【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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025:初めましてと出張依頼

 千代さんの覚醒祝いのお茶会も恙なく終わり八月、学生の夏季休暇期間と言う事も有って、普段は一般の生活が忙しくて修行に来られない学生俺らが覚醒オフ会に集まっており、今年はゆかりネキレベルの緩修行から修行僧レベルの修行まで盛況な様子。

 なお、ショタおじの地獄巡り参加者と突破者はお察しの数である。

 

「んー、量産用の素材となるとやっぱり骨格は鉄になるかな?いや、術式付与する訳だし強度上昇も組み込めば木材でも問題無いか、量産と言っても何千と作る予定でも無いし……」

 

 そんな八月の早々にショタおじから招集の連絡が届いた事も有り、星霊神社の一室で招集された他のメンバーを待ちながらノートパソコンを弄っていると、集合時間まではだいぶ余裕のある時刻に招集された内の一人がやってくる。

 

「おはよう、まだ時間有るのに早いね、探求ネキ」

「おはようございますスライムニキ、そっちも三十分前行動は早い部類だと思いますよ?あ、そこのお茶は好きに飲んで下さい」

「序での用事が思ったより早く済んだからね。それじゃありがたく」

 

 スライムニキも態々呼ばれている事から分かる様に、今回ショタおじから招集されたメンバーは、〝俺ら〟の中でペルソナ能力を覚醒した人員であり、詰まるところ今日の目的がそっち方面の内容と言う事なのだろう。

 適当に近況の話などをしていれば三十分程度は直ぐに過ぎていく物で、カヲルニキや義勇ニキなどの数少ないペルソナ使いも集まった所でショタおじが一人の少女を連れて入ってくる。

 

「やあ、皆集まってるようだね」

「あれ?ショタおじその子って……」

「初めまして!汐見琴音*112歳でっす。気軽にハム子とでも呼んでね!」

 

 スライムニキが思わず呟いた言葉に反応してその少女、P3の女主人公なハム子によく似た雰囲気を持つ汐見琴音が溌剌とした声で自己紹介をしてくる。

 そのまま流れでそれぞれ自己紹介した後、ショタおじが改めて招集した理由について話を始める。

 

「自己紹介も終わった様だし本題に入ろうか。まあ大凡分かってるだろうけど、ハム子ネキとタルタロスについてだね」

 

 まあ本人がハム子と名乗っていた様に、以前カヲルニキが月光館学園を調べた際に見つけた写真の女の子自身らしく、ここにこうして居る事から分かる様に実は転生者だったと言う事が判明し、とりあえずペルソナ覚醒修行して無事覚醒したのが昨日の事。

 その後色々確認などもした結果、完全では無いけど一応ワイルド特性も有り、初期ペルソナがオルフェウスと言う点まで共通している事が分かったらしい。

 

「そんな訳で、来年中学に上がるらしいハム子ネキが月光館学園中等部へ進学するから、その前に僕らの中でペルソナに覚醒しているメンバーとの顔合わせと、サポートに関する話をしようって事で呼んだわけだね」

「よろしくお願いします!」

「なるほどね、まあそうなるとサポートのメインは探求ネキになりそうかな?」

「カヲルニキはN案件で全国回りですし、スライムニキはマヨナカテレビの対応、他もチームメンバーとの関係も有りますから、フリーな私がどの道巌戸台に行くだろうとは思ってましたので、問題無いですよ」

「オッケー、そんじゃ巌戸台支部って事で、場所はギルニキ経由で確保してるらしいから事務の方で書類受け取ってね。後はタルタロスだけど、今のところは最初に確認された範囲から大体10メートル程広がってるんだったっけ?」

「それは【トラポート】先の登録も兼ねて俺が調べてきた内容だね。カヲルニキが前回調査した二年前と比べて10メートルちょい広がっていて、どうやら広がる速度も少しずつ上がってきているみたい。多分ハム子ネキが高校二年になるぐらいの頃には、P3と同等の範囲にまで広がるんじゃないかと思う」

 

