【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
それでは、良いお年を。
色々とあったタルタロス攻略は、六十四階の封鎖箇所が解除されているのを確認して一区切りとなった訳だけど、次の封鎖箇所となっていた八十九階付近ともなると、ガイア基準でもレベル40以上がチラホラと出現し始め、ますます魔境じみてきた。
それでまあ、毎回のように封鎖箇所まで先行して確認した後の話だけど、レベル差が縮まってきたとは言え、まだまだ差があるのも事実であり、恋人になったとは言えそれとこれとは分別を付けておこうと言うことで、二人が自力で到達出来る様になるまでは、直接の手助けはしないと言う事に決まったのが、関係が始まってから一週間ぐらいのこと。
具体的にはN案件対策も兼ねて作った装備を渡したのが最初だったのだけど、装備の性能を聞いた辺りで過保護か過ぎると言う話になり、せめて使用素材は自分たちで入手出来る範囲でとの事にもなって、最終的に必要な物を考えたりするのも修行だから、手出し禁止とまで言われてしまい、N案件対策装備以外は倉庫の肥やしになったと言う流れの話。
「そう言うわけで、基本的に私の手を借りないって事で、暇が出来たから来てる訳ですね」
「それは良いんだけど、スケベ部に入り浸ってる理由にはならないのでは?」
悪魔娼館の一角にあるスケベ部の開発工房で、適当に思い付いた玩具を作ったり、用途に合わせたお菓子やハーブティー、後はこの手のジャンルだと外せないお香やアロマと言った関連を軽く研究して、商品ラインナップを増やしたりしているのを不思議に思ったカズフサニキが尋ね回答した訳だけど、まあ最近は拠点で研究して出来上がった商品と、レシピを持ってくる感じだったし納得には遠いよね。
「まあ嘘では無いですが、主目的はカズフサニキ達にこれを渡すために、自然に出会える場所を選んだ結果ですね。性活を充実させると言うサブ目的ももちろんありますけど」
「ん?渡す物があるなら、普通に連絡してくれれば時間作って会いに来ましたが……」
「その辺の理由自体は簡単な話ですし、物の序でというのもありますが、カズフサニキはN案件について知ってます?」
「カヲルニキが担当している邪神案件の事でしたっけ?そう言えば探求ネキのタルタロスも……」
「ペルソナ関係は大なり小なり影響が有りそうって事で、基本N案件ですからね。まあ知ってるなら話が早いですが、あれだけ確りと縁切りしてる訳ですし、普段と異なる動きして邪神に興味もたれるよりは、毎日顔をだして自然に遭遇するのを待つ方が、という感じですね」
「あ、あれ~?もしかして……」
「過去視系統の鍛錬中に偶然ですけどね」
「おおう……、あれはその――」
「どんな思惑かまでは調べませんでしたけど、何かの練習台として役に立ったなら良いんじゃないです?そんな事より悪縁断ち切ったと言っても、N案件みたいに高位悪魔だと完全に防げるか分からないので、拠点設置用対策装備として〝禍払いの御柱*1〟を造ったので適当に使って下さい。取説はこれですね」
「アッハイ」
取り出したのは四本一組の柱、ニャル対策が基本ではあるけど、副次的な効果も含めて結界補助的な形が自然に行けそうだったので、後付けでそれっぽく配置出来る様に伸縮機能も付けてみた。
「えっと、伸縮機能が付いてて、効果がこれで、結界内に設置するだけで効果発揮、と……。これ普通に売り物になるのでは?」
「理論とレシピは製造部の方に送ってますから、費用対効果のバランスが取れる辺りでその内売り出すかと、持ってきた物レベルの素材は、流石に扱える人少ないでしょうし」
「ちなみに素材は何を使用されたので?」
「
「なるほど、それで神殺しの炎と浄火ですか……、かの邪神を考えると必要な保険と思いますが、ただで受け取ると互いに問題が出る代物ですよね」
「事の経緯がどうであれ、私の方の敵対存在による巻き添えの可能性から、事前対処という名目は一応ありますけど、それに加えてちょっとした研究の手伝いをお願いできれば、と言う部分も有りますので、合わせての報酬代わりとでもしておけばやっかみは逸らせるかと」
