【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「避雷針の設置急げ! 雷嵐はまだ続くぞ!」
「電撃無効以上の奴はこっちだ! 避雷針に接続したアトリエ式錬金釜で電撃結晶をガンガン生産するぜ!」
「ヒャッハー! 高純度の電撃MAG結晶だ! これで色々作れる!」
「其処の生産馬鹿共! さっき警報が鳴ってたの聞いてないのか!」
「何だぁ!? 雷嵐の中に追加で槍でも降ってくるってのか?!」
「その通りだよ! 雨が氷晶槍*1になった上にシャークネードだ! 竜巻で巻き上げられたサメも降ってくるぞ!」
「追加で観測情報来たぞ! シャークネードに混じってシャークレモネード*2まで来やがった!」
「何だと?! 液体用の収納道具って作られてたか!?」
「フッフッフ、こんな事は流石に想定してないがサバイバルなら必要だろうと作っておいたのがあるぞ!」
「でかした! サメ共にはチェーンソーか拳で当たれ! 一撃で仕留めないと味が落ちるからな!」
「来るぞ! 疾風と衝撃に気を付けろよ!」
巨大な地震の後には津波が来るのは当然とばかりに、イベント開始後の僅かな小康状態が津波の到来により破られ、本格的に荒れ始めた讃命島。
イベント開始前から拠点構築企画に参加してくれた人達や、イベント開始後にそれぞれの理由で拠点建設に参加してくれた人達を収容し、結界で遣り過ごしながら地下の拡張に専念すると言う方針で動き出したのも束の間。
速攻で方針転換を余儀なくされたのは、スーパーファンブルで発生し最初に到来した津波が、単なる自然現象の一種に収まる様な代物では無かったと言う所。
津波自体が普通の海水じゃないなんて事は流石に無かったけど、津波に乗って巨大ガニやマグロにクジラ、それから
カバザメ*3や鰐鮫*4、ワーナーシャーク*5などの大量の海産物が押し流される様に山頂まで登ってきたり、平然と空中を泳いで拠点に襲い掛かって来たのが第一弾。
続いて津波と一緒に流されてきた海底の泥や海水が混じって泥濘んだ所から、泥人形などのゴーレム系だったり、泥から生まれる伝承のある悪魔などが湧き出して、これまた拠点へと襲い掛かってくる事態となり、悠長に拠点拡張なんてしてる余裕が無くなって、結界が維持出来てる間に数を減らす必要に迫られた訳で……。
襲い来る魚介類や悪魔などを倒して素材を回収し、何とか状況が拮抗し始めた所に襲い掛かって来たのが第二弾とも言える空を覆い尽くす黒雲から降り注ぐ雷嵐。
まあ、魚介類や悪魔との戦闘などお構いなしに降り注いだ雷で、広範囲に被害は出たものの蘇生は間に合ったし、電撃耐性の有る一部の特殊食材や悪魔以外は、雷嵐に巻き込まれて勝手に倒れていったから、状況的にはトントンだったんだけども。
そんで、討伐に掛かりきりだった人員の手が空いたのは良い物の、雷嵐が結界に降り注ぎ続けると遠からず限界が来そうって事で、野晒しにされてる素材回収班と戦闘担当を残し、残りの人員で避雷針を設置して誘導する事になったのが、現状って所だね。
何でか落雷エネルギーを結晶化させて回収しようとする人達も出て来たけど……。
一応回収作業しつつも担当分の仕事はちゃんとやってるし、仕事してる分には余力をどう使おうが個人の勝手って事で、スルーしておこう。
「何か、時間が経つ毎にトンチキな報告がドンドン増えてるんだけど!!?」
「おお! シャークレモネードに続いて、シャークレモンスカッシュとシャークコーラにシャークコーヒーまで発生を確認したって~」
「何? シャーク付ければ何でもありとか思ってんの?!」
「割とそんな感じの認知が働いた結果だったりするんじゃない? ほら、サメ映画とかB級含めて好き勝手してるし」
「あ、サメが2匹並んだら、〝融合!〟とか響いてツインヘッドシャークに変化した……」