 カヲルニキの確認に私が了承を返した事で、巌戸台支部所属としてサポートのメインが決定した後、続いて万一のためなのか、スライムニキがペットであるココ・ジャンボの【トラポート】で転移出来る先を増やす序でに調査してきた資料が配られ、説明が行われる。

 どうやら数日の観測でも明確に分かる程度には範囲拡大速度が上昇している様で、幸いなのかスライムニキが調べた時点ではタルタロスからシャドウが出てくる様子は確認できず、無気力症と思われる症状の人も見つかって居ないとの事。

 

「――今分かってるのはこんな所。俺が行った時もタルタロス内への侵入は出来なかったから、多分ハム子ネキが行くのが鍵になってると思う」

「そこは昨日確認した時に確定したよ。神取関連の事件でタルタロス発生した時に鍵となる一部がハム子ネキに埋め込まれたみたいでね、影時間の範囲拡大もGP上昇に応じた結果みたいだし、後手に回ると厄介な事になるだろうね。埋め込んだのニャルだったし」

「あ、やっぱり?私もあの事件以降から髪色とかもハム子と同じ感じに少しずつ変化してたから、成長にしては変だな?とは思ってたんだよね」

 

 何やら実はタルタロスも間接的にN案件だったらしい情報が出てきたけど、結局やる事は変わらないので用心だけはするようにとのまとめで話は終わり、ペルソナ使い間での情報共有も終わった事で解散となった後、今後の話と言う事でハム子ネキと連れだって事務室へと向かう事に。

 

「えっと、探求ネキだよね?これからいっぱいお世話になると思うけど、よろしく!とりあえず連絡先交換良い?」

「こちらこそよろしくお願いしますね、ハム子ネキ。ペルソナ関連の技術開発もしてるから、装備や消費アイテムなんかも相談して貰えれば用意しますよ」

 

 道中早速とばかりに明るく声を掛けてくるハム子ネキからは、声色とは裏腹に空元気と言うか、虚勢を張っている様な印象も微かに感じるが、あえて突くような事をするのもどうかと思い、気付かない振りをして連絡先の交換をしていると――

 

「あはは、まあ流石に空元気なのはバレるよね~」

「察しの良さと言うか、感受性もワイルドの特性なんですかね?」

 

 そっとしておこうかと思った矢先、自分から多少無理していることを告げるハム子ネキは、12歳と紹介した通りの弱さも感じさせる姿で、等身大の彼女がそこに居るのだと理解させられる。

 

「どうだろね。でも前世の記憶がはっきり戻ったのが例の事件後だし、前世よりもコミュ力とかそう言ったのが上がってる感じはするかな?」

「元々素質はあって、転生した事で霊能含めて基礎能力が上昇したって可能性も有りそうですね。まあ今細かく考察する事でもないですか、ベルベットルームを正常に利用できないって話も有りますし、追々調べていく必要はあるかもですけど」

「それはあるよね~、ショタおじは何か推測があるみたいだけど、確証無いっぽくて話してくれなかったし」

「ニャル関係の可能性が排除しきれないし、微妙な推測は話難いですから――っと、事務室着きましたね」

 

 事務室に入ったところで念話を飛ばしておいた私の分身から書類を受け取り、序でに解除して記憶の統合をした後、再度分身を作りだして部屋を出る。

 

「さて、書類も受け取りましたし、落ち着ける場所で確認しましょうか」

「おお!掲示板では見たけどホントに分身なんて出来るんだ」

「15程度のレベルと【低級式神製作】の技術があれば、努力次第ですけど習得出来る術ですよ。まあ分身が経験した情報を統合する時の感覚が駄目って人も多いので、普段から使用してる人は少ないですけどね」

「え?!ショタおじと探求ネキの特殊技能じゃなかったの?掲示板だと他に使ってる人の話見かけないんだけど……」

「式神製造班だと、分身を一体作れる位の人は結構いますね。大体睡眠中の娯楽とか掲示板巡りとかの情報統合時の負荷が少ない使用方法なので、知らなかったり気付かない人の方が多いでしょうね」

