袍や袴に布靴である雲履などの霊装を装備してるが、今は物理戦闘主体の姿と言う事もあって、上半身は腕の動きを阻害しないノースリーブのアンダーシャツにタイトベスト、腕には籠手と指ぬきグローブ、下はホットパンツにロングブーツと言った感じで、ブーツは脛や足の甲、靴底に装甲が付いている。

 ちなみに、情報接続加工の応用で装備ごと姿を変化させているため、見た目が変わっても装備してる霊装の効果はそのまま発揮されているけど、【魔装術】での変化の仕方によっては、装備の効果が発揮されなくなったりするのは注意点ですね。

 

「とりあえず【魔装術】での変化がどういう物かは見せましたから、後はカズマなりに力の引き出し方を試すのが良いでしょう。誠君とかなみちゃんの方は、【魔装術】以外のペルソナを用いた技術も追加で軽く説明しましょうか」

「えっと……〝霊魂の目覚め〟?」

「説明と言ってTRPGのサプリが出てくるのは一体……?」

「表向きは陰日TRPGのルルブやサプリですけど、半終末の頃から増え始めた野良の覚醒者に正しい知識を与えて、ガイア連合の下部組織などに登用できる人材を増やすってのも、作ることにした理由の1つなんですよね」

 

 日本に古来から有った知識はメシア教によって多くが失われた上、残った物の中にはメシア教などの手が加わって、不完全処か間違った内容になってる物も有りますし、中にはニャルが関与して大事件の温床になってた物なんかも見つかってたりする始末。

 そんな訳で、ガイア連合的に公開しても問題無い知識をサブカルに紛れて広め、黒札的に重要なサブカルに理解が有る覚醒者の生存率を高めようって思惑が、陰日TRPGを作る事になった理由の1つでもある。

 誠君とかなみちゃんに渡した〝霊魂の目覚め〟は、最初期に出版した悪魔召喚師(サマナー)悪魔変身能力者(デビルシフター)・ペルソナ使いに焦点を当てたサプリで、シフターとペルソナ使い関連って事で【魔装術】に関する記述はもちろんしているし、シフターの変身悪魔やペルソナを使った【O.S.(オーバーソウル)】などの技術についても記載してたりする。

 ペルソナ使いとしてはスタンダードな誠君はもちろんの事、ナビ型でサポート特化なかなみちゃんにしても、ペルソナ使いにどんな事が出来るのかを知るのは重要ですし、それなら一通りの情報を載せてる〝霊魂の目覚め〟を読んで貰うのが手っ取り早い。

 と言う事で、食後の休憩を兼ねて2人がサプリを読んでる間に、カズマと軽く模擬戦をしながら【魔装術】の指導をして、ある程度教え終わったら休憩を終了して狩りに戻る。

 

 そこからは、千体倒して小腹が空いたら小休止して、軽食を摘まみながらサプリを読んだり模擬戦して、また千体狩りに戻るのを繰り返し、レベルだけで無く技術に関しても鍛練を積んでいく。

 まあ流石に、誠君やかなみちゃんの戦い方が劇的に変化したりはしないけど、試行錯誤する取っ掛かりにはなった様で、色々と試したり相談を受けたりして、着実に技量が上がっていくのがわかる。

 カズマの方も何度か指導しつつ叩きのめしたのが効いたのか、ただの右腕の変化から段階が進み、ペルソナ発動毎に3回限定だけど、瞬間的な加速と打撃力を増加させる技――スクライドのカズマが初期に使ってるブリッドと似た物――を編み出しており、原作持ち特有の認知による影響はやはり強いと感じる。

 ちなみに、技の基本形はカズマ自身が思い付いた物だけど、其処にペルソナ発動時にのみ3回分のパーツを右肩に構築するとか、ブリッドを発動する時にパーツを1つ消費する形にする制約を入れる事で強化の倍率を上げたりなど、原作再現的な部分も含めてアドバイスして、発動する毎に強化倍率を更に上昇させる仕組みなんかも組み込めたので、今のレベル帯にしては破格のフィニッシュブローを持たせられたと思うところ。

 そうして1日掛かり強化訓練が良い感じに成果を出してきた頃の事、適正レベル帯の区画が更地になったために次のループへと移動した際、今までのループとは少し異なる変化を感じ取る。

 

「おや? ちょっと調べたい事が出来ましたから、皆さんは少し休憩してて下さい。お茶とお菓子は出しておきますので」

「何かありました?」

「えっと、そこにあるメニューボード、でしょうか? 出入り口の起点になってるってのは教えて貰いましたけど……」

「この8番区画を作っただろう理由の推測からですが、発情の状態異常を積み込んで良い具合に出来上がった所で、生贄を回収する仕組みも何処かに有るだろうとは思ってたんですが、どうやら何度もループを繰り返す内に一部が誤作動したみたいですね」

「誤作動なんてするもんなのか?」

「早々起こる事では無いですが、この世に絶対も完全も有り得ないですからね。天文学的に低い確率でも起きる時には起きますよ」

 

 まあほぼ確実に、極端な確率を引き寄せる性質を持つ誠君の影響に寄るものでしょうけど、上手く事が運べば儲けものぐらいのつもりが、想定以上の結果に成りましたね……。

 なお、想定以上と評したのは、ループギミックに組み込まれた仕掛けの綻びなどと言う、遭遇する可能性など極々微少な事象を目の当たりにした事で、本来この8番区画から生贄が送られる経路、更には何を意図して生贄を用意してるのかなどを推測する手掛かりを手に入れる事が出来たから。

 手掛かりから見えてきたのは、8番区画と同じ様なギミックだったり、黒い子山羊が鍵になってる転移陣の様な物が鏡像世界のあちこちにあるらしい事。

 それは黒い子山羊を食べたシャドウが黒い子山羊に変貌した件から推測するに、迷い込んだ認知異界の適合者だけで無く、シャドウや悪魔も生贄に仕立て上げる仕組みになっていると言う話。

 後は力の流れから、どうやら鏡像世界のギミックを解除していく事で表側との繋がりが強くなり、手順を守れば往き来する事も可能になりそうって所だろうか。

 

 何はともあれ、レベル的に不安のあった3人を鍛えるのは順調で、その序でにメメントスの攻略を妨げるギミックの解明にも大きな進展が得られた訳で、8番区画を使ったレベリング道場は大成功でしたね。

 時間的に夕食の時間までまだ有りますし、帰りの時間を考えても2・3周は出来るでしょうから、私も参加して少し格上と戦う経験も積ませるとしましょうか。

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