【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「初日に100ファン出てしまった時はどうなることかと思いましたけど、最終的には良い感じに終わって良かったですね。ホントに……」
「良い感じに終わったって言える? 最終日は確かにクリティカル出て島の面積が増えたりするぐらいで済んでたけど、その前日が99のゾロ目ファンブルで、下手しなくても初日以上の惨状だったじゃん」
「そこはまあ、島の状態に応じて出目の影響力も上がっていきますからねぇ。代わりに初日で一気に質が上がったおかげで、全体的に得られる物も良くなってますし」
夏イベントが無事? に幕を下ろし、命の輝きに満たされた讃命島からの収穫も無事に終わり、今は参加者に配布する報酬の選別や作成を行っているところ。
ちなみに讃命島に関しては、最悪最終日付近で全滅して初期状態に戻る可能性も考えていたため、その場合は途中で適宜回収しておいた素材で、参加賞程度のを作って配布して、讃命島の方は破棄するぐらいに考えていた訳だけど、当初の予想以上に上手く成長してくれた事から、讃命島の方も維持する事に決定している。
フィールド型ダンジョンとしてダンジョンコアを増設したり、その際に攻略レイドが解散した後、蓬莱島へ移設可能な様に構造を弄ったりもしつつ、当面は上質な素材を入手可能なダンジョンとして、渋谷隠れ家で運用して行く感じになるだろうか。
「ああ、2日目が出目31の割りにそこそこ殺意あったのは、初日に100ファンで質がガン上げされたからか」
「初期状態だと、酒霧が発生するなら出目は70以上ぐらいですかね? 装備か耐性スキルでも有れば問題ない程度ですけど、油断すると一発アウトに陥る環境変化ですし」
「そんで3日目にゾロ目特殊イベントが起きて、更に質が上昇した……と」
「よりによって、でしたからねぇ……。命の讃歌がテーマの1つで、死に繋がる44のゾロ目を半端にする訳にも行かないですから、実のところ難易度上昇割合としては、100ファン、99のゾロ目ファンブルに次ぐレベルで設定してたんですよね」
「……良く生き残れたよね」
「ええ、本当に。初日は拠点作ってましたし、100ファンと言っても最低ラインからの上昇だった分だけ、難易度自体は抑えられてましたから何とかなるだろうとは思ってましたけど、3日目には全滅も有り得るだろうとは思ってましたね」
「サンドリコ*1とか即死級の能力を持つ動植物が出現したり、真空状態のエリアが島の上を移動するとかのギミックも出てたよねぇ。中央の山に拠点作って結界張ってたからやり過ごせてたけど」
「中央の山は讃命島の異界を造った時の起点で、ファンブルなどでも多少高くなる程度で大きくは崩れない場所ですからね。場所を決めたのは桜子だったみたいですが、流石は幸運の申し子ですよねぇ」
「最終的に、山の内部に大規模拠点造り上げてたもんねぇ……。それが無かったら99のゾロ目ファンブルは乗り越えれて無かっただろうけど」
書類仕事してる琴音と雑談する傍ら、アトリエ式錬金釜をかき混ぜイベント参加者に配布する報酬を作っていく。
まあ報酬に関しては、参加者毎にイベント期間中の合計滞在時間や連続生存時間、その他サバイバルに関する全体への貢献度などから算出したポイントを配布して、一律の参加報酬とポイント分の景品交換って形になってるため、今作ってるのは参加報酬の消耗品なんだけども。
「貰って嬉しい、有って困らない報酬に何が良いかと考えてましたけど、讃命島で上手く素材が揃ってくれましたし、〝冥府の守護桃貨〟*2を10枚セットにでもすれば十分ですね」
「まさか【刈り取る者】まで出現する様になるとは思わなかったよねぇ。おかげでマヨナカテレビまで探しに行って、宝箱空けまくったり、メメントスを徘徊して探す必要もなくなったし」
「マヨナカテレビやメメントスで遭遇する個体からしかドロップしない武具とかもとっくに集め終わって、倉庫にだぶついてますからねぇ」
「最終日前日のVS【刈り取る者】レイド戦は見応え有ったよね! 停滞気味だった裕奈達の覚醒段階も進んだみたいだし、夏イベは良い感じだったんじゃない?」
「マヨナカテレビもメメントスもそろそろ最奥に届きそうな感じですし、大詰め前の強化イベントとしても成功したと言えそうです。後は受注生産系のポイント交換景品を作って渡せば、夏イベ関連も一区切りですね」
