【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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153:電脳異界拠点での日々

 終末のカウントダウンが始まって、ガイア連合山梨支部が用意した電脳異界の拠点〝渋谷隠れ家〟にて、マヨナカテレビやメメントスの攻略レイドが結成され、その一員として私も行動を開始して少しした頃に起きた出来事。

 現実側で保護する予定の友人などが多い事から、合流にはそこそこ時間が掛かる予定だった琴音が、必然の如く運命力に導かれ、現実と認知異界の境界に出現した裂け目からメメントスに落ち、新人ペルソナ使いも道連れにして最前線のフロアギミック攻略に挑む事態が収束してからしばらく経った頃。

 巻き込まれてメメントスに落ちた新人達に、望むなら家族などの避難先へ送り届ける事も出来るがどうするか聞いた所、全員が渋谷隠れ家で鍛えると回答したため、終末後も生き抜けるぐらいには最低限鍛える事になり、9月から弟子になった麻帆良堂の面々と合わせて、修業の日々を送っていた訳だけど……。

 

「やはり一気にレベルを上げた影響で、基礎的な技術に荒が多いですね」

「ぜぇ……はぁ……」

「うーん死屍累々、基礎鍛練は積み重ねだしねぇ~」

「確り色変化出来てるのはマリッサちゃんとペリーヌちゃんの2人、もう少しなのが裕奈ちゃんと二代ちゃんね。この辺は琴音ちゃんと学校行ってる間も、瑞樹さんに鍛えられてた部分の差ってところでしょうね」

 

 霊能の基礎でもある霊力操作の鍛練として、今日は鍛練用に創り出した幻想植物を使った鍛練を行ったのだけども、概ね予想通りの結果が広がっていた。

 一部の予想外と言うか、想定以上の結果になったのは綴が名前を挙げた4人で、鍛練用植物〝独楽俵〟の性質的に、最後まで到達出来ないだろうと思ってたのが、2人到達で後の2人も後少しまで行った訳で、普段から確りと基礎鍛練を積み重ねていたとわかって嬉しい限り。

 ちなみに、鍛練に使った独楽俵の商品紹介としてはこんな感じ。

――――――――――

・独楽俵

遊球樹*1に穀物の木*2やヒノエ米などの各種穀物を組み合わせて創り出した幻想植物で、ラグビーボールの様な楕円形の形状に、米俵の様な模様の外皮をした果実を付ける。

収穫前の果実は白い外皮をしており、果実を立てた状態で霊力を流し込むと回転し、回転数と流し込まれた霊力に反応して、果肉の旨味が増し外皮の色が変化する性質を持つ。

果実の回転速度は霊力操作の精密さに関係するため、霊力操作技術の鍛練道具として使われる。

中は粒状の果肉が詰まっており、解して炊けば米や大麦などの代わりと成り、粉末にすれば米粉や小麦粉などの代わりにも成る万能穀物。

外皮は流し込まれた霊力の属性に合わせて、白から複数の色へと変化し、果実全体が一色に染まると皮を剥く事が可能になり、込めた霊力量に応じた量の果肉を得られる。

なお、色が染まりきる前に複数の霊力が混ざると発芽するため、保管には注意が必要。

――――――――――

 回転させる場合には、楕円形の片端を地面に立てて、もう片方を指で押さえて流し込むのが初級で、霊力を流して回転させる感覚を鍛える段階。

 初級の指で押さえる方法だと、回転速度が上がるに連れて摩擦熱が問題になってくるため、次の中級では直接触れずに霊力を流す感覚を鍛える段階になる。

 直接触れずに安定して回転させる事が可能になると、次は回転速度を更に向上させるより精密な霊力操作の感覚を鍛える上級の段階に入り、収穫後の白色から一度で色変化を完了させると、鍛練の基本は身につけた事になる。

 なお応用編として、同時に回転させる個数を増やしたり、流し込む霊力を単一属性から複合属性にするなど、鍛練負荷を増やす方法も有るため、高レベル霊能者の霊力操作鍛練にも使用可能なのが良いところ。

 

「ともあれ1回目は概ね想定範囲ですし、昼までにはまだ時間もありますから、霊力が回復したら独楽俵回しを再開、色変化を完了させた者から自由時間ですね。今後しばらくの昼と夜の主食は、各自の独楽俵から得られた物を使いますので、三食確りと食べたいなら午前中に終わらせられる様頑張って下さい」

