【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
美波さんと共に、幼女ネキへ色々と教えるイベントなんかもありつつ八月が終わり、暦の上では九月となった蓬莱島は、小笠原諸島よりも南東と言う位置、沖縄よりも赤道に近い場所だけあって、変わらぬ暑い日々が続いている。
そんな気温的暑さは兎も角として、九月になった事で、以前から予定していた蓬莱島への渡航許可、外部解放区画の正式オープンを開始した事により、ちょっと違った熱が島の一部で動き始めていた。
まあ大半は予想していた通り、食欲界のトリコ階層での食材集めや、モンハン階層での
一先ずは順調に滑り出しているし、その内出てくるだろう問題は都度対処するか、或いは外部解放区画を活動場所とする、当人達で解決して貰う仕組みを作る事になるだろうかと言った感じ。
外部解放区画の状況は概ね想定内に収まったし、準備に取られていた分のリソースが空いた事もあり、研究などの進捗状況として、区切りが付きそうなあれこれを仕上げて行く事にしたのが月の初め頃の話。
「それで、私の機体用の特殊装備を作ったんでしたっけ?」
「専用特殊装備かー、良いな~私の機体にも何か作ったり出来ない?」
「私の黒麒麟が琴音さんの特殊装備に当たるのでは?と思うで有りますが……」
「合体は合体で、特殊装備はまた別の浪漫でしょ!」
そんな訳で月が変わって少し経った日の事、工房の中でも超機人の建造などを行う巨大規模の一室に、タルタロス攻略メンバーが揃っていた。
妊娠中と言う事で、一番最後に回す事になった綴の専用機だけど、途中で色々思い付いたり、超機人の運用データからフィードバックしたりと言った事も有って、一度造り上げていた機体を再度造り直してたりするのはここだけの話。
とは言え今月には出産を終えて、育児は分身や九十九式自動人形達に任せ、タルタロスの攻略に復帰する事になる以上、正式に完成させておこうと言う訳で、機体や装備やらを仕上げて、お披露目する事にしたのが今日の集まり。
「特殊装備と言っても、わかり易く属性特化した装備って意味合いも強いんですけどね。とりあえず、今回作ったのはこの野太刀になります」
機体と装備のどっちから披露しようかと思ってた所、後から思い付いて追加した初期案に無い装備、と言う事も有ってか、興味津々な様子のため先に装備の方を取り出す事に。
形状としては、刃渡りだけで二十メートル以上もあり、素材には綴の専用機に使う予定で開発した〝緋焔合金木*1〟を皮鉄に使用しているため、揺らめく炎の様な色合いの刀身が神秘的な気配を漂わせている一振り。
「おぉ綺麗な刀!確かこれ、思い付きで新素材〝エイジャの赤石*2〟を創り出したから、活用出来る様にって感じで作ったんだよね?」
「太陽光の波長を内部で反射増幅して、レーザーの様に射出する性質を持たせた、宝石型魔導具みたいな物ですけどね。まあ、宝石の概念を持つ素材として扱える様に創り出す事が出来ましたから、普通に宝石素材としても使用出来るので、問題ない感じですが」
より正確に言うと、結晶内に浸透した電磁波を増幅させる事で、内部に侵入した時点から減衰させずに、収束して射出する魔導具で有り、太陽光の波長に近いほど増幅率が跳ね上がる仕組み。
物としての基本は〝電磁波増幅結晶〟であり、その中でも太陽光の波長に特化させた物を、〝エイジャの赤石〟と呼称している感じになる。
ちなみに、この電磁波増幅結晶の増幅する波長は、太陽光以外を設定することも可能なため、ガンマ線を増幅したり、マイクロ波を増幅したりと言った、他の再現ネタにも使えそうな素材だったりもする。
そんな新素材を使い、装備用に追加で研究開発したのが、太陽の概念を凝縮させた〝日天合金木*3〟で、この特殊装備の心鉄に使用しており、増幅した太陽の炎を緋焔合金木の性質で制御する構造になっている。
「武器としての性能は、属性耐性の火炎、電撃、核熱を吸収にする装備効果と、太陽関連が弱点となる対象への特攻。それから火炎と電撃、核熱の三属性いずれかを含むスキルを使用した際、威力増幅に関係するバフの数だけ、更に威力を増幅する効果の三つですね」