「そういやポイント交換の景品ってどんなのが有るんだっけ?」
「最終決定のリストはコレですね。イベントの途中にも色々回収して作ってましたから、種類と数はそこそこ有りますけど、数量限定で早い者勝ちなのも多いですし、掲示板の方では結構加熱してるみたいですよ?」
「どれどれ~?」
琴音に渡したリストの内容としては、基本的に食材などの素材系は各自でどうにか入手しただろうって事で除き、メインはアトリエシリーズの錬金アイテムみたいなバフ効果付きの料理だったり、回復アイテムなどの消耗品系、それから逸品物って程では無いけど、そこそこの性能で数打ちした量産品の武器防具。
後は、消耗品系にも含まれる物だけど、儀式や奉納品に用いられるレベルの道具や酒類、ペルソナにも組み込めるスキルカードで、需要の多い回復系各種に【ラスタキャンディ】や【ランダマイザ】、【不屈の闘志】に【不動心】辺りも讃命島で作れる素材が入手可能だったため、ラインナップに入れてある。
「結構幅広く素材取れるんだね?」
「マヨナカテレビやメメントスに他の小規模認知異界と、攻略する序でに素材の回収もしてますけど、まとまった数を集めるのは苦労しますからね。特に属性や性質の関係で小規模の方ではそこそこ見かけるけど、大規模の方では見つかり難い物とか有りますし、その辺をまとめて回収出来る場所を作れたらってのも、讃命島を造って夏イベを儀式に仕立てた理由の1つですよ」
「ああなるほど、だから後半辺りは夏イベ参加が増えたんだ。まあカヲルニキ待ちの状態になってたってのも有るんだろうけどさ」
「間引きと救助者捜しをするぐらいでしたからねぇ。それに素材回収効率って意味だと、成長途中でも讃命島の方が上回るぐらいの速度で質が上がってましたしね」
「主に初日と3日目でね! その後クリティカルが2回出た事で島面積は4倍に成ったし、素材の種類も爆発的に増えたんでしょ?」
「よりにもよってラッキー7を2回でしたからね……」
数字遊び的な物だけど、認知の影響が強いここでは色々と使い易い要素な訳で、取っ掛かりが有れば集合的無意識から力を引っ張ってくるのも簡単だし、引っ張ってきた力を循環・増幅するのは私の得意とするところ。
大型認知異界並とは流石に言えないけれど、そこそこ以上の広さが有って、出現するシャドウや悪魔を制御可能な管理認知異界となれば、決戦準備の素材集めにも役立つでしょう。
「んー……ラインナップで目を引くのは余り無いかなぁ。強いて挙げるならこの霧造りって書いてるお酒ぐらい? 天候で発生してたお酒の霧を瓶に詰めたりした感じ?」
「琴音のレベルで目を引く様な景品とか、使える人がそもそも居ないんですから置きませんよ。酒霧を集めたボトルも確かに有りますけど、霧造り製法のお酒はまた別ですね」
ちなみに讃命島では、2日目に発生した酒霧意外にも、特定地点で酒霧が発生しやすくなった地形なんかもあって、島全体を覆った酒霧を集めたのは〝霧酒・讃命〟と〝霧酒・讃歌〟の名前で入れてある。
お酒の効果としては、悪魔に渡すと性格を友愛方向に傾けると言った物で、度数は80前後とラム酒並に有り、味としては強い酒精の割りにはまろやかな刺激と、芳醇な果物の香りが特徴だろうか。
それで、琴音が挙げた方の霧造りについては、半終末時期よりも前の頃、徳島の酒蔵で開発された製法の事。
生憎と前世の私は知らなかった事だけど、ガイア酒造や呑兵衛の会には、前世でも同様の技術が有った事を知ってる人もそこそこ居たぐらいには有名? な製法らしい。
まあ前世では酒税法の関係で埋もれる事になった*3らしいけど、今世ではまだ法改正されていない上、終末後にはそんな法律自体も無くなる訳だから、製法含めて保護して行く事に(呑兵衛の会主動で)決定されてたりする。
「ほーん、蒸留とは別の方法で酒精と旨味を抽出する酒造法ねぇ」
「超音波振動で霧状にするとか、良く考えついた物ですよね」
「で、ラインナップに入れてるって事は、その霧造り製法で作れる様にしたんだ」
「ガイアグループの方で終末に向けて保護した時に、特許関連のライセンス料の支払いも混ぜ込んで貰いましたからね。まあ私の場合は、専用に造った宝貝で行ってますが」
