【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
また週一更新に戻るので、次は七日の予定。
何か起きるかと警戒されていた1999年は、少なくとも日本国内では致命的な波乱も無く過ぎ去ろうとしているものの、国外では中東アジアアフリカ系神話勢力が多神連合とか呼ばれる様になる程度には連携し始め、表側も巻き込んでのメシア教との本格的な衝突が起きるのでは?と噂が流れるぐらいに雲行きが怪しくなってきた中、世間ではクリスマスシーズンで賑わっている頃。
ガイア連合山梨支部と言うか黒札連中においては、主にメシア教の影響でクリスマス嫌い*1も多いことから、日本人らしく冬至の祭りを適当に混ぜて祝えば良いかと言うことで、大部分は結構適当に要素を摘まみ食いして祝うのがここ数年行われている風物詩。
まあ古式ゆかしい祭事をやりたい人達で行っていたり、クリスマスも気にせず祝うのもいたりで、別段禁止も強要もされてはいないため、個人個人で好き勝手に騒いでいるだけとも言える話。
ちなみに、こう言う祭事を切っ掛けに覚醒したりスキルを獲得したり何てことも有り、古今東西の祭りを実施するお祭り野郎共もそれなりに居るわけで、去年の夏祭りを実施した辺りから、正式に祭事部が発足してたりもする。
そんな祭事部が開催している年末の冬至祭りに、恋人三人で遊びに行こうかと思ったのだけど、妊娠中に人混みの中へ行くのもどうなのかと言われれば、まあ反論するほどの理由も対して無い訳で、結局は冬至らしい料理を用意して軽く祝うことに。
「おお豚とカボチャ尽くし!」
「日本だとカボチャですが、北欧の方だとビールや豚を捧げた後頂くらしいので、豚肉メインで色々造ってみました。後はデザート枠ですけど、マシュマロカボチャ*2も間に合ったので、こっちは生のままと焼いたのをそれぞれ用意してますから、楽しみにしてて下さい」
「北欧の方って事はユールでしたっけ?日本だとお盆みたいに祖先の霊が還ってくる期間だとか……」
「祖先の霊とかは、近くに墓地がある環境でも無ければ、そこまで気にする必要がある物でも無いですけどね」
「そう言った細かい話は後にして、冷めない内に食べようよ!」
「それもそうですね、それじゃ――」
『頂きます!』
テーブルの上に所狭しと料理を載せて、仲魔も含めた六人で食卓を囲む。
豚の角煮やチャーシューなどの各種豚肉を使ったピザに、ベーコンとカボチャのキッシュと言った物から、炒飯や回鍋肉に青椒肉絲、豚とカボチャの煮物や豚まんにメンチカツなど、種々様々な料理の後は、デザートにカボチャ餡を使った餡まんやカボチャとチーズのタルト、どら焼きや羊羹など、中にはマシュマロカボチャの食感を感じられる様に混ぜ込んだ物も含め、思い付く端から作ったお菓子達も余すこと無く消えていく。
特にマシュマロカボチャの絶妙なもちもち感と甘さが好評だった様で、以降も時折リクエストされる様になったりもしたが、そんな冬の一幕が終われば年末年始も直ぐ其処。
綴もガイア連合に所属する金札として一人前に収入が有るとは言え、両親も健在な学生身分と言う事も有り、年末年始は両親と過ごすとの話で巌戸台支部を離れ、私や琴音も影時間以外の時は例年通り山梨第一支部や星霊神社で年越しを迎える事に。
まあ例年通りと言っても妊娠中という明確な変化もあって、いつもの様に御来光登山マラソンへ参加するのも憚られるため、今回は先に頂上へ移動し到着した参加者の休憩所などを用意する側へと回る。
「そっちの机に甘酒とか温かい飲み物用意してますから、お好きにどうぞ~」
「おう、それは良いが、ちったぁおとなしくしてろよ妊婦。何で普通に富士山頂で寛いでんだ」
「転移するなら散歩と変わらないですし、登山は出来なくても御来光ぐらいは山頂から拝みたいですからね」
「兄さんの口が悪いのはいつもの事だけど、探求ネキも相変わらずだよね。あ、この甘酒美味しい」
