【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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049:コミュニケーションの形は色々

 七月、一年も半分を過ぎた節目であり、季節も夏へと変わる変化の頃、ガイア連合にもちょっと大きめの変化が訪れようとしていた。

 ガイア連合と自衛隊が協力関係を結んでから三ヶ月、各種装備の提供や実働データのフィードバックなど、適度な距離を取りつつ互いに利益を得られるビジネスパートナーとして、上手く付き合えていると思われていた矢先、一部の黒札が恐れていた情報が掲示板を賑わす事になる。

 五島陸将曰く、日本と国民をメシア教の魔の手から守る為には、現政権にクーデターを起こすぐらいの強行策でなければ間に合わない、との事。

 ぶっちゃけて言えば今の政府だと終末を防げないから、一緒にクーデターしてメシア教と全面戦争しようぜ!って話なんだけど、それを可能だった分岐点って、多分第二次世界大戦辺りだと個人的には思ってたりする。

 正確に言えば、帝都中を回って過去視で観た上での感想として、十四代目葛葉ライドウがメシア教により自害へ追い込まれる事態を防げなかった時点で、終末をどうやって阻止するかの話から、終末を乗り越えてその先を生きるためにどんな備えをするかの話になった感じ。

 そんな訳で、当然として五島陸将の提案は却下された訳だけど、言葉だけでは勝手に終末を始めかねないって事から、現実を見せるためにショタおじVS自衛隊という演習が行われる事になったのが数日前。

 序でに自衛隊に入れ込み過ぎて、クーデターしても何とかなると錯覚させてしまうぐらいに、物資などを過剰提供していた一部黒札へのペナルティも含め、ショタおじとの楽しい模擬戦が突っ込まれていたみたいだけど、ショタおじが楽しそうにはしゃいでいたから、それだけでも十分な結果じゃないかな。

 

「ショタおじが地脈を用いて強化召喚した大ペルソナ、【じゃあくフロスト】によるタルタロスへの影響としては、つい先日の満月で討伐した【刈り取る者】が再度復活していた事、大型シャドウも通路を徘徊するようになっていた事の二点が大きな変化で、小さな変化だとシャドウの出現数増加や、一般人が影時間に迷い込むケースが多少増えたと言った辺りですね。現状だいぶ奥まで攻略を進められているみたいで、低階層の方は数の増加もしていないので、修行場としての使用に問題は無さそうです」

「まあ、低層の方でもタルタロスまで鍛練に来る人、あんまり居ないんだけど。こっちから行けるベルベットルームの方も特に問題無かったし、表層的な影響は少なめってとこじゃないかな?楽観視は出来ないけどね」

 

 模擬戦がショタおじの勝利で終わったのは当然として、星霊神社以外で大規模な戦闘をする珍しい状況と言う事で、序でだからとある検証と探りも入れようとの話が、ペルソナ組や全国の地方支部にされており、その検証結果を報告しているのが今回の会合だったりする。

 内容としては、ショタおじが地脈も使ってペルソナを強化召喚した場合、現状確認されているシャドウ異界へどの様な影響が出るか、暗躍しているだろう某邪神などがどんな動きを見せるか、と言う物。

 観測した情報をまとめると、数日程度のシャドウ出現率増加や異界に取り込まれる人の増加という、シャドウ活性化の影響は確認されているが既に収束傾向に在る事、懸念の一つである某邪神や神取グループの残党が、国内で動いた様子は確認されなかった事から、今後は国外で活動している可能性も、視野に入れる必要があるかもしれないと言ったところ。

 ちなみに、検証データとして一番重宝されたのが、スライムニキ提供の各種データだった辺り、加入当初から最前線で調査と対処を続けてきた歴戦の貫禄を感じさせてくれたもので、調査や情報収集、データ解析と言った後方支援に集中して欲しいと、毎度のようにスライムニキ以外の意見が一致する訳だけど、レベル上げする事を含めても戦闘するなと強制出来るものでも無く、スライムニキの辛い仕事を率先して請け負う気質ばかりは、どうしようも無いのもいつもの事か。

 

「ん~、まぁ結論としては、大ペルソナまで行くとシャドウ活性化が僅かでも起きやすくなるってとこか。となると、余りペルソナの地脈強化はやり過ぎない方が良いね」

「逆に言えば、数日で収まる程度の影響って事だから、他の危険な手段よりマシとも思うよ」

「ボクとしては例の邪神とか神取とか例の邪神とかが、今回の件で絶対ちょっかい掛けてくると思ってたからね。そう言う意味だと、完全に透かされた思いだけど、まぁ居ないなら居ないに越したことはないってところかな」