「マジで何でもありか……! ええい! ツッコミも疲れるけど対処しないといけない事には代わり無いんだし、サメはチェーンソーが1番みたいだけど、拳系と鋸系も良く効くみたいだから、その辺の攻撃手段持ちに優先対処して貰うとして、トンチキな天候は増えてたりしないよね?!」
「残念ながら追加よ。今度は大きな
「
「……? ああ! 氷の霰じゃなくて、餅米が原料のおかきとか呼んだりする方だね~。まあメートル単位の巨大な玉あられだし、ある意味正解かもだけど~」
「焼き菓子が降って来ないでよ!!」
「現場からの報告だと、香ばしく揚がった香りをしてるらしいから、焼き菓子じゃなくて揚げ菓子だね~」
「そんな違い、今はどちらでも良いでしょ!」
事態は刻一刻と悪化しているのが、各所からの報告でわかっているんだけど、起きる現象が単なる災害に収まらないトンチキさの所為で、どうにも今ひとつ真剣に成りきれないと言うか、シリアスが続かない事に頭が痛くなる。
今もまた、津波の第二波の様に押し寄せてきたかと思えば、流されてきた黒い波がホットチョコレートだったとかで、諸に被った所へ吹き荒れる風で急速に冷やされ、鋼鉄レベルの強度で固まり拘束されるなんて事態が起きたとの報告なんかも入ってきたし、結果だけ見れば深刻な状況なのに、過程がギャグにしか思えないのが厄介に過ぎる。
「兎も角、マリッサ達が作ってる陰陽五行器が完成すれば結界の出力が上がって、今起きてる現象ぐらいは余裕で耐えられるって話なんだから、対処可能な範囲で脅威を排除しつつ、結界出力維持の為に宝玉型五行器の作成を続けるよ!」
「これ、裕奈達みたいな現場指揮出来る人達が参加してなかったら、初日に全滅から再開なんて事に成ってたかも知れないね……」
「あー、イベント告知に書いてあった、讃命島内の人がゼロになったら初期状態にリセットして、残り時間そのままにリスタートするって奴ね。ある意味それならそれで良かったのかも知れないけれど、こうして一応何とかなってる以上、ここで諦めるって選択肢は無いわね」
「厳しい状況だけど、絶望する程って訳でもないもんねぇ~。以前のナイちゃん達だったら、確実に絶望してそうな状況が現在進行形で積み重なってる訳だけど」
「だよね~。あ、南東に出来た岩山が噴火した」
今の状況にも楽しそうに笑うマルゴットと桜子の2人。
私らの中でも取り分け強靱な精神をしてるだけあって、恐らく現状も祭りみたいなものって認識なんだろう……。
「えっと、観測チームにはそのまま推移を観察して貰って情報収集するとして、噴石とかこっちに飛んでくる可能性あるし、対処出来る余裕のある所は?」
「雷嵐対策の避雷針は大体設置終わったみたい、シャークネードは新しいサメがドンドン出てくるから対処に手一杯、暴風から時々竜巻も発生してるけど、こっちは都度打ち消しとかしてられないから、結界強度と範囲を広げる為の楔を設置して回ってる感じって所やね」
「避雷針設置班を結界強化班に合流させるのが良さそう……か。兎も角、結界の方はまだまだ余裕有るんだし、無理して乙らない様にだけ気を付けて、適度に休息入れる感じで回すしか無いかなぁ」
「脅威を漸減してる現状でもジリ貧だけどね~」
「――ッ! 火山弾が結界近くに着弾したわよ!」
「やっぱりこっちに飛んでくるかぁ……。とりあえず観測班に戦闘要員付けて現場確認して貰うかな。ただの火山弾が飛んでくるだけなら警戒度は下げられるし」
「ホイホイ、編成指示出して向かって貰ったよ~」
幸いにも今回は結界に直撃しなかったけど、逆に言えば山頂付近まで飛んできたって事は直撃する可能性も有るって訳で、一先ず普通に岩石が飛んできただけなのか、今のトンチキな現象の数々みたいに、変な物だったりするかの確認に向かって貰う。
そうしてしばらくは新しい現象も発生せず、多少は余裕を持って現状維持を続けて居た所、火山弾の調査班から結果の報告が上がってくる。
