【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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第一回オフ会の参加者に関しては、基本的に想像による捏造設定です。


004:富士山オフ会

 明けて翌日、富士山オフ会の参加者の内、前乗りしていた人の殆どが宿泊している宿の食堂では、ちょくちょく前世の創作で見知った様な人達を見かけつつ、逆にこっちも同様の目線を向けられつつも、特に話しかけられたりなども無く朝食を終える。

 まあぼっちでコミュ障が多い中身俺らと考えれば然もあらんと言ったところだが、集合場所へとぞろぞろ歩き出す参加者を眺めながら、団体のチェックアウト作業に行っているちひろさんが戻ってくるのを待って私達も少し遅れて現地へ向かうと、多種多様な人というか、何の集まりなのかよく分からない混沌とした光景が広がっていた。

 

「さっきの食堂でも思いましたけど、実に〝俺ら〟という感じがしますね……」

「ぼっちのコミュ障か、アクティブオタクってこと?」

「そうねぇ、何か妙な自信の無さを感じるのもいるし、らしいと言えばらしい感じはするわね」

「コミケの会場みたいな感じで良いですよね。とりあえず午前からの参加者が揃っているか確認してきます」

 

 何か一人ほど微妙に感想がズレた気がしないでも無いが、些細な事だし放っておくとして、宿泊場所の手配を任された関係からか、幹事みたいな仕事も任されたらしいちひろさんに付いていって参加者と交流を深めていると、どうやら時間が来たようで、妙な存在感を放つ小柄な男性が森から歩み出てくるのを目にする。

 

「おー集まってるね。午前からの参加者は全員集まってる感じ?」

「あ、イッチもう来たんですか?集合時間までまだありますけど、午前の参加者が揃ってるのは確認しましたよ」

 

 森の中を抜けてきたとは思えない程身綺麗なまま悠然と歩く男性はどうやらちひろさんと面識があるみたい、というかちひろさんの言うとおりなら、この男性こそオフ会の主催者であるサマナーで陰陽師な神主のイッチなのだろう。

 見た目は何処かのシャーマン王だし、掲示板の自己紹介が正しいなら見た目ショタでも実年齢アラサーという外見詐欺レベルな若作りだけど。

 

「それじゃ家の神社に案内しようか。無駄に突っ立ってるのも面倒だろうし」

「そうですね。皆さん!イッチが到着しましたし、参加者も揃っているのを確認しましたので、時間前ですが移動開始します。周囲とはぐれないよう付いてきて下さい!」

 

 多少ざわついていた参加者たちもちひろさんの言葉が広がるにつれて鳴りを潜め、イッチの後を付いていく私達に合わせてぞろぞろと移動を始める。

 一般の登山道から外れ、整備は一応されている程度の、案内人がいなければほぼ確実に道を間違える様な道程を百人以上の参加者が多少の愚痴でざわつきながらも進む事しばらく、森の切れ間から一歩踏み出した途端に、涼やかな風と清浄な空気が全身を包み込んだ。

 イッチが掲示板で言っていた結界の内側に入ったのだろう、今まで木々の間から見えていなかった事が不思議なほどに広い敷地と大きな神社が眼前に広がっており、後ろに続いていた参加者達が到着するに連れ、ざわめきが次第に増していく。

 

「ようこそ、日本最高の神社〝星霊神社〟へ」

 

 参加者の歓声が上がる中、イッチ――いやここは神主と呼ぶ方が良いか、兎も角神主の先導で更に敷地内へと入っていくと、まずは一週間の宿泊場所へと案内される。

 

「流石に百人以上それぞれに個室ってのは無理だから、ある程度まとめて一部屋って感じに別れてくれ、場所の案内や雑用についてはこの式神に聞けば対処出来る様にしてるから」

 