「カバーストーリーがあるのは助かりますが、研究内容の方を聞いてから考えさせて頂いても?」
「そんな微妙に警戒しなくても、無茶な研究に付き合わせたりはしませんよ。これを元にスキルの習得が可能か、試して貰えないかと言う感じですね」
「神通力概論?」
次ぎに取り出したのは軽く紐綴じした冊子で、中身は表題にも書いた通り神通力に関して、現在までに分かった事をまとめた物。
まあ分かった事と言っても、私が認識する範囲での内容でしかなく、一応習得までの道筋を考えて記載してはいるものの、それで本当に習得出来るかの確証なんてないし、技術書としてまとめるなら最低限、私以外にも習得した実績が欲しいところ。
とは言え神通力みたいなスキルだと、レベルや適正から習得の可能性がある相手自体少ない訳で、何処まで成果があるか不鮮明な研究への協力という意味でも、カズフサニキに依頼する理由はあったりする。
「カズフサニキは覚醒時のスキル内容から見ても、武仙の様な素質が高いと思うんですよね。なので、もしかしたらレベルが低くても神通力を習得出来るかもと思って、丁度良いので依頼しようかと。今のところ筋道立っているのは、私が体得している【圏境】と【神足通】に、その途中で必要になるだろう術式ぐらいで、他の神通力は関連しそうな術式載せて、神通力に対する認識や考え方を大まかに記載したぐらいですけどね」
「えーと、つまり物になるかも分からない技術検証の対価としての
「そうですね。何かしら成果が出れば、その時点で終わりでも良いですけど、成果が無くても最低三ヶ月、可能なら一年は試して貰いたいですね。途中経過とかはレポートを分身にでも渡して貰うか、月に一回か二回程度時間を作って直接確認するかと言った感じでどうです?」
「大枠はそれで、不都合があればその都度見直す感じで良ければ」
「では契約成立ですね。今日のことはジュンニキやスカリエッティニキに話して貰っても大丈夫ですから、何か相談事があれば分身なりメールなりで下さい」
「期待に添えるか分からないですが、やれるだけはやりますよ」
話もまとまったところで握手を交わして御柱と冊子を渡し、時間を作ってくれたカズフサニキに礼を言って席を立つ。
個人的な用事も終わったと言う事で、工房の一角で行っていた研究を区切りの良いところまで終わらせた後、研究成果を美波さんに渡して引き継ぎを行ってから帰宅し、今回新しく研究してみた道具を用意して縁側に腰掛ける。
「肉体年齢とかもあって何となく避けてましたけど、タバコの葉とか、中毒性の高い植物を使わなければ良いだけの話だったんですよね……」
用意した物は〝霊薬香*3〟と名付けられた商品種目の内、煙管での使用を想定して玉型に成形した物で、素材にはガイア連合趣味サークルの一つ、香楽会*4と以前に共同開発した〝乳香樹*5〟の樹脂を使用して、香りと効果を高めてみた一品。
火を付けて一服すると、呼気の霊力と混ざり合って豊潤な香りが全身を駆け巡る様に広がり、吐息と共に煙を吐き出すと、清涼な残り香が余韻の様に漂う。
全身に行き渡った霊薬の効果も発揮され、まるで極上の酒や食事の後のような充足感に、思わず感嘆の声がこぼれ落ちる。
「あぁ……喫煙の趣味はありませんでしたけど、この感じは癖になりそうですねぇ」
「霊薬としての効能がある事を踏まえても、これと煙草を一括りにするのは、どっちに対しても悪いと思うわよ?」
「ふむ?湯乃葉は以前に経験したことがあるのか?」
「これでもクダとしてそれなりに居るもの、と言っても煙草に霊草を調合した儀式用の道具だったし、仕事で余った分を報酬の一部として貰った時ぐらいだけどね。煙草は毒性の刺激を楽しんでる様な物だし、瑞樹で言うならフグ鯨の毒袋みたいな物よ」
「なるほど、スパイス料理と激辛料理を一緒くたにする様な感じですか、それぞれ求めている要素が違うわけですし、確かにどちらにも悪いですね」
