【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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065:明日を生きる活力(飯)

 世界の情勢が大きく変化してからしばらく、ICBMの被害を受けた地域では普通に悪魔が出現する、地獄のような環境になっている一方、直接の被害が無く情報も規制されている影響もあって、日本は未だ表面上の平和を謳歌している。

 まあ表面上の平和や霊的な存在を認識していない状態自体が、日本のGP上昇速度を抑える一因になっている反面、認識していない事による平和惚けや表だった対処がし難い事も含め、平穏も良し悪しと言ったところではあるのだろう。

 そんな感じに世界と日本で温度差が生じている訳だけど、私達的に普段の生活は特に変化する事も無く、タルタロスで多少強くなったシャドウをしばき倒しながら、日中は学校やそれぞれの趣味などに時間を費やす毎日。

 ただ、ペルソナ組全体で見ると、半終末となった事の影響は大きい様で、ペルソナ能力の源泉でもある集合的無意識からの衝撃や、より直接的に海外の知り合いなど繋がりのある人物の死など、様々な理由で精神にダメージを負うことになり、ペルソナのレベル減少や、場合によっては能力その物を失うケースも発生しているのが、確認されている。

 そんなペルソナ組のケアを考えたスライムニキの声掛けで、慰労会*1をすることになり、今はそこで出す料理の試食会と言うか、試作と検討を目的とした食事会に集まっていた。

 

「ジャガ丸くん*2はこんな感じで良さそうですね。小豆クリーム味*3も塩スイーツみたいな物と思えば違和感も無いですし」

「そう言われると確かに?そのままでも美味しいけど、少し塩を振りかけるのも良い感じだよね。何でゲテモノ扱いされてるんだろ」

「京都の方では小豆を加えたコロッケもあるみたいですし、ただの先入観じゃないですかね?」

「デザート系ってのも悪くは無いんだけど、男としては挽肉入りとか惣菜系の方が、腹にたまるから嬉しいかな」

「確かに、カレー味とかスパイスが効いていていくらでも食べられそうだが、こっちのカスタードやカボチャとか甘めのも良いぞ?」

 

 メンバーはスライムニキこと響さんに不知火さん、未来さんやニアスさんにペットのココ・ジャンボの四人と一匹に、私と琴音に綴、久遠や湯乃葉にアイギスの六人。

 まあ慰労会で提供する料理は、食材こそガイア連合産の霊能改良品種だったり、私が提供するトリコ食材やモンハン食材など、特殊な食材を使用する以外は基本的なパーティー料理ばかりの予定で、それらの料理はスライムニキの支部所属の料理人が調理するとの事。

 なので今回行ってる試作については、話題のネタ作りも兼ねたアニメや漫画などに登場する料理の再現メニューと言ったところ。

 だいぶ遊びが入っているのは事実だけど、そう言う馬鹿騒ぎも鬱屈した気持ちを払うには大事だろうと言うことで、使用する食材も含めて色々と用意を進めている感じ。

 

「響先輩、ジャガ丸くんって普段からの商品に追加しません?」

「ガイアグループ経由で作者と出版社に許可を取って、商標登録出来れば大丈夫だろうけど、そんなに気に入った?」

「時々おやつにつまみたくなるぐらいには、パーティー料理としてなら、こんがり肉とかの方がインパクトもあって良いと思いますけど」

「確かに、このこんがり肉は見た目のインパクトもあるし、ガッツリと体力が付きそうな美味さもあるからな」

「偶には肉感溢れる塊にかぶり付くのも良い物よね~。パーティーに出すってことなら、普段は面倒でしない様な食べ方ってのも良いんじゃないかしら?」

 

 思ったよりジャガ丸くんの味が好評な様で、正式に商品化出来ないかとの話が出てきた一方、パーティーらしいインパクトを考えた料理として用意した、モンハンお馴染みのこんがり肉にかぶり付いているのは、ニアスさんと湯乃葉の二人。

 特に湯乃葉は獣的な感覚が刺激されるのか、尻尾をパタパタと振りながら一本二本と平らげてるし、ニアスさんの方も時折会話に混ざる時以外はガツガツと食べ続けている辺り、かなり気に入っている様子。

