【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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041:変化の良し悪し

 見慣れた通路で始めに遭遇したのは五体の影、レベル差もあって苦も無く打ち倒した時には十の影が通路の奥に見え、それも倒して十字路に入れば前に十体、左右から五体ずつに通ってきた背後から三体溢れ出す。

 一撃一殺は基本で、ノックバックさせながら複数処理し続ける事が出来なければ先へ進むことすらおぼつかない、そんな地獄(インフェルノ)がタルタロスに広がっていた……。

 

「いやー、報告は聞いていましたが、実際に体感すると難易度EDFと言いたくなる琴音の気持ちも分かりますねぇ」

「そう言う瑞樹は対多数戦闘能力がやっぱり高いよね。それより気になるのは妊娠してたはずなのに、前よりレベル高くなってることなんだけど?」

「前聞いた時はレベル50前半でしたよね?私も琴音ちゃんもレベル55になって追い抜けたのではって話してたんですが」

「妊娠中は分身式神の数を増やして異界での修行も増やしましたからねぇ。頼まれてF.O.E役もしてましたし」

「何それ、私そんな話聞いてないんだけど……?」

 

 分身式神を使った分霊派遣方式鍛練もあって、地味にレベル60を突破して強化された〝魔弾の旋律*1〟を、自然回復が間に合う範囲で奏でながら、各々範囲攻撃を繰り返して湧き続けるシャドウを処理したり、【サイ】による念動でドロップアイテムを回収しながら雑談しつつタルタロスを進んでいると、琴音から問い詰める様な視線が向けられる。

 まあやっていた事としては、分霊としての役割も持つ分身式神が修行場異界で得たマグネタイトを回収したり、各種鍛練や高度なアイテム作成などで霊格を向上させていたと言う事と、中層以降を探索する修羅勢にとってはある種慣例となっている〝アイサツ〟の対象として、徘徊する役を務めていたと言う話。

 

「琴音も修行場異界の中層試験突破してるなら、中層以降で行われてる〝アイサツ*2〟の事は知ってますよね?」

「【ドッペルゲンガー】対策でやってる奴でしょ?……ってまさか」

「元々【アナライズ】のスキルを習得して使い熟しているなら見破るのも出来ますけど、道具だと見破れない場合も多いですし、幻惑系ギミックなどで騙し討ちも有りますからね。最近道具に頼ってその辺の地力向上を疎かにしてる中層探索者が増えてきてるって話しだったので、古参と神主の思い付きから、余裕のある修羅勢が趣味でF.O.Eとして対人戦闘仕掛けてまして、私も久遠達と下層探索する分身式神以外を何体か回してた感じですね」

「下層の方でも遭遇した際は普通に一当てぐらいしていたが、基本的に確殺狙いなのも感覚が研ぎ澄まされる様で、奇襲への対処としても良い鍛練になったものだ」

 

 ちなみにこのF.O.E役は事務局経由の正式な依頼で、各種依頼窓口や修行場異界の入り口などで注意書きも実施理由も掲示されている、ある種中層以降での新ギミック扱いなのだけど、順調にレベルを上げてる者ほど見落として転がされる傾向に有る辺り、ゴーサイン出しただけの効果はあったらしい。

 序でに本気で死合いする事も可能である事から、実施後しばらくしてからは、むしろ限界まで挑む感じの修羅勢に成長して、分身式神*3を通しての死合いによる経験が馬鹿にならない程度に増加する嬉しい結果になったりもしたけど、修羅勢の増加については置いておこう。

 

「タルタロスの物量も大概酷い物だと思ってましたけど、連合の修行場も凄い環境なんですね……」

「凄い環境な事は否定出来ないけど、より混沌とした場所に変える連中が居る影響も大きいと思うわよ?」

「異界は何処も大小あれ大変な物と思うでありますが、影時間も半分を過ぎたであります。今回の予定は様子見との事でありますが、どうするでありますか?」

「私としては瑞樹の錆落としでも必要かな~とか思ってたんだけど、そんな気配全くないどころか、前より更に強くなってるし、このまま次のターミナル目指して行けるとこまで行く、でいいかと思うんだけど」

「本体での本格戦闘は確かに久しぶりですけど、昼に修行場異界で慣らしもしましたし、問題ありませんよ」

「オッケー、それじゃ目標は次のターミナルって事で!」

 

