【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
鏡像世界側では特大の咆吼による衝撃波に載せた状態異常やデバフにバフ剥がしと、復活4度目のシュブ=ニグラスによる戦闘開始の洗礼が行われた一方、表側のパンの大神もまた、特大の洗礼で人員移動してきた女性達を出迎える。
まあ開幕の大技で全体攻撃されたとは言え、やられたら嫌な事の対策は十分にしており、個人で対応するのが基本な純粋ダメージ以外の影響は全て防いだため、解析班からの情報で魅了や洗脳に発情などの精神系状態異常、それから物質毒系の特徴を持った媚毒や麻痺毒などの、神経系状態異常が混ざった攻撃だったと後から判明した程度の話だけども。
ともあれ、撃破に向けた人員の入れ替えも終わって、復活により再開したボス戦の様子を眺めると、中心辺りではやはりというか大暴れする琴音が居て、周囲の乱入してくる邪神の方へ視線を向けると、承太郎ニキのチームが【邪神 ダゴン】の1体を抑えて、もう1体を他のチームが行動で対処している様子が見て取れる。
「属性反射で物理弱点なシュブ=ニグラスとは反対に、物理反射で他全属性弱点なパンの大神ですし、属性攻撃に特化する意味でもディースキャナは有効みたいですね」
ちなみに、琴音を含めた何人かはディースキャナを使ってデジモンの姿に変身しており、琴音が変身したアルダモンを始め、十闘士のヒューマン体やビースト体がパンの大神と戦っていて、その場面だけを切り取るとアニメのワンシーンにも思えてくる。
まあ女性のみで戦ってる関係上、漏れなく女性用の姿になってるため多少なり違和感を感じる所も有りますが……。
「っと、【邪神 イタカ】が湧きましたか。まだ距離はありますけど、移動速度の速い邪神ですし私の方で対処しますかね」
現在大扉の周囲で【邪神 ダゴン】と戦闘している2カ所とは別方向で、新しく【邪神 イタカ】が出現したのを感知したため、ボス戦に乱入されない様パンの大神の領域外での迎撃に向かう。
フロア自体に特定ギミック以外での転移を封じる仕掛けがされているため、【神足通】での転移も【縮地】により概念的に空間を縮めて一歩の距離を伸ばすのも出来ないのが面倒だけど、移動に時間が掛かるなら遠距離攻撃でヘイトを稼げば良いと言う訳で――
「【
【魔装術】でペルソナ【剛毅 アルケイデス】を霊体に融合させて力を引き出し、万一パンの大神の方へ誘導されてもダメージにならない物理戦闘に特化した姿へと変身。
その後、私の術技による効果を霊力操作が及ぶ範囲で瞬時に極大化する、【輪廻写輪眼】の固有瞳術【天津甕星】を発動、【猿武】*2により細胞1つの無駄も無く力を伝達させ、巨大な斬撃を高速で蹴り放つ。
レベルが40台に制限されているとは言え、最大効率で振るった一撃は、咄嗟に回避行動を取った【邪神 イタカ】の腕一本を切り飛ばし、高速飛行していた【邪神 イタカ】のバランスを崩して地面に叩き落とす事に成功する。
「ダメージは体力の一割程ですかね。なら余裕を見て30程重ねましょうか、30連【釘パンチ】!」
高速飛行中に落とされ、町並みを破壊しながら転がる【邪神 イタカ】の下に飛び込み、震脚から大地の力も借りて極大化させた【釘パンチ】を叩き込む。
地面を転がってなお残る移動速度も威力に変換し、まるで出来の悪い合成映像の様にピタリと動きを止めた【邪神 イタカ】の体内で、30にも連なった衝撃が駆け巡り内側から弾け飛ぶ。
「邪神だけに体力は高いですが、50超えて無くて高位分霊でも無いですし、フォルマとしてはそこそこですかね。ただ、リポップまでの間隔が少し短くなってる様にも思えますし、解析班に調べておいて貰いますか」
マグネタイトに分解されていく【邪神 イタカ】からフォルマなどの素材を回収してる頃、【邪神 ダゴン】と戦っていた承太郎ニキ達は次ぎに出現して来た【邪神 イタカ】と戦っていたり、複数チームで邪神と戦っていた所は途中で湧いて来た【邪神 チャウグナー・フォーン】が乱入して来たため、ローテーション待ちしてたチームが急遽迎撃に出る事になったりと、ボス3回目の時には人員の入れ替えをしながらでも回っていた邪神の対処に、ズレが生じている様にも見える。
なお、一見すると邪神の処理に時間が掛かっている様にも思えるし、ボスの復活回数で何かしらの強化がされるのは周知の話のため、乱入してくる邪神の体力なり防御力なりが高くなってるのも事実なのだろうけど、今し方【邪神 イタカ】を殴った手応え的に、はっきりと討伐時間に差異が出る程の強化がされているとも思えない。
そんな訳で、解析班の方に情報を回してみたのだけど……どうやら懸念は正しかったらしく、邪神のリポップ間隔が短くなってるのは確定で、鏡像世界の方でも【怪異 くるみ割り猫】の出現頻度が高くなってるのが確認されたとか。
