【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
タルタロス六十四階の封鎖解除調査を本格的に始めてから、一度目の満月が過ぎそろそろ二度目の満月が近付いてきた頃。
攻略の進捗としては、流石に一度で条件発見とはならなかったが、前回までの封鎖階層で条件となっていた方法や、その途中で試していた方法も合わせて、事前に軽く調査していた分も含め一通りは試し終わり、次は何を試そうか頭を悩ませていると言ったところ。
そんな攻略事情に関する悩みはそれとして、最近〝時間圧縮睡眠*1〟なんて小技が可能になった様で、二~三時間も眠れば十全に活動出来る事もあり、日常業務を終わらせた後の気分転換の一つとして、最近日課に加わる事になった夜明け前の散歩へと出かける。
【圏境】で気配を周囲へ溶け込ませ、五感も閉じた状態で、【神足通】で跳ねるように転移を繰り返す。
【
特に、亀仙人にも話を聞いた十四代目葛葉ライドウが、帝都で活動していた頃の記録を探すのが密かなマイブームになっている。
そうして決まった範囲を回るわけでもなく、東京中を当てもなく散策していれば必然的に、かつて居た施設の近くを通る事も有るわけで、その際に観た過去の記録はある意味予想通りと言ったところだろうか。
「標的が居なくなったなら諦めれば良いものを……いや、元々生け贄として他も使うつもりでしたか。同様の施設を順に使い潰してるみたいですし、遅かれ早かれってところだったみたいですね」
私が逃走してから四年ほどで孤児が居なくなった事により施設は閉鎖され、職員も含めて全員がメシア教に所属するようになったみたいだけど、果たして何人がまともな人で居ることか、そもそもメシア教徒という時点で、人認定して良いのかも怪しい気がするのは置いておきましょう。
それよりも、別段積極的に調べるつもりはなかったけど、十年近く生活していた施設を観てしまったと言うことは、私が産み落とされた病院も近くにあるというわけで、アレらの末路も情報として浮かび上がって来たことの方が問題だろうか。
「元々半グレの様な連中だったみたいですし、カルト集団との相性も良かったんでしょうかね。最もそのカルト集団も壊滅してるみたいですけど……、現場のメイン担当がカズフサニキ、バックアップがジュンニキ、技術面などのサポートがスカリエッティニキってところですか」
どうやら私を産んだと言う経緯で半覚醒ぐらいにはなっていた様で、以降も懲りずに同様の遊びをやらかしたり、窃盗や強盗なんかもしていたところ、カルト集団に目を付けられて結局同じ事を繰り返したり、と言った状態が二年前ぐらいまで続いていたらしい。
そんな状態も、カズフサニキ達三人が何某かの思惑でもって潰した*2、と言うところまでざっと確認出来たのと、アレを蠱毒皿生産に使うのは良いとして、少し懸念があるとしたら〝縁〟の切断が十全と言えるか不安があるぐらいだろうか。
繋がりがあると認識している上で、注意深く探らないと見つけられないぐらいには、確りと悪縁を断ち切る術が行使されているのは分かるんだけど、それも力の強い悪魔――特にニャルの様な相手だと、見つけられてしまう可能性が否定出来ないのが怖いところ。
「その懸念でいけば琴音さんの事も有りますし、一度本格的に対策用の御守りなりを考えてみますか。直接は無理としても、間接的にでも影響を弾けるなら利用される可能性を下げられますし……」
新しい思い付きを得てちょっと良い気分になりながら、散歩と言う名の鍛練も、丁度区切りに決めている日の出を迎えたため支部へと戻り、朝の用事を各種終わらせて時間の余裕が出来た所で、早速思い付いた道具の研究に取りかかる。
とは言え流石に、目標となる基準がニャルのレベルで厄介さや知名度のある邪神ともなると、干渉を防ぐと言う目的一つに絞っても容易ではなく、相応の研究期間が掛かった事も有って目処が立ったのはしばらく後の事。