 

「肉感と言うなら、こっちのパスタも負けてないですね」

「うむ、トマトソースとミートボールが良いな。当日は粉チーズや追加のミートボールも用意するんだったか」

「山のように盛り上げたパスタは、得がたい光景でありますな。アニメ再現であれば必要な事でありますが」

 

 軽食系にジャガ丸くん、ガッツリとしたメインにこんがり肉と言ったところで、次ぎは某三世のカリオストロの城で登場した山盛りのミートボールパスタ。

 牛豚鳥の挽肉で作ったミートボールに、ベジタブルスカイで栽培したシモフリトマトで作ったトマトソースを絡め、振りかけるチーズは、ガイア連合畜産部経由で購入した牛豚鳥や酒乱牛のミルクから作った物を使用しており、調理はシンプルだけど、素材の旨味が折り重なる一皿で、こっちに手を伸ばしたのは綴と久遠にアイギスの三人。

 試作とは言え盛り付けのイメージなどもあって、実際に山盛りにしている訳だけど、大皿からパスタを取り分けていると、いつもの食卓の様な雰囲気が漂ってくるのが不思議な感じ。

 

「主食系はこの三つで良さそうですね。他の料理もありますし、後はデザート系で何かネタになりそうな物を用意したいところですけど……」

「それなら、アトリエシリーズのパイとか作ったら?見た目は普通でも食べた感じがだいぶ違うから、話題にはなると思うし」

「探求ネキって錬金術もするんだっけ、アトリエ系のお菓子なら確かに人気でるだろうね」

「あっ、最近ロロナが発売されたシリーズ作品ですよね。アレに出てくるパイなら、確かにどんな物か食べてみたくなるかも」

「錬金術で作るとか言う設定だった気がするが、そんなに変わる物なのか?」

「食べればわかると言うか、一度食べてみないとわかりにくい感じ?瑞樹のことだし、幾つかストックしてるよね?」

「そうですね、アップルパイなら有りますから試食に出しましょうか」

 

 話の流れで追加のデザートを何か作ろうかと思っていたところ、話のネタにするなら錬金釜で作ったパイで良いのでは?との琴音の発案により、とりあえず試食分を取り出して配ることに。

 取り出したのはパイの基本なイメージもあるアップルパイで、霊能に対応した栽培品種と言う点以外に特筆する内容は無い普通の一品。

 普通に店売りしていそうな見た目のアップルパイを、一口食べたところでそれぞれ不思議そうな表情を浮かべる。

 

「美味しいアップルパイだけど、何だろ……」

「焼きたての香ばしさもあって美味しいですし、焼きむらも無くて安定している感じがありますけど、何か不思議です」

「妙な感じはするが、それはそれとして、錬金術で作ったアトリエシリーズのパイ、と言われて納得出来る感じはするな」

「まあ初めて食べると不思議な感じがあるよね~。私は瑞樹に説明して貰って、錬金術で構築するって事の意味がようやくわかったぐらいだし」

「錬金術で構築する意味……?」

「某鋼のでも言われてますけど、分解と再構築が基本にあって、正確に構築すると言う事は、無駄が無いって事ですからね」

「あ!そっか焼きむらがなさ過ぎるんだ!」

 

 錬金術で構築した食べ物特有の違和感に、ようやく気付いた様子で未来さんが声を上げる。

 まあ言葉通り焼きむら――焼き上がりの微妙な濃淡が存在しない、均質化された焼き上がり状態が、錬金術で構築する食べ物の特徴で、これは焼きむらの様な、品質の変化を意図的に付けながら再構築する方が、難しい事によるもの。

 技術的に未熟で、再構築する際に無駄が生じてしまう場合も有るだろうけど、その際の無駄が上手く美味しさに繋がるかは微妙なところを考えると、真に美味しい物を作るなら普通に料理したほうが良い、と言う話に落ち着くけども。

 

「変化の無さは良し悪しだけど、偶にはこんな味も良いわよね」

「言われてみると平坦と言うか、変わり映えしないって表現が合うな。美味しいのは確かだが……」

「安定と刺激はトレードオフですからねぇ」

 

