【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

62 / 184
060:準備は順調だけど……

 マンパワー(木分身)を駆使して、合金木の配合研究をする事数日、ようやく各機体毎に候補となる組み合わせと配合が決まり一息。

 装甲にどんな素材を使うかについては、機体の耐久力や防御性能に直結する意外にも、機体の表面を覆うだけあって概念的な意味が与える影響も大きく、私の場合だと【ディア】などでの機体修復が可能な、人機合一方式にしたのもあって、単純な強度よりも木行の再生力や生命力による回復効果向上を念頭に、合金樹に翡翠と霊鉄を混ぜ合わせた〝翠木鋼*1〟を採用した経緯だったりする。

 そんな訳で、他の機体についてもただ頑丈であれば良い、と言う訳でも無いのが難しいところで、要望と戦闘スタイルと役割とを考えて、まず出来上がったのがシンプルにタンクの役割で、守護者のコンセプトな久遠の物。

 使った主な素材は、地脈にさらして霊格を上昇させた霊力金と、修行場異界から掘り出してきたミスリルで、完成したのが〝エレクトラム合金木*2〟。

 劣化しない金の性質から状態異常耐性が高く、ミスリルにより魔法防御と概念的な用量を確保したこの合金木に、【強度逓増(きょうどていぞう)*3】スキルを組み込み、更に元は物理的な強度が上昇する効果を〝概念強度が上昇する〟様に術式を追加し、久遠の超機人に使用する装甲素材が完成。

 素の防御力自体はアダマンタイトなどを使用した場合より低いけど、その代わりにダメージを受ける程、物理と魔法の防御力に、各種属性耐性と状態異常耐性の概念強度が上昇していくため、アダマンタイトの強度ぐらいはすぐに超えていくはず。

 まあとは言っても、強化出来る上限は動力炉の出力に依存するし、搭乗者の霊力を強化に回すことも可能とは言え戦闘で他にも使う事を考えると、装甲の展開コストを多少抑えつつ、必要な場面では強度を上げながら装甲を張り直して耐えしのぐ、反応強化多重装甲と言うのが運用想定なんだけども。

 

 次ぎに出来たのは湯乃葉が使う機体の分で、こっちもある意味シンプルな霊力制御と増幅に特化した、白水晶と霊鉄を混ぜ合わせた〝白木鋼*4〟。

 湯乃葉の場合は他と違って仲魔となった悪魔であり、超機人に関しては搭乗すると言うより、情報接続加工で湯乃葉の一側面として霊基に追加する感じになる予定。

 元々は普通の【管狐】だったところから、霊格の上昇やタオ系のスキルを挿入していった事で、〝気狐〟の類いとして【仙狐】に種族が変化した経緯もあり、霊基強化のために普通の悪魔合体で種族を変更するのは勿体ない話で、基礎能力向上が目的なら、超機人を化身として繋げてしまおうと言うのが、相談の上決定した話。

 そんな訳で、術主体の能力を強化する装甲と、装甲護符を使って術式補助の尻尾を持つ機体を設計していて、久遠と湯乃葉の機体はシンプルな能力と言う事もあり、だいぶ建造も進んでいる感じ。

 

 三つ目に完成したのが、綴用の琥珀と緋緋色金を使った〝緋焔合金木*5〟で、火炎属性と熱量の制御に特化していて、火力の上昇はさほどでも無い代わりに、強固で精密な〝火の概念〟を持たせる事に成功した物。

 綴の機体に関しては、遊撃の一撃離脱が今の基本になっている事から、最初は速度と攻撃力に特化する予定で考えていたけど、シミュレータで動かした感触から仕様の見直しを行い、火のイメージにおける負の側面、所謂〝火遊び〟などの()()()()()()()()()()()()と言った概念の影響を受けかねない、単純な火力や出力の上昇ではなく、火を完全に制御する方が、ペルソナの【剛毅 プロメテウス】的に概念強度を上げられると判断した経緯。

 まあそんな仕様変更があったこともあって、機体の建造は若干遅れている感じだけど、そもそも攻略再開は十月予定なので、問題という程でも無い話。

 