「とりあえず火力増し増しなのは理解しましたけど、太陽なのに電撃属性もですか?核熱属性が含まれるのはわかりますが……」
「細かく言うと色々ありますけど、簡単に言えば太陽風がプラズマだからですね。太陽の表面にもコロナと呼ばれる、百万度以上の温度になる密度の薄い大気層が有って、この高温だと気体の分子が、イオンと電子に電離したプラズマ状態になりすし、太陽の重力でも繋ぎ止められない程に質量が軽くなりますから、太陽表面での爆発――太陽フレアなどで放出されてる訳です。あと属性的に言うなら、爆発からの衝撃属性や大気層の流動から疾風属性、太陽の質量からくる重力属性なんかも対象には出来るんですけど、流石にイメージから離れるかと思いまして、電撃までの三属性にした感じになりますね。代わりに太陽弱点特攻の方には乗りますから、属性弱点を突くのと同じ結果にはなりますが」
「太陽の概念って、幅広くない?」
「まあ広いですね。幾つもの神話で最高神の位置に有るのは、伊達では無いと言う事です」
若干呆れた様に琴音が呟く気持ちもわかるが、最高神や重要な神格に位置付けされるのが太陽という物で、それが持つ概念の幅や強度が相応なのも当然の話。
今回作成した太陽概念特化武装〝
「随分と強力な装備ですけど、本当に私が使って良いんですか?」
「ペルソナ的に一番相性が良いのは綴ですし、状況に応じて手札を変えるのを前提にしている私や琴音と違って、一点特化が可能と言うのもありますからね」
「今のレベル帯で属性特化スタイルするなら、耐性の反射も吸収も貫通出来る権能は最低限として、結界系スキルによる防壁とか、反射を無視してぶち抜けないとねぇ。私だと権能域の貫通は物理ぐらいで、耐性抜くならガードキル系で一手掛かるし、結界割り出来るのは
「近接メインだと、他は久遠さんの武成王ぐらいでありますし、そちらは物理属性特化となると、綴さん以外に使い手はいないかと思うであります」
「と言う事で、この
ノリで作った私が言うのもなんだけど、それなり以上に能力の有る特殊装備に多少気後れしたのか、困惑げな表情で綴が確認をしてくるが、琴音も言った様に今の私達で、火炎属性に特化する戦闘スタイルも可能なのは綴だけだし、元々妊娠期間中の鍛練状況から、火の概念へ特化していく様子を見ての思い付きと連想の結果、エイジャの赤石や装備が出来た経緯もあったりする裏話。
それは兎も角として、予定外に作ってしまった装備の紹介が終わった所で、本来のお披露目である綴の専用機を工房内に取り出す。
大きさは約三十メートル、緋焔合金木とアステリコン合金木の複合装甲が、太陽表面の様な輝きを放っており、見た目的には、設計の参考にした某風の魔装機神の色違い、と言った感じの機体が姿を現す。
「これが、私の〝迦楼羅*5〟ですか……」
「炎の様に光り輝く装甲や鳥型への変形も合わせて、モチーフとしても丁度良かったですからね」
「おぉ~!私の機体も結構派手な見た目だと思ってたけど、更に派手だね」
「注目の的になりそうで有りますな」
「見た目的な派手さで言ったら、多分一番地味なのは私の龍泰樹でしょうね。ま、それは兎も角、最終調整に入りましょうか。綴の分身式神も練度が上がって、人機合一しても大丈夫になったみたいですし」
「分身を複数より一体に絞って鍛練してようやく、ですが……」
なお、綴はそう言っているが、黒札みたいに元の霊質が極端に高い訳で無く、長年の修練と繰り返してきた闘いの日々、それとタルタロスの攻略と言う〝冥府下り〟に類する神話体験、死を乗り越える経験を繰り返した事で、綴の霊質は錬磨拡張されており、実のところ現在の霊質は、黒札に見劣りしない程度まで至っていたりするのだけども。
この辺、ペルソナ使いとして覚醒したのも大きい話で、精神が肉体を凌駕する状況を体験し易かった事、肉体と言う器を持ちつつも、存在の根幹が精神側――魂や霊体に比重が移っている事により、タルタロス内で肉体の死と蘇生が行われる度に、強化された魂魄に相応する肉体へと変化していった事で、擬似的な限界突破が行われ、肉体の才能も拡張されていったのが、今の綴でもある。