「なあ師匠……、それって昼に食べ尽くしたら夕飯での主食無しって事になるのか?」

「その場合は午後にもう1個独楽俵を変化させれば大丈夫ですよ。達成出来なければ主食抜きですが」

「1日に2個は……出来はするが厳しいで御座るな」

「後はそうですね……量を食べたいなら回転させる時に注ぐ霊力量を増やす必要が有りますから、霊力操作のロスを減らす事も意識すると良いですよ」

 

 限界まで独楽俵回しをして倒れていた面々の中では、マリッサ・ペリーヌ・裕奈・二代の4人が、レベル40台と飛び抜けてるだけあって真っ先に復活し、多少回復した霊力で裕奈と二代も色変化を完了させて一息付く。

 次ぎに復活して独楽俵回しを再開したのは、レベル30台に到達した新人ペルソナ組の4人――ではなく、【霊質強化術】で地道にレベル上限を拡張し、先のメメントス攻略で20台半ばまでレベルアップを果たした麻帆良堂の6人。

 やはり、キャンペーンセッションの途中からダイオラマ魔法球内で行った鍛練と、その後終末直前までを合わせた2ヶ月半程の期間とは言え、基礎鍛練を行ってきたかどうかは如実に結果に現れる様で、レベルは麻帆良堂の6人の方が低くても、独楽俵回しで変化する色の状況は、新人ペルソナ組4人より麻帆良堂の6人の方が進みが早い。

 まあ霊力の回復状況としては、流石にレベルの高い新人ペルソナ組4人の方が早いんだけど、独楽俵回しの霊力操作で無駄にしてる霊力の差がはっきりわかったのは、当人達にとっても良い刺激になった事だろう。

 

「今までも基礎鍛練を怠ったつもりはありませんでしたが、1つ変化させるだけで限界と言うのは、まだまだ精進が足り無いと言う事ですわね……!」

「いやいや、本来なら1個変化させるだけでも数日掛けるぐらいは想定してるからね? これ。元々より高度な霊力操作鍛練道具が欲しいってのが出発点で、レベル100超えでも使える代物だし」

「瑞樹さんは上級段階までが基本と言ってますけど、中級でもある程度のレベルか術師系のセンスが必要ですからねぇ。レベル10前後だと霊力量の多い術師系が効率良く回せても丸1日は掛かりますし」

「きっついとは思ってたけど、そんな代物だったの? この独楽俵。瑞樹さんは簡単そうに50個ぐらい同時に回してたけど……」

「そりゃ瑞樹が自分の鍛練にも使える食材として創った訳だしね。木分身を出せる数の少ない電脳異界だからこうして皆と一緒に鍛練してるけど、普段から各種鍛練用の木分身で常に鍛えてるぐらいの修業狂いだからね。基準にしちゃ駄目なタイプだよ」

「特化していない術者系にとって、霊力操作の精度や速度は必須項目ですから、維持向上の努力を怠っては万一の時に対処出来なくなりますからね」

 

 ――と、そんな感じで弟子達に修業を付けてる一方、弟子達がレベル上げも兼ねて認知異界の探索に行ってる間は、時間的にもそこそこの余裕が出来る訳で、私自身も本体や木分身で探索に行く事も有れば、蓬莱島ほどでは無くても個人拠点として整備した設備を使って、趣味と実益を兼ねた物作りに時間を掛けたりしてるのが、ここの所の状況。

 まあそれだけ、マヨナカテレビやメメントスの攻略が順調に進んでいるって事でも有るんだけども。

 

「大規模な攻略支援要請が出ない程度には順調に探索が進んでいるって事で、こんな物を創ってみました!」

「何コレ……猪?」

「出て来たのは、さや……ですか? 枝豆とかのそれに似てる感じですけど……」

 

 弟子達が独楽俵回しに初挑戦してダウンし、霊力回復促進効果のあるお茶などを突っ込んで、何とか夕食までには全員クリアした日から更にしばらく経った頃の事。

 今日は弟子達が探索に出てると言う事で、その分の空いた時間で進めていた研究が一段落したため、琴音や綴に声を掛けて新作発表と言ったところ。

 

豆猪(まちょ)と名付けた豆類と猪を混ぜ合わせた植物獣類ですね。概要はこんな感じです」

 

――――――――――

豆猪(まちょ)

仙豆や大トロ大豆などのマメ科植物の概念を凝縮し、北欧神話に登場する猪〝セーフリームニル〟の概念を混ぜ合わせて創り出した植物獣類。

巨大なさやの中で3つか4つの豆猪が成長し、さやが緑色の若い段階で外に出た物は枝豆猪(えだまちょ)、完熟した褐色のさやから出て来た物は大豆猪(だいまちょ)と呼称される。

