【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
渋谷隠れ家の攻略レイド運営から届いた依頼、マヨナカテレビに巻き込まれた人物が造りだしてしまうダンジョンの調査と、可能ならば攻略と言う内容だが、その実該当ダンジョンの調査にスライムニキが名乗りを挙げており、前線で無茶して死んだりしない様にストッパーをしつつ、可能な限り迅速に調査と攻略を終わらせるのが裏ハンドアウトな依頼を受け、ダンジョン攻略へとやって来た私達。
一次調査を行ったチームからの情報だと、ステレオタイプなダンジョンのイメージからか、石造りの迷路がひたすら続く変わり映えのないダンジョンになっていて、特徴が無い事が特徴になっているかの様に、ダンジョンを造り出したシャドウに関する情報処か、ダンジョンの奥へと向かう方法すら見つけられなかったとの内容から、隠蔽や偽装に特化している可能性も考えられると言うのが、一次調査チームの結論だった。
実際、スライムニキを除いたチームメンバーを含め、調査にも慣れている実働メンバーが調べても石造りの迷路としかわからない中、少しでも調査の取っ掛かりを見つけ出すため、ダンジョンを構成する概念要素自体を釣り上げる事で、考察材料を造り出す事に成功。
得られた情報を繋ぎ合わせる事で遂に、巻き込まれた人物がカズマや誠君が通っていた中学校の女子生徒だろう、と言う所まで辿り着いた訳だが……。
ハム子:巻き込まれた人の情報を多少なり認識出来たから、ダンジョン内で見える景色も変化してきたね~
Drizzle:石造りの迷路が木造に、だもんなぁ。どんだけ偽装してんだって話だが、ようやく次ぎに進む階段も見つかったし、このままスムーズに行けると良いんだがな……
ハム子:あ、それに関してたぶんだけど、此処って私と瑞樹に綴さんの3人は相性が良くなさそうな感じがするんだよねぇ
黒先生:瑞樹さんと琴音ちゃんに私ですか?
キッド:3人の共通項って何だろ……レベル?
錬金術士:隔絶したレベル差があるのは事実ですけれど、相性って事なら別の要素だと思いますわね。具体的に何かまではわかりませんが……
スライム:んー、もしかして子供が居るって所だったり?
探求者:確かに、明確な差異なら経産婦かどうかは該当しますね。婚姻届は出してないですし、事実婚状態とか恋人ってだけなら他にも該当しますし
●画:どうやら正解みたいね。今まで見えなかった扉が現れたわ
金マル:新しい手掛かりにはなりそうだけど、軽く見回しても複数扉が有るし、調査にはちょっと時間が掛かりそうかも
チャット経由で実働班との情報共有をしていると、石造りだった迷路は板張りの床と壁に変わり、また今までは通路しかなかった所に階段が発見されたり通路の途中に扉が出現したりと、わかり易く状況が変化したとの情報が返ってくる。
どうやら、ダンジョン生成の元になった人物の事を知っている事が、攻略の必須条件となっていたみたいだけど……、電脳異界を経由する以前の誰が巻き込まれたのかを調べられる環境なら兎も角、何時何処から誰が認知異界に落ちたのかを探るのも一苦労な現状を考えると、想定以上に厳しいダンジョンだったらしい。
そもそも該当のダンジョンが発見されたのが今日の日付変更後で、一次調査が終わったのも夜明け前ぐらいの時間ですし……。
ともあれ、何かしらの因果が繋がった結果として、同じ中学校に通う2人を連れてダンジョンへとやって来る事になったのを考えると、攻略の鍵は2人のどちらか、或いは両方と想定しておきましょうかね。
苗木:えっと、3年2組の女生徒で長い黒髪と真面目な性格……ですか?それならたぶん学級委員長の千景さん、月森千景って名前の女性だと思いますけど
狙撃手:書き込み直後にダンジョン内が変化したって事は、正解みたいね
探求者:ふむ、口振りからするとそこそこ親しい感じですかね?
