【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
手伝いで色々していた大赦関連もジュネスの建設に着工した辺りで一先ず落ち着き、大異界〝スーパーうどんマウンテン〟の偵察や間引きなどの手順も確立出来たところで、基本的な対処を銀時ニキや膝ニキに任せて山梨支部に戻ったのが大体五月の中頃。
そこから普段通り修行場異界へ潜ったり、スライムニキのヘルプに行ったり思い付いた物作りをしたりとしている内に、気が付けば夏も真っ盛りな八月。
私自身はペルソナ関係の研究や緊急のヘルプも兼ねていた事もあり、外部依頼については殆ど関与していなかったんだけど、地方依頼の対処や政界ニキなどの尽力もあって、国の中枢に対してもある程度影響を及ぼせる様になったらしく、私を含めた一部の人員にとって嬉しい恩恵がもたらされた。
「こんにちはー、申請してた戸籍の用意が出来たってメール見たから来ました」
「あ、はい。届いてますよ、これが関連書類で、本籍地は山梨支部の宿舎と言うか今だと社員寮ですけど、そこが登録されてます」
「了解です。まあ調べて見たら本籍地と現住所が同じじゃないといけないってわけでも無いみたいだし、面倒なのは税金関係?」
「その辺はガイア連合グループの社員って事で調整するそうですね。探求ネキとか未成年ですけど農作物系や消耗品の量産、式神製造関連とかでも結構稼いでますし、そもそもオカルト関係の収益とか一般的には曖昧な部分が多いので……」
「マッカとか言われても一般社会じゃ理解されないか、まあその辺まとめて処理してくれてるなら、気にせずいつも通りにしますね」
「税金関係とか全く気にしてない人の方が多いですからねー」
と言う感じで、霊能関係から政府にもある程度影響を出せる根願寺との関係が深まった事により、元の戸籍が使えない状態――性転換したり姿形が大きく変わったり――だった人や、そもそも戸籍なんてあるわけもない人型の式神に新しく戸籍を作って貰える様になった。
これによって、正式に書面としても式神と結婚出来る様になったり、土地の購入など戸籍の確認が必要な事項も大手を振って行える様になった訳だが、まあ未成年な私としては就学するなら兎も角、現状ではそこまで大きく意味のある事ではなかったりする。
ちなみに、戸籍に設定した名字は
そう言った人によっては結構な恩恵にもなった出来事があれば、反面色々な問題も大小様々起きてたりするもので、いくつかの派出所設置や支部まで拡大を見越した場所の整備など手伝いをしに行った地方もあるけど、それ以上に派出所設置すら出来てない地方の方が多いのも現状だったりするし、そう言う地方の異界攻略どころか周辺の安全確認すら覚醒者のみでは手が回っていなかったりする。。
そんなわけで最終手段気味ではあるけど、未覚醒者向けのオカルト仕事として安全に配慮した上で、異界発生地周辺を探索して悪魔発生の兆候がないか、一般人が立ち入ろうとしてないかなどを確認する仕事を割り振って、攻略人員が回ってくるまでの対処としていた訳だけど……。
「今回の件*1、該当異界の攻略と合わせて調べてきましたよ。過去視で確認したら本人に聴取した内容と同じでしたね、斡旋されてる仕事のルートから明らかに外れた道を行ってますし、仕事道具として支給された簡易式神の警報もうるさいからって理由で切ってます。危険を知らせるための警報なんだからうるさくしてるのは当たり前なんですが……。まあ結論として安全対策の問題じゃなくて、仕事を受ける側に意識の問題があったと考えるべきでしょうね。そこも含めて、仕事斡旋する時に術式で縛った方が二の舞にならずに済むかもって所ですか」
「と言うことは、他の未覚醒者向け仕事も直ぐに問題になるって訳じゃ無さそうね。調査と攻略お疲れ様、斡旋する時の注意事項や契約書類の方見直してみるわ」
