【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「さてと、こちらの下準備は終了。後はカヲルニキからの連絡待ちですね」
「オッケー、そんじゃいつでも行ける様にチャージしとくね。ペルソナ【太陽 ヴィシュヌ】イン【愚者 オルフェウス・改】、【甲縛式O.S.
メメントスの最奥部手前、奥に向かう扉を閉ざす仕掛けを前にして、アレコレと道具を設置したり儀式を行い、破壊する準備を整え終わったのが今し方。
ギミック破壊を担当する琴音が、いつでも攻撃に移れる様力を溜め始めたのを横目に、各場所の準備状況を再確認する。
今メメントスに居るのは私と琴音に護衛として久遠や湯乃葉、アイギスと綴のいつもの前線メンバーで、ナビの瑠璃は拠点からのサポート。
マヨナカテレビの方はカヲルニキとパーティメンバー達で、元々の最奥攻略班は、ギミック破壊の余波がどうなるか不明なため渋谷隠れ家に待機している状況。
ギミック破壊後に何も無ければ、私達やカヲルニキで軽く調査してから引き継ぎ、何かあった場合は別途調査班を先発させて、その後攻略班の突入と言う流れになる。
まあ、私達にしろカヲルニキ達にしろ、何かあってもどうにでも出来るからこその配置ですね。
「瑞樹さん、向こうから準備完了の連絡来ましたよ」
「おっと、奥への到着はさほどズレなかったみたいですね。では次ぎに秒針が0秒になるタイミングで始めましょうか」
「その辺のやり取りはこっちでしておきますね」
「それじゃ周囲の警戒はいつもの様に私と久遠ね~」
「うむ」
後は待つだけと思ったけど、カヲルニキ達の方も流石の速さでギミックまで到達した様で、時間差も殆ど無く互いに準備完了した旨の連絡を取り合い、作戦決行となる。
「【
下準備を幾重にも重ね、束ねた概念により太陽が顕現したと感じる程の熱波が渦巻き、裂帛の気合いと共に琴音の【ストナーサンシャイン】が放たれる。
煌々と輝く太陽球が着弾し、爆音を轟かせて通路を閉ざすギミックを破壊し焼き尽くすと、扉の消え去った先にメメントス最奥部への通路が開けていた。
――が、通路が開くと同時に周囲のマグネタイトが活性化し、罠が発動するのを感じ取る。
「やはりギミック攻略に反応する罠も仕掛けられてましたね」
『想定された物の1つで強制退去みたいですが、どうやらメメントス全体に影響してるみたいです』
「おっと、外に弾かれるならオーバーソウルは解除しとかないとね」
「バラバラに飛ばされない様、紐を結んでおきます」
「私も手伝おう」
罠を感知して発動するまでの数瞬の間に、罠の内容を調べて次善の策を施した所でタイムアップ。
活性化したマグネタイトにより知覚がホワイトアウトし、乱雑に弾き飛ばす様な衝撃が数秒程私達を襲い、次の瞬間にはメメントスから叩き出されたのか、ビル街を見下ろす空中に出現していた。
「まあ想定範囲ですね、【吉祥天】【黒闇天】最大出力! 〝ザ・ワールド〟!!」
現実世界に弾き出されたのを知覚した直後、メメントスの最奥部に仕掛けられていた罠の影響も無くなってるのを確認して、私の【万華鏡写輪眼】で構築した固有瞳術、未来の時間流を観測し干渉する【吉祥天】と、過去の時間流を観測し干渉する【黒闇天】を最大稼働させ、過去と未来の狭間に干渉して停止した時間へと踏み入れる。
「修練を重ねて数分はココで行動可能ですが、その分霊力も消費しますしさっさと渋谷隠れ家に戻りますかね」
ちなみに停止した時間の中だと、琴音も専用のペルソナを付けないと行動出来ないため、独り言呟いていても仕方無いので渋谷隠れ家への道をささっと開き、そのまま転移。
無事に渋谷隠れ家内の拠点、具体的にはナビをしてる瑠璃の近くに転移した所で〝ザ・ワールド〟を解除する。