まあ超越者の領域付近まで至っている現状に関しては、琴音と一緒に初期から戦い続けてきた事、【刈り取る者】やタルタロスの深層へ向かう道程を歩んできた経験があるからこそで、それが無ければ良くてレベル50に至れるかどうか、と言った程度だっただろうと思う話。
そんな過去回想は置いといて、迦楼羅の最終調整に関しては、流石に六機目な上に、他の機体の整備も普段からしている事も有り、特段問題も無く無事に終了。
後は妊娠期間が終わって、実際にタルタロス最前線へ投入してからと言う事で、タルタロス攻略準備に関するタスクは一区切り。
機体と装備のお披露目が終わり、それぞれ解散した後は、次ぎに区切りが付きそうな研究と言う事で、この間の【グガランナ/ベヒモス】の影響で研究開発に追加が発生した、サラマンダースフィンクスの研究へと取りかかる。
「摂取した栄養をブドウ糖として涙腺に溜めるのは、そう言う生態で良いとして、コップに注いだ状態で一年間、炭酸が立ち上り続ける程の炭酸量となると、やっぱり概念的にそう言う物として、精製される様にするしかないですねぇ……」
これまでも色々と創り出してきた事も有って、大体の性質を持たせる所までは順調に進んでいたのだが、これまでと明確に異なる点として、食肉が目的では無く、体内で原料を熟成させる事、生物の体内で物理法則を超える現象を成立させる事の二点。
体内で原料を造り熟成させるのに関しては、脂肪の様なエネルギーを蓄える性質の一つとして、コーラ・ナッツと同様の成分を含んだブドウ糖が涙腺に蓄えられ、熟成される様になれば課題解決となる訳で、摂取した栄養の違いによる成分の変化をどう調整するか、と言う部分には多少手間取ったけど、そこはベースとなる部分だけ体内精製させ、他の栄養素は味の変化要因として許容する事にした。
つまりは、ワインなどにおける当たり年みたいな感じの、年一回の採取による出来を楽しめる要素にした物で、ここまでは順調に進んでいた範囲。
手間取っていたのは、一年間炭酸が立ち上り続ける程の二酸化炭素を、どうやって含有させるかとの部分で、単純に物理法則を無視した様な生物と言うだけだったり、物理法則を超えるアイテムとして造るなら兎も角、創り出した生物を経由して、物理法則を超えた物質を創り出すと言う部分。
もっとも、一点物としてあれこれ手を加え、ただの
そんな訳で、メロウコーラを造り出す能力が子孫へ受け継がれて、生物としての繁殖能力が機能する様にするための、試行錯誤の繰り返しで時間が掛かっていたと言う話。
結局どうしたのかと言うと、生物としての生態その物に組み込むのでは無く、サラマンダースフィンクスの品種に所定の手順で刺激を与える行動を、一つの儀式として存在の根幹に組み込む事により、それ自体がメロウコーラを造り出す儀式場でもある、幻想生物として創り出す事になった。
「単為生殖による次代の出産と、次代でのメロウコーラ製造も確認完了。雄性体発生による変化は経過観察として……よしっ、これでサラマンダースフィンクス*6の研究は一区切りですね」
時間加速した異界内で、一年間栄養を与えたサラマンダースフィンクスから採取したメロウコーラ*7を検査し、味や炭酸量に問題が無い事を確認して、最終確認も終了。
概念系の儀式場も兼ねるだけあって、生態素材としては大体レベル50後半~60前半辺りの性能と言ったところで、トリコ食材としても特上品に仕上がった。
そうして原種の方が出来ていて、亜種の方向性も決まっているなら進捗は早いもので、【グガランナ/ベヒモス】の因子を突っ込んで食材や素材としての質も向上しつつ、より儀式場としての性能を高めて大量の炭酸を含有可能にしたベヘモススフィンクス*8を創り終わったのは数日後の事。
原作ネタ的には名前だけな気もするけど、こっちは生物素材だとレベル70辺り、トリコ食材としてはリーガルマンモスの
