【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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048:厳しい時ほど楽しむ精神も大事

 タルタロス二百二十階、迷路となっている塔の中を進む階層構造自体は変わらないものの、広さは既に㎞単位まで広がっており、更には奥へと進んでいる関係なのか、通路を構成する壁にはひび割れや剥落などが所々現れる様になっていて、実害は無い物の不気味さを醸し出している。

 十階層毎の節目を前回更新した日から一ヶ月以上掛け、ようやく到達階層を更新出来た現状だけど、攻略速度の遅延には対策の難しい理由と、単純で対処しようのない理由が立ち塞がっていた。

 と言うのも、階層が進む毎に、タルタロス(冥府)でニュクスという闇や死の象徴によるギミックなのか、術者から距離が離れる程に術の影響力が急速に減衰する様になった上、霊感による知覚範囲も狭まっており、現在の階層だと十メートル程度が範囲限界と言ったところで、とてもじゃないけど広範囲探索術式など使え無いと言う状況。

 言ってしまえばダークゾーンよりも概念的に強い、闇夜だったり死の世界だったりによる視界制限が掛かっている様な物で、古式ゆかしいダンジョン探索のように、有視界範囲を手探りで回らなければいけないと言う状態になっている。

 【ライトマ】の様に闇を払ったり暗視などで見通すと言うのも、相手の土俵であるタルタロス(冥府)で行うには、単純にこちらの出力が足りない上に、影時間にしか探索出来ない制限からか、夜の終わりである夜明けによるギミック解除を試した時点で、探索可能時間が残っていても影時間から追い出される始末。

 結局のところ、ギミックによる視界制限を甘んじて受けながら、相変わらず途切れることなく襲い来るシャドウを倒しつつ、一時間以内に広大かつ構造が毎日変化する迷路を探索し、次の階層への階段を見つけなければいけないと言う理由が重なり、思うように探索が進んでいない状況。

 一応転移ポイントの設置による、階層空間自体の未探索範囲割り出しで、虱潰しにすることで見つける事が出来たり、運良く次の階層を見つけられたりする事もあるため、攻略に行き詰まっていると言うほどでは無いんだけど、面倒な事に一つの階層内に大部屋が幾つも出現する様にもなっており、何体もの大型シャドウと戦闘しなければいけない上、階層内の大型シャドウを全て倒さないと次の階層へ行けないギミックや、逆に二百十九階では、全て倒すと進めないギミックになっていて、足止めされる結果になってしまった事も、攻略が進まない理由として挙げられるだろうか。

 

「一時間の時間制限と日替わり構造変化が、果てしなくウザい……」

「琴音の気持ちはよく分かりますけど、ギミックの解除が影時間脱出の条件になってるせいで、攻略するならギミック影響下で進まないといけないですからねぇ。気持ちはよく分かりますが」

「大事なので二度言われたのでありますな」

「時間制限か構造変化のどちらかがなければ、隈無く回るのも楽なんですけどね。いつの間にか途切れることなくシャドウと戦いながら、雑談する事も出来る様になりましたし……」

「綴が無事に【金剛体】を習得出来た影響ですね。アイギスも実弾が使える様になったおかげで戦力向上しましたし、残弾にさえ気を付ければだいぶ楽に探索出来ますからね」

「探索は出来ても、探索が進む訳でも無いのが辛いところだな。そろそろ次を設置するタイミングか?」

「そうねぇ、影時間も残り少しだし、此処を最後にして今日は終わりかしら」

 

 決して油断している訳では無いが、一時間戦い続けながら移動するのをほぼ毎日続けていれば、息をするのと変わらないぐらいに自然と、周囲警戒しながらの迎撃も出来る様になるもので、会話をしながらでも十分以上に警戒しながらの探索が可能な辺り、人間辞めてると言われても否定出来ないと思うこの頃。

 影時間から追い出される制限時間が迫っていることも有り、転移用のポイント設置まで終わらせたら、探索中は不測の事態に備えて消耗しすぎない様控えていた消費の多い技や、周辺被害などで使う機会の少ない大技の試し打ちをする時間に充て、今回の探索も終了。

