【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
何か胡乱な情報が増えて、霊感とは別に嫌な感じがしてきたし、兎に角急いで走り続けて大体30分ぐらいかな? 先に来ていた人達によって、建設予定地として整地された中央の山の山頂に到着する。
「到着! 何か既に候補地処か思いっ切り整地まで終わってるし、ココに建てるって事で決定で良いんだよね?」
「おう、集まってる連中の意見は纏まってるから心配するな」
「オッケーマリッサ、それじゃ拠点の設計図とか進捗確認は、グループチャット経由で専用部屋に移動して確認して下さい! 拠点の拡張は初期案分が完成した後、維持費を超えない範囲で相談の上決める感じでお願いします!」
「これは……、私達は宝玉型五行器を作って動力源の確保に回るのが良いですわね」
「それじゃ私達は周囲で素材になりそうなの探してくるかな、まだイベント開始前だけど、素材集めとかは可能だったし」
「うむ、開始時刻には瑞樹殿が開始の宣言もするとの事だし、それまでには一度戻ってくるとしようか」
集まった人達に声を掛けて、拠点構築参加者用に予め色々とデータを突っ込んだチャット部屋に招待し、それぞれ出来る所をやって貰う感じで、さっさと拠点の皮だけでも装甲護符を展開して構築する。
ものの数分で出来上がった建物の中央に宝玉型五行器を設置して、一先ず拠点の維持が出来る様になった所から、本格的に建物の拡張や設備の設置に製造を開始して行く。
そんな感じで拠点が着々と出来上がる頃には、イベント開始時間も目前まで来る訳で、この頃になると初期位置からの移動だけで手一杯な新人――大体レベル10以下の覚醒してからの日が浅いペルソナ使い達で、拠点構築企画に事前参加していた組――も、回した場所連絡によってようやく辿り着き始める。
まあ、そこそこの高さがある山の頂上まで駆け上がる事になった訳だし、疲労困憊な様子で愚痴を溢してるのも仕方無い話とは思うけど、桜子が予感した通りなら草原とかの平地に作るのは逆に危険だし、我慢して貰うしか無いんだけどね。
「はぁはぁ……、拠点なら草原とかもっと造りやすい場所あるだろ……! なんで山頂なんだよ……」
「そりゃベテラン勢が讃命島に入った直後から嫌な予感がするって言ってる上に、幸運系スキル持ちが山頂を候補地に選んだからだな」
「予感って……そんな曖昧な理由で山登りさせられたのかよ!」
「おいおい、良いかルーキー? 〝高レベル霊能者と幸運系スキル持ちの予感には素直に従え〟だ」
「高レベルになるだけの経験を積んで、俺らには気付けない
「じゃあ幸運系スキル持ちは運良く正解を選べるって事ですか? 幸運持ちだろうと間違えたり外したりはするでしょう」
「まあ幸運系スキルの方は、それぞれで傾向が違う事もあるから一概には言えないんだがな。過去から未来へ流れる時間って川の中で、幸運系スキルは良い結果になる流れや、望んだ結果に至る流れを無意識に選ぶんだとよ」
「運命力とかって言う、俺ら処か高位霊能者でも感じ取るのが難しい領域の話だからなぁ……。まあ幸運系スキル持ちの勘は運勢の流れみたいな物を基準にしていて、今を感じ取ってる高位霊能者とは別視点の物って理解しとけば良いさ、俺らもその程度の認識だし」
「はぁ……そう言うもんって事っすか」
拠点に辿り着いた新人とベテラン手前ぐらいの人達のそんな話も聞こえてくる横で、開始ギリギリまで続けていた拠点構築も、讃命島の上空に瑞樹さん――イベント主催者が映し出された事で一区切りして、開始宣言を聞く事に意識を向ける。
《夏イベント開始時刻になりましたので、改めて今回のイベントについて説明します。まず大前提として、イベント中に死亡した場合、チームメンバーなどによる蘇生措置が行われず一定時間が経過した時点で、讃命島から強制退出となり、宝食島内の蘇生室で復活することになります。なお、この復活措置を受けた場合は、ペナルティとして次の正午になるまで讃命島へ入れませんので注意して下さい》
その切り出しから始まったのは、イベント告知に掲載されている内容が基本だったけど、所々隠されていた内容も追加で説明が行われる。
特に影響が大きいと思われるのは、イベント期間中の天候変化についてで、毎日正午を境に変化する仕様になっているらしい。
《天候変化は台風や大雪などの現実にもある物から、槍とか飴玉が降ったり、霧状の炭酸水や酒が発生するなど、異界ならではの特殊環境になる場合もあります。なお、変化する環境の危険度は週の初めに100面ダイスを7個振って決定します。ファンブルだと地形毎変化する可能性も有るので……、その時は頑張って生き延びて下さい》
イベント期間中は100面ダイスで毎日変化?