 そう言う神主の横に降りてきたのは掲示板にも画像を上げてた、美術評価2を裏付ける見た目の一反木綿。

 掲示板では散々に言われていた式神とは言え、実際に目にして体感すると印象も変わるのだろう、神社に到着した当初はそれなりにざわついていた参加者も、今では殆どしゃべらず神妙に神主の言葉を聞いている。

 

「それじゃ、部屋に荷物を置いてきたらある程度の人数毎に霊力修行体験を始めようか。指導についてはこうやって、僕の分身を出して一斉に出来るから、順番とかは気にしなくて良いよ。それと、掲示板で書き込みもしてた霊視ニキみたいに覚醒済みの参加者は別枠で呼ぶから」

 

 最後に分身の術なんぞを気軽にぶち込んでから神主が去って行った後、参加者の中から未覚醒ながらも溢れるほどのカリスマを纏う金髪の男性――と言うか見た目まんまギルガメッシュなのを見れば、この人が宿の貸し切りだとかしてくれた富豪俺たちの一人であるギルニキなのだろう。

 

「フム、やはり来て正解であったな。ちひろ!部屋割りは貴様に任す。俺は修行開始前に神主と事業提携の相談をしてくる」

「わかりました」

 

 未覚醒とは思えない程のカリスマは、流石に富豪として成功しているだけあると感心させるもので、差配を任せると告げただけで参加者の意識が協力する側へと傾いたのがわかる。

 まあ部屋数やら広さやらを確認して部屋割りを考える何て面倒をやってくれるなら、って部分もあるだろうけど恙なく部屋決めが終わり、私達四人もそのまま一部屋に固まって荷物を置き終わると、早速昼食前の修行体験へ向かう三人とは別れ、覚醒済みが呼ばれた部屋へと向かう。

 

「呼ばれてきました。瑞樹です」

「ん、良く来たね。今回参加の連絡があった中での覚醒者は揃ったし、軽く自己紹介でもしようか。僕は峰津院堂満、まあ神主でも何でも好きに呼んでくれ、じゃ次ぎー」

「なら来た順で俺から行こうか。花山薫、ハンドルは霊視だな、多分このままコテハンになるだろうし、霊視と呼んでくれ」

 

 呼ばれた座敷に入り置かれていた座布団に座ると、まずは自己紹介とばかりに神主から促され、どこぞの格闘漫画にでも出てきそうな古傷が幾つも顔に残る体格の大きな男性――霊視ニキが軽く紹介してくれる。

 メシアンに拷問された結果付いた古傷だというのは推測出来るんだけど、その影響でますます某格闘家の様に見えてしまう、筋肉も凄いし。

 

「なら次は僕だね。名前は渚カオル、今回はわかりやすくカヲルで参加登録してるペルソナ使いだよ。後良く聞かれるけど、タブリスじゃないしループもしてないから」

 

 意識的なのか無意識的なのか、某汎用人型決戦兵器の作品群に出てくるキャラによく似た微笑みを浮かべて言うこの男性は、多分掲示板でペルソナ使いと書き込みしていた人物なのだろう、通称は確実にカヲル君かカヲルニキになりそう。

 

「最後は私ですね。名前は……もう元の戸籍は使えないでしょうし、ハンドルの瑞樹を今後名乗る予定です。養護施設からメシア教に出荷されそうになったので、掲示板で相談しようと思った時に神主が建てたスレを見つけた感じですね」

「さて、紹介もそれぞれ終わった事だし、本題。元々この一週間は霊力修行体験で緩くやる予定なんだよね。なので既に覚醒済みの三人だと意味が余りないから、それぞれやりたいこと聞いて個別にって所だけど、どう?」

「そいつはありがたいな、俺は掲示板でも少し書いたが見えるだけじゃなく、メシアン共や悪魔に対処できる攻撃力が欲しいところだ」

「僕はペルソナ関係で相談したいんだけど、神主はその辺も範囲に入ってる?」

「大丈夫、ペルソナも使えるから相談には乗れるよ」

「じゃあ詳しくは後でって事で」

「私は知識と正しい基礎技術の習得ですかね?メガテン系世界って気付くまでは魔法系創作モノ参考に試行錯誤しただけですし」

 