次ぎに、と言うか装甲素材として最後に完成したのが、何時の頃からかファンタジーな金属で最上位のイメージが付いたオリハルコンと、特別な宝石とされる事が多い金剛石からブラックダイヤを使用した〝アステリコン合金木*6〟。

 これについては、琴音とアイギスの二人からセット運用の要望を貰ったのと、琴音の特性を考えた場合、一点特化よりある程度汎用性のある方が良いと言う事で、二人の機体に使用する素材として仕上げた物なんだけど、会心の手応えを感じて出来上がった合金木を調べたところ、どうやらペルソナ能力強化の特性を持つ素材になった様子。

 より正確には精神感応力の向上や霊体の強化と言った、魂に関連する力を強化する性質を得た物で、物理防御力ではアダマントス合金木より下だけど、魔法防御力はこちらが上ぐらいの強度があり、目標にした通り汎用性の高い素材に仕上がった。

 ただ難点としては、性能が高い分だけ装甲護符で構築するコストが重く、今使っている五行器だと、外殻が必要な出力までの増幅に、耐えられない可能性も考えられる事。

 機体の建造に取りかかるのはまだ先の話ではあるが、まずは懸念点の確認からと言う事で、アステリコン合金木が完成した翌日、早速機体として展開する予定量の装甲護符で、アステリコン合金木を構築してみたんだけど……。

 

「あ、やっぱり駄目ですね。緋焔合金木は火の完全制御が影響しているのか、動力炉の出力ギリギリで何とか構築出来てますが、どの道余裕が無い状況は問題ですし、五行器も見直しますかねぇ。それなら私の龍泰樹も炉を積み替えて、装甲を翠木鋼とアステリコン合金木の複合装甲にでもしましょうか。ペルソナ能力強化は有った方が良いですし」

 

 そんな訳で、動力炉の見直しも追加される事になったりもしつつ、超機人の建造は一応順調に進んでいる一方、世界情勢はどんどん悪化して行っている様で、身近なところだと蓬莱島へ流れてくる地脈に、メシア汚染の兆候が見え始めている事だろうか。

 まあそれ自体は予想していた事だし、本格的な食欲界の稼働開始になると言う訳で、当面は木分身の一体を常駐させて監視する事にしたんだけど、とりあえず汚染された地脈から湧いたペ天使を捕食したガララワニが、格段に強くなって美味しい肉になったのは確認出来た。

 一応は問題無く稼働出来ているため、しばらくは食欲界の生態系変化を観察しながら決定的な破綻が起きないかだけ注視する事にして、日常へと戻ったのが大体三月も下旬に入ろうかという頃。

 その頃にはベジタブルスカイ計画の方も無事完了して、毎日のあれこれを除けば、大きな作業は作成中の学びの園(アカデミー)関連や超機人の建造ぐらいと、多少落ち着けるようになった。

 そんな三月下旬のある晴れた日のこと、春休み期間中の琴音も一緒に蟠桃園の一角に造った四阿で花見も兼ねたお茶会をしていると、話の流れで話題がここ最近の出来事に移り変わる。

 

「ほーん、依頼で島を創ったとか言われて、何のことかと思ったけど、余所の避難民が近くに来るかもって事か」

「蓬莱島は、仙境として手順を踏まないと見つけられないって話でしたし、問題とする程でも無いのでは?」

「距離的に漁業していればここからでも船が見えそうな位置ですし、時々琴音がグライディングボードで遊んでますから、知らずに向こうまで行ってトラブルになるのも面倒ですからね」

「あ~、衛星カメラとかに映らないようペルソナで姿隠して速度出したりしてるし、知らずに突っ込んでた可能性はあるかも……」

 

 最近の話だと、琴音は学園の友人と遊びに行った時の話や後進育成が上手くいっていないとの話、綴の方は両親へ顔見せしに行った序でに、大学卒業の報告もしてきた時の話、私からはベジタブルスカイ計画で創った物関連の話が終わり、同時期に行ってた運営陣からの依頼に関しての話も終わったところで、ちょっとした注意も付け足すことに。

 まあ注意の大部分は、グライディングボードで島の回りを滑って遊んでる琴音に向けてだけど、指定されて創った島の位置的に、漁業で移動する範囲なら蓬莱島からも見える所まで来る可能性があり、その島へ避難してきた人達の気質によっては、何かしら面倒になる可能性が無いとは言えないため、そう言う場所が近くに出来たと話した程度だけども。

