【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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幕間:月森千景の始発点

 転生や前世なんてのを私が自覚したのは、大体小学校低学年ぐらいの頃だったかな。

 前世では有名な大学を卒業して、大手企業への就職にも成功して、後はそこそこ稼いだら良い人を見つけて家庭を――って考えてたけど、良い人なんて見つかること無くアラサーを超え、アラフォーも見えてきた頃には色々なことを諦めて、サブカル沼に浸かった喪女となっていた記憶がある。

 まあ死因は覚えていないけど、どうせ劇的な事も無く事故なりで終わったんだろうと思うし、文字通り第二の人生を歩めてる今がある以上、そこはどうでも良い事。

 それよりどんな幸運か人生をやり直す機会が得られたのだから、今世は喪女などと呼ばれないようにするのを目標に、目指せ東大! 一流企業! 前世よりもっと勉強して、上流階級でも話を合わせられるようにスポーツや楽器なんかにも手を出したい所だけど、そこまでは流石に難しいかな?

 なんて考えながら、今世でも一般家庭生まれだった私でも出来る範囲で、色々してきた小学校時代。

 前世での経験があったおかげで、勉強の方は予習復習を確りすれば大体何とかなった――歴史関係で前世とは違う点が幾つも在って、その辺の矯正はちょっと大変だった――けど、スポーツ関係は運動不足な喪女だったのもあってちょっと大変だった。

 とは言え、小学生時代に確りと運動神経を鍛えれば、そこそこには動ける様になるのは科学的にも証明されてるし、文武両道の才女って評判にもなってるから、中学3年間の努力も着実に実を結んでいた訳なんだけど……。

 

 私の日常が崩れたのは、自衛隊の五島とか言う人が、いきなり国会議事堂を占拠したって報道が流れたのが始まり。

 出来事としては同じ都内の事だけど、テレビ越しに見るそれは遠い話に思えて、危機感なんて感じる事も無く、いつも通りに勉強して普段通りに習い事へと向かっている途中、気が付くと見知らぬ場所に立っていた。

 霧に覆われて少し先もはっきりとは見えない場所で、突然の事態に何をすれば良いのかも分からず混乱していると声が聞こえたんだっけ。

 

「なるほど、そこでシャドウの声を聞いた訳ですか」

「そうなります。何と言うか……ギャルっぽい口調と見た目の私が現れて、灰色の青春煽りされて反射的に反論して、拒絶した直後に丸呑みされた所までは覚えてます」

「その辺は千景ちゃんの本霊が影響してた感じか~。まあシャドウに殺されて成り代わりってパターンも多いのを考えると、時間的猶予が出来た分マシだったよねぇ」

「ははは、丸呑みでもマシって言われるとは思わなかったですが……」

「認知異界の中なら、肉体が殺されてもシャドウとして存在する事は出来ますからねぇ。その状態だと肉体側の主人格は心の海に還ってしまう可能性が高いですから、蘇生も難しかったでしょう」

「ま、完全に成り代わって現実世界へ出ようとしてたシャドウの思惑が良い方に働いたのと、シャドウを説得した誠君のおかげって事だね」

「……!」

 

 芳醇な紅茶の香りを漂わせるカップが並んだテーブルを囲み、女子会の様な雰囲気の中で、ついさっき渡された黒いカードについての説明を受けたり、私と同じ様に異世界からの転生者がガイア連合には沢山居て、黒札と呼ばれてる事などの話を聞いたり、私が転生した事を自覚してからの話などをしてたところ、琴音さん――ガイア連合(ここ)だとハム子ネキってハンドルネームで呼んだ方が良いのかと思ったけど、高レベルで名前隠しの必要性も薄れたからどちらでも良いと言われたから、掲示板以外では普通に呼ぶ事にした――のからかう様な言葉に、誠君とシャドウとか言うのが対話してた内容やその後の事を思い出し、顔も体も赤くなってるとわかる程に体温が上がるのを自覚する。

 でもでもしょうがないよね! 学級委員の仕事で一緒になることも多かったし、少し良いなって思ってた男の子から、あんなに真っ直ぐな目で見つめて「キミを助けたいんだ!」なんて言われたら……さ。

 私が求めてた恋って此処にあったんだ! って感じても可笑しく無いよね!