 特に変わった発見が無ければ、後は報告書を仕上げて送って寝るだけと、タルタロスの攻略状況はこんな感じで、少しずつではあるけど何とか進められていると言ったところだろうか。

 とまあ何とか進められてるとは言え、対処の難しいギミックだからと放置する訳にもいかないため、どうにか出来ないか研究もしつつ、新素材を使った装備のバージョンアップなどをしている内に、時間は流れて六月も終わりが見える頃。

 終末を乗り越えるためのあれこれも大事な事だけど、それだけでは息が詰まるのも確かな話と言うことで、技術部主催で月末に開催されているイベントに呼ばれた事も有り、趣味と息抜きを兼ねつつ参加することに。

 

「四月からの事も有って、やっぱり銃撃系を用意した人が多いですね。半端な技量でネタに走ったところは、毎度のごとく悲惨なことになってますが」

「実体験を伴わない研究だと、その辺どうしても見落としちまうからなぁ。つっても時々斜め上のシナジー発生したり、予想外に評価されたりすっから、一概に悪いとも言えねぇのが痛し痒しだな」

「それですよねぇ。私も〝万能自爆弾*1〟だけはどうしようも無いと思ってましたし、作った人も納得してましたけど、セツニキとかシエラ婆みたいなドレイン持ち*2とか、火力の低い回復メインだったり、被ダメ量でバフ掛かる様な修羅勢には好評で、増産することになったと聞いた時は、私もまだまだと思いましたね」

「ゲームじゃ仕様上無理な事も、現実になりゃいくらでも変わるってこったな。っと、そろそろ限界っぽいし次に移るか」

「ですね。それじゃ先にカウント出しといて、えっと次のリクエストは――レベル30前後で各種鉱物資源用のゴーレム軍団でしたか。まあレベル上げが主目的ですし、参加者の平均以上になる様に設定してますから、レベルはその内40前後まで上がりそうな気もしますが」

 

 押し寄せる悪魔達の後方に、幻影術式を応用した残り秒数の表示をしたところで、現在出現している悪魔の出現を停止させ、事前にリクエストされていた次の悪魔が出現する様に設定を変更していく。

 一時的に悪魔が居なくなった間に、先程まで銃火器や遠距離攻撃を釣瓶打ちにしていた、レベル15以下の新人技術部員や製造部員などの生産系部署に所属している黒札が、攻撃場所として設置している高台から降りて場所を空け、今度はレベル16以上の黒札が集まって迎撃の準備を始める。

 こうして私が運営側に回ったり、特に混乱も無く大量出現する悪魔を攻撃していたりする状況から分かる様に、技術部主催のイベントってのは、修行場異界の一部に作られたイベント用異界を使った〝レベル上げ大討伐〟の事。

 このイベント自体については、初期の生産技能持ちを一纏めで技術班と言っていた頃、部署毎に別れる前の〝生産系俺ら〟が、出来るだけ安全にレベル上げ可能な環境を用意する目的で、アイテムや魔法で遠距離攻撃するだけで良いという異界をリクエストしたのが最初。

 当時は専用式神を全員が所持できていた訳では無く、式神だけを修行場異界に遠征させる仕組みも無かった頃で、レベルを上げるなら自分で修行場異界に行く必要があるけど、そもそも戦闘が苦手だったり痛みに耐えられ無かったから生産側に回った訳で、だけど生産だけでは余りレベルが上がらないため、増え続ける専用式神や装備などの需要に供給が追いつかず、レベル上げを迫られる。

 そんな状況を少しでも改善する為の策として実施されたのが最初では有るんだけど、自作したアイテムや技術の試し打ちに使えたり、新人用のブートキャンプにも組み込んだりと何かと使い易い事も有って、何時しか有志による不定期開催だったイベントが、技術班として費用を用意して四半期に一度や隔月で開催される様になり、今では名義こそ技術部主催となっているけど、実際は生産系部署合同出資により月末定期開催され、出資している部署に所属していれば参加可能なレベリングイベントになっていると言う話。