喧嘩屋:俺らの学校、元から黒以外の髪色してる奴多いし、髪染めてる奴も割と居るらしいから、黒髪で長髪なら委員長しかいねぇよな。誠は副委員長してたしよく知ってるんじゃね
苗木:海外からの転入生とかも居たし、今にして思えば覚醒して髪色が変わった生徒とかも居たのかもね。千景さんとは学級委員の仕事で一緒に居ることも多かったので、親しいかは兎も角多少は知ってる事もあるかと思います
ハム子:なるほどなるほど、じゃあ実働班のメインは誠君の居る班だね!シャドウの説得内容はスライムニキも手伝うけど、恐らく直接の対話は誠君の役目だろうから、今のうちに心の整理はしておくようにね!
苗木:ええ?!
スライム:相談ならのるから、遠慮無く声掛けてくれお……
色々と考察・分析しながら引き続き情報の欠片を釣り上げて、巻き込まれた人物の特定を急いでいた所、ようやく確定的な情報に行き当たる。
それらの情報から、心当たりに行き着いた誠君がチャットに名前を書き込んだ直後、ダンジョン内の偽装や隠蔽が更に解除され、木造の廊下と小部屋の構造から武家屋敷の様な内装に変わった事で、ダンジョンの核になってるシャドウが月森千景の物と確定。
今までは手応えの無かった調査も結果が出始め、色々と周辺状況含めて情報が集まってくる。
「では、現在判明している情報の再確認ですが、マヨナカテレビに落ちた人物は
「恋愛観以外だと古風って印象は無かったみたいだおね。スマホとかも普通に使ってたみたいだし、何ならサブカル方面も普通に話せてたみたいだから、余計に恋愛観だけ印象的だったってのは有りそう」
「あ、名前や人物像がわかってきたおかげで、月森千景さんの居場所がわかりました! マップを共有しますね」
「こう……まだ判明していない通路を飛び越えて感知されると、ナビとしての能力差を見せつけられた気がしますね……」
「まあ瑠璃は電子戦がメインのナビ型で、かなみちゃんは集合的無意識の夢を経由して見聞きするナビ型ですからね。能力の方向性が違いますし、ペルソナ特性の違いばかりはレベル差でどうこう出来る部分でも無いですから、そう言う物と受け入れるしかないですよ」
「むぅ……」
少し落ち込んだ様子の瑠璃の頭を撫でて慰めるけど、若干納得いっていない様子なのは、生み出してからまだ半年程しか経っておらず、情緒が育つ途上だからこその反応だろう。
これまでにもナビ型のペルソナ使いとはそこそこ交流してるし、瑠璃以上の能力者もそれなりに居るんだけど、それはレベルも経験も相応に詰んでる熟練者、と言う認識があったため、能力が負けていても納得出来ていたんだろうと思う。
一方でかなみちゃんは、正真正銘覚醒したばかりの初心者な上、レベルも経験も瑠璃の方が高いにも関わらず、ナビによる感知と言う一点だけでは有るけど、明確に負けている事にショックを受けたって所ですかね。
まあこれもまた経験の1つと糧にしてくれるのを願って見守るしかないですし、話し合うとしても此処の攻略が終わってからと言う事で、かなみちゃんが見つけた地点へと繋がるルートの調査に取り掛かる。
スライムニキの方は直接対話することになるだろう誠君に、分析した情報からのアドバイスをしたりで忙しい様子のため、追加情報の入手や通路ギミック解除の補助などをこちらで請け負うと、最初の難易度が何だったのかと思うぐらいに、実働班がサクサクと奥へ進んで行く。
「カズくんたちのD班がそろそろ目的地に到着しそうです!」
「これは……D班が偶々正解のルート近くに居たと言うより、D班が招かれた?」
