【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
世界が終わりを迎え、地球が魔界の一部となった日から少し経ち、魔界地球となった日本各地や一部海外にも展開してる支部周辺の状況など、色々と諸問題は積み重なってはいる物の、それでもガイア連合山梨支部を結成した理由である〝終末を乗り越える〟は達成された。
後で本人から聞いた話だと、戻って来れない可能性も高かったらしいショタおじの帰還も、万事問題無くとは行かなかったらしいけど達成され、一先ず区切りは着いたとなれば、やることは決まっている訳で――
「世界終了を祝して――」
「いや其処はショタおじの帰還にしとこうぜ?」
「良いんだよ。俺の言う事頭から否定して、落伍者扱いしてきた連中の世界が漸く終わって清々してんだ」
「あー……回りに恵まれなかったパターンなのな、そりゃそうもなるか。んじゃそっちはそっちで俺はショタおじの帰還を祝っとくわ」
「おう! そんじゃ改めて世界の終了を祝して――」
「ショタおじの帰還を祝して――」
「「乾杯!!」」
宴会場となってる星霊神社境内のそこかしこで何度も乾杯の声が響き渡る。
そんな会場の片隅では、毎年の正月や夏の大祭などイベント事の度に宴会をしてる関係で、隣接する建物の一部を改築した調理場がフル稼働して、ドンドンと料理を供給する光景も見える。
使われてる食材は主に農業部や畜産部で育てた物だけど、終末前に各地の支部から買い付けた物だったり、ウチの食欲界で収穫してきた物なども持ち込まれ、調理してる様子を肴に酒盛りしてるグループもいたりして、実にカオスな状況が広がっていた。
「ショタおじの帰還祝いも兼ねてるんですから、微妙な表情浮かべてないで楽しんだらどうです?」
「いや祝ってくれる事自体は嬉しいんだけどね? でも……この嘆願書と写真付き履歴書は何さ」
「何って、そりゃ組織としてのガイア連合の後継者は必要ですから、いい加減童帝してないで子作りしろって事ですよ。拒否してた理由の、ペルソナに封印していたルシファーはエンシェントデイと一緒に地脈に叩き込んだ*1のでしょう? 基本的には外部組織から問題無い人を選んでますし、一部ですが黒札からもショタおじの子を産みたいって人は居ますよ」
「ぬぅ……」
「まあ終末乗り越えて一区切り付いたんだから、年貢の納め時ってこったろ。それより探求ネキ、新しい酒とか面白いのとか有ったりしねぇか?」
「槍ニキも完全オフですか。そうですね……ショタおじの枯れた性欲を取り戻せ企画で作った物でも出しますかね」
「そんな事やってたのかい……あ、一時期桃とか柘榴とか蜂蜜なんかの系統がやたら出て来たのはそれか」
そんな境内の中でも、何となく幹部とか古参組が集まった一角。
長年の気安さで馬鹿騒ぎしたり、代わる代わるショタおじを弄り倒してる所に混ざって、枯れ果ててるショタおじの人間性を取り戻させる為に、スケベ部らしく性欲を刺激する食材や料理などを差し入れたりして、第一回富士山オフ会から始まったこれまでの昔話に花を咲かせる。
ちなみに槍ニキのリクエストに答えて取り出したのは、甘酒のルーツの1つとされる
後は、ドライフルーツやエフィネキのミルクから造ったチーズなど、酒の肴も色々と取り出して並べていく。
「あの頃は拒否してた理由を知りませんでしたけど、それらが解消した今なら少しぐらい効果出るかも知れませんし、どうです?」
「頂くけど効果が出るかは別だろうね」
「このレベルでも効くか怪しいとかマジかよ。俺らだと一杯でも結構な影響受けるんだが……? まあ物としちゃ面白いが、宴会の序盤に飲み食いするもんじゃねぇな」
「流石に真っ昼間の外で盛りたくはねぇしな! 嫁との晩酌で飲みたいぐらいだが……貰ってって良いか? 探求ネキ」