「ミサミサ~、火山弾の調査結果来たよ。調査班は他にも近くに着弾してるのを回収してから戻ってくるって~」
「回収してから? って事は、悪魔や生き物だったり、シャークレモネードみたいなトンチキ疑似生命だったりしない有用な物だった感じ?」
桜子の端末から送られて来たデータに目を通すと、飛来してきたのは〝ヴォルカニックロックポテト*6〟と【アナライズ】結果が出た、巨大な岩石に見えるジャガイモだったらしい。
その性質から芋としての美味しさは、成長するマグマに寄って変わるみたいだけど、【アナライズ】で判明したのはコンソメマグマ*7って所で成長した物だったとの事。
コンソメマグマと言えば、瑞樹さんが食欲界のトリコ階層で、鍋山ってフィールドと併せて創り出した、食用マグマとか言うぶっ飛んだ代物だったはず――
「ってマジ?! あの岩山の地下にコンソメマグマ在るの!?」
「みたいだね~、食材になる様な特異気象が続いてるから、念のため料理系技能持ちに【アナライズ】して貰ったし、偽装情報って事は無いと思うよ」
俄に私達の間にざわめきが広がるけどそれも仕方無い話。
と言うのも、渋谷隠れ家での修業の合間に、私達じゃまだ手も足も出ない様なグルメ食材を色々と食べさせて貰う機会があったんだけど、その中でも見た目と味のインパクトが大きくて、強く印象に残った物の1つがコンソメマグマ。
特殊な調理法によって、旨味を増幅させながら人が飲める温度まで冷ましたスープは、凝縮された旨味が気泡となって溢れ出す様に、マグマの如く光を放ちながらコポコポと沸き立っていて、一口啜れば噴火したかの様に、口の中で旨味が爆発したのを今でもはっきりと思い返せる程。
そんなコンソメマグマが讃命島の地下に存在してるってのは朗報だし、そのマグマを吸収して育ったと言うヴォルカニックロックポテトってのの味も凄く気になる所。
直ぐにでも味見したい気持ちが湧いてくるけど、物が物だけに特殊調理食材な可能性も高いし、コンソメマグマの採取を行くにしても、環境対策装備や回収道具を専用に用意する必要があるしで、どの道今日のスーパーファンブルを乗り越えなければ、手を出す余裕なんて無いと思い直してぐっとこらえる。
「ぐっ、スパファンが無ければ対策装備作成に手を回せたのに……!」
「はいはい、気持ちはわかるし愚痴も聞くけど、手は止めずにね」
「でもコレって、100が出たからコンソメマグマが在るって気付けた訳よね~。もしかして、100が出なかったら気付けなかったり、そもそも存在しなかった可能性も有ったり?」
「初手100で、最初の讃命島がどうだったかなんてわからないから何とも言えないわね……。まあいきなり天変地異って感じに地形が変化した訳だし、植生とかは確実に変化するんだから、それまで無かった物が湧いてくるってのも可能性としては有りそうね」
「その可能性は有るかも? 最初の地震で北西の岩山地帯がマグマ地帯に変わったけど、そっちのマグマは普通のマグマで食材だったりはしないみたいだよ~」
「くっそ大変な現状を考えると欠片も感謝したくないのに、その影響で良い物が手に入ると考えると嬉しいってすんごい複雑なんですけどぉ!?」
「あははは……っと、美砂! マリッサ達から連絡、陰陽五行器が完成したって!」
「よっしゃナイスッ! 結界のメイン動力を切り替えて、耐久力を確認したらローテは解消出来るかな。特殊気象の追加とか規模の増加とかは起きてないよね?」
「相変わらず忙しそうにサメと戦ってるけど、数が増加したりはしてないね」
結界に掛かる圧力がドンドン増してる所為で、宝玉型五行器を増やしての出力向上だと微妙に足りて無くて、ジリジリと耐久力が減っていたけど、それも陰陽五行器が完成して接続された事で持ち直し、今まで作ってきた宝玉型五行器を補助に回す事により、出力は更に飛躍的に上昇。
後は結界範囲を広げるのに併せて結界を複合化し、強度を乗算出来る様になれば一先ず安心出来るって感じかな?