 私達それぞれの希望を聞いた神主が幾つかうなずくと、そこらを飛んでる式神の一体が私に、鬼の姿をした多分式神だろう存在が霊視ニキの元へやってくる。

 

「相談なら先に聞いた方が良いだろうし、霊視ニキの攻撃系技術なら訓練用の場所があるから、そのオンギョウキに案内と技術指導をさせるよ。瑞樹ネキはその式神に書庫へ案内させるから一先ず好きに読んでて」

 

 神主の指示に異論も無いため、カヲルニキはそのまま残り、座敷を出たところで霊視ニキとも別れ、一反木綿式神に案内されるまま書庫とやらに辿り着く。

 式神が開けてくれた扉の先には、書庫と言うより図書館ぐらいの蔵書数はありそうな本棚が並んでおり、どこから手を付けるべきか悩むほどであった。

 

「まずはタイトルの確認からかな、流石に式神に聞いても分からないだろうし」

 

 一応試しにと、室内の入って直ぐのとこで置物になってた式神に最初に読むべき本があるか聞いて見るも、流石にその辺の対応はしてくれない様子なので、諦めて室内を廻っていく。

 草書体で書かれているものや明らかに前提知識が足りていないと分かる本はスルーして、気になるタイトルの本は【コンセントレイト】掛けてその場で軽く速読して概要を把握、基礎関連と思われる内容ならそのまま最初から読み返していく。

 古い書物達の間に時折ある新しめの手書きの冊子は神主が書いたモノだろうか、随分と簡素に要点だけ抜き出した内容だけど、付近にある書物の内容と合わせると、難解な数式に解法となる公式を当てはめた様にするすると意味が入ってくる。

 

「んーなるほど、五行と陰陽の基本的な考えってこうなってたのか、流石に霊力が実際にあるだけ実感が違うな、こうなると前世で陰陽五行の元になった八卦や道教関連の資料が無いか探してみるかな……」

「その前に、時間を気にした方が良いんじゃないかしら?」

「へ?」

 

 読み終わった本を棚に戻し、さて次の本はと手を伸ばそうとしたところで、すっと伸びてきた手に捕まれて没頭していた意識が周囲へと広がっていく。

 そこには茜色を越えて薄暗くなり始めた夕暮れの光が辛うじて差し込む室内で、微妙に怒気を込めた声と微笑み浮かべた美波さんが佇んでいた。

 

「あれ、もうこんな時間です?」

「ええもう夕飯時よ。まさか昼食も取らずに本を読んでた何て思わなかったわ」

「お手数掛けて済みません。求めてた知識が目の前にあると夢中になってしまっていけませんね」

「まあこっちも昼食は修行班毎に別れてたし、瑞樹ちゃん以外の覚醒組も夕食まで戻ってこなかったからあんまり強くは言えないんだけどねぇ。兎も角、今日の修行体験も終わったから夕食食べに行きましょ」

 

 どうやら昼食抜きで没頭していたのは私だけじゃ無く霊視ニキやカヲルニキも同様で、何なら神主は午後からの参加組を迎えに行ってたりで食べ逃したみたいだけど。

 とは言え他の三人と比べたら私は肉体年齢10歳なわけで、確りと食事は取れというのも当たり前の話であるため、そこは素直にうなずいて書庫をでて大広間へと向かうことに。

 広い敷地だけあって多少歩くことになったが、別段私のせいで夕食開始が遅くなったと言うわけでも無いようで、広間に近付くにつれて騒がしい声が聞こえてくる。

 広間に入ると、適当にグループを作っているのか、それぞれ箱膳に用意された食事を持ち寄って、場所によっては酒まで入ってそうな笑い声が聞こえる有様だった。

 