 こう言う特殊異界はショタおじが用意してくれていた訳だけど、ただでさえ専用式神の作成などで忙しいショタおじの手間を減らそうって事で、このイベントについては、生産系部署所属の異界関連技術習得者が持ち回りで担当していて、今回私に声が掛かったのもその持ち回りが理由。

 

「それにしても、順番の繰り上がりで連絡する程度で決死の覚悟されるって、私は何と思われてるんですかね?」

「古参連中なら兎も角、新人辺りがレベル90超えてる修羅勢に連絡なんざ普通じゃ出来んだろ。個人研究勢だと他はどうでもいいって連中ばっかだしな」

「正直な話、毎回分身式神で見に来てるので、分身か本体かの違いでしか無いんですが」

「やってる事はどっちも変わらず宅飲みしてる様なもんだがな、つまみと酒貰って良いか?」

「構いませんけど、バフ掛かるのはこっち側の奴ですから、データ取りするなら気を付けて下さいな」

 

 今回のレベル上げ大討伐の休憩所を兼ねて、観戦し易い場所に作った座敷の一角に陣取り、さっさと次の設定も終わらせて煙管用の霊薬香を一服。

 監督者兼参加者の一人であるエドニキとプチ宴会しながらゆったりと観戦する傍らには、自家製の純米大吟醸〝蓬莱山〟などの各種酒と、チーズラビットや牛豚鳥、烏骨鶏の卵の燻製など用意した各種酒の肴が並ぶ。

 まあこのレベル上げ大討伐自体が毎度のお祭りみたいな物で、私以外にも純粋に宴会しながら観戦するために来てる人も居れば、霊力回復の休憩序でに宴会へ混ざって、回復したら攻撃場所に戻る人も居て、煙管吹かしながら酒飲んでる程度なら気にもされない程度だけど。

 そうしている内に参加者の準備が終わった辺りでカウントも終了し、出現したゴーレム系悪魔に各種魔法や遠距離攻撃が盛大に叩き込まれる。

 幾つものコードが繋がった機械の杖から霊子加速させた魔法弾を放っては、周囲を固めるメンバーと何やら話し合い、また別の属性魔法弾を放ったりと実地でのデータ取りをしている一団が居れば、一心不乱に同じ術を繰り返して練度を上げている者、交代で術を放ってはここ一ヶ月での成果を仲間内で発表し合う者など、先のレベル15以下の戦闘では見られなかった、個々の趣味嗜好による多彩な戦闘が、戦場に展開されるのを休憩所から眺める。

 

「やっぱ超人の域が見えるラインだと、ちょくちょく気になる技術も出てくるな。あっちで魔砲やってるやつは、霊子加速砲*3の応用か?」

「プログラムで術式補助する遠距離用装備みたいですし、リリカルのミッド式デバイスが元ネタと言った感じですかね。霊子加速させた魔力弾ならアクセルシューターっぽい感じになってますから、術式としても良い感じじゃないです?」

「だなぁ、弾速も威力もかなり上がってるのも悪くない。つっても傍目からの推測だが、マルチタスク辺りに改善点が残ってる感じだろうし、完成まではあと一歩ってところだろ」

「レベル上げてマルチタスク鍛えれば済む話でもありますが、プログラム方面で何とか出来るならそれも大事ですね。他だと……お、NINJA会*4からNARUTO系のチームも来てますね。今回は形態変化がメインっぽいですけど」

「ふむ、水で鮫って事は水鮫弾の術ってとこか、地面から槍とか出してるのは土遁だろうが、何だっけか」

「敵の足元から出現してますし、多分土遁の岩柱槍かと、確かアニメ版オリジナルの一つで、似た術だと土石筍とか言う筍みたいな尖った岩を出現させるのもあるらしいですね」

「アニメオリジナルか、漫画の方も確り覚えてる訳じゃねぇし、印象的な元ネタでもなきゃ他と混ざるな」

「アニメ漫画ゲーム小説と色々有りますし、大体似たり寄ったりな技や術って有りますからねぇ。NARUTO系の忍術は呼気と合わせて口から放つタイプが多いですから、その分は他と差別化できるだけわかりやすい部類でしょうね」