「ま、眼に見えねぇ問題も有るかもしれんし、短期的には表面化しないだけかもしれんからな。少なくともシャドウの活性化って事は、野良ペルソナ使いの増加以上に被害者も増えるって事だ。乱用は危険と見るべきだろ」

「私的に終末が近い事考えると、多少の被害は目を瞑って野良ペルソナ使いの増加を狙うのも、悪くはないと思うかな?一時的に数十人の被害者が出たとしても、増えた野良ペルソナ使いが複数人救えるレベルになれば、結果として救える人は増えることになるしね」

「被害者を減らす仕組みを作った上でなら、悪くないとは思いますけどねぇ。私は承太郎ニキと同じ様に、長期的な影響を考えると使わない方に賛成ですね」

「えぇ~、ペルソナ使い少ないんだし、今あるシャドウの被害を減らす為にも、シャドウ活性化によるペルソナ使い増加は必要じゃない?具体的には、私達以外にもタルタロス攻略する人員とか!」

「お前、そのノリで声かけまくってるから、〝妖怪タルタロス誘い〟なんて言われてんだよ」

「あーあー、聞こえなーい!それより、リーダー!判決はいかに!」

「ねぇ、ところで一言くらい〝あんな強すぎる力を使って、体は大丈夫でなのか!?〟とか心配したりしない?〝強すぎる力の反動で……体が!〟とかなってる可能性考えたりしないん?」

「いや、ないでしょ」

「寝言は寝て言え」

 

 検証結果の情報を元に、意見の擦り合わせや方針の確認をしていたところ、素朴な疑問なのかどうなのか、ショタおじが自衛隊との模擬戦で発動させた秘術による、術者自身への影響に関して何故聞いてこないのかと、逆に尋ねて来た事で、場の空気が変わる。

 

「あっ、すいません。リーダー自身から話がなかったし、聞かない方が良いかと思ってしまって……。もしかして、結構辛い感じだったりするんですか?」

「うんうん!やっぱりスライムニキにはわかっちゃう?実はあの秘術使うとペルソナだけじゃなく肉体にも流れ込むマグネタイトの影響が出てね……。おかげで全身の激しい痛みや魂の消耗など、非常に大きなデメリットが――」

 

 最も、いやに饒舌な様子も合わせて、露骨な調子悪いアピールと言うだけの話で、激しい痛みと言ってもショタおじ的には筋肉痛程度だし、消耗したと言っても数日自己治癒力が低下した程度で、それも既に戻ってる頃合いだろう。

 そもそも、地脈と接続しての降霊と言う秘術に相応のリスクがあるのは事実だけど、同じ事自体は私も可能だし、一週間程度は普段通りと行かないだろうけど、それでも後遺症が残ったりするほどの事でもないのを考えると、ショタおじなら既に全快していてもおかしくない程度の影響と言ったところ。

 まあ、こうやって態とらしくアピールしているのを考えると、真剣に心配する役目はスライムニキに任せて、私達はもう一方を担当するのが友達らしいコミュニケーションってとこかな?

 

「……!そうか、今模擬戦を挑めば、いつもよりも勝率が高い……ってことか!!」

「おい、カヲルニキ」

「……!!天才か!」

「お前もか承太郎ニキ」

「つまり今は、千載一遇のチャンス!三人とも合わせて!」

「まずは舞台を整えましょうか!」

 

 全身の霊装を稼働させて柏手一つ、地脈と接続して戦闘可能な簡易異界を展開しつつ、スライムニキには影響が出ないように設定して戦舞台を構築、それと同時にカヲルニキと承太郎ニキが左右に散開しつつショタおじへと迫り、琴音が前面で私をカバーしつつ向かって行く。

 このレベルの戦闘ともなると、流石に言葉を交わしている余裕など無い物で、誰が何をどうしたいかを感じ取りながら、互いの動きを阻害しないように攻撃や補助、回復と連携を重ねていく事になる。

 まずは手始めに、音速を超えて疾駆する三人を霊感で知覚しつつ【ラスタキャンディ】による補助を掛け、いつの間にか〝黒雛*1〟っぽい何かを纏っているショタおじへ攻撃を仕掛ける間に、念のための保険として【木遁・木分身の術】を発動しておく。

 発動した補助が効果を発揮した瞬間、カヲルニキが槍を突き出し、承太郎ニキがペルソナでのラッシュを仕掛け、琴音が逃げ道を塞ぐように薙刀を振るうが、直後コマ落としの様に、カヲルニキと承太郎ニキが攻撃の上から叩き落とされ、振り上げた足が掬い上げる様に琴音を弾き飛ばす。