まあそのためには、地下への拡張をある程度進めて、球状に結界を構築する必要が有るから、まだまだ時間は掛かるだろうけど、確りした結界が在るなら私達が指揮に回らなくても何とかなるし、結界とか儀式系は瑞樹さんにちゃんと教わってるから、私らも手伝えばそこそこ短縮も出来るでしょ。
「メイン動力の切り替え確認、結界強度上昇で負荷の増加は無視出来る範囲になったよ」
「よしよし、それじゃ――「美砂ちょい待ちっ!」――っ?! なに!?」
「火山弾の弾道観測してた班から、上空で流れ星を複数発見したって!」
「流れ星ぃ? そんな物…………え、複数? ……まさか?」
結界の出力が上がって一息付いて、参加者に強制していたローテーションも解除できるかと思った矢先、また不穏な情報が飛び込んでくる。
「……そのまさかね。マリッサからデータ付きで弾道予測来たわ。山頂への直撃コース含めて、多数落ちてくるみたいよ」
「まだ100ファンの底じゃなかった……って事かい」
「そう言う事何だろうねぇ~。色々有って結構時間経った気もしてくるけど、まだイベント開始から5時間程度で、頃合い的には逢魔が時だし、むしろココから更に規模が大きくなる可能性も覚悟した方が良いかも?」
「ホントにそうなら洒落にならないわよマルゴット」
「んー……これは早速ミュージックシェルを使う必要が出て来たかな~」
「え゛っ?!」
「つまり、この隕石で終わり処か、始まりになる可能性が高いって訳ね……。――っ! よしっ、りんさんに連絡して拠点の屋上に儀式舞台を用意して貰うよ。私らはその間に準備! 最悪明日の正午まで踊りっぱなしになるからね!」
一息付けるかって所に入ってきた隕石の情報、それから桜子のミュージックシェルが必要って言葉から、道具だけで対処するのは難しい規模の事態が起きると直感する。
恐らく、陰陽五行器による結界も含めて必要な下準備だったって話で、初日を乗り切るための鍵はラッキーアイテムとして渡されてたミュージックシェルと、儀式魔術用の衣装として渡されていた物の方だったって事かな?
いや、瑞樹さん自身、イベント開始してからダイスを振った結果だし、桜子の幸運と上手く噛み合っただけって方がありそうか、まあその辺は考えたところで変わる訳でも干渉出来る訳でも無いから置いとこう。
パシッと頬を叩いて気持ちと思考を切り替え、色々と覚悟を決めて事態に対処する為の舞台を整えに動き出す。
また、食材としては凍結する程では無いがひんやりと冷たく、ミント系のスーッとするさっぱりとした甘さが特徴の飴であり、熱を加えずに粉末に加工すると、すっきりとした甘さで冷たいドリンクでもスッと溶ける氷晶砂糖になる。
荒れ狂う大気のエネルギーを取り込んだレモネードであり、一口飲めば襲い来る鮫の如き衝撃が駆け抜ける。
類似現象に〝シャークレモンスカッシュ〟や〝シャークコーラ〟なども存在する。
牛肉よりも脂ののりが良い美味な肉質をしていて、鰭もフカヒレとよく似た味をしているため、同じ調理法で使えることから割と人気の高い食材。
その成長過程から、マグマのエネルギーや旨味を蓄える性質が有り、皮の岩石には多種多様な鉱物が含まれる。