直近のことに一先ずの区切りが付いて、新しい趣味も一つ増えた五月は瞬く間に過ぎ、季節も移り変わってそろそろ夏の気配がしてきた頃のこと。
とある理由から、本体での異界探索を控える様に言われた事も有り、普段から便利使いしている分身式神を、もっと使い易く出来ないか研究する傍ら、並行して行っている分身式神による修行場異界での鍛練に送り出していると、ここ最近よく見かける人物と、最近は余り見かけなかった人物が連れ立って歩いている珍しい場面が目に留まる。
「くそみそニキ*6とセツニキ*7が連れだって歩いてるのは珍しいですね」
「おん?ああ探求ネキか、そう言うお前さんの方も一人ってのは珍しいな?」
「俺の方は下層試験でセツニキが試験官ってだけだな」
「私の方は分身式神の技術向上目的で中層巡りに行かせてる感じですね。にしても、下層試験に神主が立ち会わなくても大丈夫ってのは、二人とも流石の熟練と言う事ですかね?」
「さてどうだかな、セツニキは兎も角、俺はそこそこの才能の、しがない能力者なんだがな」
「はんっ、どの口でほざいてやがる」
「神主レベルの占術使える能力者をしがない、何て言える人居ないでしょう。神主も占術のみなら、くそみそニキの方が上になるって言ってましたし」
「へいへい、そんじゃまあつーこって俺らは行くな」
「ああ、引き留めて済みません。適当に応援しておきますね」
「お前さんは、あんま無理すんじゃねーぞ」
居心地悪そうに告げてそそくさと歩み去るくそみそニキと、肩をすくめながら少し含みのある言葉を残して後に続くセツニキに、一言投げ返し合って別れた後、ふと思い出したのは最近頻繁に修行場異界へ潜る様になったくそみそニキのこと。
本人も含めて周囲も態々深掘りしたりはしないけど、地方依頼を巡ってる間に拾ってきた死にかけの男の子を、式神ボディに移植した件*8で、何かあった時の責任は取るって事で決着した話に、説得力を付けてる感じだろうか。
「ああでも、占術の結果、レベル上げが必須になりそうな先が見えたって可能性も有りますか。未来を占う力は神主も舌を巻く程らしいですし……」
元々在野で活動していた霊能力者であり、ガイア連合山梨支部が発足した後も技量の向上はそれなりにしていたみたいだけど、今みたいに修行場異界の奥へ積極的に潜ろうとする程では無かったし、力を付けないと行けない理由でも出来たと考える方が自然に思える話。
そうなると、理由なんて大凡〝終末〟関連に収束する訳で、余りよろしくない未来の可能性でも見えたと言ったところか。
どうにも暗い方向に流れそうになる思考を横に流しながら、その後も各部署に顔を出したり、書庫に新しい本が追加されてないか見に行ったり、別の日には全国各地の支部や大赦に居る娘達の顔を見に行ったりして、次第に悪化していくオカルト界隈の状況や急速に大きくなっていくガイア連合山梨支部の近況を確認し、日々のちょっとした変化と、未だ何とか続いている平穏を噛み締めている内に、気が付けば夏も過ぎ去り秋。
そろそろ十一月にもなろうかと言う頃になれば、察しが良くなくても分かるぐらいには変化が大きくなる訳で……。
「えっ?探求ネキ妊娠してたの?!」
「修行場異界に本体じゃ無く分身送ってる時、カズマニキは結構な頻度で遭遇してましたよね?」
「いやそうだけどさ、女性の腹部を確り観察してるわけ無いだろ」
「体型より霊力の流れとかの変化で気付けそうだけど?」
「カズマさん、そう言う基礎鍛練って余り好きじゃ無いですから……」
秋晴れの空の下、山梨第一支部の食堂棟一階にあるテラス席を千代さんと二人で占有し、食欲の秋と読書の秋を満喫していると、これから食事なのか両手にトレイを持ったカズマニキと、その式神でおっとりお姉さんなウィズが通り掛かり、私の腹部を二度見したカズマニキが驚きの声を上げたのがさっきのこと。
特にこれと意識した訳でも無いけど何となく会話が続いた事も有り、これも何かの縁かと言うことで、相席しつつ最近のことについて情報交換していると、話題として登るのはやっぱり外部からの異界対処依頼の話。