過去視と念写を組み合わせて撮影した写真や動画、攻略した異界の内容についてなどをまとめた調査資料をちひろさんに渡し、今回の緊急仕事は終了。
まあ世の中何処にでも問題児は居るって事だけど、掲示板での書き込みやら問題発生状況を見る感じだと、欲望に忠実というか我慢できない精神性っぽいから、多分スケベ部預かりである程度問題起こさない様、手綱を握る必要がありそうなのが頭の痛いところ。
その辺は、悪魔を使った風俗娼館作りたいって言ってる美波さんに基本任せる感じになるかな?道具やら必要なのがあれば作成は手伝うけどね。
「さて、事件自体は極端な例としても、地方依頼や拠点設備、後装備も含めて色々足りてないのは事実なんですよね……」
「私達が依頼を受けて回ったとしても焼け石に水だが、それでもやらないよりは良いと跳び回る事にしたのだろう?」
「ええまあ、⑨ニキ*2も大妖精ネキ*3と各地を回ってますし、ごくわずかとは言え先達として面倒とは言いたくないですからね。まあそれはそれとして、ガイア連合員で地方回りしている人の質は兎も角、数としてのマンパワーが足りてないのも事実ですし、その辺を解消するために外部組織との連携も本格的に検討されてますから」
「その顔はまた何か新しい物を思い付いた顔だと思うが、今度は何を作る積もりだ?」
「そんな顔してましたか、まあその通りですね。外部組織となると大部分が未覚醒かレベル1あれば良い方となると、最低限私達が出張る必要も無い程度の異界や霊障ぐらいは対処出来る様になって貰いたい訳ですし、本人達の才能に期待するのが間違いなら装備でどうにかするってのが基本かなー、と」
レベル5ぐらいまでの悪魔なら相応の武器と防具があって〝見えてさえ〟いれば何とかなると思うんだよね、まあ悪魔を見えるって部分が未覚醒だと無理だから厳しいって話な訳だけど、とは言えこの場合必要なのは、視認では無く〝そこに存在していると認識〟している事な訳で――。
「――と言うわけでエドニキ、テッラ用に作ったアナライズカメラのアプリと連動して、悪魔を認識出来る様にするゴーグルみたいなの開発したいんだけど、手伝ってくれない?」
「それ未覚醒者用って事か?アナライズカメラも起動した奴のMAGで動いてるだろ、その辺どうすんだ?」
「そこについては新しく結晶仙人掌*4というMAGを蓄える性質の植物を作りましたので、これを使おうかと」
「お前は植物を何だと思ってんだ?」
「可能性の詰まった便利な存在、ですかね」
「……まぁいいか。マグネタイト・バッテリーとして使えるなら他にも色々使えるだろうし、素材としても回してくれんだろ?」
「時間加速の異界も使って栽培してますので、蓄積量も含めて品種改良を進めてますね。蓄積量の微妙な物から順に素材として回すのは問題無いです」
「おっし、そんじゃカメラ関係の研究してる奴にも声かけて仕様考えるか」
そうしてあれこれ実際に使用する場面や使用する対象者について想定し、出来上がったのがアクションカメラ付き映像投影ゴーグルとでも言った物。
動作としては、カメラの映像をマグネタイト・バッテリーと接続したテッラに送り、アナライズカメラのアプリ経由で悪魔が表示された状態の画像をゴーグルに送る仕組みになっており、悪魔の捕捉自体はアナライズカメラのアプリに仕込んである術式で行っているため、未覚醒者でも悪魔を確認することが可能になるだろうって予想である。
「さて、試作品なので色々不格好ですけど、一応目的の効果は持たせられたはず……」
「未覚醒が確認出来るかって話なら、未覚醒の人に手伝って貰うしか無いですからな」
「探求ネキやカメラニキ*5は誰か当てが居たりするか?ねぇなら依頼って事にして修行僧に回すが」