「ガイア酒造の一部が、使用する米の種類などを趣味で研究した成果ですね。ガイアカレー程じゃないですが、霊力の自然回復効果も有りますので、地方遠征する人達にも人気だそうですよ」
「なるほど、確かに良い味してる。今度色々試してみっかねぇ」
そんな感じに続々と山頂へ到着する参加者と、軽口を叩きながら御来光を拝んで年を新たにした2000年。
前世では2000年問題等と言われた物も一般社会では取り沙汰されていたけど、少なくともガイアグループ内では統合時のシステム統一作業で予め対策していた事も有り、表側として大過なく業績を伸ばし続けている様子。
裏側と言うか本体であるガイア連合山梨支部でも、1999年に続いて警戒するべき年と言う事で、多神連合などの国外情勢も含めて監視の目を増やしつつ、終末を乗り越えた先の準備に奔走している感じだろうか。
私も年明けの挨拶回りをしつつ、娘達の居る大赦や香川支部に梃入れしたり、支部長として巌戸台支部の結界などを増強したり、拠点の島を色々改造したりと、備えをして回っていればまあまあ時間も掛かる物で、そろそろ出産予定日が近付いてきた事も有って、おとなしくしていろと山梨第一支部の医療部へと連行されたのだった。
「こうして医療部棟の周辺に括り付けられてると、分身式神の有り難みをより感じますね」
「そう言いつつ書庫とか
「初期の悪阻とかも気にするほどの変調は無かったですし、体力的な物も確かに問題無いですね。美波さんも興味有る感じです?」
「無いと言ったら嘘になるけど、当分はいいかなってところ。これは、と思う相手が居るわけじゃ無いし、子供産むならその辺は確りとしたいでしょ?私達的に」
「私の生まれ的に多少気を遣われてるのは分かりますが、それを置いても家族関連で地雷になってる人って多いですからねぇ。私自身としてはペルソナ能力に覚醒した時の対話で、ある程度区切り付けたんですけどね」
「他の人は兎も角、瑞樹ちゃんの場合は家族問題と言うより、トラウマと性癖の問題だった気がするんだけど?……実際琴音ちゃんが瑞樹ちゃんと恋人になってから、マーラ様のペルソナ生えてきたって相談受けたし」
「なるほど、道理で益荒男ぶりが以前より増してる訳ですね。安定期に入ってから愛し合った時も、それはそれは雄々しくて――」
「ちょっと!私が来たのに気付いたからって話題に巻き込まなくても良くない?!」
病室扱いされている医療部棟の一室でお茶して居るところに、学校終わりの琴音がやってくる気配を察知して、話の流れに琴音を巻き込んで行くのは、流石美波さんと言ったところか。
「何か自分は関係無いみたいにしてるけど、瑞樹も共犯でしょ!ノータイムで話題に乗っかってたじゃん」
「美波さんとの猥談なんていつもの事ですし、黒札の八割は色々お世話になってるんですから、今更では?」
「くっ、それでも部屋の前に来た途端に弄られたら気にもなるよ。態と聞こえる様にしてたみたいだしね」
琴音がじとっとした視線を向けてくるが、私的にはそんな姿も可愛く思えるだけだし、美波さんもそよ風の様に受け流しながらお茶へ手を伸ばしてる辺り、貫禄の違いを感じさせる。
効果が無いことに膨れながらも、ベッドの近くへ椅子を持ってきて座る琴音にお茶を用意して、追加のお菓子を取り出す。
「今回は春らしく、桜餅や桜餡を使ったどら焼きなど、和菓子を中心にしてます。お茶は甘葛茶ですね」
「普通にお菓子の話でも良さそうなのに、何でまた猥談なんてしてるの……」
「元々は妊娠期間中の感想だとか話してたわよ?まあいつも通り猥談方向へ流れ始めたところで、琴音ちゃんが来たから共通の話題を出しただけだし、ん~桜餡の仄かな塩気と色味がいい感じね」
「美波さん相手だとそっちに流れやすいのは分かるけどねぇ。で、瑞樹が妊娠してからの話だっけ、私としては子供産みたいと言われた時、何言ってんだろって一瞬思ったりしたかな~」
