【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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058:〝そう言う物〟と言う概念の有り難み

 極寒環境区画で出てきた、漆黒米の懸念点に関しては後に回すとして、次は高度の分だけ強くなっている、太陽光の影響を集約した高温区画で、先の区画ほどでは無いけど極端な温度変化をさせている場所になる。

 ここでは、その温度を利用したベジタブルスカイの再現作物――正確には場所――を構築しているのだけど、漂ってくる香りからの印象では上手くいっている様子。

 

「揚げたてのジャガイモの香りが常に漂っているってのは、思ったより腹に来るなぁ……」

「空腹を感じるだけまだ若いって事じゃない?年取ると油の匂いだけできついって言うし」

「前世で三十路越えた頃から、匂いは兎も角、量は厳しくなってましたね。まあ今は【食没】で摂取した栄養が全てマグネタイトに変わるので、胃もたれも太る心配も無く好きに食べられますが」

「そう言われると羨ましく感じるが、まあ余裕が有れば習得を目指してみるとして、今は成果を確認するとしようか」

「これだけフライドポテトの香りが充満してるなら、〝ポテトの泉〟は十分上手くいってる気がするけどな」

 

 カズフサニキが言ったように、ここは元ネタのベジタブルスカイに登場し、説明的には地上で形成される流れはあっても、雲の上でどうやって形成されて維持出来てるのか不明な、〝ポテトの泉〟の構築に挑戦した区画。

 まあ元ネタのトリコでは、ウール火山の火山灰が恒常的に供給され、ベジタブルスカイを構成しているみたいな話だったことを考えると、高温の火山灰が集まって形成されたと考えるのが良さそうだけど……。

 兎も角、〝ジャガイモをフライに出来る程に高温の、菜種油で出来た泉〟と言う条件を満たすため、この区画には降り注ぐ日差しの熱を集めており、区画内の各所に熱を分配しつつ、最終的に菜種油の泉を高温に保つ仕組みを構築している。

 ここの構築に当たっては、逐一手を掛けないと維持出来ないなら、再現として不十分だろうと言う意見で一致したため、構築した後は全自動でポテトの泉を形成する様にした事により、泉を満たす油やフライドポテトになるジャガイモの作成から入る事になったのは、ある意味仕方のない話だろうか。

 構築するに当たって、まず問題として挙がったのが、ジャガイモが常に油で揚げられ続けているにもかかわらず、極上の味を保っている状況をどう再現するか、と言う点。

 次ぎに挙がったのは、どうやって泉の規模まで菜種油を溜めるのか、そして本来地中に出来る塊茎であるジャガイモを、どうやって根から切り離して泉まで運ぶのか、最後に他の作物は【クラウドゴン】を構成する雲から、直接水分を吸収しているため不要だったが、液体の油を雲の中にどうやって集めて留め置き、尚且つ揚げ物に使える温度まで上げるのか、と言った辺り。

 そこでまずは、環境の構築でどうにか出来る点と、作物側を〝そう言う物〟として創り出さないとどうしようも無い点を探る事になった。

 まあ気分的には、ピタ●ラスイッチみたいな仕掛けの玩具を作る感じだったけど……。

 それは兎も角、あれこれ図面を引いて、模型を作って動線を確認してと試行錯誤した結果、ジャガイモを泉まで運ぶのについては、ジャガイモに自切の性質でも付与出来れば、地下水みたいにジャガイモの下に菜種油を流す事で、油の流れに乗って泉まで運べるだろうと言う結論になり、創り出したのが〝千本熱芋(せんぼんねついも)*1〟。

 一方油の方は、通常の菜種油を取り出す方法の様に、圧搾などで搾油をする構造だと、動力となる構造をどうするかに加え、目詰まりなどを起こす可能性が常に有る事から、環境構築による自動化には向かないだろうと言う結論になり、自然環境だけで搾油可能なレベルの性質を持たせた植物として〝陽向菜(ひなたな)*2〟を創り出す事になった。