一応霧造り製法に使う機械設備も用意自体はしてるけど、この辺オカルト込みなら各工程に掛かる時間の短縮も容易と言うのも有るけど、霊的な効能を損なわずに高める事を考えると、どの道魔導具の分類になってしまうと言うのが正しいだろうか。
現代科学と言っても結局の所、今の地球上から観測可能で、再現や理論化することに成功した現象の範囲でしか無く、宇宙を構成する物質の9割以上は未だに観測できない物質で構成されていると言うのが、表の科学者達の共通見解ですし。
ちなみに霧造り製法の工程はと言うと、基本的には純米酒の製法と変わらず、火入れ前の純米生原酒を低温のままで毎秒200万回の超音波振動を当てて霧状に変化させる。
次ぎに、水より軽い事から霧化し易いアルコールや香気成分(旨み成分)を集め、最後に集めた霧をマイナス20度で液化(滴化)する事で、アルコール度数の高い(20度以上)原酒に仕上がると言うのが、ざっくりとした流れ。
なお私の造った宝貝は、アルコールと旨味成分の霧化抽出を術式で効率化したり、原酒に含まれる霊力も霧化したアルコールや旨味成分側に移動する様に術式を組んだりした物で、酒造で主に使われる大樽でも、1時間程で全工程が終わるぐらいには時間短縮してたりする。
「霧造り純米酒〝霧讃昧〟か、どんな味なんだろ?」
「最初の7クリで追加された漆黒米と銀白米*4に、中央の山の地底湖の水で醸造した物ですね。材料の糖度が高い分アルコール度数も30前後と高いですが、お焦げの様な芳ばしさと弾力を感じる様なトロみが有って、面白いお酒ですね」
「んーちょっと気になるし、材料取ってきて瑞樹に造って貰うかな?」
「販売用に景品分より多く造ってますから、代金だけで良いですよ。他にも霧造りの日本酒ならこんなのも造ってますけど、飲みます?」
取り出したのは、漆黒米と銀白米を原料にしているのは〝霧讃昧〟と同じで、醸造に使用する水を星祭神社に湧いてる星の水にした物と、もう一つは神酒〝蓬莱山〟にも使用している彦名錦を、スクナヒコナの権能で湧かせた酒造用の霊泉で醸造した物の2本。
ちなみにガイア酒造経由で販売もしていて、商品紹介はこんな感じ。
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・霧造り純米酒〝酔霧想〟
漆黒米と銀白米を星の水で醸造し、超音波振動による霧化を経て雑味成分を取り除いた純米酒。
アルコール度数30と言う高さにも関わらず、確りとした旨味と香りを楽しめる、甘口なのにキレの有る一品。
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・霧造り大古酒〝夢想霧顕〟
蓬莱島の環境に特化させた彦名錦を、スクナヒコナの権能を込めた酒造用の霊泉で醸造し、超音波振動による霧化により雑味成分を取り除いた後、専用の酒蔵で20年以上熟成させた古酒。
熟成により琥珀色へと変化し、ナッツやキャラメルの様な熟成香と、トロリとした舌触りに厚みのある旨味の重奏を楽しめる一品。
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「飲む飲む~。あ、お摘まみどうしよっか」
「それならコンソメマグマを吸収して育ったヴォルカニックロックポテトがありますので、いくつか芋料理作りましょうか」
「良いね~私も適当にお菓子とか探してみるかな」
ガサゴソと琴音が自分の収納バッグを漁ってる間に、私の方も手早く料理を進めていく。
取り出すのは、初日のファンブルで讃命島に出現したコンソメマグマの中から、最終日の後に収穫してきたヴォルカニックロックポテト。
まずは、岩石状の皮を剥くために表面を1,000℃前後まで熱してマグマ内の環境に近付けると、栄養吸収のために隙間が極僅かに出来るため、一カ所だけ存在する隙間の交差点に打撃属性の衝撃を加える。
そうすると隙間が眼に見えて広がり、皮と実の間にも隙間が出来るので、後は岩石状の皮を剥がすだけなんだけど、この時表面温度が下がると旨味も落ちてしまうため、可能ならマグマ内の温度に近い状態を維持して作業するのが望ましい。
無事に皮を剥き終わったヴォルカニックロックポテトだけど、このままでは温度が下がると同時に味も落ちてしまうため、心霊医療の要領でヴォルカニックロックポテトに包丁を入れて霊子を活性化させ、下拵えの特殊調理は完了。