「そう言うものなんだ、私も出来る様になったりするかな?」

「よほど相性が悪くなければ可能ですよ。ペルソナ使いならペルソナの一部を憑依させる感じでいけるので、最悪でも低級式神を購入して依り代にする方法も取れますね」

「マジ!?良かったら今度教えてよ」

「構いませんよ。とりあえずさっき受け取った書類の確認しましょうか」

 

 食堂へ移動して飲み物やお菓子を確保したら個室に入り、事務室で受け取ってきた書類を机に広げる。

 書類の内容としては、巌戸台で確保してある建物の場所や表向きの設備内容、月光館学園に関連する各種情報、周辺でガイアグループが関連する店舗の場所や取り扱っている内容と言ったところ。

 

「えっと、中学受験の案内も入ってるんだ。私立だしやっぱり受験は必要だよね……」

「あ、学園の創始者は神取関係みたいですけど、神取が没落した後に経営引き継いだ会社を財界ニキ達が買収して、ガイアグループ傘下の私立学校になってますね。後は今のところP3の関係者っぽい名前は見当たらない感じですか」

「え?うわっマジだ、って事はタルタロス探索は探求ネキと二人でって事?」

「他のペルソナ使いが見つからなければそうなりますね。ただ、ハム子ネキと私のレベル差が大きいので、ある程度縮まるまでは別行動になるかと、入学までに専用式神を作成するのと修行場異界である程度レベルを上げるのも視野に入れた方が良いですね」

「うが~!やる事多過ぎ!中学受験ってだけでも不安なのに!」

「月光館学園の受験範囲ってそんなに広く無いと思いますけど、相違点が多い歴史関連以外なら対して問題も無いのでは?」

「確かにそうなんだけどさ~、なんかこう……受験ってだけで不安になるじゃん?」

「その感覚はわかりますけどね、それなら霊格上げて知力とかの能力向上を目指してみます?記憶力や思考速度も上がるので効率も上がりますよ」

「そっか、レベル上げればそう言うのも上がるんだ。夏休み中はレベル上げに集中して、二学期から勉強に力入れるかな」

「後は専用式神の事も考えておいた方が良いでしょうね。修行場異界なら神主の一反木綿式神の貸し出しがあるのでレベル上げはできますが、現状タルタロス探索はソロになりますし……」

「それも有るんだった!?うわーどうしよ、やっぱりアイギスかな?それとも意表を突いてメティスを先にってのも――」

 

 受験やらの悩みを全て放り投げて専用式神をどうするか悩み始めたハム子ネキを余所に、他の資料にも目を通していく。

 主に私が常駐する事になる巌戸台支部として確保された場所は、巌戸台駅の商店街から少し離れた位置にある木造二階建てのボロアパートと隣接する物件をまとめた一帯。

 どうやらアパートが霊障物件になっていたらしく、周辺の住人が引っ越しするなり事故死なりで手放された所有権を買い取ったとの事。

 霊障自体は既に祓われているみたいだけど、周囲に広まった噂もあって買い取る条件の一つがアパートの建て直しをすることらしく、今回の件で買い上げた土地をまとめて建て替えるため、どんな物件にするか要望を出して欲しいとの記載もある。

 

「巌戸台支部の表の顔ですか、商店だと関係無い一般人が来る可能性も有りますし……、取り壊し前の建物から引き継いでガイア連合関係者専用のアパートにでもしますかね。敷地も結構広いですから中庭付きってのも良いかも」

 

 一度更地にするって事で、結界なども含めたアパートの間取りをあれこれ考え、組み込む設備などを検討した結果、色々と仕込むなら自分で建設する方が良さそうかと思い直し、一応の形が出来た間取り図と表の顔の予定を添えた書類を書き上げる。

 

「よし、やっぱり最初の専用式神はアイギスにしよう!って探求ネキは何してるの?」

「巌戸台支部を表向きアパートって事にして、ガイア連合員が出入りしても違和感が少ない様にしようかと思いまして、間取り図とか描いてましたね」

「ほえ~すっごい、私も入学したらそこに住もうかな」

「来年の四月までには完成させますので、部屋の方は大丈夫ですよ。それより式神はアイギスにするんですね、ちなみに見た目だけ似せる感じで?もしくは実際にロボボディを作る感じですか?」