最終的に神殺しの炎として、カグツチの触媒を文字通りに
或いはそうしたサポートの手が一歩届かないと言うのも、所謂〝運命愛され勢〟と同情される者達の一人である、琴音さんの悪運という物なのかもしれない。
「痛っ!弾かれた、みたいですね……」
「私の方にその感覚はなかったと言う事は、瑞樹の所で何かしらの条件に掛かって弾かれた感じか」
「考え込むのも良いけど、その前に回復しておくわよ」
「ありがとう湯乃葉。さて……と、アイギスが弾かれていない所を見るに、基準は人かどうかではなくレベル辺りでしょうか。そうなると直接干渉と言うより、ギミック的な条件か制限みたいなものと考えた方が良さそうですね」
探索前にベルベットルームでペルソナの構成を変更するとの話から、ニャルに聞かれないように作戦会議するため、全員で入ろうとしたのが直前の状況で、一緒に入る条件を満たすために琴音さんの肩に乗せていた左手が、弾ける様に消し飛んだのが扉を開いた直後、そして消失した左手を、湯乃葉に治療して貰っている今に繋がる。
と言う現状を再確認したところで、普段ベルベットルームへの移動に使用している扉から、封鎖解除のギミックなりが発動したのではないか?と推測する訳だけど……。
「思った通り、扉の接続先が物質と精神の狭間ではなく、集合的無意識とタルタロスの狭間になってますね」
「確か、物質と精神の狭間にベルベットルームがあるのよね?」
「ええその通りです。なので、このタルタロス自体のギミックとして、今の状況になっていると考えるべきでしょうね」
そもそもこのエントランスホールに、ベルベットルームへ続く通路として扉がある状況自体に、もっと疑問を感じるべきだったと言う事なんだろうけど、それは今言っても始まらないし、状況が解決してから改めて考えるべき事かな。
それより考えるべきは、ギミックとして繋がった先がどうなっているのかと、分断された三人だけで解決出来る可能性がどれだけ有るかと言う訳で、弾かれた理由や接続された先の状況を調べるために、各種霊視系術式を発動していく。
まずは入り口と言う事も有って弾かれた理由だけど、これは簡単に琴音さんより上位の霊格持ちを排除する仕掛けだった様で、ご丁寧にも咄嗟にドアノブを掴むと、影時間から強制退場させる仕掛けまでしていたらしい。
「弾かれて咄嗟に扉を開けようとしていたら、面倒なことになってましたね。これは……」
「調査能力が低ければ、どの道様子見で扉を開けようとして排除されるのか。ちなみに、対処法はあるのか?」
「霊視系術式の干渉妨害もあるのでちょっと時間掛かりそうですけど、場所を見つけられたら転移は可能ですね」
「それなら、多少でも負担を減らすために戻っておくわね」
現状やれることも無いからと、湯乃葉がさっさと封魔管に戻った後も扉の調査を続け、ようやく一つの精神世界を見つけ出し、久遠と共に【神足通】で転移する。
切り替わった視界に映るのは、薄暗い室内と下卑た男達の笑い声、そして何処か合成音にも思える抑揚の無い少年少女の
肉眼以外の霊視で探っても、十畳ほどの室内以外は無明の闇が広がり、室内ではのっぺりとした影法師が揺らめいて濁声が生じる度に、部屋の中央で四肢を拘束された裸体の少女――秋山綴が怨嗟の声を上げる。
見た感じ十代前半ぐらいの姿になっては居るが、そうと分かる程度には面影のある少女が鎖で拘束され、揺らめく影法師により嬲られている状況が繰り広げられていた。
「それぞれ個別にされてるかと思いましたけど、一纏めにされてたのは幸いですか。綴さんが若干厳しそうですけど、琴音さんの方はどうにか出来た様にも思えますね」
「手を貸せば確実に問題無く対処出来ると言う事だな。それでどうする?」
「荒療治かもしれませんが、利用出来そうな状況ですし、踏み込んでみましょうか。強引に向き合わせるなんてのは、余計なお世話と言われる筆頭ですけどね」
空間内に侵入した直後から押し寄せてくる寂寥と拒絶の感情、拘束し繋ぎ止める鎖に慟哭の声を上げながらも