約一ヶ月、具体的には4週間だから28日=回ダイスを振る訳で??
「それ! ファンブル範囲によっては確実に天変地異起きるじゃんかー!」
思わず大声でツッコミ入れてしまった私は悪くないよね!?
新人君達は余り理解出来てなさげだけど、ベテランやそこそこ慣れてる人達はサッと緊張が走ってるし、マジで初手拠点構築に走ったのが大正解だったって訳じゃん。
と言うか台風や大雪は兎も角、異界ならではの特殊環境とか、結界張った拠点なりでも無いと生存すら危うい気がするんだけど??
《ちなみにダイス結果の判定は、1をスーパークリティカルとして2から10がクリティカル範囲、逆に100をスーパーファンブルとして96から99がファンブル範囲、ゾロ目の場合は揃った数字に合わせて特殊判定になります。基本的に数字が少ない程穏やかな環境変化、多い程激しい環境変化になりますから、イベントページに追加するダイス結果を確認して、讃命島への滞在か退避するかを決めると良いでしょう》
続いてダイス判定の基準も発表されたけど、ファンブル確率は合計でも5%と考えると、まだマシな範囲だろうか……? いや、天変地異が毎日5%の確率で発生すると考えれば、恐ろしく高いね。
一応クリティカル範囲の方が広いけど、ゾロ目の特殊判定って、ファンブル範囲の99は確実に碌な事にならないだろうし、同じ感じで44とか出たらヤバいことになりそうだよね……。
《それではダイス結果が表示される様にして……っと、これから1週間の環境決定ダイスを振って、サバイバルイベントを開始します。よっと……あっ皆さん頑張って生き延びて下さいね!》
「ちょっと?? 何か不吉な〝あっ〟って声が聞こえたんだけど?!」
「ははは、これは拙者達も気合いを入れないと危険な気がするで御座るな……」
「ダイス結果が上空に浮かんで来た……けど……」
讃命島の上空に映し出されていた瑞樹さんの姿が消えて、ダイス結果が浮かび上がってきた訳だけど、瑞樹さんの〝あっ〟と漏れ出した声から感じていた嫌な予感が、決定的な形として描き出される。
空に燦然と禍々しい光を放ち輝く数字と文字に、周囲が一瞬で静寂に包まれたと感じた直後、ダイス結果に罵声の1つも上がるよりも前に、激しく突き上げる様な揺れと轟音が襲い掛かる。
「くっ、初手100ファンとか……! いくら何でもこんな時に出さなくても良いでしょ!」
「地震に這いつくばりながらでも文句を言える辺り、美砂もだいぶ根性あるよねぇ」
「そう言う裕奈もそうだけど、高弟組は揃って良くこの揺れで立ってられるわね……」
「其処は積み重ねてきた鍛練と、霊力操作の応用で御座るな」
「まあ仙人目指して修行してっからこれぐらいわな。比較的簡単な方法なら空中に結界を張って、足場にするのもこの場合有りだろうぜ」
「日本に来てからは地震にも多少は慣れましたけれど、大地が揺れると言うのはやはり落ち着きませんわね……」
高弟組の様なベテラン勢以外が、軒並み膝を着く大地震に耐えていた時間はどれほどだったのか、ようやく地震が収まった事に気付いて立ち上がれる様になった頃、中央の山に築いた拠点から見える光景が一片している事に気が付く。
「あれ……? 私ら北側に居たっけ? 何かさっきまで草原だった所が、
「南側であってるぞ、北西にあった岩山地帯はマグマに沈んで、流れ込んだ海水が大量の水蒸気を上げてるみたいだな」
「なんて……?」
「つまり天変地異で滅亡前夜? とりあえず拠点の結界設備の増強と、結界に回すリソースを増やしておくね~」
夏イベ開始早々に起きた事態を前に、私を含めた大部分は頭が回っていない感じの一方、既に周辺状況確認に動き出してるらしいマリッサと、いつも通りのマイペースで拠点内に指示を出してる桜子。
「……! 呆けてる場合じゃ無いわね。皆ッ! 100ファンレベルの天変地異ならこの程度で終わらないはず! 小康状態の今のうちに拠点の防御力を出来るだけ高めて今日を乗り切るよ!」
「そうね。呆けてても事態が悪化するだけだし、空の表示が消えた途端に空模様が変化し始めたわよ」
「それって、下手したら素材集めに行くのも難しくなる……?」
