【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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154:マヨナカテレビの調査?

「おや、攻略レイド運営からの依頼ですか……」

 

 電脳異界〝渋谷隠れ家〟での攻略レイドが始動してから、内部時間でそこそこの月日が経過し、日々の鍛練や探索に出る弟子達のサポートなどもして、合間の時間には趣味の研究をしたり、タイミングの合った面子と遊んだりするライフサイクルが出来上がった後の事。

 今日の活動もそろそろ区切りを付けて、弟子達が起き出してくるまで軽く圧縮睡眠しておこうかと考えていたところ、端末からメールが届いた着信音が鳴り響く。

 内容としては、認知異界〝マヨナカテレビ〟内に落ちてきた人が取り込まれ、ダンジョン化した領域内の調査依頼、と言う最近増えて来た依頼の1つ。

 

「ふむ、調査の手が足りない感じですかね? ……いや、既に一度調査に入ったけど取っ掛かりが見つからなくて、それを知ったスライムニキが突入しようとしたから、慌ててこっちに回って来た感じですね、これ」

 

 一次調査はダンジョン発見直後に行われており、ここ数日の間に巻き込まれた一般人が取り込まれ、ダンジョンが形成されたと言う事は判明したらしいけど、それ以上の情報が見つからなかったため、より上位の調査に切り替えるってのが現在の状況。

 で、調査が難航していると聞きつけて名乗りを上げたのが、いつもの如くスライムニキだったと言う話。

 実際、戦闘能力こそ低いけど隠密能力はそこそこ有るし、調査分析能力は攻略レイド全体で見ても上位に居る上、話術のみで暴走したシャドウを鎮めたりも出来る訳だし、二次調査を担当する事自体は問題無い……んだけど。

 問題なのはスライムニキが、ガイア連合山梨支部として動き出すよりも前の時期から居る古参の1人で、ペルソナ案件の対処に現場裏方問わず関わり続け、ペルソナ使いのメンタルケアや新人の教育、コミュの絆を結ぶ事による各種便利スキルの習得等々。

 万が一にも失われては、各々の個人的な感情とガイア連合山梨支部としての観点でも困るどころの話では無く、その上スライムニキ本人の耐性含めて弱点だらけなのに、味方をかばおうとする悪癖まで有るものだから、スライムニキを除いた満場一致で後方に縛り付けようとしている訳で……。

 

「スライムニキが前線に出る時って、そうしないと救出が間に合わないぐらいに切羽詰まってる事が多いのも、完全に閉め出せない部分なんですよねぇ……」

 

 とりあえず依頼の方は受諾の旨を返信して、該当ダンジョンの場所を確認。

 調査の進捗に合わせてダンジョンの方も攻略した方が良さそうな感じのため、弟子達含めて朝一から向かう事にして連絡を回し、私も時間圧縮して軽く睡眠を取ったり、調査用の準備などを整えておく。

 

「――なるほど、唐突に予定変更って言い出したのはそう言う事か~」

「起きたら探索の用意して集合ってメール来てたもんねぇ。やる夫さん*1関連って書いてたからとりあえず急いで用意したけどさ」

「ペルソナ使いの新人研修を担当してる黒札だっけか」

「ペルソナ使いでお世話になっていない者の方が少ないレベルの御仁で御座るな」

「僕とカズマにかなみちゃん、それから詩乃さんも、渋谷隠れ家に来てからお世話になりましたね」

「心が強い人だよなぁ。腕っ節はからっきしだが」

「世話になってるのは実のところペルソナ使いだけじゃないんですよねぇ。ガイア連合の派出所や支部、シェルターに裏ジュネスなどの雛形となる組織を作ったのはスライムニキ*2ですし、全国各地の霊能組織と連携する下地にもなった訳ですから、真面目にスライムニキの発案と行動力に組織運営力がなければ、今のガイア連合は無かった可能性も有り得るレベルですよ」

「だから前線へ行かせない様アレコレしてるって訳か~、今回は先にダンジョンを調査して攻略するのが目的?」

「いえ、共同調査の名目で私とスライムニキ、それからナビ型のかなみちゃんと瑠璃で後方支援と情報分析、残りで手分けしながら調査と攻略をする感じですね」

 

