【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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045:其れは其れとして……

 陸上自衛隊陸将・五島公夫からの打診があったと言う話は、黒札――特に真・女神転生をプレイした事のある〝俺ら〟に、強い警戒を抱かせるには十分な情報となって掲示板を駆け巡った。

 後、ガイア連合山梨支部という互助サークル的な組織構成上仕方ないとは言え、連絡を受け取った現場である事務局に居た分身式神と、掲示板巡りして各種情報収集していた分身式神で、情報入手までの時間差が一時間も無い上、ある程度正確な情報が流れていた事に、乾いた笑いが出てくる様な気分になったけど、それはまた別の話。

 兎も角、この人物を警戒する黒札が居る理由の方が重要な訳だけど、端的に言って〝終末の引き金になり得る人物〟と言う特級の厄ネタであり、最優先でショタおじを含めた運営陣が対応を検討し、会談の場を設ける準備に取りかかるぐらいには重大な案件である。

 そんな厄ネタであることも事実では有るけど、それ以前に〝自衛隊〟と言う歴とした国の防衛組織であり、霊的国防機関と言いつつも一般に知られている訳でも無く、実際の対処能力も地を這っていた根願寺とは異なり、法的な問題をクリア出来れば、堂々と武力を行使する事も可能な国家組織の、更に言えば対テロ特殊部隊とかを指揮下に有していても問題無い様な、そんな人物とのコネクションが有りながら、報告も連絡も相談も一切していない黒札が居たことが、今回の騒動の一番の問題なのでは?と個人的に思う訳である。

 

「そこのとこ、どう思います?自衛官ニキ」

「自衛隊としての守秘義務とか色々有るわけで……」

「五島陸将クラスの幹部なら、陸自のホームページなりで普通に公開されてる情報でしょう。それに、七年前の第一回オフ会が実施される直前の、このスレでこのコメ*1したの自衛官ニキですよね?後多分、こっちのコメ*2もだと思いますけど、上官が五島陸将で既に覚醒している上、対悪魔用訓練っぽい事もしていて、聞かれたら黙秘も出来ないがどうしたら良いか、程度の相談でもこちらにしてくれていれば、政界ニキネキや財界ニキネキ経由で色々根回しも出来たはずですし、協力するにしても黒札の意見調整をした上で、もっと穏当な協力関係を構築する余地はあったはずなんですよ」

 

 タブレットに表示された過去スレの、自衛官ニキが書き込んだと思われる該当コメントを示しつつ、ガイア連合の情報を五島陸将に渡したこと自体では無く、守秘義務に反しない範囲で伝えられる程度の内容も、ガイア連合の事務なり運営陣なりに相談しなかった事、それによって共犯者に仕立て上げられる可能性が発生し、〝俺ら的な有形無形の不利益が発生し得る可能性と、巻き込まれ感による不満〟が問題なのだろうと伝える。

 それにガイア連合山梨支部としても、七年前から接触出来ていたなら、軍需産業系にガイアグループも進出して、対テロ装備辺りの名目でも付けて支援する基盤を作る事も可能だった訳で、そうなれば実弾や実銃を供給する伝手を作れて、色々試行錯誤して対応している銃撃系スキル覚醒者や銃火器好きな黒札の賛同を得られた可能性も高いと言う話。

 

「と言う事で、スレで行われた自衛官ニキへのペナルティー投票は、とりあえず罰は受けたから以降は掘り返して叩かない様にって側面もありますので、観念して受けてきて下さい。あ、神主お手製の新地獄巡りは、私含めて希望する修羅勢も後で体験しますから、そこは自衛官ニキだけじゃないので安心して下さいね」

「安心要素が欠片もない気がするんだけど……?」

 

 スケベ部協賛で美波さん監修の、黒札限定公開生放送の準備が整うまでの間、刑執行前の自衛官ニキとちょっとコミュを取っていた訳だけど、最新辺りの書き込みを見て思った通り、どうにも何故ここまで問題視されるのか、ペナルティー投票まで行われる事になったのか、と言うのを認識出来ていない様子のため、私から見てこうじゃないかと思った理由を話していると、次第に顔を覆ってうつむいてしまったけど、そこはまあ置いておきましょう。