それも近頃は依頼してくる組織側よりも、発生する異界自体の厄介さが上がっていると言うのが、外部依頼を受けることも多い千代さんが語った内容であり、今度初めて外部依頼を受ける事にしたらしいカズマニキの相談に対する回答だった。
「修行場異界のレア素材集めまくって技術部に重宝されてる、レアハンターのカズマニキが外部依頼とは珍しいですね?」
「いやまあ、学生しながらコツコツ潜ってた頃はよかったんですがね、それが日常になるとこう、飽きが来るというか何と言うか……。そんで掲示板で相談したら、依頼序でに旅行するのも良いんじゃないかって話になったわけっす。それと一緒に地方組織の無理解とか、設備的な足り無さとかは言われたんすけど、異界の厄介さってそんなにっすか?」
「妙に似合ってる三下口調にならんでも良いから、まあ厄介さに関してはいくつか理由があるんだけど、まず単純にGP上昇による悪魔のレベル上昇ね。最近だと自然発生でも雑魚でレベル10以上、異界ボスで15から20ってのも普通に見かける様になったわ」
「組織として立ち上げした頃の自然発生だと、ボスでレベル5有れば高い方で、異界として成立するギリギリなんてのもありましたね。まあメシア教が雑な封印したせいで、一時的にGPが下がっていた影響だったみたいですけど」
「雑な封印?」
「封印ってそもそも、攻略出来ない様な異界を、対処可能な範囲まで長い時間掛けて弱らせるのを目的とする術式で、古今東西どの系統でもそこの考えは共通するんですが、メシア教の術式は異界内の悪魔が外へ出ない様に蓋をして、周辺の地脈をメシア教の色に染めるだけで、封印の意味が殆ど無いんですよね」
「確かにメシア教の封印が解けて、大変な事になってる地方って多いわね。地域の伝承とは関係無い天使とか、天使と変な反応したのか関係無い悪魔が居たり、後は霊能組織が潰されて書物を焼かれたせいで、地域の伝承自体が不明になって、どんな経緯で封印された異界なのか、いつから存在する異界なのか不明なパターンもあるわ」
「何つーか、雑な仕事で余計な問題起こしてる感じって事で?」
「そ、このメシア関連で昔から封印されてた異界の情報が断絶してたり、メシア教関連で封印された祭神が荒魂になってたり、と言うのも厄介な点の一つね。後は、悪魔のレベル上昇も関係するんだけど、ボス悪魔の強さが高ければその分異界のギミックも増えたり複雑になったりするから、相性悪いとこっちのレベルが高くても攻略不可能なんて場合も有り得るのよね。だからアドバイスとしては何を置いても異界から脱出する手段を確保しておくこと、そして可能なら周辺地域の伝承を調べることね」
千代さんが言った事は基本的な部分では有るんだけど、最近だと事前調査がされてるからと疎かにして、装備を破損したり消耗品が嵩んだりしてクレーム付ける連中がいるのも事実。
可能な限り情報を持ち帰る事が目的な調査依頼は当然として、攻略依頼であっても実際にその場に行かないと、本当に攻略可能なのか何て判断出来ないし、場合によっては一度調査して正式に依頼が出された後、何かしらの影響で変化してる事も有ったりする訳で、事前調査は参考情報、状況悪化は基本で事前情報通りなら幸運ぐらいなのが実際のところであり、いずれにしても装備なりアイテムなり用意出来る環境で、確実に撤退するための準備を怠る方が悪いと言う話。
地域の伝承に関しても、その土地に発生する異界として、長年語り継がれて積み重なった認識は、影響を受けない可能性の方が低い訳で、そう言った認識を調査するのはまた別の才能が必要なため、必須とは言わないけど郷土資料や大枠の有名所ぐらいは、調べた方が楽になる事が多い。
まあそんなこんなで基本的なことを雑談混じりに話した後、相談の中でカズマニキに頼まれた道具や装備の料金代わりに、所持スキルの【二段の強運*9】や【レアハンター*10】と言った運勢関連スキルを解析させて貰う事が出来たのは、私的に大きな収穫だったかな。