 

「千景さん、恋人のこと思い浮かべてるのが丸わかりなぐらい、エロい気配が漏れてますよ」

「エロッ?! いやそんな気配出してな……いですよね?」

「ペルソナと同時に前世覚醒で本霊に当たる悪魔の八岐大蛇――と言うか、伊吹大明神としての側面にも覚醒したから、気を抜いた時とかに蛇由来の誘惑や魅了系が漏れ出たりする事はあるよ。特に千景ちゃんは、シャドウになるぐらい心の奥底へしまっていた恋心が爆発した後だし、誠君関連の事を思い浮かべるだけで自然と溢れ出してる感じ?」

「えぇ……」

「まあ、その辺の対策も含めての専用式神を用意した訳ですからね。霊力操作に慣れるまでは式神の方でコントロールさせますから、一先ずは大丈夫でしょう」

 

 そう言って会話に入ってきたのは、隣の部屋で何かしらの作業をしていたもう1人の瑞樹さん。

 本人曰くNARUTOの木分身を元ネタにして造りだしてる分身らしいけど、見た目がくノ一キャラな私より忍者っぽいのは何なんだろうね? 見た目竜吉公主で得意な技術系統的にも仙女らしいんだけど。

 まあ私自身、FGOの望月千代女と似てるなんてのは言われるまで気付けなかったし、適性の有る事とやりたい事や出来る事が同じで有る必要は無いってのも、ガイア連合だとよくある話らしいから、参考にする程度で良いってのが原作持ちの共通見解との事。

 それは兎も角、こうして話している間に瑞樹さんが用意してくれた私の専用式神? とか言う短刀を受け取る。

 

「式神製造に特化した技術班ほどでは無いですが、その分素体にした短刀含めてそれなりの素材を使ってますし、式神コアは霊夢さんに協力して貰って用意しましたから、専用式神に必須の魂や精神の保護機能はショタおじ製と遜色ないぐらいになってます。それから認知異界で使用するためのペルソナ能力に自動修復機能も搭載してますが、他は拡張枠として空けてますので、都度必要と感じた機能やスキルを追加して下さい」

「あ、ありがとうございます」

「他の新人黒札に絡まれるとアレだから一応言っておくけど、その専用式神だけでも新人の初期支援範囲を軽く超える費用は掛かってるから、何か言われたら探求ネキの弟子として渡された物って答えるようにね。私らにとってはただのプレゼントでも構わない範囲だけど、新人だと手が出ない範囲の物だし、新人の黒札や銅札なんかだと背後関係や力関係を理解せず、因縁付けて粘着してくる様なのも居るから」

「そう言った所は覚醒しても変わらないんですね、人間って……」

 

 身近な刃物である包丁なんかとは大きく違う、武器としての重みの様なものを感じる短刀を渡された感情もそこそこに、続けて琴音さんから忠告された内容を聞き、非日常に放り込まれて浮き足立った気持ちが急速に冷えていく様な感じを覚える。

 前世では社会的にそこそこ成功していたと自負する私としては、良い物には値段相応の理由が有ると理解しているし、理由の有る区別を不当な差別と被害者面する連中も何度も見てきた。

 今私が受け取った、私の手でも持てる様な重さと大きさの刃物一本、それの素材や作成に掛かる人件費や技術料なんかの費用が、実際にどれほどの価値なのかはわからないけど、勝手な理屈での粘着行為を起こす輩が現れる様な代物と言う事は伝わったし、黒札の中にもそう言うクズが少なからず居ると言う事も把握する。

 とりあえずトラブルを避けるためにも不必要に見せびらかしたりせず、何かあったらまず瑞樹さんに相談する事にしよう、弟子として面倒見てくれるみたいだし。

 

「覚醒した直後は気が大きくなる人も多いですから、逆にそう言う勘違いした連中の方が多いですよ。一度痛い目に遭うか少し時間が経って冷静になれば、真面になる人も多いですけどね。それより式神に名付けして契約を完了させましょうか。契約が終われば取り急ぎやる事も片付きますし、この後誠君と渋谷隠れ家を見て回るんでしょう?」