 そんな感じで私が作物の用意をしている間に、KSJの三人は最後の問題である液体を雲の中に留め置き、必要な熱量まで加熱する土台作りに取りかかる事に。

 まあこっちの土台に関しては、流石に偶然泉が作られるような外的要因を集めて、トライ&エラーなんてしていられないため、陽向菜と千本熱芋を植えた後は、自動で泉が形成される構造として作るのでも問題は無い話で、そうなると後考えるのは、使用する素材と実際の構造をどうするかの二点。

 構造材は元ネタに準拠して、火山灰にミネラルなどの栄養素や塩分を加え、溶結凝灰岩として創り出した〝ウール石*3〟を使用。

 全体の構造としては、油を排出する程度の温度に調節した陽向菜の栽培場所を起点に、ウール石の管に〝陽向菜油(サンライトオイル)〟が落ちるようにして泉の場所へ運び、泉に十分な量の油が溜まったら、設定した熱源による対流と油圧で、千本熱芋の栽培場所に油が流れる様にする。

 後は、千本熱芋の栽培場所に流れ込む油の温度を、栽培に適した温度に調節すれば、旨味の詰まった塊茎が自切する事で油に乗って泉まで流れ、泉の高温になった油で確りと揚がったフライドポテトが常に溢れる〝ポテトの泉*4〟が、出来上がると言う形。

 

「塩味が濃くなり過ぎないか心配でしたけど、思ったより丁度良い感じですね。外はカリカリ、中はホクホクでいくらでも食べられそうです」

「匂いを嗅いだ時は胸焼けしそうに思ったが、実際に食べてみると意外にさっぱりしてるな。凄くビールが欲しい……」

「凄く同意するけど、それは一通り確認が終わってからだね。見た感じ稼働に問題は無さそうかな」

「ああ、模型でも確認した通り、目詰まりなどをする様子も無いし、ポテトの泉は成功と考えて良いだろうね」

 

 全員でフライドポテトをサクサクしながら見て回り、不安要素のあった場所も問題無く稼働しているのを確認し、ポテトの泉は完成として、それぞれ一抱え程度に取り分けたら次の場所へと向かう。

 極端な温度変化を付けた区画は既に見終わったため、ここからはある意味普通のトリコ食材や私が創った農作物を栽培している区画になる。

 大部分は農業部の方でも栽培している物で、通常の作物として追加した物については〝ブロッコツリー*5〟ぐらいだろうか。

 流石に元ネタみたいな菜食主義者に転向する程では無いけど、それでも農業部や蓬莱島の異界で生産している物に比べると、格段に美味しくなってる辺り〝ベジタブルスカイ〟と言う概念も少なからず影響している様に思える。

 

「さて、一通り見て回って収穫もした事だし、そろそろ大取の確認と行こうか」

「大丈夫だとは思うが、念のため割り符の結界も確認し直しておこう。場所が場所だけに、紫外線が怖いからな」

「こっちでも確認した。結界はきっちり機能してるし、問題無い」

「それでは、最後の区画に行きましょうか」

 

 最後に向かった区画は、最上部層自体がオゾン層と同じ高度にある影響で、オゾンに吸収されず降り注ぐ紫外線などの、太陽から降り注ぐ有害物質を集めた危険地帯。

 そんな訳で三人が結界を再確認する程度には危険の多い区画だけど、だからこそベジタブルスカイの再現実験階層として、最重要な作物を栽培している場所になる。

 

「思ってた以上にデカいね、これは……」

「と言うか、刺激臭がすんごいきついんですけど!」

「ふむふむ、紫外線の線量はかなり下がってきてるね。やはり〝オゾン草〟の有害物質吸収能力は高いな」

「流石に原作みたいな、特殊賞味食材なんて性質までは再現しませんでしたけど、代わりに中心の本体以外も、天日乾しでの発酵の工程は必要ですけど、食べられる様にしましたから、もしもの場合の非常食には出来るかと」

 