 琴音の声に合わせて探索速度を多少上げてタルタロス内を進んで行く。

 現在探索してる場所は百十九階、去年八十九階の封鎖箇所を突破してから、最近ようやく百十四階の封鎖箇所を突破出来たばかりと言った状況。

 どうやら〝カグツチの御守り〟でニャルの影響を排除出来た事により、ギミック的な面倒さが無くなった代わりに、純粋にシャドウの質と量が増加することになった様で、今居る階層だとレベル50~55ぐらいのシャドウが、影時間の間常に波状攻撃してくる環境と化している。

 そんな訳で、いちいち【アナライズ】して戦う何て余裕が無い程にシャドウが押し寄せてくるため、基本的な戦術は【浸透勁】を乗せた物理か、万能属性の範囲攻撃を一人が一当てして数を減らし、残敵を残りの二人で処理すると言うローテーションが、ここ最近の探索パターンとの事。

 その関係もあって、ここ一年で琴音と綴にアイギスのレベルはぐっと上昇したみたいだけど、その代わり異界のギミックと言った、戦闘とは少し異なる対応力が求められる部分は苦手らしい。

 今回は私が低消費の万能属性魔法弾で全体に一撃入れているため、範囲攻撃の準備や消費の管理に労力を割かなくていいから楽との事で、ターミナルがあると予想される階層に到達した時には、時間に多少の余裕が有る程度には順調に進めていた。

 

「おっし、百二十二階!この分なら大型シャドウ倒してターミナルの開通まで行けそうだね」

「これまでの状況と報告的に、大型シャドウの配置階層と行き来可能なターミナルの設置階層は、P3と同じでしたからね。とは言え、どうやら少し様子が異なるみたいですね」

「大型シャドウがいる階層の構造っていつも同じだったはず……。でも見た限り、他のランダムな階層と変わらない感じがします」

「へ?……マジっぽいね。大型シャドウとターミナルが有る階層なら、今までだと雑魚シャドウは出てこなかったし、何かこれまでと状況が変わった感じがする」

「細かく考えるのは後にして、今は少しでも多く情報を集めて脱出する事にしましょうか」

 

 百二十二階への階段を上り、階層の構造が想定していた物と違う事に思考を巡らせている内に、早速シャドウが姿を現した事で話を切り上げ迎撃へと移る。

 シャドウを倒しながら進む間に確認したところ、構造としては他の階層と同じく迷路となって居るが、シャドウのレベルは大体57~60の間ぐらいと少し帯域が上がっており、階層の広さ自体も多少広くなっていて、地味にだけども確かな変化が見て取れる。

 結局今回は、百二十二階を探索して百二十三階への階段を見つけたところで時間切れとなり、ターミナルを発見する事が出来ずに探索終了し、巌戸台支部へ帰還する事になった。

 

「ふぃ~、お疲れって事で、探索終わりの一杯は格別だね!」

「そう言いつつ今日はコーラですか、琴音が飲んでも大丈夫なお酒が欲しいなら用意しますから、言って下さいね?」

「こう気軽に神酒を出してくる辺り、瑞樹さんが黒札の幹部クラスと言われるのが良く分かりますよね……。恩恵受けてる身としては余りどうこう言えないですが」

「黒札や幹部云々より、瑞樹の場合は自分で作ってるからってところが大きいと思うよ?」

「まあ老舗の漬物屋が、自家用に作った漬物をお裾分けしてる様なものですからねぇ。売り物に出来る代物でも、それ目的で費用などを計上してなければ道楽の一種ですし」

「そう言うものですか」

「そう言う事って訳で、タルタロスの方に話を移すんだけど、これまでとパターンが変わったのってやっぱり〝カグツチの御守り〟の影響?」

 

 軽い雑談も一区切りして、話はタルタロスの攻略に関する確認と考察へと移っていく。

 まずは前回の封鎖箇所までと今回到達した百二十二階までの情報を、ターミナル毎や封鎖箇所毎に並べ確認していく。

 

「こうして改めて確認すると、各階層毎の広さがほぼ変わらないと言うのは不自然に感じるべきでしたね」

「予想通りならそう言うゲームっぽさもニャルの影響だっけ、私に埋め込まれた鍵を起点にしていたとすると、ターミナルはニャル側が領域侵食の中継点と言うか楔にでもしてた感じ?」

