【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
ペルソナ組の交流会イベントが終わって七月も半ばを過ぎる頃には、予想はしていても当たって欲しくなかった事態に直面し、ガイア連合全体としても大きな動きを見せる時がやってくることになる。
「各地に封印されている日本神話の神々を、開放する作戦ですか?」
「自衛隊と協力関係を結んだ事で得られた情報から、メシア教の動きへ対抗する為に必要な、日本国内の地盤固めとして、と言う理由ですけどね」
「アレでしょ?海外の戦場で確認されたメシアンとレベル30以上の天使、自衛隊に提供してるデモニカ経由で結構詳細な情報集まったみたいだよね」
「それって、世界的なGPも上昇しているって事ですよね。もう上昇を抑えながら準備する段階じゃなくなったんですね……」
「そうなります。なのでまあ、GPの事も有って延期していた〝食欲界〟を創ろうとしている訳ですね」
「あ、そこに繋がるんだ。戦闘力高めなトリコ食材含めた生物を繁殖させる異界だっけ?」
「メインは肉食系生物の増産ですけど、悪魔みたいな情報生命体では無く、肉体を持った生命体ですから、生態系含めて世界を創るみたいなものなんですよね」
「随分と大掛かりな準備をしているのは、そう言う訳なんですねぇ」
ガイア連合として、メシア教への本格的な対策に乗り出した訳だけど、現状世界各地でメシア教が紛争を起こしてる関係で、日本国内は主流から外れたメシアンが大半と言う事も在り、基本的な戦略はメシア教主流派の目が日本へ向かないように裏工作をしつつ、注目されていない間に国内の霊的基盤をガイア連合で掌握して、終末直前に起こるだろうメシア教の侵攻に備えると言うもの。
序でに言えば、第二次世界大戦後、徹底的に霊能力者や組織を破壊された際、祀られていた神々や神域、大昔から封印されていた危険な異界なども、メシア教により雑に封印された事で、GPの上昇も相まって結構な被害が出ている事もあり、可能な限り対処していこうと言う話でもある。
そんな感じで対メシア戦線の準備が急ピッチに進められている訳だけど、ペルソナ組に関しては元から他の連合員が対応出来ない案件と言う事もあり、実のところ基本的には普段と変わらない日々だったりする。
最も、それは普段は学生でもある琴音や綴の話で、私の方は日本各地で自衛隊協力の下行われている作戦の、支援物資の生産協力や素材の提供をしたり、万一の場合にショタおじが星霊神社を離れる事も可能な様に、修行場異界の深層まで行ける様になった修羅勢のサポートとして、間引き作業をするために木分身の一体を常駐させたりと、分身の技術が進化してなければ、研究などに使う時間が削られていたぐらい、タスクが積み重なっていたりする。
まあやっておくべき事とやりたい事が色々あるのはいつもの事として、今拠点に創ろうとしている食欲界も、実のところやっておくべき事の側面を含んだ物で、目的の一つはアメリカ大陸から太平洋を通って日本に続く地脈から、メシア汚染されたマグネタイトの影響を濾過する事。
かつて私の拠点を用意しようと思い立ち、占術で良い場所を探した事が今回関係してくる訳だけど、私の拠点がその太平洋側から日本列島へ繋がる大きな地脈の中心に在り、上手く地脈と異界を繋げられれば、食欲界をフィルターとしてメシア汚染されたMAGを無色のMAGに戻す事も可能と言う話。
「そんな事情なので、本格的にメシア汚染された地脈が流れてくる前に、周囲の地脈が一度異界内を循環して濾過され、日本列島側の地脈に繋がる様に整備しようって訳ですね」
「地脈と繋げる所か、一度地脈全体を取り込む何て出来る物なの?」