 天に向かって巨大な外葉が幾つも折り重なって居る様は、正に聳え立つと表現するのがしっくりくる程で、その内の一つに近付いていくと、まるで殺虫剤の様な強烈な刺激臭が周囲に漂っており、吸い込みすぎてしまったのか、カズフサニキが鼻を押さえて後ずさる。

 今回トリコの再現食材として創り出したオゾン草だけど、実のところ幻想植物として、原作に準拠した性質を持たせる事自体は可能だったりするのだが、外葉を剥く特殊調理の過程は兎も角、特殊賞味の二カ所同時に囓らないといけないと言うのは、実際にやると面倒以外の何物でも無い話。

 原作では描かれたりしていないけど、二カ所同時に囓れず食べ残しが出てしまいそうな性質を持たせるのは、流石にどうかと思ったのも有って、特殊調理の過程だけを試練として組み込み、オゾン草を得るための試練として儀式化する事により、得られる報酬の質を向上させる概念を、付与した植物になっている。

 

「特殊調理食材としての性質を試練という形で付与してますので、初めて成功させた場合は偉業達成として、霊格に経験も入りますけど、やります?」

「いや、止めておこう。時間が掛かりそうだしね」

「同じく」「異議無し」

「ならさっさと剥いていきますか」

 

 一応として確認してみたけど、三人とも今は確認が優先って事でスルーしたので、【他心通】で正しい外葉を見つけ出し、【サイ(念動)】を使って順番に剥いていくと、十数秒程で剥き終わり、瑞々しく煌めく肉厚の葉が姿を現す。

 

「葉脈が光って脈打つって光景は、実際に見ると不思議な気分になるね」

「ああ、冒険の末に辿り着いたのであれば、それこそ一生の宝になる様な経験になっただろうね」

「それを言うなら、こうしてベジタブルスカイ計画を進めた事も、俺としては十分な宝さ」

「おっと、これは一本取られたね。確かに宝と言えるだけの経験にはなった物だ」

「私も色々と知見を得られましたし、依頼して貰えて良かったですよ。それじゃ四等分して実食しましょうか」

 

 切り取ったオゾン草を四等分して配り、示し合わせて齧り付くと、カリッと言う音が響き渡ると同時に、凝縮された生命力が香りとなって口内を満たしていく。

 確り噛み締めないと跳ね返されそうな弾力を押し切って噛み砕く度、肉厚な葉に詰まった繊維がほどけ、一噛み毎に変化する食感が、噛む事の楽しさを教えてくれる。

 そして繊維がほどける事により解放された旨味が、癖になりそうな程好い苦みと合わさって、快晴の空の下、そよ風の吹く草原に立っているかの様な爽快感が、全身を突き抜けていく。

 そのまま無言で食べ進め、しばらくの間カリッカリッと軽快な音が響くだけの時間が過ぎた後、食べ終わると同時に満足感に満ちた吐息がこぼれ落ちる。

 

「フグ鯨やメテオガーリックもですけど、食べるまでの過程が試練と認識されるのか、特殊調理食材としての手順を組み込むと、その分味が良いですね。まあ霊格が上がった事で、上限自体も上がってはいるんですけど」

「後は〝トリコ食材〟と言う概念自体が、強くなっている可能性も有るだろうね。食材その物が衝撃的な美味さを持つとの認識は、我々が前世から持ち込んだ物だろうしね」

「確かに、今世ではトリコの作者自体、見つかって無いらしいしな」

「ちなみに探求ネキ、オゾン草に回復力向上とかの効果って有る?」

「いえ、薬効的な物は設定してないですね。ちょっと確認します……ふむ、概念的な肉体の強化が行われているみたいです。簡単に言えば、霊格に応じた身体機能までの強化、ゲーム的な表現ならランダム成長する物理ステータスが、現在のレベルまでに最大成長した場合の数値になると言ったところでしょうか」

 

 何やら随分と面白い結果が出てきた物だけど、どうやら権能化している【魂魄精練大法】の、〝霊格における最大限まで身心を練り上げる〟効果を、肉体に由来する能力に限定して与える力が、オゾン草に増えたらしい、元は美味しくてとても体に良い野菜として創っただけなんだけども。