「でしょうね。数はまだまだありますから、試供品って事で皆で持ってって下さい。宴会用ならこの辺が良いですかね」
ネタとして紹介はした物の、エロ方面に特化したアレコレで酒盛りしてサバトする様な集まりでは無いって事で、希望者に配ったら次を取り出す。
改めて取り出したのは、マモンの領域を崩す時に生まれた茸レートやショコラ竹に、その戦士達を締めて食べられる様に処理した物。
それから、修業場異界深層防衛戦で悪魔の数を減らすために拠点を潰し回っていた頃、移動中に遭遇する悪魔なら自動処理可能なぐらいに領域が育っていたのもあり、時間的な余裕も合わさって、そこらの悪魔やマグネタイトを養分に色々と育てていた食材なども並べていく。
「目新しいのも良いが、定番ってのも外せないよな」
「探求ネキから飯と酒の供給だ! 空いてる席に配ってくぞ!」
「厨房の方にも食材は追加してますから、皿が空いていたらそっちから供給されますよ?」
「いやいや、茸レートとかショコラ竹みたいな、それ単体でも完成してる菓子類とかは持ち込みだけだしな。手を加えて更に美味しくなったのも良いんだが、敢えてそのまま食べたい時ってあるだろ?」
「まあ否定はしませんね」
「きのタケとかすぎのこっぽいのとか、見て分かるのはまあいいんだが……其処の山になってるコインは何なんだ? 今出したって事は食べ物なんだろうし、コインチョコみたいな感じか?」
「遂に魔貨まで食べ始めたんだね……」
呑兵衛の1人が酒を片手に疑問を浮かべたのは、ボウルに山盛りにした金色のコインで、それを見てショタおじが呆れたような目を向けてくる。
「深層でマモンの領域を潰した後、大量に増えた黄金魔花月と魔貨をどうしようか考えて、思い付きで創ってみたグルメコインですね。今ギャンブル系は地獄湯ぐらいですが、いずれ蓬莱島にもカジノの1つぐらいは造るでしょうし、その時に使うチップにでもしようかと思ってる感じです」
物としての概要はこんな感じ。
――――――――――
・グルメコイン
トリコの食材再現シリーズの一つで、魔貨を材料に食用にもなるコインを再現した加工品。
高額なコインほど美味しいと言う原作の設定から、金額分の魔貨を概念的に一枚へ圧縮し、その際に価格を旨味に変化させる術式やそのままでも食べられる様にする術式が組み込まれている。
なお、食用に加工してはいるが、魔貨として素材にする事も可能な代物になっているため、金額分の魔貨として取引に使う事も一応出来る。
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原作トリコのカジノで使われているチップコインを再現した物で、味わいとしてはナッツ系統が基本になっており、金額が高くなる程に旨味の概念も積層され、オーケストラの様に味が重なりハーモニーを感じられる食品に仕上がっている。
なお、今山盛りにして置いてあるのは酒の肴って事で、最低額の1枚10魔貨から1枚1,000魔貨の物がメインで、万単位のグルメコインはこの後行われるビンゴ大会などの景品にする予定だったりするが。
「いやどんだけ魔貨つかってんだ……? あ、10魔貨コインでもかなり美味いな。コリコリしてる」
「カシューナッツかピスタチオが近いか? 滑らかさとコクが有って酒が進むなぁ」
「こっちの100魔貨コインは甘いチョコみたいだぞ、コリコリ食感のチョコってのも面白いな」
「俺らみたいに魔貨が余りまくってるなら笑ってられるが、普通に正気を疑う光景だよなぁ。二重の意味で」
「美味しければ良いんですよ、そんな物。ショタおじ的にはどうです?」
「うん、美味しいのは確かだけど、気分的には複雑かなー」
「直接的な意味でお金を食べてる訳ですし、微妙に感じる人は感じますか。ちなみにこのグルメコイン、魔貨を概念的に圧縮してますので、銭投げ系のスキルで使うと威力が跳ね上がるのを確認してますよ」