「さ、食事取りに行きましょ」

 

 ここもまた一反木綿式神が配膳してくれる食事をそれぞれ受け取ると、千代さんとちひろさんがいる女性グループの方へと向かう。

 

「あ、やっときたわね。瑞樹ちゃん昼も食べてないんだって?」

「夢中になって本読んでて、美波さんに声かけられるまで時間に気付きませんでしたね……」

「集中して食事を忘れるって良くあるよねぇ」

「向井先輩は良くあっちゃ駄目だと思うんだけど?」

 

 早速と声を掛けてくれた千代さんに続いて話掛けてくれたのは、見た目境○ラの目隠れ癒やし枠な女性で朝の集合時間に聞いたハンドル名は向井さんだったかな。

 それと、向井さんにツッコミを入れたのは某駆逐艦の擬人化に似た容姿の女性で朝潮さん、後一緒に食事を取ってるのが精霊とデートする作品で炎の精霊な少女に似ている五河さんと某ヒーロー漫画の主人公と似ているデクさん、それと彼女たちが所属しているアニメ製作会社の社長でブル○カの某便利屋に似ているアルさん。

 朝に聞いた話だと、アルさんの会社は〝転生者を積極的に雇う〟との方針を持つ転生者による転生者のための会社なのだとか。

 

「普段は図書館とか人の居る所でしか読まないので、一人だと回りが見えなくなる程没頭してしまうとは思わなかったですね。まあ私は本を読んでただけですけど、皆さんの修行体験ってどんなことしました?」

 

 自覚するとお腹が空腹を強く訴えてきたので、早速とばかりに料理へ箸をのばしつつ気になった事を聞いてみると、どうやら初日という事で覚醒とはどういうモノなのかの講義と座禅をしていたらしい。

 

「明日はちょっと派手なことするらしいけどな。ま、俺らの方はそんな感じだったが、書庫にはどんな本があったんだ?」

「神主が陰陽師って言ってただけあって、五行や占星術とか風水関係とかは色々ありましたね。草書体だったり言葉が古くて読み解くのが難しいのもありましたけど、純粋に内容自体が難解なのも多かったですよ。覚醒した後の生体マグネタイト、所謂霊力とか魔力とかを扱う感覚が分かっていること前提の書き方されてる本ばかりでしたし」

 

 美少女な見た目とは裏腹に俺口調な五河さんは私と同じように前世男なTS系転生者だ。

 というかアルさん以外の四人は全員TS系転生者で、今世の性別に馴染めず苦労していた所で転生者掲示板を通してアルさんの会社に就職した経緯があるらしく、自認している性別で扱うという部署内ルールを設けることで何とか折り合いをつけているとのこと。

 今回のオフ会ではアルさんの会社で手の空いてる転生者は社員旅行として来ているとの事だけど、そう言う部署だからという事もあってアルさんが直接グループのまとめをしているそうな。

 

「陰陽術かー、それなら神主の一反木綿みたいな式神を操る術とかもあったり?」

「本はありましたし概要ぐらいは理解出来ましたけど、神主が簡単そうに使ってる一反木綿でも実際はかなり高度な術みたいですよ?霊力で擬似的な魂を作って依り代に括り、それを目的に沿って動かせるようにプログラムみたいな手順を設定してって感じで、後神主が分身してたのも式神を使った影武者を作る術みたいですね」

「あれがねぇ」

「見た目って、やっぱり大事なんだね。分身は凄かったけど」

 

 今も料理の給仕や酒が入って寝転がってる連中の運搬などで動いている一反木綿式神に、感心と残念感とが混ざった視線を向けながらしみじみとうなずくアニメーター組。

 その後も幾つか知れた知識と神主が簡単そうに使っている高等技術の印象が乖離している部分を上げていったが、結論としては凄い技術ならそれ相応の見た目が欲しいよねという意見になるのだった。

 

 

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