 何か死体蹴りみたいな状況になってしまった気がしないでもないですが、掲示板で積極的に案を投票する程では無くても、私としても思うところはそれなりにある訳ですし。

 具体的には、銃火器や爆発物関係の法的に簡単では無いにしても、自衛隊に協力するとの名目が有れば、今ほど状況が逼迫する前から研究出来た技術が色々有るわけで、終末の気配が迫ってきている中でどれだけの研究開発が出来るか、約七年の期間があればどれだけの訓練が積めただろうかと言う話。

 最も銃撃系スキル覚醒者用に開発したマグネタイトカートリッジ式自動弾丸作製術式小銃(Automatic Bullet Crafting Rifle)みたいに、実銃が容易に手に入らない環境だから開発した装備もあったりはするけど、自衛官ニキに実銃との比較を依頼したところ、通常射撃は同じ口径の実弾と比べて四割程度の威力、実弾にスキルを使用した場合の強化率と比較したら半分程度と、明確に欠点がある事も分かっていて、実銃が使えるならそっちを使うと言う結論になる訳だけども。

 結局そのまま自衛官ニキが復活する前に準備が整い、ドナドナされて行くのを見送った後は、新地獄巡りを初見で乗り越える楽しみを減らさない様、それ以降生放送には関わらず個人研究に専念してその日は終わる事に。

 なお、後日実施された修羅勢や修行ガチ勢を対象とした新地獄巡りの結果、ついに【天眼通*3】の体得に至る成果を得て、解脱に至る力とされる【漏尽通(ろじんつう)】を除いた神通力を体得し、名実ともに神仙の頂きに踏み入れたらしい。

 

「足掛け七年で生物の限界が見えるところまで辿り着いたか、有言実行してくれてる様で何よりかな」

「私はだいぶ時間を掛けた方な気がしますけどねぇ。くそみそニキ*4とかレベル40ぐらいから二年で極限まで上げてますし、セツニキ*5とか修羅勢の中には超越者の領域*6に踏み込んでる人も居るでしょう」

「僕としては、ココまで来てくれる仲間が一人でも多いに越した事は無いからね」

「まだまだ先は長そうですけどね。とりあえずで目標にした領域も、こうして近くまで昇ってきたら色々と見えるモノが変わってきましたし、学んできた事も含めて自分の軸を一度見直そうと思います」

「了解、まあ焦らず頑張ってね~」

 

 とは新地獄巡り後の一幕、自身のレベルが90を超えた事でようやく感じ取れるようになった、ショタおじやカヲルニキなどの一部の黒札が踏破した生物としての進化の先、【超越者】と呼ぶべき領域の〝スタート地点〟と、ショタおじが居る地点までの〝遠さ〟を実感した出来事。

 超越者に至る事の意味と必要な知識や力など見えてきたモノも多く、新地獄巡りの成果はとても実りの多いものとなった。

 そんなこんなやっている内に、自衛隊との協力に関する取り決めも進み、クーデターの片棒を担がされる様な事態は避けたいけど、終末後の文明社会を維持するための、未覚醒者含めた現地人を保護するための戦力として、自衛隊の戦力化は必要だろうと言う事で、四月の半ば頃にはデモニカを始めとした装備提供が行われ、同時に早期に可能な範囲から研究・開発が進められる事になる。

 ちなみに提供した装備の一例としては、地方組織増強用に開発しバージョンアップを繰り返している、霊視ゴーグルの最新版となる〝索敵用霊視ゴーグル*7〟や、ガイア連合の初期頃に美波さんと一緒になって作り出し、後に術式として効果付与可能になった事で、外部生産も可能になった〝特製勝負下着シリーズ*8〟辺りが私も関与している装備になるだろうか。

 他にはガイア連合内で購入可能な消耗品類や近接装備の数打ち品、自衛隊ならコレだろうと円匙を作って持ち込んだのも居たけど、最初の支援と言う事で無難な内容になったのではないかと思う。

