【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「改めて今年一年お疲れ~」
「琴音の方こそお疲れ様です。今年もタルタロス関連以外で色々と巻き込まれてましたね」
「直近だと祭りの準備期間中に、練習航空へ向かう飛空艇に乗り合わせたらジズが襲撃してきたんでしたっけ?」
「出航しようとしてる船を見た時に何か気になったから、指導官してたマリッサに声掛けてね。おかげで天然物のジズ肉が手に入って良かったよ」
「素材迷宮の最下層や食欲界でもポップする様にしてますけど、取り込むMAGの違いでそこそこ味わいが変化しますからねぇ」
「鳥系の肉だけあって唐揚げにすると美味しかったけど、残りはどうしよっかなぁ」
「軽くつまめる様にジャーキーや燻製にでもしましょうか?」
「良いね! 部位事に何種類かお願いしよっかな」
最初に声を掛けて来たのは、いつもの様に琴音と綴の2人。
こう言う宴会の場だと、主催者への挨拶からなんてのがよくあったりする話だけど、そう言った堅苦しいのは私が面倒なため、乾杯するよりも前に軽く挨拶した分で終わりにしてある。
そのため今は、大人組――主に酒を飲む連中――が既にいくつかのテーブルに集まって酒盛りをしていて、年齢的だったり嗜好の関係で酒を飲まない組も、それぞれで集まって普段以上に騒いでいる様子が見える。
まあ今回は私達3人の子供達、長子で私の第一子である
ちなみに、時々知り合いの黒札に聞かれたりするが、子供達の年齢順については瑞琴が2000年4月生まれで一番年上、続いて2002年の9月に1日が1年になる時間加速異界で和樹と音葉に文哉の3人が生まれて、一週間後に同じ異界で琴司と綾華が生まれた順番で、今となっては余り意味の無い話だけど、和樹・音葉・文哉の3人は異界内で1年を過ごしているのも有り、戸籍上での生年月日は2001年の9月になっている。
「――っとと、残ってるジズ肉の加工はお願いするけど、それより瑞琴達が騒ぎ疲れて寝ちゃう可能性とか、大人組が羽目を外して酔い潰れる前に予定してたアレ、始めない?」
「そうですね。出来上がるまでに多少時間掛かりますし、時間加速して短縮するのは味気ないですからね」
「おっと、何か師匠と琴姉が何か始めるみたいだが、宴会以外に何かするって話出てたっけか?」
「私も特に催し物をするとかは聞いてないんですが……、瑞樹さんと琴音ちゃんは何を始めるんです?」
「それは見てのお楽しみ! って事で、まずは大鍋を設置します!」
石畳の上にコンロ代わりの台を置き、その上に琴音が炊き出しで使う物よりも更に巨大な鍋*7を取り出し設置する。
「次は赤ワインと蟠桃にスパイス各種を投入して、軽く温めます」
「あ、もしかして……」
「ゲルダさんは流石にわかるか、確かドイツとかオーストリアやスイス辺りの年末には良く作られるんだっけ?」
「ええ、ここ数年は色々とあって出来てませんでしたが、今年は里の方でもやりましたね。ワインを使うので大人だけでですが」
「年末の風物詩と言う事はアレか?」
「トゥルーデネキも知っていましたか」
「まあ知ってるだけで、故郷に居た頃は未成年だったから飲んだ事は無いんだがな」
続いて脳缶ニキから購入したパプテスマを使い、権能も駆使して醸造した神酒の赤ワインを、樽から直接鍋に並々と注ぐ。
なお、グリューワインに使う果物はオレンジなどの柑橘系が多いけど、レシピを探したら桃を使う物も見つけたので、ウチで行う際は蟠桃園の仙桃使う事にして、シナモンなどのスパイスと一緒に加え、調節した【アギ】で鍋を温めて、沸騰しない程度に加熱しながらかき混ぜる。
「今回は神酒を使ってるから未成年でも問題無いよ。じゃあ砂糖を入れてないグリューワインが出来た所で、鍋の上に専用の台を置きます」
「そうしたら台の上に、コトブキビ*8から精糖して円錐状に押し固めた
「最後にラム酒漬けの砂糖に火を付ける!」
「「おおぉ~!!」」
琴音が【太陽 アグニ】のペルソナを降魔させ、フィンガースナップを響かせながらアグニ由来の浄化の火を灯すと、ラム酒漬けにした砂糖の塊が盛大に炎を吹き上げる。
燃え上がる炎のパフォーマンスに歓声が上がり、特に私達の子供である瑞琴達が鍋の周囲で大はしゃぎするのを余所に、一度大きく噴き上がった後は、巨大な