ちなみに、カズマニキの外部依頼について後日聞いた話によると、最初と言う事で小規模な異界の攻略依頼を受けたところ、メシア教に霊地を乗っ取られて封印されてた地元霊能組織の祭神ナキサワメの異界だったらしい。
しかも、メシア教に命乞いしただけ*11なら兎も角、本家を裏切って売り渡した分家が、メシア教徒として居座った事で地元組織は完全に消滅して居る始末。
更には周辺の神社仏閣も軒並み破壊して一緒くたに封印掛けた上に、封印した情報すら破棄してたらしく、元のナキサワメとしての霊基がかなり変質した結果、とりあえず水関係の神格である事しか分からない様な状態で、盛大に泣きじゃくる見た目女の子を討伐出来る程の胆力を持ち合わせて無かったのもあり、あれやこれやと言い合っている内に悪魔交渉が成立して、仲魔になったとの事。
依頼の異界攻略としては、ボス悪魔を仲魔にしたことで異界が崩壊して一応達成となり、仲魔になった悪魔も郷土資料から、昔存在した神社や仏閣がナキサワメや弁才天を奉っていた事から、水神の他に延命や技芸に関する能力を取り戻し、水と回復にちょっとした物理スキルを持つヒーラーが加わる結果となり、傍目には大戦果と言った感じに見られてる。
ただまあカズマニキと仲魔になった
そんなドタバタした日常の一幕を思い返しながら、葦原荘の支部長室で霊薬香を一服していると、日付が変わってからしばらくして駆け込んでくる足音が聞こえてくる。
「たっだいま~!ついに瑞樹に頼らず封鎖解除に成功したよ!」
「お帰りなさい。昨日の満月で対処出来たとの話でしたけど、八十九階の解除が確認出来たんですね」
「ただいま帰りました。九十階以降も、確認した限りではレベル40前後で大きく変わりませんでしたので、問題無く進めそうです」
「綴も確認ありがとう。フロアの形状とかは変わらない感じですか?」
帰還してきた二人と順番にキスを交わし、順調に育っている我が子を慈しむ様に触れる琴音の手に手を重ね、手の温もりから感じる幸せに浸りたい気持ちを抑えながら、支部長の仕事として必要な確認を行っていく。
どうやら出現するシャドウのレベル上昇は緩やかになってきたみたいだけど、出現数は更に増えている様で、ギミックのような搦め手より、シンプルな物量で攻めてくる感じに変化している気がするとの事。
八十九階より前の階層でもその変化は同じだったらしく、どうやら邪神ニャルラトホテプからの干渉を、ほぼ排除する事が出来たと見て良いみたい。
「やっぱり琴音に埋め込まれた鍵から、ニャルへ続く経路を遮断出来たのが大きいみたいですね」
「そのための〝カグツチの御守り*12〟はまあ分かるし、助かってるけどさ。これまでの苦労は何だったのかって気にはなるよねぇ」
「でも邪神の干渉が減ったことで、本来の形なのか、シャドウの数が増えたのは良し悪しな気もします。話に聞く邪神の性質を考えると、まだマシな方向だとは思いますけど」
「どんな形も有り得ますが、基本的に仕掛けた側が面白ければそれで良い、って場合が多い存在ですからね。タルタロスに関しては、一度ニュクスに異界を明け渡した後、鍵を持つ者が攻略する事で陣取りするゲーム、みたいな感覚なのではないか?と言うのが神主やカヲルニキも含めて立てた予想です」
「じゃあニャルの干渉を完全に封じた事で、負けて手を引いたって事?」
「琴音の中に残っている鍵を完全に対処出来ればそうなるかと、現状ではタルタロス自体へのニャルの干渉が無くなって、ニュクスが制御を取り戻しつつあるため、封鎖解除条件や出現するシャドウの傾向などが徐々に変化している、と推測されますね」
「つまり、完全に手詰まりになる寸前のため、身近な関係者の縁を辿られない様に、御守りとかを配っていた訳なんですね」
「邪神が手段を選んでくれる期待なんて、する訳に行かないですから、完璧な対応なんて望むべくもないですが、思い付く限りは対策するべきですからね」
結局のところ、ニャルラトホテプの思惑通りに進む展開から、何とかルートを変更可能になったと言うだけで、ルートが確定された訳では無いし、現状の終着点でもニュクスの対処と言う問題が無くなる訳でも無い。