 そうした装備支援の一方で研究開発の方は、手始めに既存の弾丸へ各種付与を行う研究と、霊的素材を使った弾丸の製造研究が開始され、並行して趣味の範囲で個人研究していた銃器関連の知見を集め、技術開発班としての基礎研究を行う事が決まり、組織内の費用や素材で研究出来ると、ミリオタなどのそっち系技術者が張り切っていたりする。

 そんな訳で、雑多に集まって来た情報をまとめて、基礎知識や技術的応用などの分類分けや編纂する人が必要になる訳で、そう言った作業を行うのも班長的な立場になっている、エドニキや補佐をしているアルニキの仕事なのだけど、今回は流石に量が多く時間も足りないと言う事で、普段からこの手の作業をしている私にもヘルプが回ってきた。

 

「こうして集まった情報読んでると、分野に特化した情熱の凄さを実感できますよね」

「細かい拘りや熱意があるからこそのオタクやマニアだしな。態々ハワイの射撃場へ練習しに行った経験がある奴もいるが、流石に銃の製造方法まではカバー出来ねぇからな」

「そこは出来ていたら困る話だよね。まあ構造的な知見は十分あるから、工作機械と素材が揃えば直ぐにでも作れそうだけど」

「銃というわかりやすい象徴だけ有って、表の法律をどうしても意識してしまいますけど、刀剣作ったりアギストーンみたいな爆発物作ったりしている時点で、今更ではあるんですよね。刀剣類より誤魔化しがし難いと言うのも理由にはなりますが」

「モデルガンと言い張っても実弾有れば一発だしな。一応ガイアグループの方で軍需産業に進出するのも検討してるみたいだが、終末来そうな気配も強くなってっから、結局異界で生産する事になるだろうな」

「とりあえずの予定は、各種部品と実弾を大量生産するための工場建設だよね。実弾に属性付与する工程は、BB弾に付与する術式を弄るだけで一応形にはなったし」

 

 集まった情報の編纂が終わり、それぞれ回し読みしてのチェックも済んだところで、次は具体的な生産計画の話。

 まあ計画と言っても集まった情報から現状で生産可能な物の内容、設備規模と生産数に規模毎の設備用意に掛かる時間など、運営陣が検討する際に必要となる数値を試算してまとめる作業。

 事前に渡された草案に沿って不確定要素を排した場合と含める場合や、渡された草案には無い手法を含めた場合など、ある程度数値として算出可能な範囲の手法をまとめていき、序でに記載可能な研究中の内容も参考情報として付け加えていく。

 

「現状可能な方法は一通り計算し終わった感じかねぇ?」

「基本的な工場生産に式神も加えたパターン、少佐ニキ*9みたいな生産効率に影響を与えるスキルを使用したパターンも各人毎や協力した場合など、各種組み合わせを変えて算出しましたし、漏れは無いかと思いますよ」

「探求ネキのアトリエ式錬金釜みたいな、個人で可能な大量生産関連は別枠に記載したし、基本は安定生産可能な質と数で検討するだろうし、僕も頼まれていた資料としては十分だと思うかな」

「おっし、そんじゃコレ上げれば一旦仕事終了だな、助かったぜ探求ネキ」

「新しい知識を得る機会でしたからね。情報購入費用も報酬で相殺になりますし、個人的にプラスですからまた手が足りなかったら手伝いますよ」

「うん、その時はよろしくね」

 

 ガイア連合山梨支部全体に関わる一仕事が終わった後、そろそろ夕暮れに差し掛かろうかという微妙な時間から、次の行動をどうしようかと考え始めたところ、最近では見かける事が少なくなってきた人物が目に留まる。

 

「スカリエッティニキが山梨の方に来てるのは珍しいですね」

「やぁ探求ネキ、私としても拠点で済ませられるならそれが一番なんだが、技術開発室のデータベースだけはどうしようも無いからね」

「それは確かに、ああそうだ、ついさっきですけど銃火器関連で集められた情報の編纂が終わりましたから、もう少ししたらデータベースに登録されると思いますよ。今回登録される情報だけでも、基礎技術としては十分そうな感じでしたから」