「あー……、斥候班から報告にあった金色の何かを投げて大爆発してたっての
「圧縮限界を目指して、ギリギリ構築出来た10億魔貨のグルメコインを試し撃ちした時のですね。100万魔貨コインだと小規模領域でも壊せませんでしたから、牽制ぐらいのつもりだったんですが、億単位の概念強度となると想定以上でしたね」
「笑いながら軽く言ってるが、やってる事も結果も大概だからな?」
酒もそこそこに入って、修業場異界深層防衛戦の話を語り合いながら笑っていると、仕事明けっぽい疲れを滲ませたエドニキが、そこらで回収したらしい料理を山盛りにした皿を手に席へ加わる。
「お疲れみたいですねエドニキ。駆けつけ三杯……はその辺の呑兵衛達が悪ノリするのでさせませんが、飲みたい酒有るなら出しますよ」
「深層素材を大量に放り込まれたからな、保管処理で今さっきまで修羅場ってたぜ。持ってくる前にもうチョイ封印処理してくれれば楽なんだがなぁ……あ、疲労回復系のあれば頼む」
「それならウチで作ってる
「ならそれで頼む」
エドニキが着たのを皮切りに、今まで深層の防衛戦で回収された深層産の悪魔素材を、安全に保管できる様に処理していた面々が会場に雪崩れ込んでくるのが見える。
なお、素材の保管1つでここまでエドニキが疲れているってのも、以前に技術班が下層素材の収集を依頼した結果、素材のもつ影響力への認識が足りず、保管すら真面に出来ないなんて事件*3が有ったからで、深層産ともなればそれこそ、其処に在るだけで超常現象を引き起こすのは当然として、周囲の素材と勝手に混ざり合って異界を形成するなんてのも普通に起きるし、最悪は素材を繋がりとして悪魔が出てくる道が作られたり、新しい悪魔が生まれたりなんて事も起こる。
そんな訳で、有り余る資金や素材にセツニキの監修で設置されてる星祭側の倉庫なら、修羅勢が雑に突っ込んでも何とかなるが、一方で星霊神社に設置されているガイア連合山梨支部の倉庫(技術班が管理)の方は、倉庫自体の規模も大きいため、高位霊能素材専用として建造した倉庫でも、雑に突っ込んで大丈夫な強度で造れる程の費用を捻出する余裕は無く、多少手間を掛けて保管可能な状態に処理する必要が有るという話。
ちなみに、私が入手した分は自分で処理して家の倉庫に送っているため、一応今でも技術班に所属はしているものの、納入される素材の保管処理に関してはノータッチだったりする。
最近は技術班として研究依頼される場合でも、素材は自分のを持ち出しして費用だけ請求する感じなので、技術班の倉庫に何がどの様に収納されているのか、については把握してないですしねぇ……。
「技術班の面子もお疲れさん! コレで名実ともに一区切りか?」
「おう! 漸く何も考えずに飲んで騒げるな!」
「明日は保管処理した素材整理の続きだがな!」
「現実突きつけるのはヤメテクレメンス……」
「もういい飲め! 今は飲んで忘れろ!」
前線は前線で大変だけど、戦いが終われば其処でスパッと区切れるのに対し、裏方は戦い前の準備から戦闘中の補給に、戦闘後の各種処理と別の意味で大変なもので、その辺を理解してる古参や修羅勢を中心に、後方担当を労う様子がそこかしこに。
そんな感じで色々と用事が終わった者から宴会に参加しに来て、中には早々に酔い潰れるなどで救護スペースに叩き込まれるのも出たりして、賑やかな宴会も開始からそこそこ経過した所で、祭り好きな連中の準備が整ったらしく、イベント用に確保してあったスペースから声があがる。
『お前ら待たせたな! 流石に大掛かりな準備は無理だったからビンゴ大会だが、その分景品は大量に集まったから期待してろよ!』
「お、始まりましたね」
「景品の大部分が俺達の出した品だが、こう言うのは参加して一緒に騒ぐ事に意味があるってな」