未熟な枝豆猪でも体高は2~3m程、大豆猪では3~5m程にまで大きくなり、周囲の動植物を食べて栄養を蓄えながら次代を繁茂させる土地を探して動き回り、適した土地を見つけると地面に埋まって発芽する。

食材としては、臭みの少ない猪肉の旨味が最初に溢れ、豆類の確りとした土台が旨味を受け止め、脂っこさを拭い去る様にさっぱりとした後味を感じさせてくれる肉となっており、動物性と植物性の両方の性質を合わせた良質なタンパク質を持つ、ボディビルドに最適な食材になっている。

また、仙豆由来の回復力により超回復を促進させるため、食事による怪我などの回復や回復力自体の向上に加え、鍛練による物理方面の能力向上を飛躍的に高める効果を併せ持つ。

――――――――――

 購買部のサイトに載せる際の商品紹介も兼ねた内容はこんな感じで、見た目は猪だけど植物分類だけに血液は流れて無いため、血抜きや熟成をする必要がなく、何なら野菜の様に採れたてを生で食べる事も可能になってたりする。

 まあ野菜分類でも豆類な訳だし、生より茹でたり炒めた方が美味しいだろうとは思うけども。

 

「豆と言う割りにはデカくない?」

「食材ですしそれなりに大きく無いと食いでが無いですからね。ちなみに、豆猪が捕食した動植物は胃に当たる部分でマグネタイトに分解されて、養分や旨味に変換され蓄積されるので、肉の臭みがほぼ無いのも特徴ですね。逆に特定の飼料を与えて香り付けするとかは出来ませんが」

「そう言えばガイアグループの養殖事業で、果物などを餌に混ぜて生臭さを軽減させたりした、フルーツ魚やフルーツポークとか有りましたね」

「グループの養殖事業については、前世でそう言うのが有ると知ってたから、こっちでも可能か試して成功したってだけですけどねぇ。まあおかげで霊能食材化する技術の下地にも成りましたけども」

「企業関連の話は置いとくとしてさ、お披露目したって事は豆猪の試食が目的って事で?」

「それもしますけど、メインは加工でどう変わるかの確認ですかね。時々妙な跳ね方する事も有りますし」

「あー……、特定の加工で認識や概念の影響受けて、特殊アイテムになるってのも有るもんねぇ……黄金の蜂蜜酒とか」

 

 そんな訳で、枝豆猪と大豆猪を1体ずつ仕留めて解体して、刺身にしたり茹でたり焼いたりなど各種調理法を一通り試した後、生ハムやベーコンにソーセージ、更には燻製も含めた加工を色々と試して見ることに。

 一通りの調理法を試した結果としては、刺身は人により好みが分かれる感じの甲乙付けがたい味だったけど、枝豆的な認識からか茹では枝豆猪の方が明確に美味しく、焼いたり炒めたりだと大豆猪の方が美味しいと意見が一致。

 似た感じで蒸しは枝豆猪、揚げは大豆猪に軍配が上がった事から、基本的な調理法での影響は枝豆や大豆の特徴がそれなりに出てる感じだろうか。

 次ぎに加工した場合についてだけど、大部分の加工方法だと豚肉を加工した場合と同じ様な味の変化に収まっていて、普通に美味しくなっては居るがそれだけとも言えるところ。

 ただ、ドライソーセージの様な水分をほぼ抜き取るタイプの加工だと仙豆由来の効果が高くなる様で、成人男性1日分のカロリーが5g程度の分量で補給可能な上、四肢の欠損は流石に無理でも内臓の損傷レベルなら瞬時に回復可能な効果を発揮する程。

 後は豆腐などの一部加工品は流石に無理だったけど、豆類の性質から発酵関連を試してみたところ、醤油や味噌の製法で造ることには成功したんだけども……。

 

「味噌の製法は塩味の強い干し肉とチーズを合わせたみたいな感じですね。枝豆猪は軽め、大豆猪は重めの口当たりですが、使う塩の量を調整すればそのままでも食材としても使い道は多そうです」

「醤油の方は……甘いドリンク系? 近いのを挙げればカフェオレとかの乳製品系っぽいけど、独特な脂の甘さが強いし豆乳系の味って感じもしないから、何か不思議な飲み物になってるね。とりあえず醤油では無いかな」

「まあ味噌の方もサラミ入りチーズみたいな感じですし……でも、本当に不思議な味。枝豆猪の方は野菜系の風味が少し強くてメロンみたいな感じも有りますし、大豆猪の方はちょっとした苦味も有って、琴音ちゃんの言う様なカフェオレとか、後はココアみたいなイメージも湧きますね」