 後、ジュンニキだけ違和感に気付いたのは、食べた量と同じで効果も四分の一になった訳だけど、カズフサニキは元から身体系の能力が高く、スカリエッティニキはそもそも身体系の上昇量が少ないため、余剰分の四分の一ではたいして違いがわからなかったと言ったところ。

 

「つまり、はっきりわかるレベルで身体能力の上がりが悪いと言う事か……」

「身体能力ですし、筋トレとそれを通しての能力把握が足りないってところですね。今回の権能の基礎になった【魂魄精練法】も、元は霊力と肉体の制御力を鍛えて、無駄なく最大限発揮出来る様にする鍛錬法ですから」

「ジュンニキがマジ凹みしてるのは、まあ置いておこう。やる事が多かったと言っても、自己鍛錬を疎かにして良い話じゃないしな」

「私としては他人事とも言えないが、元々が技術畑なのだから多少は仕方ないと納得して欲しいところだね。まあ可能な範囲での鍛練はするとしようか」

「逆に考えれば、身体能力だけならオゾン草を食べるだけで最大状態を維持出来る訳ですし、能力に合わせた制御訓練以外の時間を、他に使えるって事ですよね」

「でもそれって、オゾン草を安定して取り出せる事が前提では?」

「まあそれぐらいは?【アナライズ】や霊感を鍛えるなりすれば分かるでしょうし、何ならそれ用の道具なり式神なりを作っても良い訳ですからねぇ」

「その話はここまでにしよう!オゾン草の外葉の確認と、漆黒米の件もあるんだし」

 

 何とか復活したジュンニキの提案もあって話は一区切り、オゾン草の外葉を一枚ずつ切り分けたら、加工が想定した通りの結果になっているかの確認へと回し、その間に漆黒米の各種対処をそれぞれ行う事に。

 検査アプリや未開封の判別が出来るパッケージについては、実際に販売する側である三人が担当と言う事で、私はまあ創り出した者として漆黒米の改良に取りかかる。

 改良点は先に軽く検討した通り、ノロイ米と漆黒米が未覚醒者にも区別出来る様に、香り米を参考に漆黒米特有の香りを持たせる事。

 ただまあ香り米との名前が付いている言っても、必ずしも良い香りという話でも無いのが悩みどころで、物によっては匂いが強すぎて不快感を与えたり、料理によっては邪魔になったりもする。

 逆に言えば、料理と香り米が上手く噛み合うと、普通の米を使う以上の物が出来上がると言う訳で、インドではパスマティと言う長粒種の香り米を、サフランで黄色く色付けして作るピラフが、最高級の食事とされる程らしい。

 そう言ったことを踏まえて、どんな香りを放つ様にするのかとの話になる訳だけど、元からして糖度の高い米である事を考えると、甘味を引き立てる香りだと相性が良い感じだろうか。

 

「いえ、味も香りも個人で好みがある訳ですし、物質的な香り成分よりも、〝美味しそうな香り〟と言ったファジーな概念の方が使い回せそうですね。基本弱めにしておけば、未覚醒でも気付けるけど影響は受けない程度に出来るでしょうし、霊能絡めて調理するなら概念を引き出すのも可能ですからね」

 

 結論を出したところで、早速先程収穫した漆黒米の一部に概念を組み込み、最上層の極寒区画に戻って試験栽培環境を構築し、時間加速の結界も展開したら、後は収穫可能になるまで待つだけ。

 環境が整っていて権能込みの術行使とは言っても、流石に数時間はかかるため、こっちの作業が一段落した事を連絡した序でに、加工に回していたオゾン草の外葉を確認してくる事も伝えて、今度は下から二番目の階層、一般作物を栽培する階層に作られた、天日乾し専用の区画へと足を向ける。