 一応レイド運営からの依頼を受諾した時点で、レイド運営からスライムニキに実働部隊として私達が向かう事は連絡しているし、私の方からも連絡入れているため無茶はしていないとは思う。

 まあダンジョンに入った時の状況次第では、私達の到着を待たずに奥へ向かう可能性も有るため、こうして急いで向かっている訳だけども。

 ともあれ無理しない範囲で急ぎ、目的のダンジョンへと到着し、無事にスライムニキとの合流にも成功したのだけど、どうやら先に到着して調査を開始していたスライムニキにしても、予想外の状況になっている様で……。

 

「入り口付近だと、スライムニキでも上手く情報が集まらないとなると、可能性としては何かを隠したり偽る方向で抑圧して生まれたシャドウですかねぇ」

「うん、俺もそう思ったからもっと奥に行って調査するつもりだお」

「あ、調査の現場指揮は私がするから、スライムニキはサポート班で情報分析担当ね」

「え?」

「私達はハム子ネキさんの指揮下で調査担当するので、やる兄の事は頼みます」

「ナビは瑠璃とかなみちゃんがメインで担当しますから、聞き逃さない様に注意して下さいね。帰還ポイントも用意しておきますので、トラエストストーンの確認も怠らないように」

「おう! そんじゃ行くぞ、誠!」

「行くも何もチーム分けすらまだなんだけど?!」

「アレのフォローは拙者が請け負うべきで御座ろうな……」

「レベルの近さ的にも後衛は私でしょうね。ナビは頼むわよ、かなみ」

「あはは、カズくんが済みません」

 

 飛び出していったカズマに仕方無く追いかける誠君と、以前からの付き合いも有って抑え役に手を挙げた二代、それから新人ペルソナ組としてチームを組むことが多い詩乃が溜息交じりに追いかける。

 何ともぐだぐだとした始まりになってしまったものだけど、残りの実働班もチームを割り振って調査に出かけ、ナビ組が早速とサポートに入る。

 

「とりあえず実働班を中継点とした調査を進める間に、探索拠点を構築しましょうか」

「あれ……なんかあっという間に置いてかれたんだけど……」

「適材適所かと、陣地構築はマスターが行いますので、スライムニキさんは集まってきた調査情報の分析をお願いします」

 

 なお、こうして強引に行動方針を決めて動き出してるのについては、スライムニキ相手に問答していると、何となく少しぐらいは良いかとお願いを聞きたくなるのが理由だったりする。

 スライムニキのチームメンバーは特に、惚れた弱みも有ってスライムニキの要望を強く拒否しきれない部分があり、その結果が前線に出かけて、大怪我して帰還してくると言う流れになっているんだけども。

 そんな訳で、スライムニキの話術に流される前にさっさと動き出して、スライムニキが前線に出なくて良いポジションに据えるのが早いと言う話。

 ともあれ無事に解析担当として据えることに成功し、私の方も帰還ポイント兼セーフティエリアとして陣地を構築。

 各チームのサポートをしているかなみちゃんと瑠璃の負担を軽減させる増幅術式も展開して、その他初動で行って置く諸々も終わらせた辺りで、調査状況へと目を向ける。

 

「一次調査の結果から隠蔽や偽装に優れているダンジョンと予想してましたが、予想以上に得られた情報が少ないですね……」

「今までの事例から考えると、シャドウの性質に加えて本人の霊質も影響している可能性が高いね。少なくともアウトサイダー*3か転生体*4、もしくは転生者*5の可能性も有るかな」

「候補の中だと転生者が二重の意味で面倒になりそうですね……黒札候補の可能性も考えて、ちょっと梃入れした方が良いですかねぇ」

「黒札候補の可能性は捨てられないし、どの道急いで調査を終わらせるべきとは思う所だけど、梃入れって何する感じ?」

「調査にしても分析にしても、取っ掛かりとなる切っ掛けが見つからない状況ですから、見つからないなら釣り出してみようかと」

 