「ほぅ、それは良い事を聞いた。情報が出回る前に確認だけでもしておくとしよう」

「あ、序でと言ってはアレですけど、これカズフサニキに渡して貰っても良いですか?普段から拠点ごと移動していて会う機会が少ないですし」

「構わないが……〝登仙術技書〟?」

「以前カズフサニキに依頼して神通力を習得出来るか協力して貰った結果もあって、ようやく書としてまとめられたので、書庫迷宮に寄贈する分とは別に渡しておこうかと、最後に確認した時点だともう少しで【神足通】を体得出来そうな感じまで行ってましたから」

「相変わらずポンッと渡してくるが、神通力を習得するための教本となれば、書庫迷宮でもだいぶ奥に収蔵されるレベルの物だと思うんだが?」

「〝登仙術技書〟は最終目標が神通力の体得ですけど、基本は仙人へ至るのを目的にした、未覚醒からの修行法を総まとめにした感じですね。興味があればスカリエッティニキやジュンニキも読んで貰って構いませんよ」

「余計に価値が上がった気がするが、そもカズフサニキへの贈り物だしな。まあ私も使えそうなところは活用させて貰うとしよう」

 

 長々と立ち話する様な場所でも無いため、用事だけ済ませてスカリエッティニキと別れた後、特段用事なども入ってない事から、いつも通り個人的な研究などに時間を使う事に。

 それからしばらくはいつもの日常業務や毎日の鍛練を行いつつ、工房で趣味の研究を行う日々に戻る訳だけど、せっかく火器類の基礎技術も得られた事だし何か研究しようかとも思うわけで、時間や分身式神などの研究に使っているリソースを割く余地があるか、研究を進める傍ら情報整理してみる。

 まずはメインの食材研究だけど、〝メテオガーリック*10〟は私以外でも栽培環境を構築可能な方法が確立出来たら完了、ガイア酒造などの酒好き連中から連名で依頼された〝酒乱牛*11〟は、飼育用の異界と管理の式神もセットで納品したので、後は順調に増やせるかの経過観察だけ、〝キノコプリン*12〟は菌糸の変異と制御が一段落付いて、栽培環境や胞子からの生育に、キノコ部分の大型化が課題として残ってるから、今しばらくは研究にリソースを割く必要がある感じ。

 キノコプリン以外は目処が付いているし、新しい食材研究を後回しにしたらその分は使えるけど、酒乱牛みたいに依頼が来る事も有るから、その点は考慮しておくところかな。

 次は費用的にも割り振るリソースが大きい超機人関連、これは使用する素材の選定も進んで、リアルACのサーバを使ったシミュレートで徐々にサイズを大きくしながらの動作確認と、汎用的な動作以外の動作プログラム構築を進めて居る状況。

 一応順調に進んでいるとは言っても、実際に異界内や結界を張った拠点内で、シミュレート通りの挙動が出来るかの確認も必要なため、その点では仮進捗とでも言ったところだろうか。

 念のための保険では有るけど、有った方が良さそうな予感がするから、超機人の研究開発に関するリソースは減らしたくないのが本音かな。

 後はロボも含めて多方面に影響する研究として、陰陽循環による新しい動力炉や、設備とか装備各種に使える新素材の研究、お酒や霊薬香などの個人的な嗜好品の研究と言ったところ。

 

「こうして見ると超機人関連は、素材や術式に装備など、複数分野の集大成と言った感じがありますね。スケールは大きいですけど他に転用できそうな技術もありますし、現状火器類を持たせる予定は無いですが、合わせて研究する価値はありそうですね。後は嗜好品関係ですが……、こっちは研究よりも栽培や増産の方が必要な状況ですし、また別の話ですかね」

 

 個人的な味の好みだとかの探求は現状余裕も無いため、終末を乗り越えて余裕が出来てからの楽しみに取っておいてるので良いとして、承太郎ニキを筆頭にペルソナ組の精神安定も兼ねた嗜好品――主にタバコ関連については、提案された去年の内から各地方でも動いて居たみたいだけど、流石にガイアグループがたばこ産業に参入するのは難しいとの事で、結局終末後に向けての準備はしつつ、現状は日本国外にある私の拠点で栽培し、密輸する形になっていたりする。