「え、あっ! もうこんなに経ってたんだ。ええっと……じゃあ私の見た目の元ネタから三郎にします」

「ああ甲賀三郎か、確かメガテンのⅣに必殺の霊的国防兵器とかって名目で登場してたっけ」

「概念的な相性も守護者的にも良い名前だと思いますし、銘を刻んで最終調整しましょうか」

 

 そう言う瑞樹さんに式神短刀を渡すと、淀みない手つきで分解されて三郎の名前が刀身に刻まれ、何か術っぽい事をした所で私と式神が繋がった感覚がしたかと思うと、逆再生の様に短刀が元の状態に組み立てられて、鞘に収まった三郎が戻ってくる。

 再び手に取った短刀は、さっき一時的に渡された時に感じた武器の重さや冷たさとは打って変わって、私を守ってくれるモノと感じられる温かさが有り、重量自体は変わらないはずなのに肌身離さず持ち歩いても気にならない程に軽く感じる。

 何とも不思議な感じだけど、これがオカルトだからだと言われれば、今の私ならすんなりと受け入れてしまうだろう。

 

「パスは正常に繋がりましたし、今日のところはこれで解散としましょうか。部屋は用意しておきますけど、相部屋にするなら連絡して下さいね」

「あ、誠君には少し前にこっちの用事が終わった事は伝えたから――ああもうそこまで来てるね。それじゃ後はごゆっくり~」

「えっ?」

 

 オカルト体験に感慨を抱いてた私の事は気にもとめず、瑞樹さんと琴音さんはさっさと茶器などを片付けると、部屋に入ってきた誠君と入れ替わる様に出て行く。

 なお、その際に誠君がちょっと困った様な表情を浮かべていたけど、いったい何を言われたんだろうか……。

 

「えっと、千景さん。準備とか終わってるなら出かけようと思うんだけど、大丈夫?」

「う、うん。荷物とか何も無いから、直ぐに出かけても大丈夫だけど……、さっき2人が部屋を出てく時なんて言われたの?」

「うぇっ?! あー……割と真面目な話らしいんだけど、覚醒者にもレベルの差ってのがあって、覚醒したてのレベル一桁と、レベル20や30行ってる者で性交渉すると命の危険が有るから、【房中術】を習得するか専用の道具を渡すまでしない様に、って……」

「せっ?!」

 

 何とも直球な話に、さっき琴音さんにからかわれた時以上の熱が全身に巡るのを感じる。

 いや、今世はまだ中三の小娘だけど、前世はアラフォーの喪女だったから性知識も相応に有るし、いきなり最後まではアレだけどAかBぐらいまでは……なんて事も考えなかった訳じゃ無いけど!

 

「そ、そう言うのはまだ早いって言うか、私達まだ中学生だし……でもでもそう言うのに興味が無い訳じゃ無いって言うか――」

「ちょっ、千景さん落ち着いて!」

「はっ!?」

「この話は一旦保留にして、まずは渋谷隠れ家――電脳異界に造られた攻略拠点を見て回ろうか。僕も来てから日が浅くて十分に案内出来るって訳じゃ無いけどね」

 

 ちょっと処じゃ無く恥ずかしい所を見せちゃったけど、何とか気持ちを切り替えて部屋を出ると、そこに在るのは大きなお屋敷か旅館みたいな和風で木造な通路。

 教えて貰った話だと、今居る場所は異界って所に瑞樹さんの本拠地にある屋敷を再現した物で、その異界自体を含めて瑞樹さんが造り出したって事だから、スケールの大きい話。

 ちなみに誠君と見て回る予定の場所――渋谷隠れ家って名前の電脳異界って所とは、お屋敷の玄関横にある扉で繋がっているらしくて、玄関から普通に外へ出ると見渡す限りの草原が広がっていて、戦闘訓練とかを出来る場所になってるらしい。

 まあ、瑞樹さんの拠点に関してはざっくり説明されただけで、どんな設備が有るのかとか、個室の場所など後回しになってる説明も多いらしく、その辺は明日からって言われてるし、今は誠君とのお出かけの方に集中しよう。