「そうなると、封鎖箇所に行き当たる度に少し先をその邪神が侵食して、自身の領域にしていたと言う事でしょうか」

「可能性としてはそれが高そうに思えますね。タルタロスの最深部手前までに鍵の対処が出来なかった場合、ニャルが異界を乗っ取ってボスに成り代わるなり、何か予想も付かない事をしてきたでしょうし、対処されてもそこまでのギミックに四苦八苦する様子を観測して楽しむ、と言った感じですかねぇ」

 

 もしかしたら、鍵に対処してニャルの影響を排除したのを条件として発動する仕掛け、なんてのが仕込まれていた可能性もあるだろうか。

 元々ニャルの影響下に有っただろう状況でも、シャドウの出現数は〝マヨナカテレビ〟や〝メメントス〟より多かった訳だけど、鍵からの影響を遮断する前の六十四階までと、途中で遮断することになった八十九階まで、そして遮断した後に封鎖箇所を突破することになった百十四階までの探索記録を比べると、遮断前は初期レベルは高いけど出現数が一定でレベルの上昇幅も少なく、遮断してからは数も上昇幅も少しずつ増え、遮断してから二つ目の封鎖箇所を超えた途端に、レベルの下限が前の階層までの最大から二つ上がっていたり、階層が広がるなどの変化が起きたと言う状況。

 この世界のタルタロスとして本来の形に戻っただけとも思えるけど、鍵からの影響を遮断した事で攻略に難航する状況を作る事で、疑心暗鬼なりを発生させ、仲間割れを引き起こす様を眺める、何て思惑をしていてもニャルなら有り得そうと言うのが頭の痛い話。

 

「うぅ……、考えれば考えるほど、どつぼに嵌まりそう。とりあえず、〝カグツチの御守り〟を外す選択肢は無い訳だし、これまで通り攻略出来る様になれば問題は無いって事で、どうすればいいかって方を考えよう!」

「琴音が言う様に、邪神の企みを見抜こうとする方が間違いかもですね」

「そうなると百十五階以降の攻略に必要な物って事ですけど、やっぱりターミナルの代わりになる物ですか?」

「まあ問題点はそこだよね。それ以外だと百二十二階でシャドウのレベル帯が一段上がった感じがするけど、あれだけ倒しても対してレベルアップしなかった事かな~。もしこれ以上シャドウのレベルが上がっていって、数も増えるとなると対処しながら進む事も出来なくなりそうだし、タルタロスとは直接関係無い話だけどさ」

「そう言えば私も、最近レベルの上昇が鈍くなってきた気がしますね。まあレベル50何て両親に言ったら吃驚されるぐらいじゃすまない程高い訳ですけど」

「そうなると、まずはターミナルを解析して中継点を作る方法を考えるところからですね。こっちは解析してからとして、レベルの方はシャドウが相手ですから、ある意味仕方ない事ですよね。琴音なら兎も角流石に綴は修行場異界に連れて行く事も出来ませんし」

「ん?何か瑞樹は理由分かってるみたいだけど、どゆこと?」

「あれ?シャドウと悪魔の性質の違いとか、霊能者とペルソナ使いの違いとかの話ってしてませんでしたっけ?」

「性質の違いってのは、人の集合的無意識から発生するのがシャドウで、マグネタイトで構成されている情報生命体みたいな存在が悪魔でしたよね。霊能者とペルソナ使いって、ペルソナを使えるかどうかの違いってだけじゃ無いんです?」

「ペルソナは分類的に降霊術の一種なので、霊能力の括りで間違いは無いんですが、降霊術の基本が自身に憑依させるのに対し、ペルソナ使いは纏う様に覆う感じでしょうか」

 

 具体的に言うと、ペルソナ使いがペルソナを顕現させる場合、自身を媒介に精神が形作るペルソナを上から被せることで、精神の鎧としてペルソナが前面に押し出されるため、ペルソナが強くなればその分戦闘力も上がっていくが、霊能力の降霊術としてペルソナを憑依させた場合、ペルソナの力を行使するのは霊能力者の肉体を通してとなるため、肉体の強さが足りなければ、ペルソナが強くても十全に力を発揮させる事が出来ない事になる。