一見して少女を害するために捕らえている状況だけど、ここが集合的無意識とタルタロスの狭間であり、邪神ニャルの舞台ギミックとして創られた場所であることを前提に観察すると、見える結果も変わってくる。
具体的に言えば、曝け出されたトラウマに精神崩壊しかけた綴さんを、アイギスが変化した鎖で繋ぎ止め、形を保つために拘束し、琴音さんの内に包むことで拡散することを防いでいる状況であり、琴音さん自身は綴さんの精神が回復するまでを凌ぐために、知覚能力を落として精神防御に専念している感じだろう。
「顕著な問題としては綴さんの方ですけど、琴音さんの寂寥感も可能なら何とかしたい所ですね。久遠は警戒の方頼みます」
「承知した」
琴音さんの内にある精神世界とは言え、些細な拒絶反応による抵抗なんかも考えられる事から、念のため久遠に警戒を頼みつつ、剥き出しの魂となっている綴さんを刺激しすぎないよう静かに近付いていく。
装備も全て脱ぎ捨てて、身一つとなった状態でそっと触れると、綴さんが体験した記憶――十かそこらの少女が慰み者にされた忌まわしい経験が、濁流のように流れ込んでくる。
「アアァっぐ!?」
触れるという刺激の影響か、一段と大きくなった怨嗟の咆哮を止める様に口を塞ぎ、舌を絡ませ、肌と肌を触れ合わせる。
唯々身勝手な獣欲を叩き付けられた望まぬ姦淫にもかかわらず、淫魔の血筋だからなのか、仄暗い悦びを感じる心と体への絶望と拒絶を受け止め、既に終わった過去を塗り替える様に、快楽を受け入れる事の拒否感を解していく。
じっくりゆっくり時間を掛けて口付けを交わし、綴さんの形を取り戻す様に全身へ触れ、快楽を感じる事は忌避する事では無いのだと、トラウマに楔を打ち込む。
「んはぁ、あぇ、み、瑞樹……さん?」
「会話可能な所まで回復出来ましたか、何処まで覚えてます?」
「何が……、いえ、いつもの様に琴音ちゃんがベルベットルームに入ろうとして、いつの間にかあの日の私に戻ってて、それで、それで――!」
鍛練の賜物か、意識を取り戻した直後の混乱を直ぐさま抑え、状況整理するように思い出していったが、予想通り再び狂乱しそうになった所で、胸元に抱き寄せて落ち着かせる。
肌に触れる涙の感触や精神を直接震わせる悲嘆を抱きしめ、この空間を形成し綴さんを守り続けている琴音さんをも感じ取れる様にしながら、幼子をあやすように言葉を掛ける。
「大丈夫、私も琴音さんも居ます。貴女は独りじゃ無い、独りにはしない」
どれぐらいそう居ていたか、途中深く繋がりすぎた所もあったけど、一応師匠と弟子とは言え、年齢やら何やらと複数の関係性もあり、一年近く大なり小なり交流していれば相応に情も湧くもので、個としての形を確りと取り戻す間にある意味で一戦交えることになったのは別の話としておこう。
まあそうして一戦交える流れになった辺りから、空間を形成する寂寥感が強くなったり、不満というか欲求的な感覚を強く感じる様になった辺り、琴音さん側にも大きな影響が出ているのだろう。
とは言え、最大の懸念点が対処出来たなら後は簡単な話で、拘束と繋ぎ止める役割に徹していたアイギスを元に戻し、集合的無意識へ拡散するのを防いでいた琴音さんの意識を覚醒させれば、一先ず完了と言ったところだけど。
「ズルイ!!」
「意識を覚醒させての開口一番がそれですか」
「フタリであんなエロエロなコトして!マザリタクテモ混ざれナカッタこっちのキモチもカンガエテヨネ!」
「えっ?!あっ、あぅぅ」
「ほらほら、綴が困ってますし、
「ホント?嘘ジャ無いヨネ?」
「こんなことで嘘なんて付きませんよ。ほら、こんなに琴音を求めてるの分かるでしょう?」
「あっ、アア、ウん。イッパイ、愛してね?約束だからね?」
「もちろんです。一杯愛し合えるように、さっさとタルタロスから出ましょう」
まあ流石に、精神の内側で乳繰り合ってるのを見せられたら、ワイルドの特性持ちだろうと何だろうとキレもすると言う話。