 内々でのガイアポイント交換による取引*13のみのため、外部に漏れたりは早々しないとは思うけど、余り健全な事では無いので何とかしたいところだけど、表の法律や商業関係は一朝一夕でどうにかなる物でも無いため、仕方のない部分だろうか。

 一応海外から主なタバコ三品種*14の種子を入手して、拠点の異界内でいくつか環境を変えながら栽培しており、現存して販売されてるタバコ各種を【アナライズ】や【他心通】も使って、組成や製法などを調べて再現しているため、ペルソナ組からの反応は上々と言ったところ。

 後、私自身は霊薬香の方が好みのため、情報収集で何度か試した以外では吸ったりしないけど、ガイア連合山梨支部内でも喫煙者は結構居る事から、地味に増産要望も増えていて、アトリエ式錬金釜を作って良かったと実感していたりする。

 他の嗜好品関連は基本的に法に触れる物でも無いか、真っ当に生産販売可能な環境が出来ているため、各方面に情報回して流通路を整備したら済んだ事も有り、特段研究を要したりする事も無く、対応完了と言ったところ。

 

「こっちに回ってきている要望や依頼も合わせて確認しましたけど、ごく一部の拘りを除けば概ね納得いくレベルにはなってるみたいですし、ロボ建造に付随する各種研究と食材関連の研究以外は後回しで良さそうですね。情報整理をメインにしていた訳じゃ無いので、結局まとめ終わるのに一週間以上掛かりましたが、定期的に整理すると良さそうなアイディアも出てくるから、手間でも止める訳にいかないんですよねぇ」

 

 整理した結果、大部分の研究がロボットに付随、或いは転用出来る研究に分類可能と結論付け、火器類の研究もそこに含めてリソースを割り振る形で今後の予定を調整していると、一手間掛けて整理し直す事で色々と発見やアイディアも湧いてくるもので、予定の調整が終われば早速、思い付いた実験にとりかかる。

 用意する素材は今有る各種木材と金属で、実験の内容としては木材に金属の概念を組み込んだ新しい素材を作れないかと言う物。

 今まで金属は既存の物から各種合金まで色々試してきたけど、木材はそのまま使うだけで、結晶筋肉を作るまでは樹木の性質を維持したまま、混ぜ合わせて別の素材を作る考えが無かった事に気付いた訳で、気付いたなら試して見ようと言う流れである。

 

「概念的には金剋木で、金属の方が硬さや鋭利さなどから木材より強いですが、物理的な性質で言えば重量比強度で、鉄の倍以上あったりするぐらいには強い素材なんですよね。まあ各種合金には普通に負けますけど」

 

 それこそ特殊鋼にただの木材が勝てるとは言えないけれども、世の中には樹高100メートルを超えるセコイアが自生している例もあるのを考えると、樹木化合物的な素材が作れたら色々と使い道があるのでは?と思った次第。

 とは言え、樹脂なら兎も角、木材を合金みたいに溶かして混ぜ合わせる訳にもいかないため、手法としてはアトリエ式錬金釜を補助に使用した、錬金術の秘奥による原子や量子単位での物質構築。

 まずは試しと言う事で、掌大の杉板と鉄を重量比で半分程度投入し、木材を構成する細胞壁に鉄を合成して、木と金の属性を併せ持つ様な素材として概念を定着させていく。

 カチリとピースが嵌まった様な感覚と共に錬金釜から浮かび上がってきたのは、投入した鉄の分元の杉板より重量と密度が高くなった鈍色の板で、叩いてみると金属質な音と感触が返ってくる。

 

「よし、観た感じ幻想系素材ぐらいの立ち位置になりそうですけど、とりあえず木材と金属の合成は成功ですね。仮に名称付けるなら合金みたいな物ですし〝合木〟か、金属と合わせる意味でそのまま〝合金木〟の方がわかりやすいでしょうか。まあそれよりも、問題はこの作業を毎回するのは時間が掛かりすぎますね……」