 そのため、【ペルソナ使い】は肉体自体は人と変わらないままと言う弱点を抱える代わりに、ペルソナを顕現させている間は超人的な力を発揮出来る上、精神に由来する力のみでペルソナを強化していけるため、肉体と言う枷が無い分成長の限界が高く、精神の成長による限界突破の可能性も高いと言う話。

 逆に、降霊術者の場合は肉体も相応に鍛える必要があるため、肉体の霊能素質が高ければ本体が脆弱という弱点を克服出来る代わり、素質が低ければその分成長限界も低くなるし、ペルソナの成長も肉体の成長限界に引っ張られて低くなりやすい訳で。

 

「つまり、憑依合体とO.S.(オーバー・ソウル)の違いみたいな感じ?」

「端的に言えばそうですけど、綴ってマンキン読んでましたっけ?」

「瑞樹さんの拠点にありましたから一応……あれ?その話だと、私や琴音ちゃんは憑依合体で戦ってるのでは?」

「あ、確かにそうだよ!スライムニキは兎も角、承太郎ニキの所と話してる時も、微妙に話が合わないと思ったらそう言う事か。でも私、憑依合体とO.S.の違いとか意識した事無いんだけど?」

「黒札は元々肉体の霊的素質も高いですから、私が指導した時に自然と憑依合体して、肉体の霊格も同時に成長する様にしましたし、綴も血筋的に元々それなりの物がありましたので、不意の事態を避ける目的でも同じように指導した感じですね」

「それって、私のレベルが上がり辛くなったのはそろそろ限界と言う事ですか?」

「そっちは単純にシャドウが精神側の存在で、肉体への影響力が低いためですね。肉体の霊格も上がって、より多くの経験やマグネタイトを必要としてるのも事実ですけど、両方の性質をもつ悪魔から得られるマグネタイトより霊格が上がりにくいのは仕方のない話です。O.S.形式なら、シャドウのマグネタイトでペルソナを強化して終わりなのも事実ですが」

「つまり、物質と精神のマグネタイトが必要なのに、シャドウからは精神のマグネタイトしか得られないから、レベルが上がり辛くなってるのか。私のレベルも上がり辛くなってるわけだし、綴さんのレベル上限が来たって訳じゃないなら問題無いかな」

「通常の悪魔でもきっちり半分とは行きませんが、シャドウみたいに精神八割や九割と言った極端な割合ではないですからね。綴は【霊質強化術】で霊格限界を少しずつ拡張して、今だと70前後ぐらいまでは上がると思いますよ?綴自身で【霊質強化術】を扱える様になれば、私が施術しなくても限界を拡張していける様になりますが」

「あ、レベル30手前ぐらいの頃から定期的に施術されてましたけど、今でも限界まで10以上余裕あるんですね……」

 

 ちなみに綴の元々の上限はガイア連合基準のレベルで35ぐらい、普通の霊能力者として見ても十分に上澄みと言った資質の持ち主だった訳だけど、タルタロスや終末のことも考えると心許ない部分も有るって事で、琴音と探索する事もあり、福利厚生的に【霊質強化術】を施していたと言う話、もっとも私の弟子という立場でもあるから出来た事だけどね。

 

「まあ【ペルソナ使い】でも有るわけですし、単純なレベルだけならO.S.形式でペルソナ主体にすると言うのも手ではあるんですけど、そっちだと人が本来持つ破魔無効とかの部分が上書きされたり、装備もペルソナ顕現時に合わせた物へ変更したりする必要があるので、注意して下さいね」

「うへー、装備総入れ替えはちょっと無理かなぁ……。今のレベル帯に合わせるといくつか更新したい気持ちはあるんだけどね」

「私も瑞樹さんから正式に不滅の炎(フォイアルディア)*4を購入したばかりですし、【霊質強化術】を習得するなりで解決方法があるなら鍛練有るのみですね」

「ふむ……、肉体の霊格だけなら【房中術】で何とか出来ない事もないですか、ちょっとそっちも考えて見ましょうか」

「「瑞樹?/瑞樹さん?」」

「さて、報告書のまとめや送信も終わりましたし、家に帰って寝ましょうか!」

「ねえホントに寝るだけ?!何か変な事考えてたりしない??!」

 