 予想通り三人がショタおじに迎撃されたところで、【大地の権能】を補助する目的で作った〝如意坤然履(にょいこんぜんり)*2〟を通して三人を【メディアラハン(回復)】させつつ一定ダメージ肩代わりの結界(大地の守護)を付与し、〝霧露乾坤網(むろけんこんもう)〟で作り出した超音速のウォータージェット(直径三メートル)に、炭素結晶粉末を混ぜ込んだアブレシブジェットをショタおじの直上から打ち下ろす。

 私が攻撃する間に、回復後即座に復帰した三人による遠距離攻撃も放たれ、再度全方位から攻撃を仕掛けるが、ショタおじから噴き出した炎により瞬時に燃やされ、極大の水蒸気爆発が簡易異界全体を鳴動させる。

 時間経過にして僅か数秒の超高速戦闘は、余裕の表情を浮かべ、多少すっきりとした気配を漂わせるショタおじの勝利で幕を閉じる。

 

「うーん、やっぱり事前準備も無しだと、一撃を凌ぐのも厳しいですねぇ」

「あの水流はちょっと驚いたけどね、霧露乾坤網だっけ?後水の宝貝以外も作ったんだね。分身の方も前とは違う物みたいだし」

「その分身関連で、【大地の権能】補助も有った方が良いかと思って作ったのが、この靴ですね。【木遁・木分身の術】のおかげで手札が一気に増えましたし、ここ最近だと一番の成果かもしれないです」

「二人ともすんごく和やかなのは良いんだけど、探求ネキは爆発か何かに巻き込まれてなかった?それに後ろの三人も……」

「大丈夫ですよスライムニキ。爆圧で地面に埋まってるだけですし、私の方で蘇生しておきますから」

「それ既に死んでるじゃん!?」

 

 慌てふためくスライムニキを落ち着かせつつ、最後の水蒸気爆発で簡易異界が吹き飛んだ後、庭先にめり込んでいたカヲルニキ、承太郎ニキ、琴音の三人を地面から引っこ抜き、【サマリカーム】を投げて蘇生させ、序でに庭を元通りに直しておく。

 なお、私自身に関しては、爆発で本体が致命傷を負った際、予めスライムニキの防護を兼ねて退避させていた木分身と入れ替わる事で、〝致命傷を受けたのは木分身だった〟ことにして回避した形。

 正直ショタおじとの模擬戦は、ある種コミュニケーションの一環みたいな感じなので、心配するほどの事でも無いんだけど、それでも安否を気にしてしまう辺り、スライムニキがペルソナ組の良心であり癒やしなのは間違い無い話だろうね。

 そんな感じでいつもの様に若干ぐだりつつも会合は一区切りにして、折角予定決めて集まったのだからと言う事で、山梨第二支部の鍛練場へ場所を移し、ペルソナ組らしくコミュを深める交流会兼地力向上のための鍛練を行う事に。

 

「今日はメイプルチョコを挟んだラングドシャとエッグタルト、アップルパイなど用意してみました。ショタおじやスライムニキは飲み物どうします?」

「お、今回は洋菓子系なんだ。なら夏だしアイスコーヒーにでもしてみるかな」

「じゃあ俺も同じので、ところで気になったんだけど、今まで〝神主〟呼びで通してたのを変えた理由とか、聞いても大丈夫?」

「教えを請う立場として、敬称で呼びたいと言う我が儘で〝神主〟と呼んでた感じですね。最近同じ、と言うにはだいぶ差がありますけど、超越者の領域に到達したのもあって、区切りとしてニックネーム呼びに変えたってところです」

「僕としてはニックネーム呼びで良かったんだけどね。指導した俺らは大体〝神主〟呼びになるんだよね、何故か」

「何故もなにも、霊格に差がありすぎて気を抜くと崇めそうになるから、役職名で意識を括って、上司に指導を受けてるだけと精神誘導して対処する様、マニュアルを作って新人に配ってるだけですよ?一部でメシア教バリの狂信者になりかけた俺らを、正気に戻すのは苦労しましたし」

「えぇ……」

「あーっと、そうだ。探求ネキの分身ってペルソナ使えたっけ?向こうで指導してるみたいだけど」

 

 あずかり知らぬところで起きてた事態に、引きつった表情を浮かべるショタおじを見かねたのか、ちょっと強引に話題を切り替えたスライムニキの思惑に乗っかり、場の空気を切り替える事に。

 