「私は特に居ないですね、最近は私の話が色々流れてるのか、分身に話掛けてくるのも顔なじみぐらいですし」
「こちらも基本撮影同好会での活動がメインなので、未覚醒の新人は今居ないですな」
「ま、最近だと新人の方から一線引かれてるのは俺も同じだしな、じゃテスターの募集出しとくか、報酬は……未覚醒対象だし五十万ぐらいでいいか?」
「こっちで護衛するのも条件に入れてその金額なら受理して貰えるでしょうし、それで行きましょうか。後は、テスター用の装備を用意しておきますか、行くのは初心者用異界になりますし」
エドニキが慣れた手つきでテスター募集の依頼登録をしている間に、未覚醒でも使える装備やアイテムを用意することにする。
「テスト時の様子は私が撮影しておけばよろしいですかな?万一の事態も探求ネキが居るので在れば起きえないでしょうし」
「それが良いですね。一応未覚醒者でも攻撃を当てることが出来るかも試したいので、認識して当てられたら発動するタイプの呪符もあると良いですかね」
「探求ネキのそれは見た目呪符っつーかカードだがな、まあ御札よりは投げやすいだろうが、武器は……まあ木刀か棍ぐらいだな――っと?」
「防具は……まあフリーサイズのコートがあれば良いでしょう。どうされましたエドニキ?」
「いや、さっき申請出した奴が速攻で受理されたってさ」
「早いですね、未覚醒者対象のテスターなんて、タイミングが合わないと中々決まらないのに」
「幸い貸し出しの装備などこちらの用意は終わっているのですし、早く済む分には良いでしょう」
と言うことで、申請出して一時間もしない内にテスターが見つかったらしく、依頼説明のために事務棟の小会議室へ向かうことになった。
現在のガイア連合山梨支部では、覚醒修行オフ会参加者や修行僧向けの仕事斡旋もやっており、これは単純な収入としての面以外にも、霊能関連の経験により覚醒するケースがワンチャンスぐらいにはあるためで、特に霊能アイテムを試すパターンはその傾向が強く、見かけたら取り合いになるタイプの依頼ではある。
ではあるのだが、それはそれとしてオフ会参加の未覚醒者が事務所へ訪れること自体が少なく、修行僧の場合はテスターを受けて、ショタおじの厳しい修行張りに地獄を体験したパターンも何度か見聞きしている事もあり、テスターということ自体に警戒するパターンも多いのが実状だったりする。
「こちらが今回テスターに応募してくれた佐藤和真さん、オフ会初参加の新人さんですね」
「よ、よろしくお願いします!」
そして今回テスターとして紹介されたのが、見た目高校生ぐらいのモブ顔と主役っぽさの微妙なバランスを感じる男性で、妙な緊張感を漂わせながらエドニキに向かって最敬礼をしていた。
テスターの案内と紹介が終わった事務員が退出していったところで、早速こちらも自己紹介と仕事内容の説明をすることに。
「おう、よろしくな!んで、今回テストして貰う道具のメイン開発はこっちの探求ネキ」
「よろしくお願いしますね」
「そんでこっちは、テスト中の記録も担当して貰う撮影系俺らで通称カメラニキだ」
「よろしく頼みますぞ」
「エッ、タンキュウネキ!?タンキュウネキナンデ??」
なんか
「あー、なるほど、そう言うことですかな?とりあえず掲示板の情報ほど無差別に危険だったりはしないので、まずは深呼吸して下され」
「んん?ああそっか、そうだな技術班長で掲示板じゃ名が通ってるし、主導してる様に見えたら緊張もするか。それに探求ネキもいるし」
「そう言うことですか。いや、特殊農作物関連なら技術部名義じゃなく農業部名義ですから、私イコール実食実験の大惨事って認識は捨てて欲しいんですけどね」