「鏡像世界の方は本体の私がライブでバフ盛ってるので、攻撃組の火力に問題は無いですし、厄介な取り巻きも数が多い代わりに耐久が低いので何とでもなりますね。となると、やっぱり問題が起きるとしたらこちらですかねぇ」
【木遁・木分身の術】の特性で常に繋がってる意識を通して、両方の戦場を見回して感じるのは、表側の戦場に乱入してくる邪神の厄介さ。
2つの戦場を比べると、シュブ=ニグラスの方はレベル30ぐらいの取り巻きが大量に無限湧きするタイプで、パンの大神の方は、少数だけどレベル40前後で強敵と呼べる取り巻きが無限湧きするタイプ。
レベルだけでも10の差がある上、出現する種族が体力の高い邪神と言うのも厄介さを上げるポイントになっていて、数は多くても範囲攻撃でまとめて対処が可能な鏡像世界側と比べると、どうしても1体倒すのに掛かる時間は長くなる。
私だったり承太郎ニキのチームみたいに元々が高レベルで、高効率な技やパッシブスキルを習得していたり、レベル制限されている現状でもダメージを出せるぐらいに技量が高ければ何とでもなる話だけど、1チームで邪神を対処出来ない所は、基本的にレベル制限に引っ掛からない人達な訳で、習得している技術や技量はレベル相応か下回る。
そうなると取り巻きとは言え、邪神の対処にはそこそこ時間が掛かる訳で、こっち側に居る木分身3体と承太郎ニキのチームの対処力を超えて邪神が出現するぐらいまで、パンの大神が復活を繰り返した時点で攻略失敗と言った所だろうか……。
とまあ万一の可能性を考えて、失敗する場合についての考察もしてはいるけど、今回の4回目で討伐出来てしまえばそれも杞憂に終わる訳で。
邪神をしばき倒す合間にボス戦状況を確認すると、パンの大神は琴音を中心に高速で体力が削られており、シュブ=ニグラスの方はジョーカーニキがメインで削って、クールタイム開け毎にカズマがドカンと大きく削る感じで、両方とも良い感じに進んでる様子。
表側に取り巻きとして湧いてくる邪神の対処も、今はまだ一般チーム2組か3組のグループで1体ずつ倒せる範囲で、複数のグループがローテーションして対応出来ており、時折撃破する前に次の邪神が湧いてしまった際、私や承太郎ニキ達でタゲとって対処するぐらいで済んでいるため、まだまだ余裕自体はある。
「後の懸念は
フロアに仕込まれた制限相応のレベルではまず攻略不可能で、【呪霊錠】を使ったレベル上昇の抑制や霊格の封印によるレベルダウンなどにより、制限されたレベル内で発揮可能な最大限を扱える技量持ちを揃えてようやく、攻略の目が見える状況。
そう考えると、このフロアに到達して琴音達が鏡像世界側に落ちてきてからの1週間前後で、ボスの討伐目前まで来れた事だけでも十分に早いと思えるところ。
今にして思うと、メメントスでの厄介なギミックとなれば真っ先に直面するのはジョーカーニキのはずで、今では承太郎ニキや琴音のスパルタで急速に育ってるけど、少し前までは覚醒時期が遅かったのも有って未熟だったジョーカーニキが、ほぼ単独で鏡像世界に投げ出されてた可能性も有った訳で……。
「ジョーカーニキの運命力が引き寄せられる前に、琴音や裕奈にマリッサの運命力が合わさって巻き込まれたと推測すると、その極低確率を誠君の霊質が引き寄せたと言った所ですかね……。もしくは琴音達が居なくても、ジョーカーニキとカズマに誠君、それからかなみちゃん辺りが同時期に巻き込まれて、チームを結成してた可能性も有りましたかね?」
考えても仕方の無いIFの話だけど、鏡像世界でシュブ=ニグラスと戦ってるジョーカーニキやカズマ達の、息の合った戦い振りを見ていると、そんな可能性が思い浮かぶ。
まあこのフロアの攻略が終わって、〝渋谷隠れ家〟に戻った後どうするかはカズマ達の選択次第。
本人達に聞いてもいない事を考えても無駄ですし、今はタイミング調整して最後の大技を叩き込まれてるボスの様子を観察する方に意識を集中させましょうか。
「双方ともボスの体力を削り切りましたか……分解されたマグネタイトの流れが一部変化してますし、ジョーカーニキに連絡して大扉の開放を試して貰いますかね」
地面に倒れ身体がマグネタイトに分解されていくボスの様子を、表側・鏡像世界側それぞれに居る本体と木分身で観察し、どうやら推測通りに撃破出来たらしいって事で、ジョーカーニキへと連絡を取る。
程なくしてジョーカーニキにより鏡像世界の大扉が開放され、それに連鎖して表側の大扉も封鎖が解除されて、表と鏡像の両方に掛かっていたフロアギミックも消えたのを感じ取る。
『解析班及び情報処理班より全体連絡、大扉の開放並びにフロアのギミック消失を確認しました。以上を持って、ボス討伐戦の完了を宣言します!』