「やはり
「実際のところ、
「そう言えば、少し前に大人達がやってたわね」
「ナイちゃん達未成年組は、普通に冬至のお祭してたけどね~」
「おっと、チビ達はまだレベルも低いんだから、鍋に触れると火傷するから触らない様に。近くで見るだけなら大丈夫だからね」
「「はーい!」」
砂糖が燃え溶け、熱々のカラメルがグリューワインに滴り落ち、甘くスパイシーな香りが立ち上ると、子供達が砂糖の燃える様子や香りに誘われて、鍋の周りに集まってくる訳で、不用意に触れて火傷しない様に琴音や綴達が抑えている間に、火の勢いが落ちてきた所へラム酒を追加で振りかけ、ドンドンと砂糖を燃やし溶かす。
時間にして十数分ぐらいだろうか、砂糖が完全に溶け落ちて火も消えて、滴り落ちたカラメルとグリューワインの入った大鍋をかき混ぜれば、フォイヤーツァンゲンボウレの完成となる。
「……よし、味も香りも文句無しですね。それじゃあコップに注いで行きますから、それぞれ持って行って下さい」
「それなら参加者的にボクからかな? ん~桃とシナモンにワインが合わさって良い香り」
「だよね! 試作品で味見はしてたけど、本番の今日は一段と香りが華やかだし、……ん、味の方もカラメルの甘さとスパイスの風味に、桃とワインとラム酒が合わさって、度数が高いのにスルスル行けちゃうね」
「わぁ、強いお酒って分かってるのに、口当たりが柔らかくて何杯でも行けそうですね」
「これもある意味では故郷の味、と言う奴だろうか……」
決まりがある訳では無いけど、ガイア連合に所属している関係で黒札には遠慮してしまうだろうって事からか、支部長もしていて私の次ぎに立場があるキノが最初に受け取り、琴音、フォトネキにトゥルーデネキと順にコップを持って行く。
続いて他の黒札達にもさっさと渡して行って、その間に注ぎ分けた他のコップを蓬莱が回収して参加者に配り回る。
全員に1杯目を配り終えれば、2杯目以降は各自で自由に取る事にして、最初に渡した4人の方へと向かう。
「自信はありましたけど、好評な様で何より。キノ達は楽しめていますか?」
「もちろん! 瑞樹ちゃんの料理は美味しいしね。それに新鮮な魚介類も一杯有るから、家の子達なんてさっきから無言で蟹をほじくり返してるよ」
「蟹だけでも大小様々有りますし、お刺身も今まで食べた事無いような美味しい物ばかりですよね。写真に撮らせて貰いましたけど、宴会風景をサイトに載せたら炎上しそうですね……」
「間違い無く炎上するが、黒札専用のブログや掲示板なら問題無いだろう。大体いつも誰かがネタを突っ込んで燃やしてるからな」
「そうそう、私も深夜とかに瑞樹の料理写真を投下して炎上させたりしてるし、大丈夫大丈夫」
「いやいや、琴音ちゃんのそれはどうかと思うんだけど?!」
「琴音の深夜爆撃はいつの間にかコミュの一種になった所為で、止めろとは言えなくなったんですよねぇ……」
「ええぇ……」
深夜に飯テロ画像や動画を投稿するって行動と、その後のスレでのレスバがプロレスみたいな様式美にまでなったのか、悪魔のアルカナのコミュとして成立したと言われた時には、どんな表情をすれば良いのか分からなかった程。
後、何故悪魔なのかについては、恐らく超高位の悪魔の転生者である黒札が相手なのと、飯テロと言う悪魔的行為からじゃないかと予想するところ。
と、軽く話してる間にワインを飲み終わった様で、お代わりを取りに行く4人と別れて次の場所へ。
「こっちはフードファイトの様相ですね……、大人組は飲み比べで既に何人か酔い潰れてるみたいですが」
「真っ先に酔い潰れたのは家のお父様ですわね。お酒に強い訳では無いのに、酒豪のお母様と同じぐらいにお酒好きなのですから……」
「ああ道理で、手慣れた様子で膝枕しながら酒を飲み続けていると――」
「師匠師匠! 話を遮って悪いが料理の追加頼む!」
「おっと、少し目を離してる間にほぼ空になってましたね。それでは少し多めに、トリコ層はアナザが生息する出し海の魚介類を使ったちらし寿司やにぎり寿司をどうぞ」
以前に再現した魚宝アナザが、トリコ層にある海域の1つを住処とした事で、アナザが泳ぐ際に放出される旨味が海に溢れ出し、海流などの動きにより味の異なる旨味の層を持つ海域となった、原作トリコでは八王の一角である鯨王ムーンも生息するためにブラックトライアングルと呼ばれる場所。