更に言えば、命の答えに辿り着いている訳でも無い段階で、集合的無意識からの侵食を遮断するのは相応に無理する事になったらしく、精神の箍が緩んで微妙にシャドウ化しかけていたけど、根源的な欲求を埋めるという方法で落ち着かせ、約束代わりにキスを交わした所で、タルタロスのギミックから抜け出す事に成功する。
何と言うか、心の隙間に入り込んで、依存させてるみたいでアレだけど……。
兎も角、トラウマスイッチなギミックを抜け出した事で、ようやく本来の封鎖解除ギミックに戻れたらしく、タルタロスの異界内に復帰したの良いんだけど、事態解決にはまだ掛かる様子。
「あれ、ベッドの上?さっきの続きするの?」
「え?ああ、今度は琴音ちゃんも入れてもう一回戦するんです?」
「何か随分とムーディな場所ですが、とりあえず各自状態の確認をしましょう。琴音も綴も色に浸りたいのは分かりますが、そう言うのは支部か私の拠点に戻ってからですよ【メパトラ】」
「「はぅ?!」」
放り出された先は何と言うか、ラブホの一室と言われたら妄想出来そうな感じの場所で、流石に全裸で放り出される何て事にはならなかったのは幸いな話。
しかも幸いな事に、二人の様子から気付けたのだが、時間を掛けて催淫系の状態異常が積み込まれる様になっていて、よほど耐性が高いか逆に極度に弱い場合でも無ければ、違和感を覚える事もなく色欲に堕ちる事になっていただろう辺り、この場所らしい効果の仕掛けと言えるだろうか。
綴に関しては、直前までの状況が影響して耐性が極度に落ちていただろうし、琴音の方はそれこそ、この部屋の影響を長時間受けた結果と言ったところかな、【メパトラ】で回復出来たみたいですし。
「とりあえず、邪気払いの結界だけでも張っておきますか」
「うぁぁ、状態異常マジ怖い!耐性装備無視のフィールド効果系ギミックって事だよね?!これ!」
「わ、忘れて下さい!!」
「この場合、機体的にその手の効果が無いのは、良かったと言うべきでありますか?それとも感情を共有出来ない事を嘆く場面でありますか?」
「将来的に【
「なるほど、そうでありますな」
催淫系状態異常で色惚けしていたとは言え、別に記憶が曖昧になっていた訳でもない事から、自身の言動を振り返って羞恥にもだえている二人は、一旦置いておくのが情けというものだろうか。
ともあれ、ベルベットルームへの扉から飛ばされた先が、琴音に埋め込まれたニャルの鍵によるギミックと考えるなら、タルタロスの封鎖解除ギミック関連の場所が、此処と考えるべきかな。
多分影響されているイメージは、P3のアルカナシャドウ『ラヴァーズ』関連イベントの舞台になっていた場所。
元ネタ的には、タルタロス内にあることがおかしくはあるんだけど、似通っている所が多くてもこのタルタロスはゲームじゃないし、異界の中であるならある程度どうとでもなるのだから、こう言うこともあると納得するだけなんだけども。
「さて、何はともあれギミックを解除して脱出しないといけませんね」
「だね!こんなとこさっさと脱出するよ!」
「はい!直ぐにでも抜け出しましょう!」
「とまあ意気込むのは良いですが、その前に変化した綴のペルソナを確認しましょう。色々変わってる可能性有りますし」
「あ、そう言えば私の
「ちょっ?!そこを蒸し返すのは反則ですよ琴音ちゃん!」
「【アナライズ】しますよ~」
しばらく時間も経過してそろそろ落ち着き始めた辺りに声を掛けてみると、二人とも何とか折り合いを付けたのか、やる気を漲らせて声を張り上げる。
或いは勢いで押し流そうとしているだけかもしれないけど、そこはまあ重要な事じゃ無いし置いておくとして、行動開始前にペルソナの変化により綴の能力がどうなっているかの確認や、二人が羞恥で悶えている間に調べて置いた情報を共有するのが先だろうね。
「変化したペルソナは【剛毅 プロメテウス】、耐性が以前の火炎無効と氷結弱点から変わって、物理破魔呪殺の耐性に火炎無効と電撃弱点になってますね。【アギダイン】まで使える様になって【火炎ハイブースタ】が追加されたみたいですが、感覚の方はどうです?」