 ちなみに、作物の乾燥と言うだけなら熱風による高速乾燥の機械式、作物へのダメージを考えるなら、各種術式で調整したMAGバッテリー式乾燥魔導具なども作れるし、実際に用意もしている訳だけど、態々乾燥までに時間の掛かる天日乾し用の場所まで作ったのは、今回のオゾン草みたいに〝乾燥と発酵を同時に行いたい〟場合も有るため。

 作物の出来や気温に風速、日射量に地熱など、細かな違いで酵素の働き方が変わる物を画一の道具で対処すると言うのは、やってやれない事はないけど、手間が掛かって面倒と思うぐらいには、データの収集や術式の調整が必要な物で、正直な話、場所を作って専用スキルを入れた式神に任せる方が断然楽なため、日中は常に快晴の状態になる区画を用意したという理由もある。

 下手したら、神代木のVSバクテリア*6再来になりかねない案件はお断りしますよ、割と本気で。

 まあその時に〝宝石蓮華*7〟を創った経験があったから合金樹が創れましたし、〝桃紅木(ピーチローズ)*8〟と神代木の件があったから、微生物を研究してキノコ系食材も作れる様になったので、今となっては良い経験だったと言えますが……。

 そんな事をつらつらと考えながら確認していくと、どうやら乾燥と発酵は上手く想定通りになった様で、オゾン草本体に付いてた試練と恩恵みたいな想定外も無く、一安心と言ったところ。

 オゾン草の外葉については、原作のトリコでもオゾン茶になったりしているため、天日乾しで発酵させながら乾燥させる一手間を掛ける事で、保存食として長期保存可能な性質を持たせる事にした物。

 元ネタ同様にかなり苦い上、外側ほど苦味が強いけど、その代わり苦いほど栄養豊富な〝良薬口に苦し〟を体現したような食材になったから、念のための保存食としてなら十分でしょう、多分。

 

「よし!オゾン草の確認も終わりましたし、後は追加案件の漆黒米が終われば依頼完了ですかねぇ」

 

 データをまとめて三人の元へ向かうと、どうやら向こうも一区切り付いた様で、漆黒米の改良版が育つまでの間に、今日見て回って集めた各種データを改めて確認していく事に。

 

「場所に関する概念的な影響は結構出てるが、結果は良好だし十分に成功と言えそうだな」

「漆黒米は別口で事前対処しておきたいだけで、物自体は問題無かったですから、雲上農園の各種データを得られたのもあって、私は大成功で良いと思いますね」

「何はともあれ、美味しい食材を自給自足出来るのは良いことさ!当初より規模が大きくなったが、それも商品作物として購買部を通せば十分な利益になるからね」

「オゾン草の外葉は……。まあ保存食だし、万一の事態を乗り越えるまで、持たせる保険と考えればいいか。一次加工の時点だと悪魔も喰わないし」

「目的と性質の関係から〝人〟の概念が薄いほど、忌避する苦味になる様に創りましたからねぇ」

「ま、オゾン草自体に問題も無いし、俺達で収穫出来るようになるまでは放置でも良いだろう。収穫出来なければ外葉も増えない訳だしな」

「後は、早速呑兵衛の会から、サンドリアンワイン*9と太陽酒の納品依頼が来ているね。隠してた訳ではないが、喧伝もしていないのだがね……」

「呑兵衛共ですからねぇ。美味しい酒や新しい酒の察知能力は高いですよ。私がガイア酒造に新しい酒を持っていくと、必ず誰かしら居ますし」

「まあ、美味しい酒を飲みたいと言う気持ちはわかるけどね。確認はこれぐらいで十分じゃない?連絡貰った時間から考えると、そろそろ漆黒米も収穫出来る時間だろうし」

「だな、確認した後は食堂棟に素材持ち込みで、打ち上げでもするか」

「良いですね。最初に収穫した分の漆黒米もありますし、ジャンニキに話して一室抑えておきますね」

「では、やるべき事はさっさと済ませてこようか」

 

 確認しながらデータをまとめ直し、十分な完成度だろうとの結論になったところで、最後に残った改良版漆黒米*10の確認へと向かい、ファジーな概念の組み込みも上手くいっている事を確認し、共同開発依頼は完了と言う事で、今日回収して回った食材の宣伝も兼ねて、食堂棟に持ち込みでの打ち上げに流れ込む。