「出来れば原作っぽくロボだと嬉しいんだけどね~、流石に無理だから見た目だけかな」

「んー、メイドロボ研究所*2と協力したら可能性は有るかもですよ?」

「えっと、確か掲示板でメイドロボスキーを公言してるオタ社長の会社だっけ、あれってネタだと思ってたけど、実際に稼働するロボって出来てるの?」

「素材強度とか動力とかの問題があるだけで、構造自体はある程度形になってるみたいですから、式神のボディとして作るのは可能だと思います。ただ、人とは大きく異なるロボットボディでペルソナの発現が可能か不明な部分は有りますけどね」

「そっか~、でもアイギスと言えばロボなイメージだしなぁ……」

「まあ試して見ない事にはどちらとも言えない話ですし、アイギスの再現を提案したら喜んで協力してくれると思いますよ?私も手伝いますし」

「良いの?!よっしゃー!早速掲示板にスレ建てするから、メイドロボ研の人達への連絡はお願いして良い?」

「構いませんよ、スレのアドレス載せてメールしておきますね。式神の仕様に関して後はスレで話し合うとして、他に確認しておきたい事とかあります?」

「とりあえず必要な事は確認し終わったんじゃない?私としてはレベル上げとアイギス作成の資金集めに行くぐらいかな」

「では、今のところはこの辺で良いですね。気になる事とか相談が有ればGCなりで連絡して下さい」

「了解っと、早速レス来てるし、何処まで可能か聞いてみるかな」

 

 こうして、私とハム子ネキの初めての出会いは、式神の仕様決めをしたり、追加で取り出したおやつの話などで賑やかに過ぎていった。

 そんな出会いから数日、アイギス作成についてはメイドロボ研だけじゃなく技術開発班のロボ部も加わってあれこれと試作機作成に勤しんでおり、ハム子ネキはその間レベル上げに専念すると言って修行場異界へ、私の方は技術資料を共有した後は巌戸台支部となる場所を確認して転移の目印を置いたり、隠蔽の結界を張って更地にして土台を作ったりしていたところ、⑨ニキ*3経由で届いた依頼により福岡へと出張することになる。

 

「暇を見つけて全国を巡った甲斐が有りましたね。すいません替え玉お願いします」

「急に呼ばれても即日移動できるのは、確かにどちらにとっても都合は良いだろうな。こっちも替え玉追加頼む」

「こってりした豚骨は九州の味の一つよね~。店員さん、替え玉とチャーシュー追加お願いするわ~」

「福岡に引っ越してきて良かった事の一つでゲソね。餃子二皿追加ゲソ」

 

 この特徴的な語尾を付けている少女が今回の依頼主でもあるイカネキで、クラーケンのデビルシフターに覚醒した結果、イカ娘な見た目と口調がデフォルトになってしまったと言う〝俺ら〟の一人。

 連絡を受けて仕事の前日に転移してきた後、顔合わせと仕事内容の再確認を兼ねて食事に来ていた。

 

「ある程度腹も満たされましたし、そろそろ依頼内容の再確認しましょうか」

「そうでゲソね。まあ私じゃ力量足りなくて参加するのがやっとな儀式の、宗像側代表として代わりに主導して貰うって話でゲソ」

「攻略した壇ノ浦異界が再発しないようにって事で、宗像三女神を奉る異界を作成して、壇ノ浦周辺に流れ込むマグネタイトを管理異界の方へ誘導する計画ですね。宗像大社との話が付かないとかで、⑨ニキの居る厳島神社だけで異界を作成するって話になってたと記憶してますが」

「そこは私の活動による影響でゲソ。積極的に異界攻略して回ったのと、代替わりした宗像大社の氏子筆頭が私の友人なおかげでゲソね。まあ名家()な老害を排除する良い口実になったとも言ってたゲソ」

 