「思い切り何言ってんのって、素で返してきましたよね。理由を話して納得して貰えたから、今があるんですけど」
「あ、やっぱり勢い的なのじゃ無くて、確り家族計画してたのね。瑞樹ちゃんだしそう言うプレイしたくなったからってのも考えてたわ」
「安定期に入ってから、無理の無い範囲で楽しみはしましたけどね。まあ下事情は置いといて、子供という意味なら香川に娘達は居ますけど、私自身が産む事を考えると、昨今の状況的に時間的な余裕が減ってる感じでしたし、好きな人の子を産むのって、幸せの一つの形でしょう?実際、今とても幸せですから」
「あ、あぅ……」
「ふふ、琴音ちゃん真っ赤ねぇ。ま、前世含めた年齢考えずに見ると、若気の至りによる暴走とか言われる奴よね。
「成長期で一気に伸びて、外見的には成人と対して変わらなくなりましたしねぇ。おかげで初見と内情知っての二度吃驚される事も増えましたけど」
「んんっ、黙って居れば見た目竜吉公主なクール系美女だもんね。なお中身」
真っ直ぐ好意を向けられる事に未だ慣れないみたいだけど、最近では気持ちを立て直すのも幾分早くなった様で、一呼吸置いて咳払い一つもしたら、普通に会話へ復帰出来るぐらいにはなったらしい。
ちょっとした意趣返し程度に言葉の棘を刺してくるけど、意識の殆どがお菓子の方に向いている辺り、ただのポーズと言うのが良く分かる。
「能力的に見た目と関連する部分が無いわけじゃないけど、中身は前世一般人メンタルが殆どだし、見た目で判断するのは新人の証拠よね。そう言えば、瑞樹ちゃんの見た目でマウント取ろうとして、TS魔人ニキネキにも情弱乙された新人がいたわね」
「ああ居ましたね、一時期コテハンが〝情報弱者*3〟になった情弱ニキ。私が妊娠してるってだけで、何故か未覚醒者と思い込んであれこれ言ってましたけど、同じ席に座ってた人達は未覚醒でしたが青い顔してた辺り、気付いてたんでしょうね」
「覚醒した後、気分が大きくなって~ってやつ?結構そう言う失敗談聞くよね。大体は修行場異界でミスして心折れて、式神だけ修行場異界に向かわせる遠征勢になってるけど」
「掲示板とかだと色々と言われてますけど、式神を修行場異界に遠征させてるなら神主の想定通り*4なので、実のところその人達自体に問題は無いんですよね。浅層の下位素材もアイテムの大量生産で使いますから、いくらあっても困らないですし」
「まあ掲示板であれこれ言ってるのって基本的に地方の覚醒組だものね。私も下層試験クリアした後ショタおじとかに教えられたけど、修羅勢も上位陣から軽くは説明されてるみたいで、遠征組の印象はそこまで悪くないのよね。事務方やガイアニみたいな娯楽発信系なら覚醒未覚醒問わずありがたがってるし」
「その辺の意識の違いってのもあるよね。そういや娯楽系で思い出したんだけど、ガイアグループの娯楽部門また大きくなるんだっけ?」
「アル部長*5とは別のアニメ会社でも転生者らしき人物がいるって事で、調査した結果事実と判明して、ガイアグループに吸収する形になったみたいですね。その会社の方も資金繰りが若干怪しい感じだったみたいですし、割とスムーズに話が進んだとか」
ちなみに転生者疑惑が出たのは、その会社がマクロスとかロボット関連のアニメを制作していたからと言う話で、今世では原作者が確認されていない作品と言うのも判断ポイントになっているらしい。
そんな訳でガイアアニメーションに吸収合併して、SF部門とファンタジー部門とかジャンル分けした専門制作チームを作ったり、複合ジャンルを制作する時に連携したりする感じで組織展開していく予定とのこと。
「確かアニメ会社合併って事で、部門毎に新作の企画とか上がって話題になってますよね」
「マクロス7まで放映してたし、次はフロンティアじゃないかって言われてるよね。シェリルネキ*6も居るし、オファーしてるって話は掲示板でも流れてたけど、どうなるんだろ」