「だなぁ、俺の元ネタなんざやってる事は派手だが、内容は基本物理現象で再現以前のばっかだしな。元ネタで言や探求ネキの方はどうなんだ?封神演義の宝貝(パオペエ)なら他と被るって程じゃねぇと思うが」

 

 何度も参加している組にとっては、自身の研究に活かせるアイディアがないか、或いは技術開発室のデータベースで調べたり、直接話を聞きに行く切っ掛けになる様な目を引く物がないかを探す場でも有り、参加回数が少なかったりレベルが低い新人組にとっては、レベル上げのモチベーションにもなる16以上の戦闘時間も程々に経過した頃。

 粗方見回して、気になった技術について意見交換していると、元ネタ関連で疑問が湧いたのかエドニキが話題を振ってくる。

 ちなみにエドニキ自身は、ホムンクルス関連とか真理の扉だとかの一部を除けば、過程の一部以外は基本的に科学的な再現も可能だったりするため、演出的な部分も含めた一部の方法さえ再現出来てしまうと、過程と結果の理論を組むだけでサクッと再現出来てしまったらしく、元ネタ関連の研究優先度は低いらしい。

 

「見た目は兎も角、効果で似たようなのは有ったりしますから、簡単な物なら幾つか作った事は有りますし、自分で使うレベルのも一応、私の見た目に合わせて〝霧露乾坤網(むろけんこんもう)*5〟は作りましたね。元ネタ通りの機能を詰め込めるだけの素材が最近出来たから、と言うのもありますが。ただ作ったのは良いんですけど、汎用性も高くて便利な分、装備頼りで腕が鈍りそうなので、基本的に戦闘では使わないようにしてます。ちなみにこの髪飾りがそれですよ」

「元ネタくっそ強い宝貝だった気がすんだが、マジで普段はただの髪飾りなんだな。言われて確認してようやく分かるってんなら、装備状態じゃねぇってこったし」

「霊力を流してない時は、封印状態になる様設定してますからね」

 

 なお宝貝に関しては、ちょっとした再現装備なら既に幾つか作って、ガチャなり購買部なりに流しているんだけど、それらは言ってしまえば、他の作品でも似たような効果があったりする限定的な性能の物で、作成に使用した素材も購買部で買える程度の素材を使っているため、殆ど息抜きに作った程度の話。

 これが〝打神鞭〟の様な、元ネタだと大気を操る能力みたいに範囲が広い物だと、作成に使う素材の霊格も相応に高い物が必要になる訳で、高レベルのフォルマを大量に使用してまで作ろうと言う気が起きなかったのもあって、後回しにしていたと言うところ。

 そんな状況だったんだけど、思い付きから誕生した合金樹を合金化した後の見た目から、宝石を混ぜ込んで特性を強化出来ないか試した結果、宝貝のベース素材として使えそうな属性特化の合金木が出来たのもあり、作り上げたのが髪飾りにしている霧露乾坤網。

 性能としては、純水の生成と操作、水の結界による自動防御が基本で、装備者のレベルや霊力操作技術により、水の生成量や操作精度、水結界の防御力が変化するようになっていて、装備者が〝水〟に関する概念能力や権能を使える場合、その力の行使を補助する機能も追加している。

 ちなみに形状を簪にしたのは、元ネタだとどんな形状なのか不明で、常に浮いている水その物が宝貝だとしても、装備の付け外しや譲渡などが面倒だと思ったのが理由だったりする。

 

「そんで、宝石と合金樹を混ぜた属性特化、つーか属性概念合金って感じだが、使える当ての多い合金が出来たもんだな」

「材料費的に採算が合うのは、概念レベル以上の装備に使う場合ぐらいですからね。各種概念霊装を作りやすい素材として登録しておく予定です。名称としては〝宝晶合金木*6〟辺りがわかり易いですかね?私の宝貝に使った素材なら〝水撃宝晶合金木〟、略称なら〝水撃宝木(ほうぼく)〟って感じにしましょうか」

「あいよ、登録されたら色々試してみっかな……っと、そういや合金木関係で思い出したんだが、アダマントス合金木、【刈り取る者】以外のフォルマでも同質の素材作成に成功したぞ」