「そして時は動き出すっと、ただいま戻りましたが、強制退去させられてからどの程度経過しました?」
「お帰りなさいマスター。マスター達の反応が消えてから大体2時間ぐらいです」
「うわっ、瑞樹が時間停止したはずだけど、ソレ込みでも結構経ってるね。私的にはビルの上空に弾き飛ばされた、と思った次の瞬間にココだったんだけど」
「強制退去させられてる間も時間経過していたって事でしょうか?」
「その辺でしょうね。ともあれそこそこ時間が経ってしまったみたいですが、強制退去の後はどうなりました?」
「メメントスの方は強制退去と同時に最寄りの転移ポイントが破壊されたため、最奥までの経路確保に探索班が動いて、そろそろ攻略班が最奥に突入する所です。マヨナカテレビの方は攻略班にスライムニキさんが居るため、最奥への到達に時間が掛かりましたが、少し前に最奥へ突入してます」
現実側に強制退去させられて1秒そこらで戻ってきたとは言え、時間加速している電脳異界〝渋谷隠れ家〟では結構な時間が経過したらしく、色々と状況が動いている様子。
ナビとして拠点から各方面のサポートもしていた瑠璃から、ざっくりとした口頭説明と同時に収集した情報が渡される。
「1番の懸念だったカヲルニキの方は、問題無くドイツの方に戻れましたか」
「アレ関連だから、ってメメントスの方の対処をお願いしてたら大変な事になってただろうけどね~」
「こっちは強制退去でしたけど、マヨナカテレビはマヨナカテレビで迷いの霧……ですか」
「カヲルニキさんが帰還した後、探索班が念のため調べて判明した情報ですが、ギミックの在った場所から進むと入り口に戻される仕組みになってました。どうやらギミックを攻略する事で別の場所に通路が出来るタイプだったみたいで、それを探すのにも時間が掛かった状況です」
「なる程、まあどちらも攻略班が最奥へ突入出来た訳ですから大丈夫でしょう。それよりそれぞれの攻略が終わるまでは、渋谷隠れ家を護る防衛戦ですね」
大型認知異界での決戦関連を大まかに確認し、一先ず問題無く突入出来てるのを把握した所で、攻略班が帰ってくる場所を護る、もう一つの決戦場に目を向ける。
マヨナカテレビやメメントスと繋げている通路だけでは無く、電脳異界〝渋谷隠れ家〟の周囲に在る防壁内、サイバーセキュリティにおけるサンドボックスの様に、シャドウや悪魔の侵攻を撃退するために構築された空間では、今も押し寄せる軍勢との戦闘が繰り広げられている。
普段はファイヤーウォールでもある結界だけで十分な程度の、散発的な襲撃しかしてきていなかったのだけども、流石に本丸へと攻め込まれているからか今までとは規模の違う侵攻に晒されており、迎撃班を組んで対処に当たって一応均衡しているのが現状と言ったところ。
まあこの辺も可能性として考えて、予め防衛要員として招集もしていたから拮抗できている感じだろうか。
「それでは、私達は予定通り遊撃戦力として、戦線が崩れそうな所のヘルプに回りましょうか」
「攻略班が主を倒し終わるまでにここが落ちると、向こうにも少なからず影響が出ますし、その結果終末に間に合わなかったら事ですものね」
「裕奈達や美砂達にカズマ達もそれぞれ頑張ってるみたいだし、良い感じの経験になる様手助け程度に頑張りますか~」
ちなみに渋谷隠れ家から繋がっている異界は、大型認知異界2つと中小規模の認知異界がいくつかと言ったところで、今起きてる様な各異界からシャドウや悪魔が渋谷隠れ家へ侵入しようとする場合、渋谷隠れ家の結界によってレベル帯毎に出現場所が振り分けられるため、基本的に適正レベルの戦場で戦ってるなら早々事故なんて起こらない様になっている。
のだけども、通常時の散発的な侵入なら兎も角、扇動された様に各異界から雪崩を打って侵入されると、振り分ける機能も十全に働くとは言えない訳で、偶には場違いにレベルの高い個体が紛れてしまう事も有るのが、仕方のない事とは言え面倒な話ですね……。