「シェリルネキの事だし、⑨ニキ辺り巻き込んで何かやりそうな気もするわね。まあそれはその時を楽しみにしておきましょ。他も推しの娯楽には資金回してるみたいだし、おかげで娯楽部門って資金面だけならグループでもトップクラスなのよね」
「資金を何処に回すかと言うのも黒札それぞれですからねぇ。銀時ニキ達みたいに腰を据える事にした地方のシェルターや設備に使う人とか、旅行や食べ歩きに多少費用が嵩むスポーツに嵌まった人も居ますし」
「娯楽だと実況系も最近は増えたよね。生放送してると、時々ショタおじが投げ銭してきてザワつく事も有るけど」
「神主から聞いた前世から続く生い立ちを思うと、生放送見たり出来る程度には余裕を持てる様になったなら、喜ばしい話ですねぇ。何か霊格が高くなりすぎて人間性がかなり薄れているみたいですし、娯楽が取り戻す足がかりになれば良いんですが」
「ネコマタの美玖もその辺は嘆いてるわよね。生物本能的な物も薄れてるせいか誘惑しても反応が薄いとか、私達と馬鹿やったりする間に多少は取り戻してきてるらしいけど」
「〝ショタおじは人の心が無い〟何て掲示板でネタにされてるけど、ある意味でマジな話なんだね……」
「神主自身はかなり過保護ですけど、理解はしても共感力が低いところはありますよね。その点でいくと、ゆかりネキの要望で緩修行を作ったのも、下限を知る意味で意義があったのかもしれませんね」
「そうやって意識の擦り合わせとかして、感情が回復して行けば、肉体的な衝動とかも取り戻せるんじゃないかってのが、美玖やオンギョウキの思惑でも有るみたいよね。妊娠中の瑞樹ちゃん見ても、近所の子が生まれるのを喜ぶ爺さんみたいな雰囲気で、性欲的な反応が欠片も無かったと嘆いていたし」
「いや、妊婦を見て性欲出てくる方が駄目では?美玖さん的には神主とエロいことしたいだけでしょうし、私は刺激の一つにでもなれば程度でしょう。まあ今世でも〝俺ら〟関連なのかバブみのジャンルが既に出来てたり、母属性とかも普通に有りはしますけど……」
「あ、バブみと言えば、最近新たな扉が開けたのか、
「それって私だけの影響ですかね?まあ、お試しから沼に嵌まった人も居るとは思いますが」
「ん~、でもまあ甘えたり包まれたいって思うのは分かるかな。私もこうしてるとすっごく落ち着くし」
そう言って私の胸元に顔を埋めて頬ずりする琴音を撫でていると、抗議する様にお腹の赤ちゃんが蹴ってきた事に、思わず笑みが浮かぶ。
「ふふっ、元気に動いて、琴音に嫉妬してるみたいですよ?」
「ホントだ、凄く元気だね。この場合、私はパパになるのかな」
「何だか、すっごく甘い空気してるわねぇ。出産予定日はもうすぐだっけ」
「占術も含めて調べた限りだと、次の金曜日辺りになりそうですね」
「そこなら翌日学校休みで出産に立ち会えそうだし、私としてもいい感じなんだけどね~」
「まあ予定日とズレる何て話は良く聞くけど、占術もしたなら大きくズレたりもしないでしょ。それじゃ思ったより長居しちゃったけど、これ以上お邪魔虫するのも悪いから、私は帰るわね。お茶とお菓子ご馳走様、美味しかったわよ」
思えばだいぶ長く話し込んでいた様で、美波さんが帰る頃には室内を照らす日差しも茜色に色付き始めており、少しだけ二人きりの時間を楽しんで夕食も終われば、影時間のこともあって琴音も巌戸台支部へと戻っていく。
それから数日、学校帰りにやってくると話をしたり、普段より増やした分身式神からの情報統合で処理能力の鍛練をしたりしている内に、予定通りその時がやってくる。
「神主の厳しい方の修行で焼けた鉄の棒を突っ込んだり、カグツチの触媒作成で産み落としたりもしましたけど、苦痛の種類も感覚もだいぶ変わるものですね。正に産みの苦しみとはよく言ったものですよ」