「流石に早いですね、冥府関係当たってみるとの話でしたけど、そっちです?」

「地獄湯支部長の阿紫花ニキいるだろ?そこ経由でマッカ払って融通して貰った感じだな」

「なるほど、確か専用式神に【魔神・マヤ】の分霊入れてましたね」

「細かい配合や手順は登録してっから後で購入でもしてくれ、とりあえず死神系列のフォルマなら問題無いが、アダマンタイトの出典的にギリシャ神話系が楽だったな。後は、〝冥府の守護桃貨〟の話したら、閻魔関係に信仰MAGが行くってんで、マッカ払いでの素材仕入れも可能になったぞ。つーことで、量産が決まったから、手が空いてる時は手伝い頼むな」

「作れる面子も少ないでしょうから、それは構いませんが、こっちで使用する分も追加で購入出来ないか、後で相談しに行きますかね。他で代用可能なら【刈り取る者】のフォルマを他の研究に使えますし――っと、それよりそろそろ次の準備に入りましょうか」

「ん?確かにそろそろ限界っぽいな。そんじゃちょっくらレベル上げに行ってくるかね。量産の方は助かる、細かいのは事務方に回しとくぜ」

 

 現在戦場に居る面子の攻勢が弱まって来た辺りで次のカウントを始め、大体のリソースが尽きた辺りでゴーレム系悪魔が全滅し、次の組であるレベル45以上を対象とした50突破と、既に50以上で少しでもレベル上げをしたい生産組のためのステージが開幕する。

 出現する敵は、レベル50以上突破を目指しているだけあって、修行場異界の下層に出現するのと同じ悪魔達。

 なお、今回は始めから下層の悪魔と戦うステージも予定していた事から、イベント用異界を構築する時点から設定していたギミックにより、悪魔の持つ概念域以上の力が発揮されないようになっているため、概念的な相性や権能による無効化などを気にせず戦える仕様になっていたりする。

 

「んー、やっぱりギミックや概念系の対策が出来れば、下層でも戦えそうな人は居ますねぇ。その辺するより研究して物作りしてる方が好きだから、生産組なんですけども」

「そう言う探求ネキも、個人研究勢の一人として生産組ではないのかしら?」

「私らの様な新参修羅勢だとあんまり接点無いもんで、折角の機会ですし、お話でも聞かせて貰えませんかね?」

「おや、大蛇丸ニキに鬼鮫ニキですか。話は構わないですし、そこの酒や肴は好きにつまんで良いですよ。それで私が生産組かどうかってところですけど、私の場合物作りしているのは、出来る事を増やす一環ですからね。私は私という存在が何処まで出来るのか、何処まで行けるのか、それを積み重ねて行くのが楽しいから、色んな事に手を出してる訳ですし。それより、新参とか態々付ける辺り、中層試験を突破したばかりと言った感じですかね?」

「ええそんな感じで、今回の大討伐でようやく30後半に入った程度*7ですがね」

「私達なりに忍術研究や忍具開発しながらだもの、レベルの上がりが遅いのは仕方ないわよ」

「研究や基礎鍛練を重点的にすると、レベルの上がりが遅くなるのは普通ですからねぇ。と言うかそれをせずにレベル50超えられるのは、闘神や武神みたいな個人戦闘に特化した起源を持つ黒札か、襲い来る厄ネタをどうにか切り抜けた、所謂〝運命愛され勢〟ぐらいですよ?ガイア連合に参加する事が出来ず〝厄ネタを切り抜けられなかった俺ら*8〟も、結構いたのは各地で確認されてますし」

「そんな物ですかね。しかし実感が籠もってますが、探求ネキも研究や鍛練に時間を掛けた口で?」

「他が半年程度で30超えてる状況で、一年以上掛けましたからね。その分対応力が上がったおかげで、下層試験に躓く事もなく順調にレベルを上げられていますから、時間を掛けただけの意味はあったと思ってます。ただまあ今の情勢的に、基礎固めに時間を掛けてる余裕が少ないのがお二人、いやチーム暁としての問題点ってところですか?」