「結果的に地脈の流れ自体が途切れなければ良い話ですから、少しずつ異界内を通る地脈の量を増やしていって、最終的に周辺全ての地脈がこの島を経由する感じですね。一応、地脈の繋がりを絶つことになっても、異界を存続出来る様に保険を用意したい所ですけど、そっちは食欲界の雛形が出来てからの話ですが」
「ああ、色々と忙しいのに大異界を創るなんて言い出したのは、完成まで時間を掛ける必要があるからなんですね」
「それで、その球体が食欲界の核になるって訳か」
「地脈と接続するとは言っても、基本は壺中天地と同じ様に、閉じた別世界な事に変わりは無いですからね」
宝貝作成にも使った属性概念特化合金木から、木・火・土・金・水に対応する物を集めて、循環の意匠を込めた寄木文様を作り、五行循環の寄木細工で中空の球体を作成したら、極点部分に太極図模様にした蓋を填め込む事で、異界となる直径二メートル程の球体が完成する。
続いて球体を作った余りの素材に、私の血肉などを加えて〝ダンジョンコア*1〟を作成し、食欲界の核として構築情報などを組み込んだら球体内へ入れて蓋を閉じ、球体に太平洋側から来る地脈の一部を繋ぎ、内部で循環した後のマグネタイトを日本列島側の地脈へ繋げ、地脈の途中にフィルタとしての異界を組み込む術式を起動させる。
地脈からの膨大なマグネタイトが流れ込んだのと合わせて、内部に入れたダンジョンコアを要として構築していく訳だけど、今回の異界作成で気を付ける点は、循環する地脈の一部に組み込むため、段階的に流れ込むマグネタイト量が増加していく事。
増大していくマグネタイトを異界内部で受け止め、メシア汚染された
「食欲界の雛形は出来ましたね。後は地脈から流れ込むマグネタイトに合わせて、中心天体が拡大していけば、拡大幅に応じて月や太陽などの距離も等間隔を維持しますし、時々様子見するぐらいで大丈夫でしょう」
「お疲れ~、後の予定は、内部に発生する様になる天使を処理する方法だっけ?」
「確かメシア教に汚染された地脈からだと、天使がいくらでも出現してくるって話でしたよね」
「実際に海外では確認されてるらしいですからねぇ。食欲界内部でもそう言った悪魔の出現は想定されますし、基本は肉食系のトリコ食材とかが捕食する事で、処理する感じを目指す予定ですね。ただまあ、際限無くペ天使を食べさせると変な事になりそうですから、ちょっと細工を施す必要がありましたけどね」
具体的には、中心天体の内部を地脈が通る間に
そのための対策として、摂食した対象の属性が
つまり、侵略的外来種に対処する場合、一番良いのは〝それを消費する環境を整える事〟と言う訳で、メシア汚染された地脈から実質無限沸きするらしい天使を、食欲界に生息する食材達の餌として消費させ、序でに高レベルの天使でも対応出来る様に強くしつつ、強くなるほど美味しくなる様にしようと言う目論見である。
「でもこれで、ガララワニ*2とかも食べたい時に獲りに来れるって事だよね。時間的にどれぐらい掛かりそう?」
「今も異界内は加速掛けて動植物を成長させてますから、一ヶ月もすれば一応狩りに行ける感じですね。周辺地脈全体の取り込みは三ヶ月ぐらい掛かる見込みですが」
「規模を考えると随分早いですね……あ、狩りで思い出しましたけど、モンハン系の生物も作ってませんでしたっけ?」
「そっちも食欲界で増やす予定ではありますね。一応大陸を分けて生態系が混ざらない様にはしますけど、飛竜種や鳥竜種などは肉としても素材としても良い物になるかと思います。古龍関連は再現しようとすると、元ネタ的に存在が悪魔側へ寄ったり、環境影響が大きすぎたりするので、流石に諦めましたけど……」