 

 正直なところ、レベル90を超えて複数の権能を使いながらの作業でも一回作るのに一時間、慣れて短縮出来たとしても最低限三十分は確実に掛かるだろう作業となると、下手したら他に作れる人が居ないか、作れるとしても丸一日かかる何て可能性も有り得る話。

 一先ず出来上がった板を詳しく調べて見ると、幻想系素材との第一印象は間違って無かったようで、素材の保有する概念が物理特性を補強している上、霊力の通りや術式の付与効率が飛躍的に向上して居る事が判明した。

 具体的には、レベル10以下の新人用装備に使う程度の素材が、レベル40前後でも使える範囲の素材になっていると言えば、素材のランクアップ具合がわかるだろうか。

 

「出来上がった素材も作成技術もかなり有用な感じですが、技術難易度がどうしてもネックですね。独自技術なんて無駄に依頼が舞い込んで鬱陶しくなるだけですし、多少難しくてもレベル30前後ぐらいで習得可能な技術に落とし込みたいところ。……いや、いっそのこと技術では無く、それ用の素材を創り出す方が既存の技術も使えて良さそうですかね?」

 

 逆に考えるんだと言うほどでは無いけど、木材と金属を概念的に合成する技術が難しいなら、金属と同様に熱する事で液状に溶解し、合金として混ぜ合わせた後〝合金木〟になる様な性質の木材があれば良いと言う事。

 何か最初の思い付きから規模が大きくなった様な気もするけど、将来的な面倒を減らす為でもあるので気にしない事にして、新しく創り出す植物のベースとなる品種を選ぶ事にする。

 

「まあベースと言っても、特にこれと言って神話とかに肖る物でも無いですし、さっき思い浮かんだセコイアの木にでもしましょうか。巨大になるなら一本から取れる木材の量も多くなる訳ですし」

 

 こう言う思い付いた時の為に、財界ニキネキなどのコネを使って買い集めた、世界中の植物の種コレクションから目的の品種を取り出し、神通力も含めた権能をフル稼働させながら錬金釜で目的の植物になる様、種子に概念と霊力を注ぎ込んでいく。

 【天耳通】【他心通】による霊感の拡張、【宿命通】による現在までの情報理解、そうして得られた情報を加えながら行う【天眼通】による未来予測。

 望む結果へ至る道筋を探り、霊力と権能でたぐり寄せる事を繰り返し、二時間ほど錬金釜を掻き回したところで目的に手が届いた事を感じ取る。

 

「ふぅ、思ったより難所が多かった気がしますし、【天眼通】を体得出来てなければ創り出せなかった感じですかね。言い換えれば無茶な性質の幻想系動植物も創り出せる可能性があると言う事ですが、兎も角そろそろ夕方になりますし、さっさと栽培環境構築して、食事の用意をしましょうか」

 

 今し方創り出した植物は、性質的に〝合金樹*15〟とでも名前を付けるとして、栽培用の時間加速付き異界を用意して種を植えたら、本日の研究時間は終了にして夕食の準備へ。

 今日は満月の日と言う事もあって、確り栄養とエネルギーを補給して、瑞琴と触れ合う癒やしの時間を満喫したら、影時間に合わせて巌戸台へと移動する。

 

「いつも思うけど、日付変更時にこの辺に居ないと行けないってのが地味に面倒だよねぇ」

「琴音ちゃんが言うのもわかるけど、マヨナカテレビやメメントスは日中でも特定の場所や方法で入れる代わりに、その分取り込まれる人も多いですから、良し悪しでは無いですか?」

「まあ学生しながらでも攻略に取りかかれるだけマシだとは思うけどね。メメントスみたいに広大じゃ無いし、マヨナカテレビみたいに人の生死に直接関わる訳でも無いし、無気力症の発生自体は防ぎようがないけど、学校行ったり遊んでる内に誰かが死にました何て、寝覚めの悪い事にならないのもマシな部分かな」