「流石に分かりますか」

「探求ネキの言う通りよ。中層試験を突破したとは言っても、赤字覚悟で装備もアイテムも使い潰して何とかと言ったところだもの。チームで潜ってるのもあって、中層の前半でも何とかなってるけど、地力が足りていないってのは感じてるわ」

「さっきの戦場で、NARUTO関係の忍術を鍛練しているところも見てましたからね。ふむ、話すなら数値が見えた方がわかりやすいですね」

 

 チーム暁が戦っていた時の情報を異界内の過去履歴から抜き出し、手元の端末で幾つかの項目にまとめてデータを整えた後、袖の内側に拵えた収納ポケットから取り出したタブレット二つに表示させ、二人に手渡す。

 

「見た感じ威力はレベル相応ですけど、霊力操作の練度がレベルに追いついて居ないため、術一回の消費が多くなってるみたいですね。後、操作精度が上がってより明確な形を作れるようになれば、形に意味を与える事で一段上の足がかりに出来そうってところですか」

「唐突にトンデモな物を渡された気分なんですが、いつの間にこんな物を?」

「異界内で起きた事象を情報として記録して、閲覧可能にする術式を付けてますから、専用アプリをガイア連合のサーバからダウンロードして、各種情報を登録したらそこの情報ぐらいなら見れますよ?イベント用異界の告知とかで、解析可の記載されている異界については、この術式を組み込む決まりになってますから。ただ、より詳細な情報を得たい場合は、個人で解析能力を向上させるか、専用の解析装置でも用意する必要がある点には注意ですかね」

「そんなアプリとか機能とか初めて聞いたのだけど……」

「あー、この手の黒札用の特典とかについては、ガイア連合の専用サイトにある黒札用のページに掲載されてますから、そこを確認した方が良いですね。加入直後に色々説明しても、禄に聞かなかったり難癖付けてきたりするのが多いもので、加入者が増えてきた頃に、サービス受けたいなら自分で調べてこいって方針に変更されたんですよね。さっき渡した情報も、興味無い黒札にはどうでも良い話ですし」

「なんとまあ……。それにしてもそうなると、色々と見落としてる物が多く有りそうですね」

「それについては後でチーム全員で調べましょ、今はそれより地力上げや基礎固めに関する話が優先よ。やっぱり問題は、霊力操作に有るわよね」

「なるほど、話のメインは【分身式神】の教導依頼ってところですかね?問題点自体は把握していたみたいですし」

「わかりやすかったですかね。仰る通り修行効率化のために、技術指導をしてくれる人を探していたのは有ります。私ら的に、影分身の術を共同研究してくれる人ならより良い結果ではありますがね」

「正直、ただの【分身の術】なら陰陽術の思業式神を参考にして出来ては居るわ、思業式神が元なだけに未覚醒者には見えないけどね。でも経験を還元する仕様を組み込むってのが難しくて、同じ事している【分身式神】からどうにか出来ないか研究中ってところよ。流石に探求ネキに教導依頼出来るほどの資金も無いし、アドバイスでも貰えたらってのが本音ね」

「チーム研究の方がメインでしたか。まあ修行で影分身の術を使えたらってのは、NARUTO知ってるなら思いますよね。んー、分身関連でちょっと思い付いた事も有りますし、共同研究序でにアドバイスやちょっとした指導ぐらいなら引き受けますよ。興味を引くネタ提供のお礼って事で、都合の付く日を擦り合わせておきましょうか」

「思ったより好感触な様で何よりですね。とりあえず私らの連絡先はこちらにお願いしますよ」

 

 詳細は後で詰めることにして、大まかな予定を確認してアドレスを交換し、メンバーと合流するとのことで二人が席を立った後は、戦場の方でエドニキを含めた古参の生産組が、盛大にリソースを吐き出しながらストレス発散している光景を眺めつつ、宴会してレベル上げ大討伐が終了。