「瑞樹さんって100ファンや1クリは確り特別にするタイプだし、下手に外へ出たら生き延びるのも難しい気がするかな~。いっその事拠点内から地下に掘り進めて、山自体を拠点化する?」
「ん~有りかも? まあやるとしても、結界とか構造関係に詳しい人に話を聞いて可能ならば、って感じだと思うけど」
「じゃあ、今結界設備を増強してくれてる人達が一段落したら聞いてみようか。その間に建造物の構造とかに詳しい人探して、山自体の拠点化が可能か検討するチームを組む感じで」
自主的に動き出してる様子を見て、何とか気合いを入れ直して全体への指示を出し、大部分の参加者へと活を入れた後、私達もまた事態に対処するために動き出す。
手始めに、小康状態の内に可能な限り素材を集めて来て貰う探索班を送り出し、拠点の防御を固める技術班を招集して、現状で可能な限り結界を強化しつつ、環境変化により拠点の外へ出られなくなった場合の素材入手手段として、拠点内から地下に山を掘り進め、拠点範囲の拡張と素材確保を出来ないか相談してみる。
「結界関連は私とマリッサで担当するとして、地下を掘り進めての拡張ですが……」
「そっちはあたいらが担当するよ。これでも建築資格持ちで、オカルトを使った建築に関しても勉強してるからな」
「あ、りんさん。設計だけって話だったけど島にも来てたんだ」
「あたいは現場監督もしてるからね。装甲護符なんてもんを使った建築なんて初めてだから、確認とかもしておきたくてね。それに追加で大規模な仕事が出来るってんならこれも経験ってな」
そう言って会議室の席に着いてる赤髪の女性は、今回の拠点構築企画で設計を担当してくれた田村りんさん。
納期が1日有るかどうかなんて無茶な話に、綴さんや瑞樹さんに色々と世話になったからって事で、引き受けてくれた義理と人情の人。
ちなみにその世話になったってのは、家業でやってる建設会社の社員さんと一緒に巻き込まれたのを綴さんが救出して、渋谷隠れ家での住む場所や働く環境などを瑞樹さんが手助けしたのと、実はりんさんのお兄さんが黒札の大工ニキ*1って人だったらしく、知り合いだった瑞樹さん経由で安否確認なども出来たって話。
弟子仲間って訳じゃ無いけど、霊能的な意味を含んだ建設技術や設計を瑞樹さんから教わっているみたいで、私達ともそこそこの顔見知りだったりする。
他の会議参加者は、結界関連担当でいつものマリッサとペリーヌの2人に、建設関係の現場技術担当って事でりんさんの所から大工のとげ太さん、後は拠点計画発案者って事で
「山を山頂から掘り下げていく、なんてのは現実じゃまず無理な事業だしなぁ。何処まで上手くやれるかはわからんが、出来る限りのことはさせて貰うぜ」
「よろしくね~」
「それじゃ今くぎみー達に調査して貰ってる地下探査の最新情報がこれだね。火口後とかの空洞は見当たらないみたいだし、掘るだけなら問題無さそうかな? 掘った土とかを運ぶ為の収納道具も今作成して貰ってるから、作業開始までには必要分を確保出来ると思う」
「結界の方は拡張するための楔を作って、出力維持の為に宝玉型五行器を増やすか、師匠に造り方だけは教わった陰陽五行器にチャレンジするかって所だな」
「陰陽五行器?」
「瑞樹様が超機人――巨大人型ロボットの動力として開発した、五行器の発展型ですわね。宝玉型五行器の方も五行器の発展型の1つですが、こちらは出力より取り回しのし易さがメインで、出力としては陰陽五行器の方が上になりますわ」
「素材の方はアトリエ式錬金釜で、掘った土を原子配列変換して作る事も出来るから何とでもなるんだが、上手く加工出来るかって所はちと確実とは言えん感じだな。宝玉型五行器なら確実に作れるんだが、どっちが良いかは今回の責任者である麻帆裸堂の方で決めてくれ」
「ん~……それなら陰陽五行器の方かな? 会議始めるまでの間にイベントサイトで今週のダイス結果見てきたんだけど、3日目が気になるんだよね~」
1日目:100 スーパーファンブル
2日目:31
3日目:44 特殊ゾロ目
4日目:7 ラッキーナンバークリティカル