 微妙な評価も得つつ、話題のネタとしては十分だろうと言う事で、アトリエシリーズのパイも提供することになって試食会は終了し、当日に向けた納品の確認をして解散。

 後に聞いたところ、慰問コンサートと食事会でだいぶ精神的に持ち直すことが出来た様で、マヨナカテレビやメメントスを対処している一般のペルソナ使いにかなり喜ばれたとの事。

 序でにジャガ丸くんやこんがり肉が、裏ジュネスの売店で販売されるようになったり、アトリエシリーズのパイの生産依頼が、定期的に送られてくる様になったけど、それはまた別の話か。

 兎も角、半終末化の事件を経てのペルソナ組における、一番の問題をスライムニキが対処してくれた事で、色々と余裕が出来た事も有り、嗜好品の増産や新作の販売など可能な範囲で支援を行う傍ら、タルタロス攻略に向けた準備が、また一つ完成する。

 

「おおー!ついに私達の専用機も完成したんだ。これで後は綴さんの分が出来たら探索は可能になる感じだね」

「実戦での慣らしと習熟も必要ですから、すぐにとは行かないでしょうけどね。特に琴音は【甲縛式O.S.】の調整も大変でしょうし」

「まぁね~、と言ってもこの〝宇宙(ユニバース)*4〟で扱う規模だと、ある程度候補は絞ることになるから何とかなるかな?あっ、でも……アイギスの〝黒麒麟*5〟と合体した後は、専用の【甲縛式O.S.】を構築する事になるだろうし、どの道時間は掛かるか」

「戦闘中に安定して合体する技術も必要でありますな。綴さんが復帰されるまでに慣熟しておきたいところであります」

「そのためにも、最終チェックを始めましょうか」

 

 工房に設置している壺中天地の内、超機人を建造している異界に琴音の感嘆とした声が響き、アイギスの冷静な声が後に続く。

 ここに二人を呼んだのは、完成した専用機を引き渡す前に、実際に搭乗しての最終チェックを行うためで、問題が無いようであれば、早速今夜の影時間から慣熟訓練も兼ねた間引き作業に入る予定。

 一通りチェック項目を埋めていって、幾つか修正しつつ無事に合体機能の動作テストまで終了し、時間まで一休憩入れた後は、本番の影時間へと突入して実戦テストへと移る事に。

 

「リアルACの宇宙空間シミュで慣れたつもりだったけど、タルタロス内だからか若干勝手が違うね」

「純粋な宇宙空間では無く、人の無意識総体から構築されている〝宇宙のイメージ〟と言う、認識と概念が混ざり合った場所ですからねぇ。出来るだけ実際の宇宙空間を再現したシミュとは、物理法則も含めて異なる部分が出てきますよ」

 

 タルタロス二百五十階を、重力操作や足場結界を使った跳躍などで動き回り、ペルソナを圧縮成形して身に纏う〝甲縛式O.S. 仮面武闘(マスカレイド)*6〟を展開した琴音が、ペルソナチェンジによる能力切り替えを行いながら、巨大シャドウをなぎ倒していく。

 なお、機体に乗っている状態と言う事も有って、籠手や鎧とかを構築して追加装備にする感じでは無く、装甲の表面を覆う文様として再構築している様子で、能力としては、選択しているペルソナに由来する権能を使える様にすると言う、ワイルドらしくどの様な状況にも対応可能な物。

 

「相手が巨大な事もあって、射撃の精度は問題無いであります。ただ、予想された通り戦闘中の合体は難しいでありますね」

「やはり【獣の眼光】か【龍の眼光】辺りのスキルを入れて、合体時間を作る形の方が良さそうだな」

「慣れれば問題無さそうな感じもするけど、慣れるまではそれが良いんじゃないかしら?」

「琴音さんと相談してみるであります」

 

 一方、アイギスの機体に組み込んだ合体機能の方は、認識時間加速状態でも無いと、戦闘中の使用は難しいと言うのが証明された訳だけど、これについては予想されていた事なので、然もありなんと言ったところ。

 ただまあ、眼光系のスキルなどで認識時間加速するなり、対処方法は色々有るだけマシな話だし、合体後はアイギスが遠距離攻撃や索敵などを担当する事で、琴音の戦闘力と言うか殲滅力が跳ね上がったのもあり、専用機としてはこれで完成したと言えるだろう。