元々は悪魔変身能力者の食糧事情改善のために、トンデモ植物が多いトリコからネタを拝借していた関係で、新しく美味しそうな食材を研究する際、まずはトリコ関係で再現出来ないか考える事が多いけど、実のところ単体で創るだけなら可能でも、飼育や繁殖が難しくて断念してる研究も結構あり、その一つがモンハンシリーズだったりする。
元ネタからして飼育や牧畜より狩猟をメインにしている様に、その辺のイメージが影響するのか、基本的に家畜としての繁殖適性が低く、一部草食獣なら何とかと言った感じだけど、それを新しく畜産に組み込める様に設備などを用意するぐらいなら、既に設備などのシステムが出来ている家畜を増産する方が良いのでは?とも思う話。
そんな訳で、肉食系トリコ食材の事もあって、いずれ食欲界を構築しようと考えた頃から、トリコ食材をメインとした生態系の大陸と、モンハン系動植物をメインとした生態系の大陸を目標に、色々と研究して完成品のデータだけは用意していた事もあり、食欲界のダンジョンコアに組み込んだデータを基に、現在それぞれの大陸で生態系が構築されていっている。
「あ、古龍の研究は断念したんだ」
「今はリーガルマンモス*3の研究が大詰めで、元ネタの巨体とそこまで育ち維持する為の食料を考えると、食欲界ぐらい広大な異界でもないと試すのも難しいですからね。古龍は古龍で浪漫がありますけど、食材として見ると悩ましい感じもしますし」
「「あー……」」
琴音と綴が二人して何とも言えない表情をしたのと同じぐらい、モンハンの古龍に食材的なイメージが湧かないのもあって、食欲界らしく食材になりそうな動植物を優先する事にしたのも、断念した理由の一つ。
ただまあ今回みたいに、メシア汚染された地脈から実質無限沸きする天使の処理に利用する事を考えると、環境影響力や個体の強さ的に、古龍の一種や二種ぐらいは完成を目指すのも、考えるべきかと思うところ。
下手に強力な天使が出現して異界内を荒らされても困る訳で、それを対処出来るぐらいに飛び抜けた個体か種族を用意するのも、今後の懸念として置いておく事に。
そんな感じで異界構築に一段落が付いた辺りで、適度に雑談しながらも鍛練に精を出している二人の様子に目を向ける。
「さて、こっちの作業はだいぶ終わりましたけど、【甲縛式O.S.*4】の鍛練はどんな感じです?」
「私は【タナトス】だけなら一応形になったかな。流石に他のペルソナを自在にってのは時間も技術も足りない感じ」
「武器が同じ火炎属性なおかげで、こっちも何とか形にはなりました。まだまだ改良出来そうな感じはしますけど、それでもいつものペルソナ発動より消費は少ないのに、出力が上がってる感じがあります」
「一応でも形になったのなら良い感じですね。まあ強度が足りないと弱点になりかねないので、実戦で使うのはもう少し練度が上がってからになりそうですが」
「そりゃO.S.を破壊されると、物理的に心を折られるみたいな物だしね。精神系の状態異常無効とか関係無しに、ダウン状態なるのは、余り経験したい感覚じゃないよね~」
この間の会合&交流会で、ショタおじから技術指導して貰って習得した【甲縛式O.S.】を、今度は私から琴音と綴の二人に教えた訳だけど、レベルが高いだけあって特に躓く事も無く、技術自体は習得出来た様子。
とは言え、使える事と使い熟せる事の間には大きな差があるため、実戦で使用可能になるまでには、まだしばらく掛かりそうな感じではあるが、現在のタルタロス攻略状況的に、戦力増強が急務と言う程切羽詰まっている訳でも無いので、今は確実に習熟させていくところだろう。
ちなみにこの技術、主にペルソナ組用の技術と言う事になっているけど、実のところ元ネタのシャーマンキングと同様に、降霊術系統の奥義と言える代物なのだが、メガテン系世界的にGPが低い環境なら兎も角、異界などでは普通に仲魔として契約して、サマナーした方が自由度が高い訳で、降霊系統自体の難しさもあり、ショタおじ的には積極的に広めるつもりもないネタ技術感覚だったらしい。