 イカネキが言うには代替わりしたその人――相沢千鶴と言う女性が中心となって邪魔していた連中を引退に追い込み、宗像大社側の話をまとめた上で厳島神社との交渉も取り付けて、今回の話をまとめて見せたと言うのだから相当腕の立つ人物らしい。

 これでイカネキが異界作成や管理にも適正があるなら何の問題も無かったんだけど、海との親和性は高くても異界管理などの細かい技術とはどうにも相性が悪いようで、総本山である宗像大社だけで異界を構築しても管理しきれないって事から、宗像大社と厳島神社の二点で構築した異界を海路で繋げて一つの大異界とし、それぞれの神社に出入り口を用意する事で、宗像大社側と厳島神社側のどちらでも異界の管理を行える様にするのが、今回私が呼ばれて異界作成をすることになった依頼の詳細。

 将来的にはイカネキなり宗像大社側の人員なりで異界の管理を行える様にするのが目標だけど、この辺は⑨ニキとしても自身に掛かる負担を減らす意味でも出来る様になって欲しいとの事で、今回の若干面倒な異界構築儀式を提案してきた流れがあったり。

 

「なるほど、宗像大社関連の霊能組織が正常化する傾向があるなら良い話ですね。後は異界管理の技術書も用意してきましたので、将来的に管理出来るように修練して貰う感じですか」

「書物だけで覚えられるのは才能や適性がある奴だけじゃなイカ?まあ必要なのは分かってるゲソ。私が習得出来るか分からないけど、千鶴か栄子なら何とかなるかもでゲソね。っと、時間も良い頃合いだしそろそろ行かなイカ?」

 

 ご飯も食べ終わり支払いを済ませて店を出ると、福岡支部へと向かい明日の儀式に備えつつ、イカネキに渡す技術書の説明や軽い指導を行って翌日、早朝から儀式場となる大島へ移動すると宗像大社側の代表者が出迎えてくれた。

 

「初めまして、イカちゃんの友人で宗像大社氏子衆のまとめ役もしている相沢千鶴です。本日はよろしくお願い致しますね」

「えっと初めまして、あたしはイカ子の友人で同級生の栄子です」

「こちらこそ初めまして、ガイア連合所属の七倉瑞樹です。と言うか、イカネキは本名じゃなくてイカ呼びなんですね」

「クラーケンのデビルシフターでゲソからな。元々本名も舞香だし、あだ名の範囲じゃなイカ?」

「それもそうですね。まあ、雑談するとしても儀式場の準備を終わらせてからにしましょうか」

 

 宗像三女神が降臨した土地の一つとされる、大島は中津宮の奥宮にあたる御嶽神社へと移動し、祭祀場としての準備も整え終わり、⑨ニキ側からの連絡待ちと言う名の雑談タイムへと移行する。

 

「これで祭祀場の準備は大丈夫ですね。正直な気持ち、場所の準備ぐらいは宗像大社の神職に出来て欲しいんですけどねぇ……」

「今居る宗像大社の神職は一般の人が派遣されているだけですので、宗像の霊能組織も氏子衆に細々と残っているだけになってますし、その氏子衆も少し前までは無意味な特権意識に凝り固まって役に立ちませんでしたから」

「ホントにあの爺共は邪魔でしかなかったな、イカ子への態度も身内とは思いたくない言動だったし、あたしが覚醒したのを知って見合いと言いつつ強姦してこようとしたからな」

「老害共と悪事の片棒を担いでいたクズ連中は揃って塀の向こうへ行ったゲソ。残ってるのはまともな判断力を持つ人だけだし、今の氏子衆が神職に入れば少しずつでも改善するんじゃなイカ?」

「第二次大戦以前の時点で大きな霊能組織程、メシア教による被害が大きいですからね。大体メシア教に根切りされた際、逃げ出した無能ほど特権意識が強いのが笑えない話ですが――っと、⑨ニキから連絡来ましたね」

 

 雑談と言うより愚痴大会みたいになってた話の間に時間が来ていたようで、GCに準備完了の通知が届いたことに気付き、話を切り上げて異界作成の儀式を起動させ、厳島神社の方の儀式と繋がるタイミングを待つ。