 ちなみに、最初から復座型と言うかアイギスをサブパイロットとして、合体後の状態で建造する案も有ったんだけど、浪漫が無いと言う琴音の意見により、却下された経緯があったりする。

 これに関しては、認知世界でもあるシャドウ異界の特性上、本人の意思や感情による影響も大きいため、合体することによる強化と言うイメージを優先した形だけど、良い結果になった様で一安心と言った感じ。

 

「よっし、今回の目的は十分達成出来た感じかな?この階層の探索なら問題無くいけそうだし」

「巨大シャドウを倒すだけなら生身でも出来ますけど、サイズ差もあって時間が掛かりますからねぇ。ちなみに、今はとりあえずで月を目指してますけど、進めてる感じはします?」

「う~ん……。多分、真っ直ぐ進んでも最奥には辿り着かない気がする。綴さんの【剛毅 プロメテウス】無しだと、運任せになりそうな感じかな?」

「そうなると、機体の建造より封印道具の作成を優先しても良さそうですね」

「体調を戻したり、慣熟訓練も考えると、本格的な再開は結局十二月頃?」

「ですね。それまでには最低限、封印可能にする準備を進めておきます」

「オッケー、じゃあそんな感じで、今は間引きを続けよっか」

 

 今後の大まかな予定も決めたところで、タルタロスの間引き作業へと意識を切り替え、残りの影時間いっぱいまでシャドウ狩りに勤しむ事に。

 大量に集まってるシャドウのフォルマを使って、何か出来ないだろうかとも考えつつ、今日の影時間も終わりを迎える。

*1
『【カオ転三次】 終末に向けての準備するとある転生者の話』様の〝24話:慰撫のためのお歌の準備〟より、人魚ネキに慰問コンサートを依頼した後、練習時間などで開催までに余裕が有るので、序でに食事での慰労も計画した感じ。

*2
ダンまちに登場する定番料理で、物としてはコロッケの類い。

*3
ジャガ丸くんの種を中空に成形し、小豆の甘露煮と混ぜ合わせたホイップクリームを詰めて揚げた物。

*4
ディス・アストラナガンをモチーフとして作成したオリジナル超機人、動力炉に陰陽五行器を使用した20メートル級の機体で、装甲護符による外殻と結晶筋肉により各部の動作を行う仕組みだが、元ネタとは異なり自意識は搭載していないため自律性は無い。

装甲材には、合金樹にブラックダイヤとオリハルコンを混ぜ合わせた〝アステリコン合金木〟と〝アダマントス合金木〟の複合装甲、結晶筋肉には合金樹皮と結晶仙人掌にミスリルを混ぜ合わせたMCT、骨格には〝アダマントス合金木〟を使用。

モビルトレースシステムを採用した、近距離から中距離での戦闘を基本とする高機動型の機体。

*5
麒麟をモチーフとして作成したオリジナル超機人、動力炉に陰陽五行器を使用した20メートル級の機体で、装甲護符による外殻と結晶筋肉により各部の動作を行う仕組みだが、元ネタとは異なり自意識は搭載していないため自律性は無い。

装甲材には、〝アステリコン合金木〟と〝アダマントス合金木〟の複合装甲、結晶筋肉には合金樹皮と結晶仙人掌にミスリルを混ぜ合わせたMCT、骨格には〝アダマントス合金木〟を使用。

人機合一方式を採用した、遠距離戦闘をメインとする高機動移動砲台で、マグネタイトを物質に構築する術式を組み込んだ各種銃器による物理攻撃と、構築した弾丸に属性を付与する術式による属性攻撃支援も可能な機体。

また、〝宇宙〟との合体機構が組み込まれており、合体することで機動力や出力の向上、遠距離攻撃能力の追加、追加装甲による防御力の向上、サブパイロットによる情報処理能力の向上などを行う。

*6
自身のペルソナを身に纏う具足に圧縮成形するハム子ネキの【甲縛式O.S.】で、ワイルドの特性によるペルソナチェンジにより、変更したペルソナに合わせて具足の色や形状、能力も変化する。

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