 何を想像したのか真っ赤になってる二人を連れて帰宅し、温泉に入ってさっぱりとしたら一日の幕が下りる訳だけど、ナニがあったのかは闇の中と言う事で。

 そんなこんな復帰直後に新しい問題に直面なんて事も有ったけど、とりあえずレベル上げをしながらターミナルの解析をして、消耗品だけど設置箇所へ一度転移可能な楔を作れる様になるまでに一ヶ月、何度も使用可能なレベルにはまだまだ改良が必要だけど何とか攻略の目処が立った所で、ペルソナ関連の技術担当者の一人として他のチームの近況確認へと向かう事に。

 まず向かったのは、近場の〝メメントス〟対策チームである承太郎ニキの所で、メメントスの入り口が出現した場所近くの建物を買い上げ、拠点とした場所。

 

「こんにちは~、承太郎ニキ居ます?」

「む?ああ七倉さんか、承太郎なら地下で鍛練していたはずだな。時間は聞いていたから程なくやってくるだろうし、お茶でも入れよう」

「それなら差し入れも色々有りますから、お茶請けも追加しましょうか」

 

 出迎えてくれたのは承太郎ニキのチームメンバーで、火炎属性が得意な魔術師のアルカナに属するペルソナ使いのアヴドゥルさん*5、元々エジプトで占い師をしていたらしいんだけど、去年からの裏側の情勢不安と占術により留まると危険との結果が出た事で、以前から日本への興味があった事もあり来日したと言う経歴持ちの人。

 名前や能力に経歴から想像する人も多いだろうけど、見た目はジョジョ三部の人物を彷彿とさせる人で、承太郎ニキのチームでは探索系技能も使える中衛ポジションらしい。

 そんな人物評は置いておいて、煎餅や饅頭など入れて貰った緑茶に合う物を取り出しつつ軽く近況を聞いていると、対して時間も掛からず承太郎ニキとそのチームメンバーが集まってくる。

 

「待たせて済まんな探求ネキ、今回は技術部としての用事だったか」

「お気になさらず、いつもの要望確認と支援物資を持ってきた序でに、技術部の試作品を持たされたので、使うかどうかの確認するだけですから」

「相変わらずのネタ装備も満載か、まあ支援物資も大量に貰ってる手前余り強くは言えないがな」

「あ、技術部の試作品については、使わないならそう言って貰えれば、こっちで適当に試して報告するので大丈夫ですよ。支援物資の大部分は修羅勢からの寄付が元になってますし」

「そうなのか?……なるほど、いつも来ている技術部の連中が試作品のアピールを熱心にする割りに、余り押しつけがましくないと思っていたが、支援物資の大本が違うからか」

「巌戸台支部はメンバーが少ない上に私の管轄ですし、スライムニキの所でやらかしたら各方面が怖いですからね。ペルソナ関連で多少強引にアピール出来るのがここしかないと言うのもありますが、技術部としての純粋な支援と技術向上の意味合いも当然ありますよ。現場に持ち込める時点で、最低限何かしらに使える程度には基準クリアしてますし」

「使用者を中心に使()()()()()()()【マハラギダイン】で焼き払う様な爆弾を以前渡されたが、それでもか」

「火炎無効か吸収装備付けてれば、お手軽に範囲攻撃出来るのでマシな部類ですね。【メギド】系で作った馬鹿はしばいて自爆させましたが。まあ作成者の技量が上がれば対象を任意にも出来ますけど、その分コストが掛かるか威力が落ちますので良し悪しですね。ちなみに、火炎吸収持ちの修羅勢が回復しながら戦えて楽と常用してるらしいですよ」

「自決用の道具と言うわけではなかったのか……」

「これが、ガイア連合の〝修羅〟……」

 

 アヴドゥルさんや花京院さんを初めとした承太郎ニキのチームメンバーが、何やら恐ろしいモノに出会ったかの様におののいているけど、まあ今更の話だし置いておこう。

 修羅勢の基本は死ななきゃ安い所か、蘇生範囲なら安いぐらいのレベルで鍛練と戦闘を繰り返してる訳ですし、怖がられるのも然もありなんと言った話。

 それは兎も角、定番の消耗品から雑多な試供品をリストと一緒に渡し、使えそうに無い物は後日巌戸台支部へ持ってきて貰う事にして、本題の要望確認へと移る。

 