 

「地脈経由での儀式接続を確認、それでは大異界の形成と宗像三女神降臨の儀式を開始します」

 

 繋がった二つの儀式場を端として二点の間を繋ぐ海路であり内海としての大異界を構築し、要で有り降臨の地としての島を異界の中央に創り出す。

 ⑨ニキの儀式進行に合わせて祝詞を捧げ、当面の異界管理者と言う事も有って⑨ニキ側に宗像三女神が姿を現すのを確認して儀式を閉じる。

 

「ふぅ、大異界の構築と宗像三女神の分霊降霊は成功しました。今後の事も有りますし、予定通り向こうへ挨拶に向かいましょうか」

 

 儀式を見学していた宗像大社の神職や氏子衆が、大異界の成立に合わせて一変した周囲の景色に動揺しているのは予想通りなので放置し、私の仲魔とイカネキや相沢姉妹、宗像大社の宮司を連れて【トラポート】を発動し、厳島神社側の儀式場へと転移する。

 転移した先では、なんだか少しゲンナリとした気配を漂わせる⑨ニキと、微妙に仄暗いオーラを発する大妖精ネキが異界内に構築した社へジト目を向けている光景があった。

 

「お疲れ様です⑨ニキ、何というか三女神は羽目を外してた感じみたいですね」

「お疲れ様です探求ネキ、異界構築の主導してくれて助かりました」

「探求ネキお久~、あっイカネキもこっち来たんだね」

「⑨ニキお疲れだゲソ。大妖精ネキも見学してたゲソな」

 

 面倒な事はさっさと済ませるべきと言う事で、宗像大社組も含めた簡単な自己紹介を手早く済ませ、異界管理に関わる人員で連れだって社の方へ向かい、御神酒を奉納しつつ宗像三女神との面通しを終わらせる。

 

「一先ず、早急にやるべき内容は終わりましたかね」

「そうですね、異界経由での呉と宗像間の移動については渡し守を用意してからですし、中央の島は立ち入り可能で良いんですよね?」

「沖ノ島では無いですから、立ち入りは問題無いですよ。逆に社も設置してありますから、中継地点の港ぐらいの感じで、ある程度常駐する人員が居た方が良いかもですね」

「そう言えば、中継地点の島って言ってもココからじゃ全く見えないんだけど、この異界ってどれだけ大きいの?」

「想定としては呉から宗像までの直線距離を基礎にしてますから、大体直径300kmの円形と言ったところですよ大ちゃん」

「今のところ岩礁とかも設置していない閉じた内海ですので、言ってしまえば巨大な生け簀みたいな物ですかね。養殖したい魚とか有るなら、それに合わせて生態系を構築して漁業も可能に出来ますよ。中央の島以外なら地形も自由に出来ますし、何なら中央島を経由した直線道路を作って、陸路で直通させる事も可能ですね」

「いくら異界と言っても何でも有り過ぎじゃ無イカ?」

「文字通り異なる世界ですから、まだ現実的な範囲ですよ?それこそ竜宮城みたいに時間の流れが異なる世界や重力の方向が入り交じる世界なんてのも可能ですし」

「まあ陸路を作るかどうかは今後の話し合い次第として、養殖場としての利用は進めておきましょうか。太平洋側の魚介類を養殖出来ればどちらにとっても良い感じですね」

「それは良いでゲソね。特にマグロとか手軽に取れると嬉しいでゲソ」

 

 宗像三女神との面通しも終わって神社側が実務方面の話し合いをしている間、私達の方も集まって異界運営に関する意見交換をしていると、とりあえずの利用法として魚介類の養殖と言うか、漁場として使える様に生態系を構築する話へと移っていく。

 そんな訳で異界で増やしたい魚介類をピックアップしたり、多少ネタに走った生物を追加出来ないかと色々弄っている内に時間も結構過ぎていたようで、要望関係は一旦それぞれでまとめて後日改めて異界を再構成する事になり、今日のところは解散と言う事で宗像側へと転移して戻る。

 