自身のペルソナを物質化する関係上、O.S.した物を砕かれると術者の精神にダメージが入り、ゲーム的に言うところのダウン状態となるわけで、復帰するまでの短時間とは言っても、全属性が耐性無しの状態かつ、確定で痛恨の一撃を受けてしまうようなデメリットがある。
元々ペルソナを鎧として纏うペルソナ使い自体、ペルソナの弱点属性を受けたり痛恨の一撃を受ける事で、ダウン状態となるリスクがある戦闘スタイルであり、【甲縛式O.S.】を使う事によるデメリットの増加は無く、純粋にメリットだけなのでショタおじから指導も受けられたと言う話。
なお、通常の降霊術系霊能力者として、ペルソナを肉体に憑依合体させている場合も、装備などで対策した耐性を貫通されてペルソナの弱点が突かれると、ダウン状態になったりする点は同じなため、【甲縛式O.S.】によるデメリットもわかりやすく表面化したと言うだけの話で、肉体を通して力を発揮する工程を省くことによる高速化と、圧縮し集約する事による概念出力の向上が可能な事もあり、恩恵のある技術と言える。
それに、媒介とする武具などにペルソナの弱点属性をカバーする性能を持たせることで、ある程度対策も可能な事を考えると、習得しておく価値は十分にあると思う。
「技術としての習得自体は出来た訳ですし、次は完成度を高める為にも、ペルソナから引き出す力を色々考えていきましょうか」
「私だと【剛毅 プロメテウス】ですから、〝剛毅のアルカナ〟としてと、〝プロメテウス〟と言う神格の側面から、連想できる要素を集めて、物質化させる工程でどんな効果を持たせるか、検討する訳ですね」
「それってワイルド持ちだと地獄じゃない……?」
「別に全部しないといけない訳じゃ無いでしょう。よく使うペルソナの分だけでも良いですし、ワイルドの特性的に、ペルソナチェンジを前提とした【甲縛式O.S.】を構築しても良いと思いますよ」
「あ~そっか、物質化する事で能力固定のイメージになってたけど、確かに可変式を前提にするのも有りだよね」
「元ネタからして、揺るぎない実体と現実に囚われない変幻自在の両立みたいな、対極的な技術を要求されてましたし、何が出来るかも大事ですけど、何をしたいかも考えるべきでしょうか」
「そのためのお茶会という訳ですよ。思わぬところから発想が出てきたりもしますし、囚われ過ぎず好きに話しましょう?」
そんな訳で修行の一環と言いつつお茶会をした夏の昼下がり、今年も後半分、無事に過ごせることを願うばかりである。
本種の肉はワニ肉の中でも最高級で、ブランド和牛のサーロインにも匹敵する脂のノリと旨みがある。硬いウロコに強靭な牙と鋭い爪を持ち、そのアゴの力は3トンを超える。
二本の鼻は全て硬い筋肉で、牛や豚の舌の様な食感があり、十二個ある胃で殆どの物を消化する事が可能。
体内には全ての肉の部位の味を兼ね備えた〝宝石の肉(ジュエルミート)〟と呼ばれる肉が存在しており、その場所は個体によって異なる性質が在る。
物質化させる過程において、ペルソナの持つ象徴的な力を強化増幅したり、概念的な力を引き出したりと、術者の技量や発想力によって、様々な効果を持たせる事が可能となる。
また、〝ペルソナを纏い鎧にする〟との概念自体は同じで在るため、物質化した部分以外に攻撃を受けたとしても、生身で受ける様な事態にはならない。
なお、降霊術系霊能者として、ペルソナに寄らない肉体の強さを持つ場合、あえて〝鎧として纏う〟概念を削り、その分を他に回すことで、より出力を高める事も可能。