「ああそれについては、【木遁・木分身の術】で分身を作る事で、最近可能になった感じですね」

「観た感じ、今の探求ネキの分身は分霊と言うより並列――いや、多重存在ってところかな?分身を出してる状態だと、本体を倒しても分身を倒したことにしかならないみたいだし、ガチでやるなら面倒な感じだね」

「面倒と思われるレベルになったのなら、良い感じですね。あ、そうだ、模擬戦で黒雛っぽいの使ってましたけど、アレって甲縛式O.S.(オーバー・ソウル)を再現した感じで合ってます?」

「発想元はそれだね。精霊の火を触媒にして火の概念そのものを顕現させた、火の精霊王(スピリット・オブ・ファイア)的な自然霊を周辺の酸素を媒介にO.S.、それを魔晶変化で一時的な武具に圧縮構築して纏う事で、〝この世全ての火を司るモノ〟と言った概念霊装にした感じかな」

「観た感じだと、私の宝貝みたいな装備を即席で作った様な物と思ったのは、間違いでは無くても正解には遠い感じでしたか。ネタが増える度に乗算で強くなりますよねぇ……本当に」

「俺としては、あの一瞬にそれだけの事があったって方が驚きなんだけど?何で俺同格扱いされてるの……?」

「良いですかスライムニキ?調査や解析に後進の育成を出来る事は、十分な強さなんです。直接的に殴り倒せる面子なら修羅勢など色々居ますけど、斥候や作戦立案に事前準備を万全に出来る面子は少ないんですよ?」

「そうそう、スライムニキがガイア連合の幹部であることを疑問に思うのなんていないんだし、そろそろ前線に出るのは止めて後方支援に――」

「つまりレベルを上げて力が付けば、もっと皆の役に立てるって事だおね!」

「「おい、止めろ」」

 

 ショタおじからさっきのじゃれ合いで使用した技術についての解説を聞きつつ、お菓子を楽しみながら鍛練風景を眺めていると、相変わらず妙に自己評価の低いスライムニキが、現場猫――と言うかその元である電話猫――みたいに〝どうして?〟と困惑顔で懊悩し始める。

 まあスライムニキ的に、戦闘力的な強さが無いことはコンプレックスの一つであると同時に、古代から現代まで続く対話の基本が、武力などの力が背景に有るからこそ、会話による妥協点の摸索が選択肢に挙がると言うのを、無意識に理解しているからじゃないかと思う。

 シャドウの説得なら、人間的な精神性もあってまだ対話の余地もあるけど、それこそ悪魔交渉だと、会話するに足りる力が最低条件になる場合も有るぐらい、相応の力と言うものが求められる場面は多々あるのが実状で、いざそう言う状況に直面した際、何とか出来る可能性を増やすために力を付けておきたい、と言う心情はとても理解出来る話でもある。

 それはそれとして、直接戦闘に向いていない人と言うのは確実に居る訳で、スライムニキの場合は武力は信頼できる仲間に任せて、その仲間が十全に動き力を付けられる環境をサポートする方が、向いていると言うのがスライムニキ以外の共通見解だったりもする。

 なもので、事ある毎に後方で支援に徹したらどうかと勧めている訳だけど、この白饅頭、なまじギリギリな状況での生存能力自体は高いせいで、平然と無茶やらかす悪癖だけは、どうにも改善の兆しが無いのが頭の痛いところ。

 その上、現場に居ることで得てくる各種情報の精度が、他だと代替えが難しいレベルなもので、危険を押して現場に出なければ解決出来なかった事態が何度もあった事も重なり、本人の主張を全面的に却下する事も難しいと言う経緯があって、実に悩ましい話だったりする。

 とりあえず、スライムニキの悪癖関連についてはショタおじに対応を任せ、代わりにお菓子やら飲み物やらを追加しつつ、スライムニキの仲間を鍛える方に梃入れしに行ったり、カヲルニキや承太郎ニキと模擬戦したりと動き回ればあっという間に時間も過ぎて、それぞれ何かしら得るものがあった交流会兼鍛練会も幕を閉じる。

*1
『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』様より、〝転生ようじょ、中華の地を行く。③〟にて、幼女ネキが悪魔変身能力を魔晶変化により、物質として具現化させた技法と同質のもので、見た目的な元ネタである、麻倉ハオの甲縛式O.S.〝黒雛〟をショタおじがネタで再現した。

*2
藤竜版封神演義に登場する〝劈地珠〟の能力を参考にして、〝霧露乾坤網〟と同等の性能や汎用性を目指した霊装であり、【大地の権能】を補助する神器。

土石を生成したり地脈による回復や大地を隆起させる事など、大地の概念を意のままに操る事を可能にするオリジナルの宝貝で、形状は靴。

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