 

「それじゃあまずは、渋谷隠れ家側にある拠点入り口近くから見て行こっか」

「えっと、出入り口は商業区の近くに有るのよね?」

「うん、商業区と保養区画の間辺りだね」

 

 誠君の説明によると、電脳異界の中心で各認知異界への通路が置かれていて、攻略レイドの運営や各種依頼を参加者に発行したりするギルドの在る中央区。

 認知異界などで手に入れた物を売り買いしたり、そう言った素材から作った物を販売する店舗などが在る商業区。

 トレーニング設備や安全に模擬戦を行える施設などが在る鍛練区に、各種娯楽施設や山に海に温泉などがある保養区。

 それから、瑞樹さんみたいな個人で異界を管理出来たりする一部は例外として、攻略レイド参加者の大部分が暮らす住居区。

 この5つが〝渋谷隠れ家〟の主な区画になっていて、瑞樹さんの拠点に繋がる入り口の場所みたいに、区画と区画の間に異界を固定してたり、空間を拡張して住居や施設なんかが造られてたりもしているとか。

 

「荷物とかは収納バッグやストレージアプリなんかで持ち運びも簡単に出来るから、まずは最低限必要な物を買って、何処にどんな店が在るかを見て行こうか」

「商業区って言うだけ有って、商店街かショッピングモールって感じね。パッと見だと良くわからない物も多いけど……アレとか」

「アレ? ああ八百屋かぁ……オカルト食材が色々置いてあるから、慣れてないと確かにわからないよね」

「え、八百屋なの? 金属っぽい色合いのも何種類も有るんだけど……」

「見た目だけで普通に食べられるアルミキャベツ*1

なんかも有るけど、見た目通りに金属の性質もあって、特殊な調理をしないと食べられないパイルポテトみたいなのも有るね。まあオカルト関係は取扱注意な物も多いから、利用するなら店員に聞いたり商品説明を確り呼んだりした方が良いのは、何処も同じなんだけど」

「へぇ~」

 

 商業区に入って直ぐの所にあった八百屋? の店先に並んでる金属製の野菜模型みたいな物が、オカルト食材と呼ばれるちゃんと食べられる野菜って事に驚いたりしつつ、誠君と手を繋いで店を見て回る。

 まあデートと明言してる訳じゃ無いし、誠君との関係も正確には恋人(仮)な状況だけど、それでも以前の自分では考えられないぐらい浮かれていて、繋いだ手から幸せを感じる事に驚きつつも、どこか納得する自分が居るのを実感する。

 そんな自分だけ舞い上がってる様な状態に思い至り、不安になって誠君の横顔をチラッと見上げるのと、こっちに振り向いたタイミングが重なったのか、バッチリと視線が合わさる。

 目に映る誠君の表情は、私の思い込みでなければちょっと緊張してる感じで、漫画やアニメなら確実に意識してる感じの描き方をされる場面だろうけど、そんな雰囲気だけで相手を理解出来る様な恋愛経験の無い私には、誠君の心情を推し量る事なんて出来る訳も無い。

 咄嗟に目を逸らしたり、でも気になってチラッと視線を向けたりと、ベタな恋愛漫画みたいな事をしてしまう自分に、後から気付いて身悶えする事になるのは、今の私は知る由も無い未来の話として、一通り商業区を見て回って買い物を済ませ、次の区画へと向かう。

 隣の住宅区は文字通りで、瑞樹さんの拠点で生活する弟子組に入った私には余り関係無いため、軽く見る程度で通り抜けたら、その次ぎの鍛練区に進む。

 ここも殆どの施設は瑞樹さんの拠点にも同じかそれ以上のが在るらしく、他のペルソナ使いの人達と関わる関係から、利用する可能性のある施設――レベル上げ用のダンジョンやトラップとかの対処訓練用ダンジョンなど――だけ確認して、渋谷隠れ家の中心である中央区に移動する。

 