「説明して貰って感覚は掴めたと思います。後は実際に戦闘で使ってみないとって感じでしょうか。それより弱点属性が変わったのが問題ですよね」
「ふっふっふ、そう言う事なら私の色違いコレクションを貸すよ!対応属性違いの羽衣なら無駄遣いじゃないからって押し切って正解だったね!」
「色違いの装備コレクションに苦言を呈したと言うより、買いたい物買って散財してお金が無いと泣きつくなら、同じ効果の装備ぐらいはせめて後回しにしなさい、と言っただけ何ですけどね……」
綴が今まで装備していた〝山吹の羽衣〟を外して、意気揚々と琴音が取り出した電撃無効の〝白銀の羽衣〟を装備し、変化した能力に関する確認は一段落と言う事で、次の確認に移る。
「とりあえずこの部屋は、耐性無視で状態異常を蓄積する効果以外に、仕掛けは無いみたいですね。大型シャドウの気配も無いですけど、通路の方は同じフィールド効果に加えて、エロトラップがいくつもありましたから、行動時は気を付けた方が良さそうです」
「いやいやいや、ここタルタロスだよね?!」
「エ、エロトラップ、ですか……。何か、普段と性質がかなり違いますね」
「まあギミック用意しただろう存在が、吟遊系愉快犯な邪神と推定されてますからねぇ。適当にアルカナの恋人と夜のイメージから繋げて、淫蕩方面にでも振り切ったとかじゃ無いですかね……。異界として考えるなら、そうおかしいと言うほどでも無いですし」
とまああれこれ言いつつも、互いの状態確認や情報共有も終わり、封魔管で待機していた湯乃葉を喚び出したりと戦闘準備も整えて、探索開始と部屋を出た所で、琴音が一瞬怪訝そうな表情を浮かべた事に気が付く。
「ん、何かありました?」
「さっき、ちょっと変な感じが……全員出た直後……?」
「琴音ちゃんが何か感じたなら、気を付けた方が良いですけど……、もしかして今出てきた部屋の方ですか?」
直感や運命力など、感覚系の素質が三人の中で一番高い琴音の言うことだけに、気のせい何て言える訳も無く、得られた情報の取っ掛かりから調べていくと、綴が言う通り今し方出てきた部屋の扉が、詳しく調べないと気付かないレベルで変化していることを発見する。
どうやらこの通路自体が罠の一種であり、無駄に探索させながら消耗させ、状態異常を蓄積させる目的らしい。
「回り回って結局、初期位置付近にゴールが、ってタイプの罠みたいですね。この場合解除用のアイテムが遠くに置いてあったりなんてパターンもありますが」
「なるほど、ゲームとかだと良くあるよね。別の所で仕掛けを動かして戻ってこないと通れない仕組みとか」
「私だと良く分からないんですけど、この扉に何か仕掛けがされてる感じでしょうか……」
「んー、調べた感じでは、変化を分かり難くさせるぐらいですかね。ゴールだと気付かせなければ、存在しない別のゴールを探し回らせる事が出来ますし」
「私も嫌な予感はしないし、大丈夫だと思う」
「であれば、私が開ける役をするべきでありますな。突入の前衛には久遠さんが適任でありますから」
そんな訳で手順などを確認し合った後、アイギスが扉を開けたところにメンバーで一番前衛力の高い久遠が突入し、ギミックへの対処に私が続いてと言った流れで室内へ舞い戻る事に。
扉の先は、さっきまでのラブホみたいなベッドルームとは打って変わって、地下の大広間みたいな部屋になっており、壁際には木製から鉄製まで様々な器具が雑然と積まれ、鎖や紐などが壁や天井のあちこちに垂れ下がる特殊な空間が広がっていた。
「弱点無しの破魔呪殺無効!後、今飛んできてるエログッズは魅了付与付いてるので、回避か迎撃で破壊して下さい。ギミックを考えると状態異常重視ですし、他の攻撃も同様と考えた方が良さそうですね」
「ええい!今回のタルタロスは頭から尻尾までエロ尽くしか!」