「これが平均30~40で10レベル上ぐらいなら放置でも良いんですが、平均10前後の新人だと10違うだけで死闘になりますからねぇ」
レベル差が100以上にもなると態々術を使う程でも無くなる物で、【水の権能】を補助する目的で造った
私の方はそんな感じで間引いたり、辻ヒールしたりして戦場を回ってる訳だけど、他の戦場を見回してみると、ある程度レベルの有る人達の所には湯乃葉が行って、奇門遁甲術式の【石兵八陣】*5を敷き、格上の敵が来てもある程度戦える様にサポートしていたり、防衛班のトップ層でも対処が難しいレベルの敵を、琴音とアイギスに綴と久遠の2組で分かれ、それぞれ対処している様子が見える。
「マヨナカテレビとメメントスの主レベルは、タルタロスと同格なのを考えると推定で三桁前半。まあタルタロスみたいにシャドウが無限沸きする環境では無いですし、最深部みたいなレベル三桁が雑魚として出てくる訳でも無いですから、侵攻してくると言っても流石に三桁のは出てこないと思いますが……」
『マスター、フラグになりそうな事を呟くのは止めて下さい。っと、それより低ランクの戦場でシャドウが融合して、大型化しましたので対処お願いします』
「ボスが直接乗り込んでくるとかでもなければ問題無いですよ。大型化したのはアレですね」
瑠璃が表示した戦場情報から、新人達では対処出来ない大型シャドウの位置を把握し、座標起点での術行使でサクッと始末する。
序でに、他にも合体しそうな場所が無いかざっと走査して、兆候の見える所を先回りして潰しておく。
そんな感じで戦場全体も確認し、基本的には防衛班だけで対処してレベル上げが出来る様に調整していると、不意に霊感に引っ掛かかる何かを感じ取る。
「ふむ? 何か見落とし……いえ、意識の死角を抜けてくる可能性は有りますか」
『マスター?』
「瑠璃、木分身を1体送ります。渋谷隠れ家内にシャドウが潜り込んでる可能性を踏まえ、内部探索をして下さい。戦場の方はこっちで対処します」
『指示は了解しましたが、結界を越えて侵入される可能性は有るのですか?』
「ショタおじの式神である霊夢さんが結界を担当してますから、万一にも無いとは思いますが、世の中に絶対は無いですからね。戦場自体は落ち着いてますし、瑠璃の処理能力だと余剰も大きいですから、無駄で終われば良しぐらいの保険ですよ」
とまあ、瑠璃に言った保険って言葉に嘘は無いけど、主との決戦に向かった攻略班が倒し終わるまで、こっちが何事も無く防いで終われるかと言うと、そう上手くは行かないだろうとも思う話。
戦場の方は本体での見回りを強化するとして、渋谷隠れ家内用に【剛毅 アルケイデス】を核にした木分身を造り、術方面の探査は瑠璃に任せて、木分身では普段とは違う物理主体の感覚で見て回る。
「なるほど、
「ナゼ……キヅカレ……?!」
「【圏境】で合一している周囲の気配に微妙なズレが有ったので気付けましたが、ここまで人と存在感が変わらないシャドウってのは、面倒ですね……」
渋谷隠れ家の中央区、その中でも攻略レイドの運営に関わる裏方スタッフの通路にて、ごく自然に動き回っていた存在に、【圏境】からの不意打ちで【崩拳】を叩き込んだのが、ついさっきの事。
見つけたソレを視覚で見る限りは、何となく印象に残りにくい感じのする男性ってだけだが、霊感の方で認識しようとすると、スルッと気配が掴めなくなり、其処にはそもそも何も居ないと感じると言う、実に厄介な存在。
一発で即死させない様に手加減して打ち込んだ事で、明確に感知出来たその存在を【アナライズ】した結果判明したのは、ソレが【愚者