「ふむ……、嗜好品関連の梃入れはした方が良さそうですね」

「探索自体は順調に進んでるからな、装備とかの基本はこれまでの支援や個人的な購入で何とかなったが、必需品以外となると、流石に手も出しづらい」

「ペルソナ使いは高レベルになっても、一般人との差が隔絶するほどには出ませんから、多少効果が落ちても一般的な嗜好品で間に合わせられた、と言うのも大きいですか」

「俺自身はそこまで細かい違いを気にしたりはしないんだが、気になる場合はとことん気になるのもこの手の話だからな。普段の食事は兎も角、酒や煙草、菓子類なども含めた贅沢品は相応に楽しめないと意味がない」

「ガイア酒造や農業部に畜産部などで酒やお菓子系統は何とかなりますし、問題は煙草関連ですね。原料の栽培自体が許可制で、ガイアグループでも手を出し難い部分何ですよねぇ。異界で作って個人で楽しんでる技術部員は居そうですが、表沙汰に出来ない物を持ってくるわけには行きませんし……」

「ま、何処まで行っても嗜好品だ。俺らペルソナ使いなら普通のでも何とかなる、無理せず可能なら程度に思ってくれ」

「そうですね。代替品と言ってはだいぶ趣向が違うでしょうけど、煙草型の霊薬香でも追加する事にしましょうか。回復薬系の消耗品でも有りますから、支援物資の一種にしておけば良いでしょう」

 

 とまあ定期的な業務に追加してその後もいくつか話し合い、攻略状況などの情報交換や話に上がった物を試供品に追加して渡せば、本日の用事は終了と言う事で、承太郎ニキの拠点を後にして帰宅し、翌日はスライムニキの支部へと顔を出す。

 支部と言うより設備付き溜まり場みたいになってた承太郎ニキの所とは異なり、スライムニキの支部は現在各地に作られている、ジュネスを基本とする支部の原型にもなった場所だけ在り、表向きとは別に宿泊所や会議室、最初期に作った温泉施設や鍛練場も改修や増築しながら運営されていて、最近では新しくペルソナ能力に覚醒した人達の研修場所にもなっている。

 そんな支部を不足無く稼働させながら、自身もマヨナカテレビの調査と探索に余念が無い辺り、相変わらずのスライムニキで安心する様な、後方で十全に力を振るって欲しい様な微妙な気持ちになるけど、それは今関係無い話か。

 

「有珠さんこんにちは、いつもの要望確認と支援物資に試供品の配達に来ましたよ」

「こんにちは、今回は探求ネキ何ですね」

「妊娠中でしばらく顔出せませんでしたから、近況の情報交換も兼ねてと言ったところです。物資とリストは先に渡しておきますけど、スライムニキは居ます?」

「ええ、技術部からの来客予定って事で支部長室に縛り付けるのに成功しましたので」

 

 そう言って笑顔を浮かべる有珠さんにお礼を言って支部長室へ向かうと、どうやら電話中みたいなので部屋の前で待っていようかと思ったら、ノックせずに待っている事に気付いた不知火さんに招き入れられる事に。

 入った室内は支部長室と言うより生徒会室みたいな、長机をいくつかと資料などを入れた棚が備え付けられた部屋になっており、支部長のプレートが置かれた席では何と言うか申し訳なさそうな気配を漂わせながら、通話先の相手に何やらお願いしている白饅頭の姿があった。

 

「うん、さっき送ったデータで間違い無いと思うけど、無理はしなくて大丈夫だから、それじゃよろしくね。……ふぅ」

「相変わらずですねスライムニキ、不知火さんや未来さん、ニアスさんもお久しぶりです」

「ああ久しぶり、響もこう言う状況じゃないとまず自分で行こうとするからな」

「一昨日もやられたんだし、響先輩はもう少し休養するべき何です」

「と言うわけで、今回の訪問は渡りに船というわけだな」

「俺としても心配を掛けたのは申し訳なく思ってるけどね……。兎も角いらっしゃい探求ネキ、瑞琴ちゃんは元気?」

「元気に夜泣きしてますよ。私は体力有りますし分身式神で対応も出来るから問題無いですけど、世のお母さん達がノイローゼになったりするのも納得出来るぐらいには大変だけど、楽しい時間です。それにしても、その白饅頭装備普段から付けてるんですね」

 