 

「それでは!ベジタブルスカイ計画の完了を祝して――」

『乾杯!』

 

 大きな仕事終わりの一杯が格別なのは、いつの世も、世界が違っても、変わらない――。

*1
ベジタブルスカイ計画の一環で、〝ポテトの泉〟を再現するために創り出したジャガイモの品種。

細長い複数の塊茎を付ける特徴を持ち、根っこや塊茎に加えられた熱をエネルギーとして成長するため、地熱の高い地域であれば、一本地面に刺すだけで一週間もあれば千本以上に増える事も有る。

また、熱を成長に使用した際に発生する栄養素が、旨味として塊茎に蓄積されていき、塊茎に蓄えられる養分が限界に達すると、自切する性質を持つ。

なお、大地の熱以外では熱を加えても発芽はしないため、保管する場合は地面に直接触れない様にして、保管する必要がある。

熱を吸収し旨味を蓄える性質から、油で長時間熱し続けても焦げ付かず、常に揚げたてのカリカリな状態が維持される。

*2
ベジタブルスカイ計画の一環で、〝ポテトの泉〟を再現するために創り出したアブラナの品種。

含油量90%を超える程の栄養豊富な油を蓄えており、種子に熱が加わると油脂分を排出し、休眠状態となる性質を持つ。

また陽向菜油は、陽光を浴びる事で再生する性質を持たせる事に成功し、その性質から〝サンライトオイル〟と名付けられている。

新鮮なサンライトオイルは陽光のような山吹色で、劣化するにつれて黒味を帯びていき、夏の日差しなら一時間程度、冬でも二時間程度日光に当てるだけで、搾り立ての新鮮な油に戻る。

なお、休眠状態となった陽向菜の種子は、サンライトオイルの再生と同様に、十分な日射量を得る事で休眠が終わり、芽吹くようになる。

*3
栄養満点かつ程良い塩分を含んでいて、食べる事も可能と言う設定の〝ウール火山灰〟その物の再現は難しい事から、調理器具の溶岩プレートみたいな役割を目標に、創り出した石材。

周囲のマグネタイトを吸収し、栄養素や塩分に変換して蓄積する性質に、一定温度以上の液体に触れると、石材に加わる衝撃に応じて、栄養素や塩分が液体に溶け出す性質を持つ。

*4
トリコの食材と言うかスポットを再現した物の一つ、再現用に創り出した〝陽向菜〟から採れる油を集め、フライに適した温度まで加熱している熱泉に、自切した〝千本熱芋〟が投入される様に調節し、常にフライドポテトが作られ続ける泉とした場所。

*5
トリコの食材再現シリーズの一つであり、キャベツの変種で、一本の樹まるまるが巨大なブロッコリー。

樹液がサウザンドレッシング味で、そのままかぶりついてもブロッコリーのサラダを食べているような感触が味わえる。

*6
『【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録』様より、111話~113話の『神代木を求めて』のエピソード。ショタおじすら翻弄する最脅の(微)生物との戦い。

*7
『【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録』様にて、セツニキの要望により創り出した蓮華の品種。

神代木を生産する際に邪魔になる、ケイ素や炭素などの元素を吸収する役割を持たせた植物で、根から吸収した元素を花弁に蓄える性質と、茎から切り取る事で宝石に変化する性質を持つ。

また、蜜源植物であるため、宝石蓮華の蜜のみを集めた蜂蜜は、宝石のような色とりどりの輝きを放つ〝宝石蜜〟となり、輝き方の違いにより風味が変化する。

この蜜を使って醸造される〝宝石蜜酒〟は、宝石を溶かし込んだ様な色味と輝きを放つ酒となる。

ちなみに、元はケイ素を吸収して水晶に変化する品種と、炭素を吸収して金剛石に変化する品種のみだったが、神代木を生産する異界の中で交雑が進んだ結果、神代木の生成に不要な物を吸収して宝石化する植物となった。