 

「まあ環境整備が始まった程度の状況ですし、移民してくるとしても当分先だと思いますけどね」

「なるほどね~、まあボードで遊ぶ時はちょっと気を付けるようにするよ」

「避難してそこに移民してきた人達が、善い人達なら良いんですけどね……」

「そりゃねぇ、まあそれはその時になってから考えるって事で。それより、この間のガララワニの時に、食欲界が本来の稼働に入ったって言ってたけど、どんな感じ?」

「今のところは当初の予想通りに行ってますね。メシア汚染された地脈の流入は始まったばかりですし、ペ天使の出現と処理が上手く回るかの確認をしているところですから、順調にいけば三、四ヶ月ぐらいでしょうか。遅くても秋には間に合わせる予定ですね。外部に解放するなら食欲の秋を外したくないですし」

「では、九月か十月には外部解放区画と、食欲界への受け入れをする感じですか?」

「今のところ九月を目処に、可能なら前倒しする感じで、受け付け担当の九十九式自動人形も追加で用意してるところですね」

「そんな感じか~、美味しくなった肉を自由に狩りに行けると嬉しいんだけどね」

「狩りすぎて環境維持出来ないと困りますし、そこは何かしらの調整も考えてるところですね――」

 

 何て話をしていた日から数日、アステリコン合金木を装甲護符で使える様にするための、動力炉関連の見直しをしていたところ、掲示板を確認していた木分身が気になる書き込みを見つける。

 記入者はここのところ掲示板だとご無沙汰だった霊視ニキで、以前からの様にメシア教への罵倒が全開なのはそれとして、書き込みを追いかけていくと、どうやら霊視ニキがハワイの現地異能者救出依頼を受けて向かった際、海外のメシア勢力から襲撃を受けたと言う事らしい*7

 運営陣からの依頼で向かったとの事も合わせて考えると、少し前に人工島を急いで用意したと言うのも、こうなることが予想――或いは予知――されていたからだろう。

 蓬莱島にメシア汚染された地脈が流れ込むようになった事とも無関係では無いだろうし、多分場所や気候的な点から、救出したハワイの現地異能者の移民先は創ったばかりの隣の島になると予想出来るし、いよいよ持ってきな臭くなってきた感じがする。

 昨年末に占術した結果を考えると、終末にはならないまでも、大騒動の一つぐらいは起きると思って準備……は何が必要になるかもわからないから覚悟だけ決めて、手段の幅と資材を増やしておく程度の話だけど。

 そんな警戒はありつつも、蓬莱島での生活自体は普段と変わらず、趣味の研究をしたり外部解放区画の設備を増やしたりと、穏やかな日常を過ごしている一方で、隣の島には予想通りハワイからの避難民が移住してくることに決まり、生活再建のために慌ただしく動いて居るのを時折観察する業務が日常に追加される事になった。

 なお、ハワイからの避難民が上手く生活環境を整えられているかを確認しているのは、ガイア連合運営陣からの依頼によるもので、どうやら終末後の南国系フルーツなどの取引相手として期待している面もあるらしい。

 

「そっか、農業部でも栽培とかしてるけど、他の生産先を確保するって思惑も有ったんだ」

「代表者と言うか、祭神がハワイ神話の【カマプアア】で養豚と農耕の神ですからねぇ。まあ農耕は芋がメインですから、果物系はそこそこと言ったところでしょうけど」

「家とか学校とかはもう出来ているんでしたっけ?」

「ガイアグループに霊能関連の土建屋もありますから、そこの建築系スキル持ちも参加して、急ピッチで建ててるみたいですね」

「地方支部のシェルターとかジュネスの建設とかもしてるとこだよね。それにしても、【カマプアア】って確か豚っぽい見た目をしてた気がするんだけど、養豚?」

「あの辺の地域ってタロイモの栽培と、残渣を使った豚の飼育が生活の基盤になってる歴史がありますからね。繁栄の象徴の一つで、権威的な物を考えると豚としての側面が含まれる訳です。まあハワイの豚は猪に近い種類で、野生化すると凶暴な猛獣になりますから、戦神としての側面も持っている訳なんですが」