 後日、チーム暁との約束通りに影分身の術の共同開発と、【分身式神】を含めた技術アドバイスなどを行ったところ、チーム暁の成果として【影分身の術*9】が完成し、私の思い付きから【木遁・木分身の術*10】が完成する事になったけど、【分身の術】や【影分身の術】は兎も角、木遁の方は権能を下地にしている部分が大きいため、習得する為の前提条件が厳しいのが難点だろうか。

 まあ技術習得に前提となる知識や技術、能力が必要になることなんてよくある事だし置いておくとして、新しい交流で出来る事がまた一つ増えたと言うことの方が大きな話。

 

「今を楽しめる心の余裕ってのは、やっぱり大事ですよね」

 

 今日もまた、やるべき事は熟しつつ、新しい発見や面白い事が無いか探し求めて色々な場所へと足を運ぶ。

 時々厄介な事態や面倒な案件に巻き込まれる事も有るけど、それもまた思い出の一頁という物だろう。

*1
『041:変化の良し悪し』にて登場した、使用者を中心に使用者ごと属性範囲攻撃で薙ぎ払う大威力消費アイテム。

本来なら使用者には影響が出ないように術式で制限を掛けるところ、あえて使用者を効果発動の起点とした生け贄の術式を組み込む事で、下位素材でも【マハラギダイン】の様な大威力広範囲を可能としたシリーズ商品。

商品名は、火炎自爆弾や氷結自爆弾のように、属性+自爆弾の形式。

*2
『【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録』様の〝デモニカと岩手支部(仮)2〟より、数が多ければとりあえずで使って役に立つ事から、セツニキのお気に入りの一つになったらしい。

*3
『【カオ転三次】業のままに叫ぶ歩み』様より、ニヒトニキの使うルガーランスで各種実戦データを得て改良された技術。

*4
古今様々な作品に登場する忍者の道具や術を再現したり、開発するのを目的とした集団。

作品毎にチームに分かれており、それぞれで実戦テストもする程度には武闘派な生産組。

*5
藤竜版封神演義にて、竜吉公主が使用する純水を操る宝貝を元ネタに、機能再現した水を操る霊装であり、【水の権能】を補助する神器。

津波に匹敵する量の水も生成可能な上、水の精密操作に広大な射程範囲を持ち、純水を用いた結界による高い防御力も備えた汎用性の高い宝貝で、形状は簪。

*6
合金樹に宝石を混ぜ合わせる事で、各種属性概念に特化した合金木。

名称形式は〝属性+宝晶合金木〟で、例としては〝火炎宝晶合金木〟や〝電撃宝木〟と言った形。

宝石としての概念を継承させる事も可能で、宝石そのままよりも強度があるため、属性霊装や宝石魔術などへの使用に適した素材。

*7
『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』様より、半終末後にはチーム暁の四人ともレベル50を超えているとの事から、時系列的に修羅勢入りした後ぐらいとしてます。

*8
シェアード・ワールド的に事態の中心になってしまった俺らの事で、言ってしまえば、他三次作の主人公など。世界線の違いによっては、探求ネキも生まれなかったり、メシア教に捕まって出荷されてた可能性が有ると言う話。

*9
NARUTOの忍術を元ネタにして、【分身式神】をベースに研究し完成した独自設定スキル。

術者の影を触媒として擬人式神を構築し、術者の分霊を憑依させる事で、術者と同様の見た目と言動を行う影法師を作り出す術。

影を触媒とする関係から、思業式神と同程度の耐久力になる制限も有るが、【分身式神】と同様に、分身が消える際に記憶や経験などを還元する仕組みとなっている。

*10
NARUTOの木遁忍術を元ネタとして、【影分身の術】の派生として完成した独自設定スキル。

霊力で創り出した樹木で分け身を作り、術者と量子的な接続を構築する事で、常に情報のやり取りが可能な上、霊的な繋がりに寄るものでは無い事から、霊視などによる本体の探知が難しい特性を持つ。

また、常に意識が繋がっている事から、分身側でペルソナ能力を発動する事も可能になっており、本体とほぼ変わらない力を発揮する事が出来る。




拙作の基本方針として、登場するまでは居る可能性も、居ない可能性も併存しているため、後から他三次作様のキャラが居たことになり、影響を受けていた事になったりする事もあります。

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