「中央区と言いつつ、建物1つだけ?」

「見た目はそうだけど、万一の時の最終防衛ラインって事で、あの建物が1つの異界になってるらしいね。中央区だけでも完結する様に、各区画の設備も質は落ちるけど一通り入ってるし、攻略レイドの主目的になるマヨナカテレビとメメントスって認知異界に行く通路も、セキュリティの関係で中央区の中にしか無いしね」

 

 中央区と呼ばれてる建物に入ると、パッと見た感じは外観相応の受付窓口がいくつか在るぐらいで、複数の施設が入ってる様には見えなかったけど、複数台あるエレベーターで地下に降りると、階層毎に商業区・鍛練区・住宅区・保養区が広がっていた。

 実際中央区だけで基本的な事は事足りるため、中央区の部屋を借りてる人達もそれなりに居るらしく、攻略と休息を繰り返す生活をしていて、偶に外の保養区や中央区内の施設で遊ぶ程度な人も居るとか。

 後、中央区と名前が付いてるだけあって、他の区画の中心に在るため、他の区画への行きやすさから中央区の部屋に住んでる人も居るとの事。

 

「最後の保養区だけど、中央区にある施設との最大の違いはアウトドア系の異界が整備されてる所かな」

「この山の門とか海の門とか書いてある扉の事?」

「うん、登山やキャンプに海水浴、何なら遠洋の海釣りやスキューバダイビングなんかも可能ってのは聞いたかな。他にもゲームセンターやボーリングにカラオケとか、娯楽関係は大体揃ってるらしいから、気分転換に来る人も多いみたいだね」

「なんか攻略のための拠点って言う割には、遊ぶ方向に力入れすぎてる様な……?」

「僕も最初はそう思ったけどね、ペルソナ使いって人と人の繋がり――絆が力になる霊能らしいんだ。色んな人とコミュニケーションを取って絆を深めるのを考えると、こう言った娯楽が有った方が良いのは確かだしね」

 

 誠君と保養区の自然公園を歩きながら、そんなペルソナ使いの話を聞く。

 あちこち回ったけど、移動時間はそれほど掛かる距離でも無かったから、公園を歩いてる現在は日が傾いてそろそろ夕方になろうかって頃。

 電脳異界とか言う仮想現実みたいな人工の世界で、太陽も普通に再現されている事に今更驚いたりもしつつ、そんな事よりも、誠君と2人で歩き回る時間がそろそろ終わりって事の方に意識が向かう。

 デートと言うには仕事的――転校生に学校案内をする様な側面も感じる内容だったけど、一緒に買い物したり色々と見て回ったのは凄く楽しかったし、こうして公園を歩いてるだけでも幸せを感じてる私がいる。

 そんな楽しい時間が終わると思うと、一抹の寂しさを感じる所だけど、2人だけでは無くても住む場所は同じだし、今度は最初からデートとして来る事も出来る。

 ただ、それはそれとして、前世も含めて人生初デート(願望)の記念を欲しいと思うのは、乙女(肉体年齢)として間違って無い……はず。

 

「誠君、色々と案内してくれてありがとね」

「僕も楽しかったし、成り行きだったけどあの時言った千景さんを助けたいって言葉に嘘は無いから、僕に出来る事で助けになれるならいつでも言ってね」

「うん……だからこれは、助けてくれたお礼とこれからよろしくって事で」

 

 茜色に染まり始めた空の下で、少し背伸びして唇を重ねる。

 たぶん此処が、私の……月森千景として始まり。

 バクバクと高鳴る心臓の音と、今日だけでも何度も自覚した体温の高まりを勇気の後押しにして、言の葉を紡ぐ。

 

「誠君、あの時の勢いだけじゃ無くて、改めて私、月森千景は苗木誠君の事が好きです」

「僕も……僕も千景さんが好きです。結婚を前提にお付き合いしてくれますか?」

「はい、喜んで!」

 

 二度目のキスはあたたかな幸せの味がした。

*1
トリコの食材再現シリーズの一つで、どんな気候でも育つ銀色のキャベツ。

通常のキャベツの3倍以上の重量があり、金属の様な見た目だが生食も可能で、アルミのようなカリカリした食感をしている。

天然の塩気が効いており、味付けなどをしなくても酒のつまみになるため、呑兵衛達に好まれる野菜の1つ。

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