「三大欲求は伊達じゃ無いって事でしょうねぇ。集合的無意識の影響が強いシャドウ異界ならなおさら、色欲をテーマにしたギミックが中途半端に終わったりはしないでしょう」
「それは分かるけど、分かりたくないぃ!」
「掛け合いしてても余裕で対処出来るって凄いなぁ……」
「そう言う綴ちゃんも、だいぶ余力もって対応出来る様になってるじゃない。確り鍛えられてるんだから、過小評価しすぎじゃだめよ?」
部屋へ突入した直後に放たれた大型シャドウの咆哮により戦闘開始になった訳だが、どうやら咆哮自体にも何かしらのスキルが乗っていた様で、フィールド効果を打ち消していた邪気払いが剥がされ、間髪入れずに壁際に積まれていた三角木馬や注射器のような何かが飛んできた辺りで、飛来物を一掃しつつ大型シャドウに一撃入れて、戦線を構築する。
まあ大型シャドウが拘束や魅了のような、行動阻害系状態異常を連打してくる上、間断なく飛来してくる投擲物が、例外無くエログッズな状況だと、琴音のツッコミも然もありなんと言ったところ。
大型シャドウ本体との戦闘自体は、レベル的な差もほぼ無いため、二人とも問題無く前線で戦えているのだけど、粘性の透明だったり白濁してたりする液体が振りまかれたり、わかりやすく怪しい桃色や紫色の煙が噴き出したりと、間接的な要因に翻弄され、中々上手く立ち回れていない感じかな。
「二人の今後の課題は、近接戦闘が難しい場合の対処法ですかね。遠距離攻撃の消費を抑えた通常と、多少重くても威力に特化した一撃でもあれば、こう言う場面でも戦い易くなりますし」
「そう言う瑞樹は実戦じゃ前に出ないじゃない、訓練でボコられてるから出来るのは知ってるけどさ。と言うか、どうしても近接で戦わないといけない場合ってのもあるでしょ?」
「私の近接戦闘センスは対して高く無いですからねぇ。そんな場合なら【硬気功】使って、多少の被弾は覚悟の上でやられる前にやるぐらいでしょうか。それより面倒なギミックは無いみたいですし、さっさと終わらせましょうか」
湯乃葉と一緒に補助や回復を回しながら削りつつ、主に霊視での看破を行っていた訳だけど、身代わりや同時撃破が必要だったりする様な復活系ギミックも、ラストアタックなどのギミックとかも無いみたいと言う事で、様子見を終えてさっさと高火力を叩き込んで削り倒していく。
前衛組の援護も兼ねて、粘液やら投擲物やらを巻き込んで吹き飛ばした事も有り、鬱憤を晴らすように連携して叩き込まれる近接スキルの連撃も重なって、程なく大型シャドウがその身を崩れさせ、完全に消え去るのと連動して周辺も崩れ、影時間から弾き出される。
戻ってきた場所は影時間へ突入した際の地点と同じ葦原荘の近くにある公園で、時間経過の懸念も杞憂に終わったらしく、普段通り日付変更直後の時刻を刻んでいるし、念のため確認した日付の方も数日経過している何てことは無かったため、結果的にちょっとしたトラブルはありつつも、無事に探索を完了出来たと言ったところだろう。
「最初はちょっと焦りましたけど、結果的には何とかなりましたか。次の影時間にでも封鎖解除されているか確認したら、一区切りですね」
「そっか~、うん、お疲れ様!ってことで、その……」
「大丈夫、覚えてますよ。まあその前に、お風呂入ったり分身式神の更新をしてからですね。綴はどうします?」
「ふぇ?!あ、あの、お邪魔なんじゃ――」
「わ、私は、綴さんが一緒でも……いや一緒の方が良いかも?」
「え?ええぇ??」
「どちらにしても一旦私の拠点に移動しましょうか。結論は私の用事が終わって、お風呂から上がるまでって事で」
予想外の所から奇襲されたかのような綴のことは一旦置いといて、全員まとめて拠点まで転移し、諸々の準備を終えた後、なんやかんや有って私達三人は晴れて恋人の関係となった訳だけど、何があったかの詳しい内容は、また別の話と言う事で。
タルタロス関連は基本的にこの世界線としての独自設定です。
本家様のハム子ネキが独りでラブホに放り出される何て事態は無かったはず、きっと……。