せいぜい、邪神の思い付きでどう転ぶか不明なため、ルートの先がどうなるか予想も出来ない、と言う状態だけは回避出来そうってぐらいだけど、想定される複数の状況へ対策する手間暇にコストを考えると、対象を絞れるだけでも贅沢な話かな。
「さて、報告は以上で良さそうですね。後は分身式神に任せるとして、夜食にでもしましょうか」
「おー!最近シャドウの数が更に多くなったから、影時間終わりだとお腹空くんだよね~」
「レベルアップや鍛練には良いと思いますけど、疲れるのも確かですよね。今日は何食べましょうか、久しぶりにシンプルな厚切りステーキも良さそうですし、或いは回復力も兼ねてガイアカレーと言うのも……」
「良いね深夜のステーキにカレー!悩むなら両方食べるってのも有りじゃ無い?そのぐらいのエネルギーなら鍛練なりで消費するし」
「それもそうですね、琴音ちゃんはどうします?」
「私も肉!って感じの料理が食べたくなったし、牛丼に温玉乗せて、後は肉まん系をいくつかかな?そろそろ冬だし、瑞樹はどうする?」
「以前作ったコーンブレッドが残ってますし、アーモンドキャベツ*13の千切りと、チーズラビットのメンチカツで軽めにメンチカツサンドでも作ろうかと」
「しれっと食堂で提供してない候補を挙げるのは良くないと思いまーす!て言うかそれってBBコーン使ったパンでしょ?私らの選んだ奴より絶対重いじゃん!」
まあせめて一口ぐらいとか言われるのは予想出来ていたので、ちょっと多めに作って夜食を食べていると、流石に時間が時間だけに一部のガイア連合所属員から注目を集める事になったけど、古参の連中が建体飽食技典片手にそんな新人へ話掛けるのも、ある意味見慣れた巌戸台支部の日常風景と言ったところだろうか。
とりあえず琴音が深夜の掲示板に飯テロするのは、もう一種のコミュニケーションとして諦める事にしたので、体重や体型などを気にするなら各支部の書庫に一冊は建体飽食技典を置いてるので、【食没】や【魂魄精錬法】の習得を頑張って欲しい。
後、実食した料理については各支部の食堂か、農業部や畜産部なり購買部経由で食材を購入して、各自で何とかして欲しいところですし、出前とかは受け付けてないので、料理を注文されても対応しないから、掲示板で怨嗟の声を上げるのは止めてくれないですかね……。
それと、琴音はそれ見て爆笑するのは止めなさい。
穢れも序でに祓われるため、拠点内の霊地や聖域としての強度を高める効果も付随している。
効果時間と範囲の大きい設置型と、手軽に使用出来る煙草型があり、更に煙草型は紙巻きと煙管用がある。
煙草型の方は、一度吸い込んだ香に呼気の霊力を混ぜ合わせる事で、霊薬の効果を高めて自身や他者に効果を与える事も可能。
そのまま乳香として使用するだけでも、元にした品種相応の薫香と霊的効果を発揮するが、霊薬香の材料として樹脂を使用する事で、霊薬の効果を高めると同時に、完成品の効果が高いほど香り立つ上質なお香になる。
なお、稀少だからと言って良いモノとは限らない模様。悪運や奇運に類する独自設定スキル。
悪縁を絶ち、干渉を撥ね除ける目的から、副効果として全状態異常無効、火炎と破魔属性を二割増強する性能を持つ。
なお、ハム子ネキこと琴音が持つ物以外は、素材も妥協している点が有るため、邪神対策は一段落ちる。
酒のつまみやサラダのアクセントとしては最適だが、高カロリーな食材である事には注意が必要。
と言うわけで、空白期間で書きたいこともある程度終わったので、それなりに時間を飛ばすのも兼ねて子作りしました。
分身式神と言う名の分霊派遣で、少しずつですがレベル上げは継続しますが、タルタロスの方はしばらくお休みです。
カズフサニキに関しては、原作様や他三次での活躍を見て、これぐらいは使えるんじゃ?と思ったので、この世界線では後々、【圏境】と【神足通】は最低限使えて、他の神通力も使えるかもしれないぐらいには強くなる想定してます。