私の食欲界トリコ層では、今のところ鯨王ムーンは再現してないため、原作での別称である〝出し海〟と呼んでいる海域では、旨味溢れる海水で育った事により、他の海域より旨味がより凝縮された魚介類を捕獲出来る訳で。
その出し海の魚介類をふんだんに使ったちらし寿司やにぎり寿司は、ネタの内側から光輝いて見える程に旨味を感じさせる。
なお寿司酢には、最初の乾杯で飲んだ神酒〝
「よっし! お前ら追加だ!」
「くぅ~っ、これこれ! 探求ネキの美味い飯をタダで食えるんだから、参加した甲斐が有ったってもんだ!」
「だよなぁ! 修業はきっついが飯がうめぇのは最高だぜ!」
「カズくん……」「和真さん……」
「其処のダブルカズマはしばらく飯に没頭してるだろうし、かなみもゆんゆんも遠慮せず好きに食ってけ」
「そうそう、食料はいくらでも生産してるし、料理も大量に有るからね~」
「改めて凄い人達に助けられたんだなぁ……」
「その凄い人達の筆頭が、誠君のご両親の仕事仲間ってのも凄い話だと思うけど?」
「うんまあ、それは冬コミで陰日の新サプリ販売を手伝う事になったから分かってるんだけどね」
「あ、そうだ。次の第六期に向けてまた新しくキャンペーンする予定なんですけど、誠君と千代女ネキも参加しませんか?」
マリッサに頼まれて料理を次々と出していると、ふと聞こえてきた誠君と千代女ネキの会話から、第六期と言うか次ぎの新サプリのテーマを思い付き、特に思い付いた切っ掛けである千代女ネキをセッションに誘えないか聞いてみる。
ちなみに、思い付いたテーマは忍者関連の技術をまとめた物で、本来の意味である逃走術としての遁術や潜伏に諜報活動、それらに使う道具の作成方法から、普段身の回りにある物を武器にする技術などの古式忍術。
逆に、昨今の創作によくある派手な能力バトル物の様なNINJAをイメージした術技もまとめて、【体術】や【気配隠蔽】に【気配察知】などの共通出来る基礎部分を用意し、斥候や情報収集に罠解除などをメインにする【
一応、伊賀とか甲賀とか風魔、戸隠などの、現在までに見つけ出して把握出来てる忍術流派の技術に関しても、それぞれ技術内容から修業方法まで記載する予定だけど、クラスとして記述する技術関連については、見つけて習得した各流派の要訣をまとめ、私なりに再構築した物になる。
流派名を付けるとするなら、
「僕達が……ですか?」
「五期の元になったキャンペーンは、琴音やマリッサ達に麻帆良堂の皆で行った物ですし、その時も本来は新しいサプリのテストプレイが目的でしたからね。次のサプリのアイディアが思い付いたので、切っ掛けになった2人をメインに展開してみようかと思いまして」
「何を切っ掛けにどう思い付いたのか気になるんですが……?」
「前回が西洋系の魔女術でしたから、次は東洋系にしようと考えてはいたんですよ。で、千代女ネキを見て忍者関連は出して無かったと思いだした感じですね」
「なになにっ?! 次のサプリの話!?」
「ああサークル麻帆良堂としては気になりますか、動画投稿やセッションのライブ配信とかしてますものね」
誠君と千代女ネキをセッションに誘っている所に混ざって来たのは、私達の中でTRPG活動に積極的な麻帆良の面々と、渋谷隠れ家の攻略レイドで綴を通じて仲良くなった田村りんさん。
どうやら攻略レイド中の思い出話をしていた所に、私の話が聞こえて一緒に連れてこられた感じみたいですね。
「あ、冬コミの時はお疲れ様でした。何やら千景さんから連想して、忍者関連のサプリを書く事になったみたいです」
「おっとっと、うん、誠君も千景ちゃんもお疲れ様。それにしても忍者か~、そういや侍とかよく有りそうな和風のクラスって無かったよね」
「今有るのだと陰陽師と修験者ぐらい?」
「あー……、現代が基本ですしその辺は確かに抜けてますね」
指摘されて思い返すと、〝星の占事略决〟で【陰陽師】や【符術士】などの陰陽道に関連するクラス、〝大和神奉録〟で【神職】や【巫女】などの神道に関連するクラス、〝峻厳たる霊山〟で【山伏】や【マタギ】などの修験道と山岳信仰に関連するクラスを出してはいたが、【武士】や【侍】などの戦闘職関連は出していなかった事に気付く。
西洋武術は〝戦士の誓い〟で記述している訳だし、東洋武術に関して出すなら、忍者関連を主軸にする予定の次回キャンペーンは丁度良いタイミングでしょう。