特殊調理段階が終われば、旨味を維持したまま温度を下げる事も可能になるため、他の食材と合わせられるぐらいまで温度を下げたら、直径がメートル単位も有るのでざっくりと使い易い大きさまでカット。
いくつかのブロックをマッシュ用に霊水で茹でて、その間にチップス用の薄切りや少し厚めに切った物、スティック状にした物と用意し、揚げ物に最適なモルス油で次々と揚げていく。
後は揚げるだけになったので、残りは
熱した鉄板でバターを溶かし馴染ませた所で、タネを一口大の大きさに鉄板へ落とし、ボクスティ*5を焼き上げる。
まあボクスティはパンケーキみたいな感じだから、本来はもっと大きく焼く物だけど、お酒のつまみとして作るなら色々載せて一口に出来る大きさが良いだろうって事でのアレンジって事で、一気に焼き上げたら更に盛り上げて保温しておく。
最後に、茹でてマッシュした分の残りは一先ずそのまま皿に盛り付け、後から味変も出来る様にチーズやハムにサラミなどのトッピング、塩やソースにマヨネーズなどの調味料と一緒にテーブルへと並べる。
「軽くポテトチップとフライドポテト、ポテサラにちょっと変わり種としてボクスティを作ってみました。チーズやハムなどのトッピングも用意してますから、好きに食べて下さい」
「おおっ、焼いたバターと揚げたポテトの香りが殺人的……!」
「使ったのがコンソメマグマの中で成長したヴォルカニックロックポテトですから、味の基本がコンソメ一色になってしまうのは難点ですが、酒のあてとしてなら十分ですね」
「コレで不満を持つのは拘りの強い一部ぐらいでしょ。ん~美味しい! コンソメが豪華すぎる気もしたけど、コンソメマグマに負けないぐらい芋の風味が確り有って、すんごい贅沢なポテチって感じで良いね」
「少し厚さを変えた物も作って見ましたが、パリッでは無くザクッっとした食感で、良い感じに出来ましたね。ポテトフライは塩かケチャップでアクセントを付けた方が良さそうですが」
「コンソメ味が美味しかったからそのまま食べてたけど、お酒と合わせるなら塩を足した方が確かに……。んー合わせるなら〝霧讃昧〟よりは〝酔霧想〟かな? 〝霧讃昧〟はお餅か団子でも食べてる様な気になるから、塩っ気より甘味系と合わせるかな~」
「使った芋自体に確りと味が付いてますし、ボクスティはトッピング無しでも十分でしたね。〝夢想霧顕〟と合わせるなら単体の方が香りも混ざり過ぎずに良い感じです」
「まあトッピングの方はそれ自体でもつまみになるし良いんじゃない?」
思い付きで適当に作った割りには良い感じだけど、コンソメマグマの味がちょっと強すぎたかな? とも思う結果に成ったのは反省点ですね。
まあお摘まみの出来はさておいて、夏イベントのコミュで参加者の絆は良い感じに深まりましたし、麻帆良堂の皆を始めとして、28日間を生き抜いてくれた人達のおかげで、入手の難しい属性の素材も集める事が出来た。
マヨナカテレビもメメントスも最奥までもう少しな感じですし――その最後の関門だろう場所が私達だけでは突破が難しく、カヲルニキ待ちになってるのは情けない限りですが……。
ともあれ、人の生きる意志は世界の終わり程度では挫けないと、異界の主に叩き付ける日も近付いて来たと言う訳で、攻略レイドが役目を終えるのもそう遠くは無いだろうと言うところ。
それぞれのボス攻略メンバーは選定も終わってますし、決戦に向けての準備も着々と進んでますが、それと平行して渋谷隠れ家の防衛関連も、見直しと強化を進めないといけませんね。
ボスを倒す前に渋谷隠れ家が落ちてしまうと、ボス戦してるメンバーにも(主にナビペルソナ使いの安全と言う意味で)影響が出ますし、今までにも渋谷隠れ家に直接攻撃を仕掛けられた事が何度も有りますからねぇ……。
サンドリコによる花粉症を発症すると、体中の水分が数秒で排出され死に至る程だが、サンドリコ自体が花粉症の特効薬になっている。
ポケットなどに入れて身に着ける事で、降り掛かる死の運命を祓い除ける加護により、九死に一生を得られる可能性が高まる。
また、消費アイテムとして投げつける事で、死の運命から必ず逃れる事が可能となるが、寿命による正常な死を回避する様なものでは無い。
装備効果:概念レベル未満の即死効果無効、概念レベル以上の即死影響力半減
消費効果:権能を含む即死効果のある攻撃や行動を無効化し、逃走中の場合は安全圏までの逃走を確定させる。