多分技術部からの未覚醒者用テスター依頼って事で、対して重要でも無いちょっとしたテストぐらいの認識をしてた所に、書類上技術部トップのエドニキが出てきて予想以上にヤバい案件なのではないかと焦ったところに、私としては遺憾だけど、農業部経由で出したテスト依頼の魔剣ダイコンブレード凍死未遂事件とか、ドンパッチソード錯乱事件、火栗で発火事件辺りのこともあって、修行僧組から恐れられているのを掲示板で知ったか何かした感じだろう。
そもそも未覚醒者が食べてどうなるか分からないから覚醒者向けにしてた所に、美味しい物を独占してるとか文句言われて、しょうがなくテスター募集したって流れなのに、危険な実験をしたみたいな噂が流れているのは怒って良い案件だと思うんですよね。
まあそう言った無責任連中への怒りは横に置いて、今回のテスターを受けてくれた佐藤氏の方に意識を向けよう。
「多少は落ち着いて来た感じですかね……ふむ?んー、ああ、このすば?」
ふと佐藤和真の名前と、顔かたちの印象から何か引っかかるのを感じて、記憶を
「ああなるほど、ってことはカズマニキってとこだな!まあ俺もそうだが、主人公格と似た見た目でもそれ通りの人生になるってわけじゃねぇからな。つっても概念的に影響来る場合はあるから、お前さんの場合はトラックやトラクターの近くで死なねーよう気を付けろ、下手したら水神関連に魂持ってかれて蘇生出来なくなる可能性もあるからな」
「おおう、こんなモブ顔なのに検討付けられるのか……。と言うか、やっぱり前世のキャラ関連って厄ネタの一つだったりするんすか?」
「卵が先か鶏が先かって部分もありますけど、無いと言い切れはしないぐらいですかね。私の場合もごく低確率で生まれると言う部分が当て嵌められたのか、胎内で覚醒してなければまず生まれることが出来ない状況でしたし、詳しく知りたかったら書庫にある覚醒状況記録集の参考にならない例の項目を見て下さい」
「いえ、結構です」
「そうですか、まあ周辺環境がそのキャラに影響された様な状況になってる場合もあれば、本人の霊質にまで影響している場合、ただ外見が似てるだけと色々パターンがありますので、覚醒条件を探る際の参考情報か、霊能の鍛錬方針を検討する場合の指針程度ってのが私達の中で出た結論ですね」
「私の様に、特段何かしらのキャラに該当しないタイプも多いですからな。厄介な物に絡まれる可能性が低いのは利点ですが、適正を正しく認識するのが若干大変と言ったところですな」
「ま、そう言った霊能関連は覚醒した後の話だから、今は忘れとけ。それより仕事の話だ」
盛大に脱線していた話をエドニキが軌道修正して仕事の話しに移り、試作霊視ゴーグルと装備各種を並べていく。
「――ってな訳で、テスト内容はそのゴーグルを付けた状態で悪魔を認識出来るか、認識出来たら実際に攻撃を当てられるか、可能ならそのまま討伐までって所だな」
「あの、それって普通に危険だったりしません?いやまあ、報酬が五十万とか大金だし分からないでもないんですけど……」
「テスト場所として向かうのは初心者用異界で出現する悪魔はレベル1しか居ませんし、護衛として私の同行とカメラニキも撮影で近くに居ますから、安全は保証しますよ。まあ悪魔と対峙する事が必須条件なので報酬の最低ラインは高いですけど、ほぼ何かしら影響が出ると予想されるテストでもないので、テスター報酬としては若干低めですかね。私が同行する条件なのでその分報酬も下がった感じですし」
「え?これでも少ない方なの……」
「そりゃ未覚醒が悪魔と遭遇する可能性がある仕事ってなると、安全対策をある程度してても基本百万からだしな。行く場所と探求ネキが居るなら万に一つもないってんで半額以下だぞ、まあ未覚醒用の見回りとは依頼の性質が違うから一緒くたにはできねぇが」