 白饅頭こと、前世の掲示板である意味有名な〝やる夫〟の見た目になってるスライムニキが、装備越しとは思えない程表情豊かに話題を振ってくるが、この装備初期にショタおじが作って以降、整備としてガイア連合山梨支部へ送られる度に、ショタおじ自らバージョンアップを繰り返している特級装備だったりする。

 序でに装備中見た目が白饅頭になるのは、スライムニキが周囲に与える影響を少しでも抑えるためだとか言う話、まあ多分七割事実で三割遊び心と言った感じだろう。

 

「まあ装備したままでも食事可能だし、不意の事態に対処するためと言われたら断る理由も無いからね」

「後はペルソナ使いの研修受け入れする様になってから、響先輩の影響が強すぎるって理由もあったりします」

「ペルソナ発動中以外は一般人と殆ど変わらないですから、その辺の対策は重要ですし、良いと思いますよ?それはそうと今回持ってきた物資のリストはこれになります。物については有珠さんに渡してますので」

 

 何と言うかスライムニキ以外の三人から、不特定多数のライバルに登場されてたまるかと言う感じの気配がしてくる辺り、白饅頭装備をしていないとスライムニキにコロッといく人が多いんだろうと感じさせる話。

 いっそのことTSするなりしてくっつけば良いのにとは思うものの、そこは流石に趣味嗜好や感情の話なため、手段や選択肢が存在する事だけ伝えるに留めている訳だけど、特に進展が見られない辺りもっと別の選択肢も考えるべきだろうか……。

 

「瑞樹さんもお茶どうぞ、って何か考え事ですか?」

「ええちょっと、お茶ありがとうございます。紅茶なら確かクッキーやフィナンシェが有りますから、お茶請けにどうぞ」

「わざわざ済みません。響先輩もリスト確認に時間掛かりますし、差し支えなければどんな考え事か聞いても?」

「特に隠す様な事もないですし大丈夫ですよ。性の多様化を考えると、男性でも妊娠可能になる方法や男性よりの両性具有(ふたなり)に付いても研究するべきかと考えてただけですし」

『ブッ!』

 

 リストに目を通しつつ、会話にもちゃんと意識を割いていたらしいスライムニキも含め、派手なリアクションされたけどもそれほど変な話をしただろうか。

 

「いや何かキョトンとしてるけど、普通に突拍子も無いこと言ってるからね?!」

「そんなに変ですかね?数は少なくても霊能関係無く両性具有の子供とか生まれたりしますし、ガイア連合なら完全な性転換も、可能な施術の一つでしかないですけど」

「さっきまでの装備や物資の話と繋がらない内容を、予想もしてないところからいきなり言われたら驚きもします」

「そうですよ。それも男でも妊娠可能になんて……」

「割と行けそうに思える構想自体はありますよ?まあホルモンバランスだとか、妊娠中に受ける精神的な影響だとか問題は大量に有るでしょうけど」

 

 再度四者四様な思考停止が発生したみたいなので、再起動するまでの間に思い付いた構想について草案を考えて見る事に。

 と言っても本当にざっくりとした方向性ぐらいの話だけど、最大の焦点となるのは男性の身体構造で、妊娠と出産をどの様に成立させるかと言う点。

 性転換の要領で子宮を用意したとしても、産道が無ければ妊娠も出産も出来ない訳で、思い浮かんだのは以前色々と調べた中で見つけた〝総排泄腔遺残〟と言う難病の事。

 実際に苦しんでる人が居る中で参考にすると言うのは余り感情的に良くはないけど、トリコ食材の再現なんて言って生物を創り出してる身で、保身的な事を言うのは身勝手な話かな。

 流石に倫理観を捨てるつもりはないけど、哺乳類でもカモノハシの様に総排泄腔を持つ種が居るわけだし、その辺の感情的な部分は割り切って棚上げするとして、この病気自体は女児にしか発生しないらしいけど、要は人にも胎児の時点で総排泄腔が形成されている時期が存在する事、病気という形ではあれ総排泄腔を持つ状態の人も進化の可能性として存在し得る事、と言うのがこの草案を思い付いた経緯。

 この辺の人として可能であると言う概念を合わせて子宮と産道を作る施術をすれば、男性としての概念を保ったままの妊娠出産も可能になるのでは?と思った感じの話で。

 