「得られた情報からの分析だと結婚願望は強いみたいですが、言動や周囲からの評判に関する情報をまとめると、恋愛や結婚には余り興味が無いと思われてるみたいですからねぇ。唯一男子がいる上に、クラスメイトって理由まで付いたD班を引き込んだとしても可笑しくは無いですね」
「そうなると、やっぱり対話のメインは誠君になるおね。カズマ君の方は、タイプ的に上手く嵌まれば凄く相性も良さそうだけど、反面一度拗れた場合の影響も大きいハイリスクハイリターンになるし、かなみちゃんとの絆が強いのもこの場合はリスクだおね」
「え? 私との絆が……ですか?」
「シャドウとして現れた根幹部分は恐らく、恋愛や結婚願望に絡んだ要素と思われますし、仲の良い女性が居る男性から口説かれて、気にしない様な恋愛観でも無いみたいですからね」
「ああ、それは確かに」
「D班最深部に到着しました。想定通りシャドウを確認、ただし巻き込まれた女性は確認出来ず、恐らくシャドウ内部に取り込まれているものと推測されます」
かなみちゃんのペルソナ、【女帝 モルフェウス】で観測した情報を空間投影しているモニタに、D班がダンジョンの最奥へと踏み入れる様子が映る。
最奥部は、モニタから見える範囲でも体育館並に動き回れる広さの大広間で、その面積が全て畳敷きの和室になっている光景は、ある意味で非現実感を強調させる。
そんな和室の中央では、下半身が蛇のような形をした巨大なシャドウがとぐろを巻き、室内へ入ってくるD班を観察する様に見つめていた。
「進行が早いですね……」
「これは、1日経過しただけでも救助出来たかは半々だったかもしれないおね。兎も角、まずは誠君の対話でシャドウと月森さんを分離させる所からだお」
「――っ! ダンジョン内に悪魔の出現反応、最奥への道を塞ぐ様に増大してます」
「な、なんで悪魔がいきなり?!」
「怪異系統など一部の悪魔なら認知異界に出現するのも可笑しくはありませんが、悪魔の出現に合わせてダンジョン自体が認知異界から通常の異界へと変質を始めてますね……」
「ダンジョンを造り出したシャドウと接触してからの変化となると、巻き込まれた女性が何かしらの転生者だったパターンが高そうだおね。アウトサイダーや転生体なら初めからもっと影響が出てるはずだし」
「強引に突破すればD班の援護に行くのも可能ですが、よほど致命的な状況でも無ければ止めておいた方が良いですね。一応念のため、琴音と綴の班には突入出来る位置で待機して貰いますが」
「対話役の危険度は上がってるおね……やっぱり今からでも俺が行って――」
「はい【
「……あい」
案の定、心配が振り切って走り出そうとしたスライムニキを、木遁で生み出した木製のロープでぐるぐる巻きにして転がし、モニタの向こうの様子を窺う。
最奥部では、クラスメイトと言うのが功を奏してか即戦闘とはならず、一先ず会話からスタート出来たのは良い感じ。
スライムニキが分析した情報を元に、説得内容の方向性も組み立てているため最初の掴みは上々で、ダンジョン内に出現して暴れている悪魔や、最奥部との通路に居る悪魔達を除けば順調な滑り出しだろうか。
探求者:誠君が月森千景のシャドウと対話を開始しましたけど、ダンジョン内の変化はどんな感じです?
ハム子:ダンジョン自体の大きな変化は無かったかな~、宝箱で【刈り取る者】見つけたから倒して素材やアイテム回収したぐらい?湧いて来た悪魔は龍王や邪龍系統だったし、龍か蛇か水関連の転生者なんだろうけど、恋愛観が重いのってこの所為?