「発酵食品ですから大きな変化も有り得るとは思ってましたけど、醤油の製法で起きた変化はちょっと想定外でしたねぇ……」

 

 味噌の製法で出来上がったのがチーズっぽい物体だったのはまあ良いとして、醤油の製法相応に食塩水を入れたのに、確りと甘さを感じるクリーミーな飲み物へと変化して、塩分は大部分が再結晶化して分離沈殿する結果になったのは、驚きというか何と言うか。

 なおどちらの製法でも共通して、豆猪のボディビルドに最適なタンパク質を補給出来る性質が向上しており、仙豆由来の急速な怪我の治癒能力は無くなってるものの、超回復能力は筋肉だけで無く骨や神経系にまで及び、反射神経や運動能力に五感などの肉体関連全般を鍛える、補助食品に成れる事が判明してたりする。

 

「味噌製法の方はほぼチーズだし、わかり易く豆猪チーズで良いと思うけど、醤油製法の方の名称はどうする?」

「どうしましょうかねぇ……少なくとも醤油とは別物ですし、乳製品っぽさは有る訳ですから効能と合わせて、豆猪プロテインミルクをかばん語にしたマティルクとでも呼びましょうか」

「今までに無い独特の味ですけど、現状でも普通に美味しい飲み物ですから、霊能が物理よりの人には人気が出そうですね」

「豆猪チーズも製造時の塩分を調整すればもっと風味を引き立てられそうですし、マティルク製造時に分離する塩分量の関連も調べたいですから、売りに出すとしてももう少し研究してからですかねぇ」

 

 他の加工品は特殊な効能こそあれ、通常のハムやベーコンにソーセージなどと同じ様に扱える食材でも有るため、豆猪の生肉共々情報を登録して売りに出せるとして、豆猪チーズとマティルクについてはもう一段製造方法に手を加えて味の調整をしたいところ。

 特にマティルクは、試作当初は想定してなかった飲料方向に変化した訳で、基本的な濃口醤油の製法から、別名で甘露しょうゆとも呼ばれ、濃厚な味わいとなる二段仕込みの製法に変更し、再仕込みに使う生揚(きあ)げしょうゆ*3は塩分量を抑えた上で、薄口醤油の製法で行う甘酒を加えた物を使用。

 脂を甘く感じる由来であるオレイン酸、旨味の由来となるアミノ酸などを程好く感じられる塩味とのバランスに、仕込みの際に使う小麦や生揚げしょうゆに加えた甘酒由来の甘味も合わせ、口当たりの良い発酵飲料を目指して製造方法を構築していく。

 

「マティルクはやはり、基にした製法でも甘口になる二段仕込みが良さそうですね」

「私も1番美味しい奴なら二段仕込みを選ぶけど、薄口の製法は塩分増やしても沈殿物が増えるだけで味の変化は無かったし、甘酒入れた分だけ甘くなってたから量産するだけならこっちでも良いんじゃない?」

「溜まり醤油の製法だと、そのまま飲むより割って飲む原液みたいな感じでしょうか。こっちの白醤油の製法は小麦の割合が多い分、マティルクと言うより基の醤油っぽさが強い気がします」

「豆猪の割合が減れば発酵による変化も小さくなるのは当たり前ですし、白醤油の製法は除外ですね。まあ醤油として使うなら、これはこれで使い道も有りそうですが。溜まり醤油式のは旨味も強いですし、飲料方面よりは甘味系の調味料として使うのも良いですかね?」

「あー……確かに、アイスに醤油掛けたりってのも有るし、デザート系に使うと良いかも」

「ではそれぞれ情報をまとめてデータベースに上げておきますか」

 

 本命の二段仕込みで醸造する横で、一応他の製法も一通り試してみたところ、味も効果も1番良好だったのは想定通りに二段仕込みしたマティルクで、効果は多少落ちたけど思った以上に飲み易い仕上がりになったのは薄口の製法。

 原材料の割合的に効果が1番低くなった上、味的にもマティルクと呼べる仕上がりにはならなかった白醤油製法が除外になったのは仕方無いとして、溜まり醤油製法で醸造したマティルクは、原液として割って飲むのも有りとは思える味だったけど、どちらかと言うとそのまま調味料として使うのが良いようにも思える出来だった。

 なお、基本である濃口の製法で減塩したパターンだと、甘さ控え目でコクと旨味が引き立つ感じのため、甘味と飲み易さを求めるなら薄口の製法、コクと旨味や効果を求めるなら濃口の製法、全部を備えた最上級なら二段仕込み製法、と分ける感じになるだろうか。