「今回の依頼についてはコレで一旦完了ですかね。とりあえず異界管理に関してはこの本に、霊能覚醒や基礎鍛錬に関する内容はこっちの本にまとめてありますので、イカネキに渡しておきますね」

「おお、助かるゲソ!高校行ってると山梨支部へ修行しに行くのも難しいゲソね」

「霊能覚醒に関する書籍などのとても貴重な物を私達も読ませて頂いてよろしいのですか?」

「そもそも千鶴や栄子達が読むための物じゃなイカ?将来的に異界の管理を可能になって貰わないと私もガイア連合も困るゲソ」

「なるほどな~、にしてもコレって陰陽寮の教導書*4に有る内容と似てないか?」

「似てるもなにも陰陽寮の日常に出てくる霊能関連の監修はガイア連合ですし、資料を用意したの私ですから」

「ガイア連合には探求ネキが書いた技術書が色々有るゲソ。私も覚醒修行直後によくお世話になったゲソよ」

「ちなみに今年の夏コミでは陰陽寮の教導書二巻目が先行発売されますね。神道、修験道、陰陽道の続きを収録してますよ」

「マジで!?あたしアレで覚醒出来たんだ、続きの内容って事なら何としてでも手に入れないと……」

「栄子はホントにゲーム好きゲソな」

「さて、渡す物も渡しましたし残りは報告書にまとめて後ほどと言う事で、私はそろそろ戻りますね」

 

 イカネキと相沢姉妹に挨拶してから自宅へと転移で戻り、私の方の報告書を仕上げてガイア連合の依頼報告へ上げると、既に⑨ニキ側の報告書がアップされており、異界運営に関する草案まで付いてる辺り仕事の速さは流石と言ったところ。

 

「んー、植物プランクトンを多少改良して成長促進させる感じにしますか。流石に動物の魔改造はまだ出来そうな感じがしないですし、ネタに出てきた魚介類関係はどうしようも無いですが……。いや、魂魄情報を改変する感じでいけますかね?」

 

 報告書を読みつつ試行錯誤している中で思い付いた内容の実験をしたり、宗像大内海と名付けられた異界に放り込む魚介類の収集をしている間に、夏の祭典が開催される時期がやってくる。

*1
舞台版やコラボなどで使われているため、この名前で登場。

*2
『【カオ転三次】DRUG FATE』様より、冬コミでアイギスフィギュアを販売したりしていた。式神とは言えロボットボディ作成依頼が来たら嬉々として請けると思われる。

*3
『【カオ転三次】DRUG FATE』様より、現在呉支部長として事務方や社長業をしつつ、傘下に収める事になった魔術結社の取り纏めや技術修練と忙しく動いている。

*4
陰陽寮の日常の設定資料も兼ねたミニゲーム付きファンディスク。




と言うわけで、ハム子ネキの合流回と⑨ニキの将来的な負担軽減を兼ねた宗像三女神の異界作成回です。
ハム子ネキは本家様の自衛隊VSショタおじ以降と思われる『カオス転生外伝 ざこそな! 第5話』の時点で学生しているとの記載があるため、拙作での時系列予定から現在小六の来年中学一年としています。
なお、⑨ニキ関連の身を削る程の生き急ぐ様な行動が無い分の発展や出来事は、他三次作様の設定などを利用させて頂く関係で互いに影響し合い、補完される想定をしています。

 序でのオリキャラ紹介
・イカネキ
 クラーケンのデビルシフターで、覚醒と同時に姿が大きく変わってしまった一人、磯崎舞香16歳。
 両親との関係は良好だが容姿の変化により元の生活に戻るのが難しくなった事と、覚醒修行する少し前から地元にメシア教が進出してきた事から、両親にもオカルト関連の話を共有した上で福岡へと引っ越した経歴を持つ。
 現在は宗像市で高校生活を送りつつ、漁師である父親の仕事の手伝がてら海中の野良悪魔討伐や、内部が水没している異界の攻略を行っている。
 ちなみに、同級生に向島拓朗と言う釣り好きの少年や男勝りな性格の相沢栄子と言う少女がいるらしい。
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