5日目:31
6日目:7 ラッキーナンバークリティカル
7日目:85
桜子が表示させた今週の天候変化ダイスの結果を見ると、今日のスーパーファンブルに続いて、3日目も44の特殊ゾロ目と不吉な数字が表示されていた。
その後クリティカルの7が2日もあるのが別の意味で気になったりもするけど、その辺考えるのは今日と3日目を乗り越えてからだよね。
「数字が少ない程穏やかな環境変化って言ってたし、数としては少ない方だけど……44ってのは嫌な数字だよねぇ」
「スーパーファンブルとか言ってる今日よりも酷い事になりそうな感じなのか?」
「そこは流石にスパファンの方が危険度は高い気がするかな? そう言う意味でも、より出力の高い動力炉が有った方が良いって思う感じだけどね~」
「合算では無く単体での出力が必要になる可能性も有る、と言う事ですわね。ともあれ、必要なのであれば挑戦致しましょう」
「そっちの話は終わったかい? こっちはとりあえず、探査情報から大まかな図面を引いただけだが、中の方は装甲護符を使わずに建築して行くから、多少時間掛かるのは先に言っておくよ」
「あーそれは確かに仕方無いね。結界に出力回すんだし、装甲護符の維持が切れて崩落とか目も当てられないから、時間掛かっても確りとした物をお願いします」
「あいよ、任された」
流石に山を掘って建設するなんて事は未経験なだけに、掘り始めて建設を始めないと問題点も見えてこないって事で、事前会議では大まかな方針と、問題発生時の対応の段取りを決めるぐらいに留め、後は都度対処する事にして解散。
早速拠点内が慌ただしく動き出した一方で、拠点から見上げた空は急速に雲が増えて厚さを増し、イベント開始直前までは快晴だった空が、そろそろ完全に雲に覆われそうな気配になっていた。
そろそろ探索班に戻るよう連絡をするかと思った所、折良くなのか探索班から全体の帰還状況と、早ければそろそろ拠点に着く旨の連絡が届く。
「おっと、探索班は裕奈達高レベル組かベテラン組にお願いしただけ有って、余裕を持って撤退してくれた感じだね」
「うんうん、これなら天候が荒れ始める前には、生き残ってる人全員拠点に戻ってこれるかな」
「となると、回収してきた素材の整理と管理の段取りか……。拠点を作ろうなんて企画したからってのはわかるけど、なんで私らがリーダーやってんだろうね?」
「にゃはは、それは今更過ぎない?」
「主にアンタの発案の所為だっての!」
「あひゃひゃひゃ?! ご、ごめんって! って言うかタンマタンマ、美砂っちあれ!」
「ったく、他人事みたいに言ってんじゃないわよ。んで? 一体何が起きた……ってぇ?!」
他人事みたいにおちょくってきた桜子をくすぐって、軽く懲らしめたりしてじゃれていられた余裕が有ったのもここまで。
桜子が指差した先の窓から見えたのは、結構な高さのある山頂からでもはっきりとわかる程の高さの大津波。
北東に生い茂る森の木々を悠々と超える様子から、最低でも十数メートルはあるだろう津波が島を襲い、時を合わせるように降り出した雨が、本番開始を告げてくる。
ちなみに、ダイスに関しては7D100を振って、真面目に初手100出しましたw
オリキャラ紹介
・田村りん
黒札の大工ニキこと田村源三の妹で、容姿のイメージはながされて藍蘭島のりん。
家業の関係で幼少から大工の修行をしていたが、どうにも適性が低いのか技術は上達しなかった。
一方で、現場監督的な指揮方面の能力は十分以上にあった事から、建築設計や監督方面へ進む事に。
終末前は、大学を卒業した後に実家の建設会社に就職し、建築家兼現場監督として働いており、仕事で山梨に行ってる源三達の代わりに、会社に残って雑務を熟していた。
クーデター宣言が起きた際は、源三の指示で社員をまとめて避難していた所、認知異界に巻き込まれる事になる。
なお、兄がオカルト関係者と言う事は、渋谷隠れ家へ保護された後に初めて知った感じで、内外の時間差があるため頻繁には連絡を取れないが、社員を含めた互いの無事は確認済み。
実は秋山綴と大学が同じで友人だったり、金札仲間として交流があったりする。