オカルト業界の認識に宇宙猫っぽい気配を漂わせるカズマニキにエドニキが追い打ちかけてるけど、悪魔を見えるかどうかってのはそれだけ危険性に差がある訳だし、報酬はそう言った危険性の度合いも含めた物だから、そう言うものと理解してもらうしかないよね。
「さて、説明も終わった事ですし、初心者用異界に向かいますか」
「了解っす」
何だかんだ話している内に緊張もほぐれた様で、多少三下っぽさはあるけど普通に話せる程度にはなったらしい。
そんなわけで他の用事もあるエドニキとは小会議室で別れ、装備を整え初心者用異界に到着、試作霊視ゴーグルを付け消費アイテムをポケットの各所に収納したコートを着用し、木刀を手に持ったカズマニキを先頭にしてカメラニキが撮影機材を構えて続き、そこから多少離れて私と久遠が異界へ入って行く。
「ここが異界なのか、何というかザ・ダンジョンって感じですね」
「そう言うイメージで、ショタおじが用意した異界ですからな。いかにもな場所の方が初心者には警戒して貰えて良いとの事ですぞ」
「なるほど。それはそうと、護衛のはずの探求ネキがだいぶ離れてますけど、大丈夫なんですよね……?」
「レベル差の大きい存在が近くに居ると、悪魔を倒した時のMAGが存在の大きい方に引き寄せられて、覚醒する可能性を潰してしまうんですよね。掲示板でもパワーレベリングの話が出ないのはそう言った現象が確認されているからですし」
「それに、これだけ距離が離れているのに、探求ネキと普通に会話が出来ている点からもわかるかと思われますが、20メートル程度の距離は十分探求ネキの射程範囲ですぞ」
「最近は多少広がって、半径50メートルは知覚と攻撃可能になりましたね。知覚範囲の広さや正確性などは適正とかもあるのでこれだけで力量は語れませんが、近接型でも20メートルを一歩で踏み込める人も居ますから、レベルが高い事の目安の一つぐらいにはなりますかね」
「と言う訳らしいので、心配は要りませんぞ、カズマニキ」
「お、おう……。了解です」
ほぐれていた緊張がまた顔を出してきたみたいだけど、それでも仕事に意識を戻して動き出せる辺り、根が真面目な善人系メンタルではあるのだろう。
警戒しながら歩くカズマニキの速度に合わせてのため多少時間は掛かったけど、ついに最初の悪魔として【地霊 ノッカーLv1】が現れた。
「何だ、これ?顔に継ぎ接ぎの布と手足がくっついてる?」
「ふむ、どうやらゴーグルは上手く作動している様ですな、一度ゴーグルを外して同じ場所を見てみると良いですぞ」
「あ、はい。よっと、あれ?……うわっ、つまりアレが悪魔って事?そう思えば前世のメガテンのどれかで似たのを見た気が……」
カメラニキの助言にしたがってゴーグル有りと無しで同じ場所を確認し、ゴーグルが有る事でようやく見える悪魔であると言うことを認識したようだ。
「相手が【地霊 ノッカーLv1】なのでゆっくりしていても大丈夫ですけど、悪魔によってはこっちが認識するか、見つかった時点で直ぐさま襲いかかってくるのもいますから、次からは見つけた瞬間に戦闘するぐらいの気持ちでいた方が良いですよ」
「りょ、了解です。にしてもアレがノッカーか、支給された消耗品は自由にして良いって話だし、まずは様子見も兼ねて」
未覚醒とは言えそこは流石に〝俺ら〟と言うことか、悪魔の怖さを実感して無くても知っているのもあって慎重に立ち回る事にした様で、事前に渡した未覚醒でも使用可能なカード型デビルパラライズを取り出す。
「実物見るのは初めてですけど、実際のデビルパラライズってカードなんですね」
「違いますぞ?毒、麻痺、睡眠のデビルシリーズは粉末の入った小袋を投げつける形ですな」
「え?それなら何故カード型に?」