「陣痛の間隔もだいぶ短くなって辛いはずの段階なのに、ここまで平然としてる辺り実に探求ネキらしい話だね。とりあえず分娩室の準備は出来てるし、補助は式神達がするから安心すると良い」
「私は特に気にしないですが、琴音は気にするでしょうし、ありがとうございますフェイスレスニキ。陣痛来たところでメールしておきましたし、その内来たら通して貰っていいですか?」
「了解した。まあ探求ネキなら万一も無いだろうし、出産後の検診はするから連絡入れてくれ」
必要な機材を運び込んだ医療部棟の一室で、いくつか確認を終えてフェイスレスニキが出て行った後、医療部付きの女性型式神に補助して貰いながら出産の準備に取りかかる。
まあ準備と言っても邪魔にならない服装へ着替えたりするぐらいで、基本的には身体が出産の状態へ移行するのを待ちながら痛みに耐える時間な訳だけど、そんな時間がいくらか過ぎた頃、部屋の扉をノックする音が響く。
「瑞樹~、連絡貰ったから急いで来たけど、どう?」
「まだ時間掛かりそうですけど、順調ですよ」
「そっか、間に合ったみたいで良かった。痛みとかは大丈夫?」
「大概の苦痛は経験してきてますから、大丈夫ですよ。さ、手でも握って落ち着きましょう」
「……普通逆じゃない?まぁ私がオロオロしてたら気が散っちゃうか」
駆けつけてきた琴音と手を繋ぎ、互いの体温を感じ合う様に身を寄せ静かに時を待つ。
繰り返す痛みと触れ合う温もりと、互いの息づかいを感じながら、新たな命が生まれようとする輝きを見つめる。
そして――
「おぎゃぁ!おぎゃぁぁ!!」
補助に付いた式神達によって取り上げられた新たな命が、産声を上げる。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
「うん、やっと会えたね。初めまして、私達の新しい家族……」
小さな、だけど確かな命の重みを抱え、知れず視界が滲み感情が溢れ出す。
それは私だけでは無く琴音も同じ様で、触れ合う頬に、我が子を抱く腕に暖かな雫が落ちるたびに、幸せが溢れてくる。
命を産み落とすと言う事、それはきっとその命が見て感じ取る新たな〝世界〟が生まれるという事なのだろう。
だからこそ、これもまた一つの答え。
「瑞樹の、ペルソナ……?」
「私の中で〝子を生す〟と言う事に、実感としての結論が出たと言うことでしょう。生まれから女としての私が、我が子に祝福と愛情を抱けるのか、そう言った恐れが無意識のうちに淀みを作っていたのかもしれませんね」
「そっか、瑞樹の中で大きな問題の答えがでたんだね」
私の心が殻を破り溢れ出した様な感覚と共に、ペルソナ【女教皇 スクナヒコナ】が浮かび上がり、大きな弓を持つ中性的な姿へと変化する。
【世界 タカミムスビ*7】、それが変化した私のペルソナみたいだけど、詳しく調べるのは後にして、まずはこの子に初乳を与えるのと、診察からだろうか。
「それで、この子の名前は候補に挙げてたので決定?」
「実際に見て両性具有と確認出来ましたし、私と琴音さんから一文字ずつ取って
「瑞琴……か、良いんじゃない?男の子でも女の子でも違和感無いし」
「瑞琴の生きる未来が少しでも過ごし易くなる様に、準備も対処も進めていかないと行けませんね」
「でも無理せず余裕を持って、でしょ?ぶっちゃけ傍から見ると、瑞樹ってずっと無茶し続けてる様にしか見えないけどね~」
「私的にはそうでも無いんですけどね。やりたいことを好きにやって、こうして我が子にも恵まれて、充実した毎日を過ごしてるだけなんですが……」
こうして私の第一子出産という大きな出来事は恙なく過ぎ去り、【ディア】なり霊薬なりで体調も元通りとなって、タルタロスの攻略へと復帰する事になる。
さて、報告は受けているけど、ほぼ一年潜っていないタルタロスは今どうなっていることやら。
そのまま生で食べても、高級スイーツ店で売られているカボチャのスイーツに引けを取らない美味しさで、皮ごと食べられる。