少なくとも今居る通路付近の履歴を瑠璃に調べさせても、私を含めて所在の判明しているスタッフの履歴しか無く、目の前の存在が何時どの様に通路へ侵入したのかは不明な状況である。
『マスター、観測出来た【愚者
「コレが1体だけのユニークなら良いですが、楽観する訳にも行きませんし、重要施設周辺から回っていきましょう。瑠璃も引き続き各種探査をお願いしますね」
『はいっ!』
潜入と工作に能力を全振りしているのか、戦闘能力はほぼ無い様子の愚者
道中、安心院さんや霊夢さんなど、渋谷隠れ家の維持・運営を担当している面々には情報を共有しておき、やって来たのは渋谷隠れ家の心臓部とも言える統合管理室。
なお、霊夢さんが担当している結界施設の方も重要では有るんだけど、結界は落ちても直ぐさま崩壊とはならないので後回し。
管理室では電脳異界の時間加速制御だったり、内部空間の調整などもしているため、下手に設定を弄られると電脳異界が破綻して、異界崩壊からの現実世界へ強制排出されたり、最悪は物質世界と精神世界の狭間に位置する関係から、魔界の何処かへ落ちるなんて事も起こり得る話。
「――っと、一応急いで来ましたけど、手助けは要らなかった感じですね」
「そりゃまあ、この手の奴は存在が認識されていないからこそ意味があるってもんだからね。霊夢の方も今侵入してた奴は処理し終わったとさ、それより私としては、これから何をいじくられたかの調査の方が気が重いね!」
統合管理室こと半ば安心院さんの私室になってる部屋へ入ると、事前に情報を伝えてたのが功を奏した様で、【愚者
まあ安心院さんも言ってる様に、そう言う存在が居ると知らなければ対処のしようも無い反面、潜入と工作に特化して戦闘力がほぼ無い関係上、知覚出来てなくても存在しているなら、逃げ場の無い空間攻撃でもすれば一発な話。
これが〝知覚されていない場合無敵〟なんてスキル持ちだったらまた話も変わるのだけど、幸い其処までの特級戦力が投入される事は無かったらしく、【圏境】を使って室内の気配と合一しても、【愚者
「その辺の確認作業なら、【魔術師 ヴィシュヴァカルマン】の木分身を置いていきましょう。こっちの私は【圏境】で直接見つけ出す事が可能ですから、中央区内を見回っておきます」
「そいつは助かるね。恐らく決戦組の決着が着くまでは侵入してくるだろうし、1つ2つぐらいは後手に回る事も覚悟しますかね」
「出来るだけ防いでみますよ」
実力的に心配はしていなかった物の、嫌な方向のお約束は外さないと言うか、懸念通り【愚者
発覚までの間に何かしらの操作はされていた様で、取り急ぎその確認に木分身の1体と瑠璃を回し、致命的な事態になり得る場所を重点的に巡回して、少しでも被害を減らす方向で動く事になったのは、攻略班が突入してどれぐらい時間が経った頃だっただろうか。
劇的に状況が動く要素も無く、舞台裏での静かな暗闘は始まっていた。
【甲縛式O.S.
単体または全体魔法の発動前に使用する各種スキルを、一纏めに昇華した琴音の固有スキル。
自身を〝人間である〟と定義し、人間のあらゆる可能性を得る。
人を〝進化する存在〟と定義し、あらゆる進化の可能性を得る。
進化を〝超克する事〟と定義し、あらゆる困難を打破する力を得る。
ゲッター線の代わりに、宇宙規模の終焉と再生・進化の概念に太陽の権能を組み合わせ、【太陽 ヴィシュヌ】と【愚者 オルフェウス・改】にハム子ネキ自身での三位一体の概念を成立させる事で力をまとめ上げ、【螺旋丸】と同様の要領で圧縮する事を可能とした。
単体~広範囲など任意に規模を変更可能な、人類の敵特攻を持つ火炎・核熱・万能属性特大威力魔法。
陣地に侵入してきた敵へ突風や砂嵐などにより、盲目・混乱・恐怖・幻惑の状態異常を付与し、状態異常に掛かった敵の全能力を1段階下げる効果のギミック空間を敷く術。
なおこの陣形は、地上でなければ敷く事が出来ない。