 疑問の表情を浮かべるスライムニキへの説明は後に回し、ダンジョンコア機能を追加したブルーウォーターを素材に作成した空間宝貝〝水溶陣〟*6を取り出して、空いてるスペースに仮想ウィンドウを展開、マヨナカテレビ内のダンジョンと仮想ウィンドウを空間的に接続させ、特殊な平面異界を造り出す。

 

「青い水面……いや水面のようにも感じるけど、異界だおね? ダンジョンと混ざりあってる様にも感じるけど……」

「私の見た目って藤竜版封神演義の竜吉公主じゃないですか、十天君の空間宝貝的なモノを造ってみるのも面白いかな? と思って、霧露乾坤網(むろけんこんもう)の水繋がりであらゆる場所に浸透同化し、術者に有利な空間を構築する宝貝にしてみた感じですね」

「浸透同化して術者に有利な空間を作る……なるほど、この異界を通してシャドウの隠された情報を探るって訳だおね」

「ええそう言う事です。ではスライムニキにも道具を貸しますね」

「道具? ……って、なんで釣り竿?!」

「水中から釣り出すんですから釣り竿は必要でしょう? 投網だと相手にバレる可能性が高くなりますし、集まった情報の整理も面倒ですしねぇ」

 

 取り出したのは、以前に作ってガチャの景品にしたり、量産品を購買部で販売したりしてる釣り竿の水撃概念霊装〝太公望〟を2本。

 初期作成時のモデルはMHFの大剣だったけど、FFXIにも太公望の釣り竿と言うアイテムが有ると聞き、複数の概念を合わせてバージョンアップさせた物で、水撃属性特化の斬属性武器として使える性能は微強化ぐらいだけど、釣り竿としてはレベル3桁超えのリヴァイアサンだろうと平気で釣り上げられる強度と、釣り限定でヒットした対象を釣り上げられるだけのバフが装備者に掛かる逸品になっている。

 

「直接情報を抜き出すとかそう言う感じじゃないのか……」

「それも出来なくはないですけど、そっちだと端から順に調べていく事になる分情報量が多くなりますし、調べる時間が長くなるとその分シャドウに気付かれる可能性も高くなりますからね。占術の一種として釣りを組み合わせる事で、必要な情報だけを釣り上げる方が気付かれ難いってのも有ります」

「なるほど……まあ理由が有ってやるのは理解したけど、普通の釣りじゃないんだろうし餌とかは要らない感じ?」

「こんな感じに魚の餌になる物を付ければ、餌の概念に引き寄せられて淡水や海水の魚介類も釣れますけど、ダンジョンに蓄積されてる概念を釣り上げて調査するので、最初は餌無しですね」

「鮎が釣れたおね……何処から来たんだろう……」

「鮎釣りとかそん辺の有名処の概念が影響した可能性も有りますから、今のところは何とも言えませんね。まあこんな風に餌を付けずに糸を垂らせば、ここを造り出したシャドウに関連する何かが釣れますから、2回目以降は釣り上げた物を餌にして、より深く関連の有る情報を釣り上げていく感じになります」

「……今度は眼鏡が釣れたおねぇ」

「本人が眼鏡を掛けていたのか、或いは人物像から連想される特徴として眼鏡の形になったのか……。ともあれ考察材料はまだ足りませんし、スライムニキも分析の片手間で良いので釣りしましょうか」

「…………うん、手段がなんであれ調査が進むならオッケーだおね!」

 

 普段との違いに戸惑ってる様子だったスライムニキも意識を切り替えた様で、早速と糸を垂らして調査の取っ掛かり探しに移り、それを横目に私の方も先程釣り上げた眼鏡を一度調べた後、眼鏡を餌に次の情報を釣り上げるため再度糸を垂らす。

 まあ魚釣りと違って餌に食いつくのを待つ必要も無いため、糸を垂らしたら直ぐに引き上げて、釣り上げた物を調べたら直ぐに次ぎを釣り上げてと出来るため、ある程度分析して実働班へと指示を出せるだけの情報は直ぐに集まった訳だけども……。

 

「眼鏡、紋章が刺繍された旗、消臭スプレーと来て日傘から登山靴に森林迷彩服、それから蛇皮の財布……と、恐らく巻き込まれた人に関連する物でしょうけど、人物像を掴むのはまだ難しいですね」