「日本でサイダーと言うと、ノンアルコールで無色透明の甘い炭酸水で、果汁フレーバーが付いたり付かなかったりなイメージですけど、日本のサイダー発祥は、イギリス人薬剤師が在留外国人向けに販売した、パイナップルと林檎のフレーバーを付けた炭酸飲料の〝シャンペン・サイダー〟と言う商品で、日本で本格的に流通したのはパイナップルのフレーバーを抜いて林檎フレーバーのみとした商品のため、シャンペンの名を除いたサイダーの商品名になったらしいです。なので、それに肖った林檎フレーバーを基礎にして、メロウサイダーの素は熟成される様にした訳ですね」
「へぇ~、なんで林檎系の味なのかと思ったけど、そう言う理由があったんだねぇ」
「カレンダーだと夏も終わりましたけど、常夏に近い蓬莱島だと冷えたサイダーが美味しいですよね~。効能とか考えるとクリスタルコーラシロップ*10を使ったクラフトコーラの方が良いですけど、純粋に炭酸飲料として味を楽しむなら、メロウコーラやメロウサイダーの方が上ですね」
「メロウコーラの方でも炭酸が強烈ですから、苦手な人も多い気がしますけどね」
出来上がった物の試飲って事で、ピザやフライドポテト、ポップコーンに唐揚げなど、ジャンク感溢れるラインナップを並べて、映画を見ながら取り留めもなく話す夕食後のひととき。
話題は色々と移り変わり、日常の些細な出来事からちょっとした依頼や要望の話など、友人として、恋人として、何より家族になろうとする者同士として、仲魔達や子供は分身と一緒に別室で遊んでいる間の、三人だけのコミュニケーション。
基本的にはフランクに、気分が乗ればしっとりとする事もある、そんな心の栄養を補給する癒やしの時間がゆったりと流れる。
さて、明日は何をしようか――
火行との相性が高く、概念的な効果として〝燃やす物を選ぶ〟事も可能になる程の火炎制御特性を持つ。
また、純度の高い結晶になると、太陽の光――波長を増幅する性質を持つ様にもなる特殊な鉱石。
基本状態では黄金色の結晶に朱金色の木目だが、火炎属性や核熱属性などの〝太陽〟に類する概念MAGを注ぐ事で、使用者の行使する力を増幅する性質を持ち、その際には使用者に沿った色味に変化する。
なお、この概念合金は増幅のみを行うため、相応の制御力が無ければ、際限無く増幅が行われ、使用者自身をも焼き尽くしてしまう事には注意が必要。
日天合金木により太陽概念の増幅を行い、緋焔合金木により増幅された力を制御する事で、太陽その物を振るう様な、力を発揮する事が可能となった。
装備効果:
太陽に含まれる概念を、弱点とする対象への特攻。
火炎・電撃・核熱属性の耐性を吸収に変更。
この武装を用いて火炎・電撃・核熱の、いずれかの属性スキルを発動した場合、威力増幅に関与する補助効果の数を、最終ダメージに乗算する。
※例:ブースタ・ハイブースタ・カジャ・チャージ・装備による属性威力上昇で五種類が乗っている場合、補助効果が適用された後の最終ダメージを、五倍にする。
装甲材には、合金樹に琥珀と緋緋色金を混ぜ合わせた〝緋焔合金木〟と〝アステリコン合金木〟を組み合わせた複合装甲、結晶筋肉には合金樹皮と結晶仙人掌にミスリルを混ぜ合わせた物、骨格には〝アダマントス合金木〟を使用。
某風の魔装機神を参考にした設計により、人型と鳥型に変形可能で、人機合一方式を採用した火力と機動力重視の火炎属性特化機体。
獲物を食べて得た栄養の一部をブドウ糖として涙腺に貯めており、それを年に一度排出する性質を持つ。
このブドウ糖と体内の二酸化炭素が溶け込む事によって、〝メロウコーラ〟が造り出されるが、その際には特定の手順で刺激を与える必要がある。
サラマンダースフィンクスが一年間摂取してきた栄養の一部を、ブドウ糖にして涙腺に蓄えた物に、適切な手順でサラマンダースフィンクスに刺激を加える事で、体内の二酸化炭素が涙に溶ける事により造り出される炭酸飲料。
原種と同様の手順で刺激を与える事で、〝メロウサイダー〟が造り出される。
また、メロウコーラよりも強烈な炭酸量を誇り、林檎系の香味を持つ炭酸飲料。