黒先生:日本だと清姫伝説が有名ですけど、古今東西で蛇や竜に龍は欲望や執念、情念などが深い事の表現として使われる事も有りますし、多少の影響を受けた可能性は考えられるかと
最奥部へ続く通路へ向かう道中の2人からの返答で、とりあえず早急に対処が必要な事態にはなっていないのを確認した一方、モニタの方では遂にシャドウから分離させる事に成功し、月森千景が自身のシャドウと相対する様子を窺う。
話の流れで月森千景の意識を上手く動かし、目を背けていた願望を自覚させる事に成功したのは良いとして、シャドウと言う超常現象が存在する状況で、真っ直ぐに自身へと言葉を紡ぐクラスメイト――誠君に絆されたのか、何かと自分を重ね合わせる様に、急速に恋に墜ちていくのがモニタ越しでもはっきりとわかる。
その様子と会話の所々で出て来た気になる単語、それから分離して確認出来る様になった少女の容姿から、ちょっとした懸念が持ち上がる。
「スライムニキ、転生者の推測が出た時点から予想はしてましたけど、確定っぽいですね。見た目も見た目ですし……」
「いくつかまだ発売していない作品の話をしてるし、確定だおね。それと俺はそこまで詳しくは知らないんだけど、月森さんも何か元ネタがある原作持ちって事かお?」
「ええ、FGOの望月千代女ってくノ一キャラとよく似てますね。元ネタと違って呪いなどは無いみたいですけど、湧いてる悪魔の傾向から、本霊は龍神とかその辺の可能性が高いですね」
モニタの向こうでは、シャドウと和解してペルソナを発現させ覚醒を果たした月森千景が、誠君に抱きついてる様子だったり、詩乃が我関せずと回収出来る物資が無いか探してたりと、諸々の問題が解決しているのが見て取れる。
調査開始時には苦労する予想もあったけど、少々強引な方法でも情報を集めた事で、所要時間は半日かかったかどうかで終わらせられたのは良い感じだろう。
ちなみに後で追加検証して判明した事だけど、月森千景が未発見だった
黒札の霊的資質により時間が掛かる程異界は難易度が上がり、難易度の高さにより攻略に時間が掛かれば、電脳異界の時間加速倍率が落ちて、終末までの制限時間が急速に縮まると言う訳で……。
「つまりは一次調査が終わった時点で、スライムニキが動き出す必要があったと証明されてしまった訳ですね」
「くっそ頭が痛い事に、コレがあるから前線に出るのを完全に禁止とは出来ないんだよなぁ……」
「とは言え、実績があるからと好きに動くのを許してると、サクッと死にかけるのが厄介ですよねぇ」
「早速瀕死2回目を記録してくれたよ、あの白饅頭」
「お疲れ様です。安心院さん……」
報告を持ってきた序でに差し入れした茹で枝豆猪を摘まみながら、ビールを呷る安心院さんにお代わりを注ぐ。
なお、スライムニキ本人は三度目の正直を主張してるけど、二度あることは三度ある訳で、事この点に関しては誰も信用してないんですよね……。*1
またしばらくスライムニキを後方に縛り付ける案を考えながら、業務報告から晩酌へと変わった話し合いは、合間に仕事をしながら夜更けまで続く事になったが、それはまた別の話。
オリキャラ紹介
・千代女ネキ
本名は
FGOの望月千代女と似た容姿の黒髪美少女で、転生者掲示板もメガテン関連も知らず、普通に第二の人生を過ごしていた。
前世は休日に乙女ゲーしたり、アニメや漫画などをそこそこ嗜む程度の喪女だった仕事人間で、そこそこ以上に優秀なエリート層でもあった。
今世こそは素敵な恋愛をして結婚したいとは思っているが、前世で上流階級に片足踏み込むぐらいまで昇った事で変化した価値観の影響で、交際=結婚前提と言った認識のため、学生の恋愛感覚とのズレもあって現在も交際経験無し。
また、前世今世共に一般家庭生まれで、今世でもエリートコースを目指して努力しているため、前世で培った文に加えて、前世では手が回らなかった武の方面にも取り組み、文武両道の才女と周囲から思われている。
なお、元々のエリートコースを目指した目的は、良い人と出会うには良い学校や良い会社に行くのが1番との発想だったが、前世では結局良い巡り合わせには出会わず喪女に終わっている。
一応、前世では出世により裕福な暮らしはしていたため、その成功体験から今世でも同じ様に学歴を積もうとしているのだが、本来の目的の1つである素敵な恋愛と言う青春イベントを投げ捨ててる事に気付いておらず、無自覚な抑圧がシャドウを生み出す事になった。
ペルソナは【刑死者 ジライヤ】で、本霊は伊吹大明神。