「探求ネキ、さっき釣り上がったセーラー服だけどかなみちゃんが知ってたお。カズマ君や誠君が通ってた中学校の制服らしいから、範囲はかなり絞り込めるおね」

「スライムニキの方は、スーパーのレジ袋、電車の切符と来てセーラー服でしたから、周辺情報から個人を特定する感じの流れみたいですね」

「カズマ君や誠君なら知ってる可能性も有るし、情報共有は密にしておくお」

 

 釣り上げた情報をまとめると、マヨナカテレビに落ちてシャドウがダンジョンを造った人物は、恐らくカズマや誠君が通っていた中学校の女子生徒、ってのがスライムニキの釣り上げた物から推測出来た情報。

 で、スライムニキが周辺情報に関する手掛かりを釣り上げたと言う事は、私が釣り上げたのは巻き込まれた人物自身に関する物で、マヨナカテレビにより表出するシャドウの傾向が、抑圧された嗜好や認めたくない側面であるのを考えると、最初の方に釣り上げた物ほど表面的な普段の印象、後の方に釣り上げた物ほど本人も認識していない内面的性質を示唆していると推測される。

 それを踏まえて考察すると、眼鏡を掛けているか眼鏡から連想される印象の女性で、旗に刺繍されてた紋章が通ってる中学校の校章ってのは誠君から確認が取れているため、中学校での旗振り役的な位置と考えれば、生徒会長なりの役職に就いている可能性もある。

 次ぎに、釣り上げた消臭スプレーから日傘、登山靴、森林迷彩服に蛇皮の財布と変化して行った流れと、ダンジョンが隠蔽や偽装に優れている事から要素を挙げるとしたら、消臭スプレーはそのまま匂いを消して誤魔化す事だろうし、日傘は照らし出す光を遮って影を作り出す物と解釈出来そう。

 ただ、隠れるや誤魔化す意味でなら森林迷彩服も共通項が有ると言えるんだけど、その前に連れた登山靴には隠蔽も偽装も直接は結びつかない感じがするし、蛇皮の財布は……蛇だけなら隠れ潜む認識と繋がりますかね? 財布で在る事に意味が有るかまでは、現状だと判断が付かないけども。

 

「――っと、釣果からざっと推測出来るのはこの辺ですかね。巻き込まれた方の名前などが判明すれば、一気に進展出来るかとは思いますが」

「実働してくれてる皆から送られてくる情報を見るに、探求ネキの推測を聞いてから内部の様子が変化し始めたみたいだし、推測が当たってるとみて良さそうだおね。……こうして釣り糸を垂らしてると場違いな事してる気になるけど」

「まあまあ、過程がどうかより大事なのは結果ですよ」

 

 何とも言えない気配を漂わせるスライムニキを宥め、私も釣り糸を垂らして次のヒントを釣り上げる作業に戻る。

 さて、核心にはまだ全然届いていない感じも有るけど、巻き込まれた推定女子中学生はどんな子なんでしょうかね……。

 

*1
拙作の〝041:変化の良し悪し〟の頃から、ショタおじ謹製の白饅頭装備を常時着用してるため、ここ数年ではやる夫と呼ばれる事も多くなっている。と言う独自設定

*2
本家様の『カオス転生外伝 ざこそな! 第9話』より

*3
悪魔との間に生まれた子を祖先に持ち、悪魔の血と力を生まれながらに引き継いだ霊能者。

*4
肉体的な特徴が何かしらの悪魔と共通しており、該当の悪魔と同等の存在に至る素質を持つ人間の事。

*5
何かしらの悪魔の分霊が、人として胎児に宿り生まれ変わった人間の事。

*6
ダンジョンコアに加工したブルーウォーターを要として、指定空間に水域を展開する空間宝貝。

展開した空間に積み重なる概念を取り込む事で、展開場所の空間に融合同化して、元から其処に存在したモノとして異界の法則や物理法則などによる抵抗を無効化し、術者に有利な空間を作り出す。

造り出す空間は、術者を中心としたモノや他者を中心として閉じ込めるモノ、平面や立体など展開時に自由に設定可能。

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