「猪なら確かに色んな神話に出てきますよね。ギリシャ神話だと【ヘラクレス】と関わるエリュマントスや【アタランテ】のカリュドーンとか、【ヴィシュヌ】の化身にもありましたよね」

「ケルトや北欧にギリシャ辺りは特に猪関連の逸話が多いですね。西遊記の【猪八戒】も、元は道教の【北極紫微大帝(ほっきょくしびたいてい)】の配下で、天の川を管理して水軍を指揮する天蓬元帥という軍神ですし、日本だと古事記で【倭建命】の死因となったのは【伊服岐能山之神(いぶきのやまのかみ)】である白い大猪ですから」

「なるほどねぇ。そんで、野生の脅威である猪を家畜の豚にして、権威と繁栄ってとこかな?ん、何か話してたら豚が食べたくなったし、今日の夕食は豚にしない?」

「それなら〝蟹ブタ*8〟で豚しゃぶでもしますか。以前に試作した時の余りが残ってますし」

「お、良いね!食欲界でも狩れるまで増えたら、叉焼やベーコン、ハムもまた食べたいね~」

「スモークしたのも美味しかったですよね。豚骨スープも……」

 

 先行きの不安があっても今はそれより食事と言う事で、本日の夕食は蟹ブタのしゃぶしゃぶとマグロ豚のタタキ、雑炊で締めた後には、デザートに銀白米を使った白玉団子の善哉まで食べて、家族団らんの幸せな時間を過ごして一日が終われば、日付が変わる頃にはまた、タルタロスの間引きからいつもの日常が始まる――。

*1
合金樹に翡翠と霊鉄を混ぜ合わせた合金木で、深緑色の結晶部分と濃茶の木目が特徴的な、森林を彷彿とさせる見た目の合金。

木行との相性が高く、特に植物や生命、回復に関連する道具の素材に最適。

*2
合金樹に霊力金とミスリルを混ぜ合わせた合金木で、艶のある琥珀色の結晶部分と銀白色の木目を持つ、陽光を彷彿とさせる見た目の合金。

展延性や靱性に優れた強靱な性質を持ち、不朽の概念により状態異常耐性の高い素材。

*3
ダメージを受ける度に強度が上昇する。

『【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録』様にて、セツニキが作り出したスキル。

*4
合金樹に白水晶と霊鉄を混ぜ合わせた合金木で、乳白色の結晶部分と白金色の木目を持つ、滑らかな絹の様な見た目の合金。

霊力との親和性が高く、特に術系統の増幅と制御の効率を爆発的に高める。

*5
合金樹に合金樹の樹液から生成した琥珀と緋緋色金を混ぜ合わせた合金木で、深緋色の結晶部分と朱金色の木目を持つ、揺らめく炎の様な見た目の合金。

火行との相性が高く、概念的な効果として〝燃やす物を選ぶ〟事も可能になる程の火炎制御特性を持つ。

*6
合金樹にブラックダイヤとオリハルコンを混ぜ合わせた合金木で、蒼黒色の結晶部分と黄金色の木目を持ち、星空を閉じ込めたようなマーブル柄の見た目をした合金。

名称は、宝石特有の光学的現象の一つであるアステリズム効果とオリハルコンを合わせた造語で、アステリコン。

ブラックダイヤの石言葉にある『革新』や『超越』と言った〝困難に打ち勝ち、災いを撥ね除けて幸福へ導く〟概念と、数多の創作に登場した事でオリハルコンに付随する『精神感応金属』や『最高峰の幻想金属』と言った概念を合わせた事で、ペルソナ能力を強化する素材となった。

*7
本家様『★海外オカルト雑談スレ その72+α』より

*8
トリコの食材再現シリーズの一つで、丸々と肥えた体格とは裏腹に、計六本の短い足を高速で上下動する事により、チーター並のスピードで走行する事が可能な俊敏なブタ。

高い運動能力のため身は引き締まっており、見た目よりも脂身が少なく、淡白な口当たりの中にも濃厚な旨味が凝縮されていて、まるで最上級の蟹を食べているような味わいから、この名前が命名されたとの事。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。