「異界への侵入に条件が付けられてるのはよくある話ですし、時間指定で済んでるだけまだマシまであるのがこの界隈面倒な話ですが、兎も角今日も探索の時間ですね」

 

 いつもの様に軽い雑談をしながら時間の到来を待ち、影時間へと侵入して前回探索終了した地点への転移を行おうとして、違和感に気付く。

 

「前回設置した転移ポイントが使えない?……いえ、二百階から先を感知できない、と言った方が正確ですかね」

「マジ?と言うか二百階ってことはもしかするんじゃない?今日満月だし……」

「確か二百階手前にポイントは設置したままでしたよね。とりあえず行ってみませんか?」

 

 嫌な予感がしながらも、綴が言うように行ってみなければ正確な事も分からない訳で、二百階手前に設置したポイントへ転移して再度目印を設置し、大広間へと足を踏み入れる。

 そこは、前回死闘を繰り広げた時と同じ空間で、同じ様に鎖が擦れる音が鳴り響き――

 

「嫌な予感的中って言うか、大型シャドウと同じ通常ボス枠か【刈り取る者(お前)】ぇ!」

 

 盛大にツッコミを入れる琴音の叫びが待ち構える【刈り取る者】へと叩き付けられ、再び死闘の幕が切って落とされる。

*1
本家様『★転生者雑談スレ その24』より、〝152:名無しの転生者〟の書き込み

*2
本家様『★覚醒者・霊能力者スレ part4』より、〝175:名無しの転生者〟の書き込み

*3
術者の霊感が及ぶ限りの現在と未来を見通す智慧の権能。

物事をありのままに把握し、真理を見極める認識力であり、遠視・未来視・解析鑑定と言った見ること理解することの極致。

なお、探求ネキが体得した方法においては、量子論的なアプローチを組み込んだ手法のため、未来視は〝ラプラスの魔〟と同様に、知覚範囲の量子を観測する事による可能性変化の予測を軸として未来を観るため、観測による因果の確定は行われない。

*4
『霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。』様より、鷹村ハルカを拾ってからレベル99まで上げたとの話。

*5
『【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録』様より、修羅勢としてまあ到達しているだろうと言うイメージ。

*6
レベル100以上に到達し、存在の根幹を再構築した段階。具体的には怠けや老化などによるレベルダウンの下限が100の時点となり、意図して下げなければ99以下の生物範囲へと戻らなくなった状態。独自設定

*7
ヘッドマウントディスプレイ式のツールで、二つのカメラから取り込んだ映像による立体視と、映像内の悪魔や霊障を表示する〝アナライズカメラ〟機能、〝スキャニングゼロ〟アプリによるダークゾーンを含めた暗視機能付き。

マグネタイトバッテリー稼働のため、未覚醒者でも〝アナライズカメラ〟による悪魔や霊障の認識、及び名称や弱点属性などの識別が可能だが、未覚醒だとバッテリーの出力関係により、レベル10以上の悪魔を識別する事が出来ない制限がある。

覚醒している場合は、装着者のレベル+10まで識別可能で、識別限界は最大でレベル30。

*8
瑞樹と美波の合作による、最後の守りとしての概念を込めた術式を用いて製造されたシリーズ品。

直接肌に触れ急所を隠し守る物としての〝最後の砦〟と、万一打ち破られた時の最後の一撃として〝道連れ〟の効果が付与されている。

なお、道連れは着用者が致命傷を負った際に身代わりとなって破壊され、破壊を引き金として受けた致命傷と同じダメージを相手に返すもの。

男性用、女性用それぞれに前衛用と後衛用の二系統あり、スケベ部や一部下着に拘る黒札、委託製造している外部組織などにより、日々様々なデザインの下着が作り出されている。

*9
本家様『外伝 とある製造系転生者』より、生産効率を爆上げ可能なスキルを持つサイコメトリー系能力特化の黒札。戦闘センスが無い上に、サイコメトリー能力が強い影響で、敵の断末魔でリアル精神ダメージを受ける程に戦闘に向いていない。