「とりあえず草案としてはこんな感じで良いですね。まあ実際に実現できるかは研究次第ですが、覚醒済みである程度霊格が有れば何とでもなりそうですし」

「あっ、何かちょっと現実逃避*6してる間に書いてると思ったら、良く分からないけど出来そうな気がしてくる内容が出来てる……」

「皆さん考え込んでたみたいですし、その間に軽くですけどね。それより前座でも無い雑談は一旦横に置いて、業務の方終わらせましょうか」

 

 ちょっと色々刺激を与えすぎたかもしれないけど、とりあえず再起動したスライムニキ達と業務上の話を進め、次回の配達までに開発や改良したり、数を増やしたい物などの情報を擦り合わせて仕事の方の話は終了。

 その後スライムニキが今回の配達物に関して有珠さんと話に行ったところで、残った三人と性の多様化()に関する続きの話を少しして支部を後にする。

 とりあえず新たな選択肢と言う爆弾を投げ込んでみた訳だけど、あの三人――正確にはスライムニキを含めて四人の問題では有る――はどんな選択と答えを出すだろうか。

 個人的な話なので余り詳しく聞いてはいないけど、不知火さんはスライムニキ経由で渡った初期のガイア連合製女性用装備の影響も受け、男性としての自意識に女性的な部分が混ざったのもあってなのか、ペルソナ使いになってからそろそろ五年ぐらい経つのに、未だペルソナが完全に覚醒出来ていない*7と言う問題を抱えている。

 ペルソナが完全に覚醒出来ていないという点なら、未来さんの方も同様の問題を抱えている訳だけど、こっちはある程度本人が原因を把握した上で待っている状況みたいだから良いとしても、結局自覚が薄く問題の中心となってる不知火さんとスライムニキの関係が、一番重要になってるのがあのチームの現状と言ったところ。

 そんな訳で、感情の逃避先の一つになっていると思われる、男だと子を産む事が出来ないから相手として相応しくない、と言う逃げ道を塞いでみたのが今回投げ込んだ選択肢の意図だったりする。

 

「余計なお節介になる可能性も高いですが、ペルソナ使いに精神的な抑圧は余り良くないですからね……。適度な負荷と開放によって限界を突破する事も有るので、一概に言えないのが悩ましい話ですけど」

*1
【魔術の素養】【魔導の才能】【精密射撃】【急所撃ち】【三昧常】+【コンセントレイト】+【ラピッドニードル】+【メギドラオン】

*2
『【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録』様より、流石に人数も多くなって性癖を問う様な手順は省かれたが、中層以降で他の黒札と遭遇した場合は、【ドッペルゲンガー】なら倒せる程度の攻撃を仕掛けるのが慣例となっており、中層試験合格者にはその旨が伝えられているため、対処出来ない方が悪いと言われるのも、修羅勢と呼ばれる理由の一つになっている。

*3
徘徊する階層のレベルに合わせて少し上のレベルに調節したもの

*4
サモンナイト3に登場した同名の剣を参考にした綴のための太刀。

元ネタからして集合的無意識と接続して力を引き出す様な設定があり、更に言えば暴走した世界の意思を抑制・封印するための剣でもあるが、流石にその手の能力は付与されていない。

綴に合わせて直剣では無く太刀として作成され、物理的な攻撃力と火炎属性の増幅効果に自己修復能力を持つ。

*5
本家様側に居たかどうか微妙なので、居なかったら独自設定と言う事で

*6
と言う名の妄想

*7
本家様の『カオス転生外伝 ざこそな! 第5話』より、半分シャドウの反応が出るぐらいには曖昧な状態が何年も続いているらしい




なお、シャドウから得られる経験値やペルソナの成長、憑依合体やO.S.的な性質の違いについては独自設定です。
ショタおじみたいに、肉体のスペックが高いペルソナ使い兼ワイルドと言うのが成立することから、耐性やスキルも含めてペルソナ主体なのが【ペルソナ使い】、自身の耐性やスキルに加えてペルソナの耐性やスキルも扱えるのが【降霊術系霊能力者】としています。

後、性の多様化()で出した内容については、本家様の『小ネタ 黒札転生者のクズアニキと現地人弟のお話』や『小ネタ 転生者や現地人たちのたのしいTSせいかつ』から思い付いたネタだったり。
拙作世界線では、いずれこの時の草案から完成した理論が使用されるかもしれないし、されないかもしれないけど、描写するかどうかも含めて未定。
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