「基本のデビルシリーズを未覚醒者が使える形にするのって面倒なんですよね、誤爆する可能性もありますし。なので効果発動直前の状態で札に封入して、攻撃する意思を持って投げると言う微弱なMAGに反応して、発動者とは別のMAGに触れた時発動する仕様にしてます。カードなのは作りやすさと投げやすさですね」
「微妙に納得出来る様な、出来ない様な……。ええい、やってやる!」
これだけぐだぐだしていても襲いかかってこない辺り、低レベルノッカーの感知範囲の狭さはありがたい話、気を取り直したカズマニキがデビルパラライズカードを投げると、予想以上に綺麗な軌道でノッカーに突き刺さる。
「お、一回で麻痺しましたな。攻撃チャンスですぞ」
「よっしゃー!」
カズマニキ故の幸運なのか、カードを投げた直後にノッカーがこちらへ後ろを向けたことで、クリティカル発生と麻痺付与が発動し、無防備な後ろ姿を晒すノッカーの姿がそこにあった。
後はもう語るまでも無いだろう、霊視ゴーグルを頼りに何度も木刀を振り下ろしては、感触に戸惑う気配を発しながらも麻痺が切れる前に殴り倒すことに成功する。
「未覚醒では十回近くの攻撃が必要なのですな。初撃破の感想はどうですかな?」
「何かクッションでも殴ってるみたいで、撃破したって感じはあんまり、でも確り倒せたんですよね?」
「ノッカーは地霊なので感触としては固めだと思うんですけど、その辺は霊視ゴーグルでの簡易認識って事が影響してるんですかね?まあ倒せたのは確かですよ、微量ですけどMAGがカズマニキに取り込まれてましたから、半覚醒にも程遠い状況ですけど」
とりあえずテストとしては目標達成出来たので、後はカズマニキの体力が続く範囲で探索を進めさせる事になり、数回倒したところで疲れが見え始めたため、最後の一体と言うことで【外道 スライムLv1】を倒したら撤収することになったんだけど。
「ふぅ、五体倒せたけど覚醒せずか、まあそう上手い話はないか……ん?」
「おや、初心者用異界でマッカが出るとは珍しいですな」
「へぇ……これがマッカなのか。おお?!」
「マッカを手に取ったからなのか、それともドロップした物を手に取ったからなのかは気になりますけど、こんな覚醒の仕方もあるんですね。覚醒状況記録集に追加しておきますか」
「これが覚醒なのか、それで俺がどんなスキルを習得したかってのは分かるのか?」
「覚醒やレベルアップで習得してる場合は、基本的にどんなスキルか自身で分かる物ですが、スキルを思い浮かべようとして出てきますかな?」
「んん?おっ、この【初段の強運】って奴か!って運の数値5上昇とかゲーム的に良くわからん死にステじゃねーか!!」
ノリツッコミよろしく叫んでうなだれてるカズマニキだけど、現実的に考えると【初段の強運】は当たりスキルに分類されると思うんだよね。
「ゲームだとって言うか、現実でもわかりにくい方ではありますけど、あるとないではかなり変わる当たりスキル分類ですよ?運気関連って」
「へ?そうなのか?って言うか現実でもわかりにくい所は変わらんのね」
「浅学ながら私もその辺は詳しくないのですが、探求ネキに解説をお願いしても?」
「そうですね、詳しく話しても実感が出ないと思うので、簡単な部分だけですが、基本的に運気に関わるステータスってレベル上昇でしか上がらないんですよ。他は所謂筋トレのように負荷を掛けて多少は成長させる余地があるんですけど、運気の上昇する装備はあってもステータス自体を上昇させるのが難しい訳ですね」
「まあ、言われれば運気の上昇するトレーニングって何だって気はするな」
「そして運のステータスにどんな効果があるかと言うと、その人にとってより良い可能性を引き寄せる力と言ったところでしょうか」
まあ実際は他の人や悪魔等の影響もあって、複雑に絡まり合っているから運が高いだけでより良い未来になるとは限らないし、だからこそ未来を見通すための占術や未来視が難しい理由なんだけどね。