*10
トリコの食材再現シリーズの一つであり、隕石が落ちた土地に生える大蒜と言う点を再現する事で創り出した品種。

元ネタに有る土壌の栄養をすべて吸いつくして育つ性質に関しては、宝玉ピスタチオと同様に、吸収した栄養とマグネタイトを内部で循環させ増幅する、炉心のような性質を組み込む事で解決している。

豊富な栄養とマグネタイトを滋養強壮成分に特化させる事で、食べれば途端に筋肉質な体になり、一ヶ月不眠不休で動けるほどの力が得られる。

*11
トリコの食材再現シリーズの一つで、ガイア酒造を始めとした酒好きな黒札からの依頼により創造された品種。

飼育の際にはアルコールを含んだ水が飲料水として必要となり、常に酔っぱらってフラフラしている上、酔えば酔うほど凶暴になる性質の牛。

なお、酔って暴れる事で、肉質や母牛から絞れるアルコールを含んだ牛乳も上質な物となるため、飼育者に相応の力量が求められる。

*12
トリコの食材再現シリーズの一つで、プリンのような味のキノコ。

上の部分はココア味になっており、茎のプリン味と二つの味が楽しめる。

また、サイズが大きいほど地面から抜けにくく、その大きさに比例して糖度が高くなっている。

*13
パッケージなどの銘柄は無しで、紙巻きや葉巻などを本数毎や重量単位で取引しているため、シガレットケースなどでの持ち運びが必要。ケースの方は現金での販売もしている。

*14
黄色腫・バーレー種・オリエント種の三種類

*15
セコイア種の樹木を元に金属との融和性を組み込んだ幻想植物。

火に掛けても燃える事は無く、鉄と同等の温度で溶け、冷え固まった際には木材と同様のハニカム構造を形成し、様々な合金へと変化する木材で、合金にした後も木目が残るのが特徴。

また、土壌の金属を根から吸収し、葉っぱ毎に一種類ずつ金属を蓄積させる性質を持つ。




本家様の『小ネタ 転生者たちの成長限界とレベルの概念』で、黒札のレベル限界やステータスはシリーズ系主人公並の強さがあるとの事から、拙作では最低限超越者の領域に届く素質を持っている物として想定してます。

後、本文の注釈だと流石に文章が長い気がしたので、後書きに掲載。

〝登仙術技書〟
仙人へと至るための方法やその過程で習得可能な術や技法をまとめた技術書。
覚醒するための瞑想や肉体鍛練から始まり、覚醒後の霊力操作、自然界に由来する陰陽と五行を操る方法、常人の限界を超える為の魂魄を鍛える方法に、地脈や異界に干渉する技法、神通力を体得するための知識や方法などが記載されている。
なお、レベル30以降で習得可能な【金剛体】は【チャージ】を【三昧常】は【コンセントレイト】を常態化させたスキルであるため、よほど相性が良いか長期間の鍛練でも無ければ、基本的にどちらかしか習得出来ない。
また、本書における神通力の知識や体得方法は、量子論を元にして探求ネキが体得した物を基礎としているため、神通力に対する捉え方が異なれば、体得方法も異なる事に注意が必要。
習得可能技能:
覚醒後:【禹歩】【崩拳】【チャージ】【コンセントレイト】【小周天】【軽気功】【硬気功】【発勁】【浸透勁】【霊質強化術】【結界術】【霊具作成】【霊薬作成】
レベル15以降:【魂魄精練法】【食没】【不動心】【地脈干渉技術】【異界作成技術】
レベル30以降:【大周天】【縮地】【金剛体】【三昧常】
レベル50以降:【圏境】【魂魄精練大法】【神足通】
以降10レベル毎に体得可能:【天耳通】【他心通】【宿命通】【天眼通】

【金剛体】
チャージによる霊力圧縮と循環が常態化したものであり、力ステータス依存の威力・効果が1.5倍化する。
霊力圧縮により肉体そのものが強化され、力の解放に耐えられる様になるため、修練が進む毎に力・体・速のステータスに応じて効果が上昇する。独自設定スキル。
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