*8
『【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録』様にて、楽器に使う神代木の素材として創り出したローズウッドの品種。

霊木化した蟠桃とセツニキに渡されたインドローズを組み合わせ、楽器に使用する木材としての概念に特化させた樹木。

なお、神代木の生成を行う際、適応進化したバクテリアに度重なる妨害を受けた事により、神代木が生成される条件下においては、バクテリアをマグネタイトに分解し、概念強化する特性が付与される事になった。

*9
サンドリアンの果実内で自然醸造されるフルーツワイン。

*10
トリコの食材再現シリーズの一つで、極寒の地でしか育たない漆黒の米。極寒地域のマグネタイトを吸収し、栄養に変換して溜め込む性質が有るため、周囲のマグネタイト濃度が高い程成長が早く、氷結属性が強いほど栄養豊富な米に育つ稲。

生でもよし、焼いてもよし、煮てもよしの超絶品の食材で、普通の米よりも糖度が高く、焼くとパラパラ、炊くとモチモチする。

また、異界【黄泉比良坂】で作られている呪殺属性を持つ〝ノロイ米〟と混同される可能性への対処として、漆黒米自体に〝美味しそうな香り〟というファジーな概念が組み込まれているため、未覚醒者であっても自身の思う美味しそうな香りを感じる米になった。

なお、何を持って美味しそうと感じるかは個人によって異なるため、人によって香りが異なるのが正常であり、漆黒米かそうで無いかを判断する基準になっている。




これにて思ったより長くなったベジタブルスカイ計画は一区切りになります。
今回出てきた食材以外も今後増えていくでしょうし、或いは語られなかった作物が既にあるかもしれませんが、それは観測されていない可能性の話……。

オゾン草に関する注釈が長くなったので、後書きに記載。
なお、書いている途中で、本家様の本編『☆【悲報】ガイアの支給飯がまずい』に出てきた〝対悪魔忌避剤〟を思い出したため、忌避剤の材料になりそうな特性が加わりました。

・オゾン草
トリコの食材再現シリーズの一つであり、ベジタブルスカイに生息する野菜の王様。
食べると天にも昇る爽快さが得られることから、「天空草」とも呼ばれる。
一口食べれば地上の野菜が全て賞味期限切れに感じるほど、天からの恵みを直に受けた瑞々しさと新鮮な旨味を味わえる、野菜の頂点と言える食材。
キャベツや白菜のように葉が重なっている包皮型の野菜で、外葉を全て剥くと、本体の小さな葉っぱが現れる。
創造者である探求ネキの権能により、本体の葉を一枚分全て食べる事で、現在のレベルで発揮可能な身体能力の最大まで、肉体を強化する恩恵を得られる。
太陽から降り注ぐ紫外線などの有毒物質を大量に吸収しているため、外葉は強烈な刺激臭を放っており、外葉を剥いていく際には、匂いが強い順に同じ強さの匂いを発する二枚を、同時に剥かないといけない特殊調理食材であり、失敗すると瞬時に腐り落ちて、肥料に変わる性質がある。
なお原作とは異なり、特殊賞味食材としての性質は備えておらず、代わりに本体を取る事に成功した後の外葉は、一度天日乾しにしながら発酵させる事で、刺激臭が無くなり食用可能となる。
食用可能となった外葉は、乾燥状態の葉を煮出してお茶にしたり、水で戻すと漬物の様な食感を楽しめるが、外側の葉になるほど苦みが強くなるため、好みが別れるところ。
また外葉には、〝人〟に取っては体に良い成分が詰まっているため、苦い物ほど、少量でも一日に必要な栄養を補える食料となるが、〝悪魔〟に取っては忌避する苦みとなっているため、終末後の万が一の場合に備えて、非常食として保管可能となっている。
天日乾しにした外葉を10分程度燻すと、悪魔が忌避する苦みの部分も無くなるため、デビルシフターでも問題無く食べられるが、元からの苦み自体が無くなる訳では無いので、注意が必要。
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