解析班や情報処理班から、ボスの撃破完了とフロアギミックの消失が報告された事により、ようやくレイドボス戦が終了したと認識出来たのか、参加者達の喝采が挙がる。
こうしてそこそこの時間が掛かったフロア攻略は最後の波乱もなく無事に完了し、大扉により塞き止められていたメメントスの探索も、ようやく再開される事になる。
「まあメメントスの探索は元々の攻略メンバーに任せるとして、私達の方はそれより先に現実側で行ってた安否確認の報告からですね」
「――! 連絡ついたの?!」
「電脳異界内と現実側の時間差は大きいですが、相手も連絡手段もわかってますからね」
メメントスでの攻略が一息付いて、ガイア連合山梨支部が管理する電脳異界〝渋谷隠れ家〟に帰還し、フロアの探索やボス攻略戦などに参加した面々への報酬も支払い終わって解散となった後の事。
私が拠点として確保した領域に戻った所で、外部との連絡やマヨナカテレビ方面の助っ人を頼んでいた、電子戦特化の式神である瑠璃から渡された情報の確認が終わり、とりあえず必要な情報の共有だけでもしておこうと、巻き込まれてメメントスに落ちてきたメンバーを集めたのがつい先程のこと。
「まず詩乃のお母さんについては星祭神社の氏子と判明してた通り、星祭神社の保護下に入ってますから無事が確認出来てますし、詩乃が私の保護下に居ると連絡した事で落ち着いてる様子ですね。偶然か運命力の影響か、心霊医療の担当が私で面識が有ったのも良い方向に動きました」
「良かった……」
「うんうん、良かったね~しののん」
「桜子先輩、ちゃん付けもアレですけど、そのあだ名もちょっと……」
「え~、可愛くない? しののん」
「私も可愛いとは思いますけど、あだ名論争は後でして貰うとして、次ぎに誠君のご家族の方ですね」
最初は所在地がはっきりしてる詩乃の母親――春乃さん関連の情報。
五島陸将のクーデター宣言からの東京封鎖と、緊急事態が報道されてたことから、東京で寮生活をしてる一人娘を心配して軽度の錯乱状態になっていたらしいんだけど、心霊医療を施す関係で私の知り合いと言うこともあり、こちらで保護しているとの情報と詩乃からの音声メッセージを送付した事で、落ち着きを取り戻せたらしい。
「こちらは無事に安全圏まで脱出して、合流出来なかった誠君の事を心配して北神奈川支部に留まっていたみたいです。今は私が保護してると伝えたのもあり、元々の避難先である山梨の本社の方に向かってるとの事ですね」
「待っててくれたんだ……色々と迷惑掛けちゃったなぁ」
「誠司さんと小冬さんの2人から息子の事を頼みますとお願いもされましたし、終末後も独り立ち出来るぐらいには鍛えますから頑張って下さいね? 幸いここなら修業時間はいくらでも有りますし」
「はい、改めてよろしくお願いします」
一方で苗木家の方は、出版関係者と合わせて山梨のグループ本社まで護送する予定だったため、移動途中などで連絡がつくまでにまだまだ時間が掛かるかと思っていたのだけど、幸いと言って良いのかキノが支部長を務める北神奈川支部まで移動した後、誠君の安否確認のために留まっていた事で、早期に連絡を取ることに成功した。
まあ北神奈川支部はキノ関連でちょくちょく遊びに行ったりしてますし、終末時の避難経路で通る場所でもあるって事で、何かあった時には私の名前で便宜を図って貰える様にしてたのも、功を奏したって所でしょう。
攻略レイドが終わったら、遊びに行く序でに困り事の1つでも解決しておきますかね? お礼も兼ねて。
「後はカズマとかなみちゃんが暮らしていた養護施設の方ですね」
「あん?」
「あ、そう言えば元々職員も含めて避難させる予定だったって言ってましたっけ……」
「誰かがはぐれるアクシデントも想定はして避難計画を作ってますから、時間までに集まらなくても避難を優先して、余裕が有れば捜索人員を回す流れになってますが、2人の事は黒札が保護したと連絡入れてますから大丈夫ですよ。避難途中で返信が来るまでにちょっと時間が掛かったみたいで、連絡が届いたのは少し前でしたが」
「お手数お掛けしてすみません」
「気にしなくても大丈夫ですよ、一報入れさせただけですし」
「そっか、ありがとな!」
「ちょっとカズくん??」
少年らしい無遠慮さに、かなみちゃんがカズマに詰め寄ってるのはいつもの事なので置いといて、認知異界の裂け目に落ちると言う事態に巻き込まれた面々の懸案事項も、今回の報告で一区切りでしょうかね。
本人が望むなら、直ぐにでも現実側に戻して避難先へと届けるのは簡単ですが、終末のカウントダウンがスタートした現状を考えると、時間加速により修行期間を取れる渋谷隠れ家を拠点に、レベル上げや鍛練の序でにでも、マヨナカテレビやメメントスの攻略を手伝って貰えれば有り難い話。
一先ずは、その辺の意思確認からしましょうかね……。