「忍者関係以外にも和風のクラスをいくつか追加出来る様に、サプリも何冊か増やしますかねぇ」
「次ぎのキャンペーン、どれだけのボリュームになるんだろ……」
「えっ、それに初心者を入れるんですか?」
「まあ時間はいくらでも掛けられますから、ゆっくり慣れて貰えればって所ですね。それに千代女ネキ自身の修業も兼ねられますし、試して見て合わないと思ったなら其処で止めても良いですからね」
「えっと……お試しで誠君と一緒に、なら……」
「なる程なる程、一先ず誠君と千代女ちゃんをPC1、2にして、忍者とか武士とかがメインのキャンペーンってところか。瑞樹さん、他の参加者枠空いてるなら私達入って良い?」
「今思い付いたので他のメンバーはこれからですね。そうだ、りんさんも参加してみません?」
「うぇっ?! あたいがかい??」
「次のキャンペーン案を思い付いた時に丁度話に加わってきた感じですし、そう言う巡り合わせってのは大事ですからね」
キャンペーンの参加人数に関しては、前回に複数チームをまとめた
まあ流石に、20人でキャンペーンをってのは難しい気がしますけど、それだけ集まって騒げられれば面白いだろうとも思う所ですし、ちょっと頑張って声掛けてみますかね。
後、クランとして行動するなら戦闘以外に生産系も必要になりますし、忍者関連や和風の戦闘職関連に加えて、生産系のクラスをメインにしたサプリも必要ですし、まずは気合いを入れて執筆からですね。
「色々とアイディアも出て来ましたし、サプリが書き上がったらテストプレイでキャンペーンしますから、参加の可否についてはその時にでも改めて聞きますね。人数は最低で6人、最大は20人ぐらいまでは何とかするつもりなので、多少希望者が多くても構いませんから、知り合いとかに声掛けて貰っても大丈夫ですよ」
「わぁお! 前回の12人でも大概だったのに、更に増やすのもOKとか実現したら面白そう!」
「暫定メインの誠君と千景ちゃんに、仮メンバーにりんさん、それから私達6人でとりあえず半分ぐらいは埋まるね~」
「和風クラスの追加なら二代さんも参加したいと思うやろうし、高弟組も入れて13人? 綴さんと琴音ちゃんはどっちだろう……」
「琴姉は次ぎやるならサブマスで先輩枠するとか言ってたな。いっそキノさんにも声掛けるだけ掛けてみるか? 確か日本刀とかも好きだったはずだし」
「それなら佐藤さんとカズマにも声掛けましょう! このままだと男が僕一人に……!」
「「あー……」」
そう宣言して、未だにフードファイトしてる面々の方へと向かって行く誠君を、なんとも言えない空気感を浮かべて見送る。
確かに前回は両性な私を除いて、全員女性だったので皆気にしてませんでしたが、恋人が居るとは言え、女ばかりの空間に男を一人だけ放り込むのは、真面な精神をしていると辛いものがありますよねぇ……。
キャンペーン予定ですから、外では1日でも中だと数ヶ月ぐらい経過する可能性は十分有りますし。
「……さて、話す内容は色々有りますけど、料理がまだまだ必要みたいですから、追加してきますね」
「あはは……、まあ了解。誠君が聞きに行ったのとかも含めて、参加希望者は私らの方でまとめとくね。あ、料理追加するなら、こっちはデザート系とか有ると嬉しいです!」
「そう言われるとそこそこ時間も経ってますから、デザート系を追加するのも良いですか」
企画段階なセッションの話はこの辺で一区切りして、先に振る舞った寿司関連が軒並み消えてるのを確認して、次の料理を追加していく。
さっきの追加は和食系が中心だったので、今度の追加は洋食系って事で、ミートパイやキッシュ、大皿に山盛りにしたパスタなど、取り分け可能な物を中心に取り出していると、美砂からのリクエストが入ったのでデザートも追加で並べる事に。
大祓の儀という名目の忘年会が始まってしばらく、空は夕焼けに染まり始め、締めとなる今年最後の日没もだいぶ近くなってきたけれど、会場内はまだまだ騒がしく熱が増しているのが感じられる。
ハレの気自体は既に十分な質と量まで高まって、術式を通して蓬莱島内の厄落としは完了済みだし、北神奈川支部の管轄周辺に厄落としの雪も降り始めたところ。
儀式関連は既に終わった感じですし、後は残りの宴会を純粋に楽しみましょうかね。