「それは所謂、運命愛され勢や運命力の様なものですかな?」
「運命力の方は近い感じですけど、運命愛され勢とは違う感じですかね。逆にそう言った苦難や波瀾万丈がその人にとって良くない、或いは望まない物であれば回避する方向に力を発揮するステータスと言えるかと。まあ何を基準にして良し悪しが決められているか分からないので、結果として分かるかどうかって部分も含めて、現実でもわかりにくいと表現したわけですね」
「分かる様な、分からない様な……、結局どういった状況を想定して探求ネキは当たり分類って言ったんだ?」
「運に関与するスキルって事は、運命神系列の使う運命操作などに対抗できる可能性がありますからね。それこそ因果律操作系の必中攻撃すら回避出来たり、回避する未来を観測して絶対回避なんてしてくる相手に攻撃を当てられる様になったりするなら、有用性は計り知れませんよ」
「いや、そんな地獄の
「カズマニキ的に言えば、クリティカルする可能性が上がって状態異常を付与しやすくなり、悪魔を倒した時のレアドロップ率やレア素材を採取出来る可能性が上がるとかですかね?」
「そっちを先に言えよ!むっちゃ有用じゃねーか!!」
そんなこんな最後は締まらない終わりになったけど、試作霊視ゴーグルの性能試験は満足いく結果になったし、新しく覚醒者も出たと言うことで、結果は上々と言えるだろう。
「おっし、報告書の方もこれでいいだろ。後は量産用にコストと相談して外側作ったら製造班に投げる感じだな、俺らの未覚醒組にも修行の一環で組み込めないかショタおじに話しておくかね」
「異界内でも稼働するカメラが必要になります故、多少のコスト上昇は仕方ないでしょうが、それでも未覚醒者が悪魔を対処出来る可能性が増えるなら飛びつくでしょうな。ところで探求ネキは何をしておられるので?」
「掲示板で銃撃系適正持ちから銃の改良依頼って結構出てるので、丁度良いから結晶仙人掌を使ったカートリッジ式の術式銃でも作って、量産出来る様にしたら霊視ゴーグルと合わせて手数を補える様になるかなーと」
という発想点から出来上がったのがこちら〝マグネタイトカートリッジ式
以前スライムニキの派出所へ支援として置いてきた
「それもまたテストすんのか?カズマニキのテストする前に作ってれば一緒にテスト出来ただろうに」
「いえ、こっちは使用時に霊力が消費されなければ想定通りの動作なので、テストは別に要らないですかね。まあ何か問題が出たらその時に対処しましょう、当面未覚醒で使う事なんて無いでしょうし」
「そんじゃ探求ネキが軽くテストしたら銃研究してる班にでも流しといてくれ、実銃とは別アプローチだが、使えるならそれでいいって俺達も居るしな」
「了解です、それじゃカメラニキ追加の撮影お願いして良いです?」
「構いませんとも、紹介PV風にでも撮影しますかな」
そんなわけで紆余曲折あったけど、私達ガイア連合山梨支部だけでは足りない人数というマンパワーを補助する道具を作成していた一幕である。
なお、覚醒者であればカートリッジ経由で霊力を流す事で、自身の霊力が続く限り弾丸を発射出来るため、予備の保険や属性相性対応策の一つとして持って行く銃撃適正持ちはそれなりにいるらしい。
今回のオリキャラは何か他で被ってそうな気もするけど、その場合は別世界線か或いは他人の空似って事で……。
序でのオリキャラ紹介
・カズマニキ
本名 佐藤和真、霊視ゴーグル試作品のテスト対象者を探す時に運良く依頼を受けた事で見事覚醒まで果たしたラッキーボーイ。
ステータスはラック特化で他は平均的に低いが、一応レベルに応じて上がってはいる。
運の良さを活かした状態異常クリティカル戦法を得意としており、レア泥回収やマッカ集めで地味に貢献しているコツコツ組。