 

 一方で豆猪チーズの方は、使用する塩分の調整だけでも十分に豆猪の旨味が詰まったチーズになるんだけど、味噌の製法にも米味噌*4や麦味噌*5、豆味噌*6と有るように、豆以外の麹を使うかどうか、使うなら麹の歩合が多ければ甘口に、少なければ辛口の味になるなど、塩分だけで無く変化する要素は色々と有る訳で。

 試作品の豆猪チーズは、素材のみでの変化を見るために豆味噌の製法で造った物だったため、一先ず標準的な米味噌、麦味噌の製法でも試作してみる事に。

 

「米味噌製法の方は全体的に甘めな感じがしますね? 辛口でも甘塩っぱいと言うかフルーツ系の香りも少し有りますし」

「マティルクもそうだけど、発酵させるとデザート系に寄ってる感じがするよね~。麦味噌製法の方もちょっと甘い感じは有るけど、こっちは麦の香りが感じられるから米味噌製法の方とはだいぶ感じが違うね」

「豆味噌製法と比べて、米味噌や麦味噌の製法は発酵時の酒精量が多いですから、フルーツ系の香りや麦の香りはそこから来てるみたいですね。まあ味噌造りで生じる酒精の割合は極少量ですし、市販されてる味噌は基本的に保存性やコストの観点から、少量の酒精を混ぜて発酵を抑制した状態で流通してるので問題にはなりませんが」

「なるほどねぇ~。まあ味噌と違って、豆猪チーズだとアルコールによる味や香りへの影響がそこそこ有るって感じか」

「豆猪チーズの方も製法によって結構味が変わりましたけど、チーズっぽい物って点は共通してますし、そのまま食べても料理に使っても良いので人気も出そうですね。試食してるとお酒が欲しくなりますけど……」

「綴も結構お酒好きですもんねぇ。まあ試作するのは大体終わりましたし、データの登録だけ終わらせたらお酒出しましょうか。弟子達の帰還予定にはまだまだ有りますし」

「良いね! それじゃ瑞樹が作業してる間に豆猪チーズも使ったお摘まみでも作ろっか」

 

 そう言って琴音が綴を引っ張って調理に取り掛かり、その間に情報をまとめてデータベースに登録し、創った物の一部を渋谷隠れ家の運営陣にお裾分けしたりして、今日の趣味研究も一区切り。

 2人の作ってくれたお摘まみを酒の肴に、思い思いの酒を取りだして他愛もない話に花を咲かせる。

 今日も良い感じに物作りが出来ましたし、次は何をしましょうかね? ……まあ、緊急の案件が発生しなければ、ですが。

*1
弾力のあるパチンコ玉程度の大きさの球形果実を付ける樹木で、高位霊能者が球技をする際、ボール自体が耐えられない事から、球技に使いつつ美味しく食べられる様に創り出された幻想植物。

果肉はクリーム状になっており、果実に加わる衝撃や回転によって美味しさを増し、込められた霊力の属性によって霊味が変化していく性質になっているため、本来の味にプラスして火炎と電撃をミックスした味などを楽しむ事も可能。

また、果実の大きさや形状、弾力の度合いに果皮の硬さなどは、霊力を込めながら操作する事により変化させる事が可能で、変化を開始した際の霊力操作が、途切れた時点の状態で基本形が固定され、以降は霊力を込めて一時的に変化はしても、操作が途切れた時点で基本形に戻る様になるため、加工の際には注意が必要。

なお、果皮は霊力操作しながら剥く手順以外では破れたりせず、果実に加わったエネルギーを果肉の質量や味に変換するため、基本形として硬いボールに固定した物を投擲武器として使う事も可能。

*2
栄養価の向上と生産量の増加を目的として、元の植物としての性質を大きく変化させ、果実として穀物の実がなる樹木を生み出す事に成功した植物。

吸収したマグネタイトを循環増幅して栄養に変化させる能力を持つため、周囲のマグネタイトが十分に有る環境なら毎月収穫することも可能で、柑橘類の様な粒状の果肉として穀物の種子が実る。

*3
もろみを圧搾して出て来た状態のしょうゆ。これを火入れして微生物の殺菌や酵素の失活化などを行ったり、ろ過により除去する事で、店売りされている醤油になる。

*4
大豆に米麹を混ぜて仕込んだ物。

*5
大豆に麦麹を混ぜて仕込んだ物。

*6
大豆を豆麹にして大豆のみで仕込む物。

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