「まぁガチャと同じ方式でラック値の影響を防いでますし、配信先の他支部やシェルターも参加してますから、私達が当てられるとは思いませんけどねぇ」
「相変わらず黙々と食べてたけど、セツニキも一区切り付いた感じかな?」
「まぁな、後は酒飲みながらゆっくり騒ぐ時間だ」
「では酒を追加しますか」
私が席に来た時には既に食事モードに入ってたセツニキも一段落した様で、ビンゴ大会が始まる様子を肴に酒へ手を伸ばす。
ビンゴ大会の方では参加方法の説明が始まっており、大雑把にまとめると、黒札用のガイア連合山梨支部のサイトから行けるページでビンゴカードを各自で作成する事。
ビンゴカードの基本マス数は縦横5マスで、縦横のマス数を1つ増やす毎にビンゴ時の景品グレードが上がる事。
縦横斜めで一列揃うと、画面内に交換申請ボタンが表示されるため、申請が受理された順番に景品を選択可能になる事、と言った感じ。
私は折角なので最大マス数の縦横10マスでビンゴカードを作り、虹の実ワインを取り出してグラスに注いで行く。
「おおっ! グラスに注いだだけなのに香りが凄い! なあ探求ネキ、まだあったりするなら売ってくれね?」
「瓶も樽も大量に有りますからリスト送りますよ。とりあえず後10本ぐらいは出しますから、好きに飲んで下さい」
「うーむ、虹の実ワインは味も香りも良いが、度数が85とかなり高いのがポイント高いよなぁ」
「元が濃厚だから炭酸割りしても殆ど薄まらなくて良い感じだし、カクテルにしたら混ぜた酒やジュースに合わせて強調される風味が変化するのも楽しいのよね~」
「お、ハクネキ早速確保に来たか」
「私らの酒造の基本は探求ネキだからね~。味を学ぶ為にも手に入る機会は逃せないって」
「ガイア酒造の作品から学ばせて貰ってる所も色々ありますから、そんなに有り難がられる程じゃ無いと思うんですけどねぇ……」
私の造った酒の方が上の様に言うハクネキだけど、彼女自身もガイア連合山梨支部が出来た初期頃から、ガイア酒造の代表として酒造りに携わってる訳で、霊格の差による扱える素材の違いなどは有っても、技量自体で言えばほぼ同じか、ハクネキの方が上な部分は確実にある状況。
まあ初期の頃はそれこそ、当時のメインペルソナだった【女教皇 スクナヒコナ】経由で、酒造の権能を引っ張ってきて用いていた私が突出していたのは事実ですけどね。
今のガイア酒造なら、酒造り一本に拘ってきた黒札達の技術的な蓄積もありますから、毎年の新作や解禁された熟成品から私が学ばせて貰ってる所も大いにあったりしますし。
「いやいや、そうやって私らの技術を取り込んで探求ネキの味がより洗練されてんだし、その違いから私らも学んでるって事だよ。簡単に言えば切磋琢磨?」
「そう言われると否定も出来ませんけど、未だに名誉顧問扱いで名前が残ってるのはどうなんですかね?」
「立ち上げ資金に始まって現在も投資はして貰っていて、材料関係も色々融通して貰ってるし、新しい技術や製法を試す時の機材なんかも作って貰ってるんだから、本来なら役員なりに置きたいところなんだけど? って言うか社長やらない? そしたら私も酒造に集中出来るし!」
「酒造と酒飲みたいが本音ですね、ソレ」
「もちろん!」
良い笑顔で頷くハクネキに、社長の話は丁寧に辞退して、最近の酒造りに関しての話に話題を移す。
そんな感じで宴席の人員も話題も移り変わりながら、時々ビンゴ大会の方の様子を肴に盛り上がり、終末を乗り越えた慰労会は盛況のうちに幕を閉じ、終末後の魔界地球と言う未知の日常が幕を開ける。
なお、ビンゴカードは予想通り不発だったと言うか、5マス揃った部分すら無かったのを見るに、私の運命力はとっくに尽きてるんだろうと思うところ。
やはりこの世界で気ままに生きる為には、これからも鍛え続ける必要が有りそうですね……。