【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
1年365日、或いは今回の目的に沿えば十月十日と言う期間。
言葉にすれば短く感じるけど、閉じた一つの異界内で実際に過ごしてみれば、精神と時の部屋が修行場として語られる理由も良くわかると言う物で……。
「子供達の世話と、修行をしてましたから良かったですけど、来週は中で出来る研究テーマなり考えておきますかねぇ……」
「初めての悪阻とか陣痛なんかは大変だったけど、それ以外だと確かに暇な時間も多かったよね。妊娠中だと余り動き回る訳にもいかないし、積み上げてた本やゲームも大体消化し終わったから、何か探しとくかな~」
「宮城の悪路王異界から発見された、戦前のヤタガラス関連資料が有ったおかげで、暇にはなりませんでしたけど、それも一年掛けて読み終わりましたし、私も本とかゲームなどを探しておきます」
「私達としては、初孫の誕生に立ち会えて、子育てにも参加出来たので充実していましたね」
「ああ、序でに鍛練もつけて貰えたから、来週までに食欲界を回って実戦経験を積んで置きたいところだな。いつでも遊びに来られるとは言え、本拠は香川で戦力として期待して貰っているのだから、終末後を目標にもう少し力を付けておきたいところだ」
九月上旬にやっておくべき事を済ませたり、八月に宮城で行われた少し大きめの異界攻略作戦の後始末――貴重な文献の写本や呪具、祭器の調査など――を手伝ったりなど、幾つかの個人で完結しない用事も区切りがついて、ようやく一回目の異界籠もりを実施したのがついさっきまでの事。
当初は妊娠中だった私と綴の出産に、綴の第二子と琴音の妊娠出産まで終わらせる予定だったけど、初産となる二人の事を考慮したのと、綴の初産であり初孫が生まれるという事もあって、綴の両親を除け者にするのもどうかと思ったため、出産後は体調を戻す事に専念する事にして、私の第二子と綴の第一子の子育てをしつつ、琴音が出産後の体調を戻した辺りで、異界から出てきた感じになる。
ちなみに、綴との間に生まれた私の第二子〝
中でほぼ一年間過ごす事を考え、ヤタガラスと葛葉が残した遺産とも言うべき資料を持ち込んだり、娯楽関係も色々と持ち込んでいたわけだけど、子育てしながらとは言え、流石に一年もあれば読み終わるし粗方の習得も終わると言う物。
綴の両親を鍛えたり個人的な鍛練時間を増やしたりして、予定していた琴音の体調が戻るまでの期間を過ごし終わった感想がさっきの台詞になる。
思えば普段は、毎夜の影時間探索や各種寄せられる依頼、メメントスやマヨナカテレビなどの他の異界探索に行くこともあり、何だかんだ忙しく動き回っていた事で、プライベート以外に使っている時間も結構多かったのだと感じた物だけど、どちらかと言うと思い付いた事を研究したり、試す環境を用意していなかったことの方が、閉じた世界に居る辛さに繋がっていた気がする話。
兎も角、そうして一年間の異界生活についての反省もして、綴の両親が早速と食欲界へ向かった後、次回の異界籠もりに向けて持ち込む娯楽品の選定などをしつつ、木分身との情報共有をしていたところ、一つ興味深い情報が入ってくる。
「おや、幼女ネキから連絡が来てたと言うのは珍しいですが……、相談事自体はすぐに自己解決したから、中にいた
「およ、何か新技の話?」
「宮城の幼女ネキとウカノミタマとの間に生まれた女の子、イズナちゃんがNARUTOの螺旋丸と同じ術を思い付きで創り出したらしくて、元ネタ的な感じで、螺旋丸と属性の性質それぞれを持たせられないか、との相談が来てたみたいですね。日付的には昨日の異界に入っている間の頃で、昨日の内に解決したらしくて、加速倍率が極端に違うと同期するのも大変なので、出てくるまで共有はしなかったみたいですけど」
「螺旋丸と言うと、NARUTOに出てくる技でしたよね?チャクラを高速で乱回転させつつ球状に圧縮して、相手にぶつけるとか言う……」
「今回開発された【螺旋丸】だと、チャクラを霊力に置き換えて、属性を持たない無色の霊力を使うのがポイントみたいですね。属性のついた霊力だと、高速で乱回転する間に【アギ】とか、【ガル】とかの魔法に変化してしまい、【螺旋丸】としての特性が失われる様です」
「ふむふむ、こんな感じかな?効果的には強ノックバック、或いは強制ダウンと、魔力……いや、万能相性になるのかな?の魔力ステ依存ダメージ、万能属性って訳じゃ無さそうだけど」
「属性の無い純エネルギーですから、たぶん相性無視の系統になりそうですね。ペルソナの無印だと〝100%属性〟とか言われている、特殊系のスキル分類が該当しそうです」
こんな感じと言いつつ、話を聞いただけで【螺旋丸】を作りだして見せる辺り、琴音の霊力操作能力もレベル相応に鍛えられてるのが良くわかる。
木分身の方で検証してわかってる範囲だと、【螺旋丸】自体の分類は魔法で、属性相性を無視してダメージを与える特殊系統、幼女ネキが無属性と表現したのも納得の特性を持っており、威力自体は霊力の質――ゲーム的に言えば魔力ステータスと霊力操作・制御技術の複合に、【螺旋丸】に対する慣れと言うか熟練度により補正が掛かると言ったところで、術のもう一つの特性として、【螺旋丸】の威力と規模に応じたサイズ・重量・概念強度以下の相手を、強制ダウンかノックバック、ゲーム的に言えばプレスターンアイコンを一個追加するぐらいの、隙を生じさせる術技になっている。
でもって、自己解決した旨の連絡と合わせて送られてきた性質変化の方は、流石に属性相性無視の効果は無くなってるみたいだけど、強制ダウンかノックバックさせる特性は引き続きで、それにプラスして、組み合わせた属性のダメージと、属性に応じた状態異常の付与が基本性能になる感じ*2。
後は、変化させた属性から連想される概念を込める事により、概念攻撃が可能になると言ったところで、衝撃や疾風属性から【風遁・螺旋手裏剣】を再現すれば、風を金行に分類して切断の概念を付与して、風の刃による切断力と、至近距離で破裂させる事による風の針での経絡系の破壊、状態異常としては封魔・封技・麻痺辺りを与える技を構築する事も可能と言ったところか。
「なるほど、100%属性の感覚がいまいち掴めてなかったけど、こんな感じなら……うん。何かいけそうな感じがするからちょっとベルベットルーム行ってくるね」
「それなら私もやりたいことが有るのでついていきますよ。綴はどうします?」
「長くシャドウ異界に行ってないですから、私も慣らしを兼ねて行きます。異界内で一年過ごして超越も出来ましたから、今なら
どうやら【螺旋丸】を作る感覚から閃く物があった様で、超越者に至ってからは、タルタロス以外からもいける様になったベルベットルームへの扉を琴音が開き、柔らかな青色に染まったティールームか談話室のような部屋へと入って行く。
「ようこそベルベットルームへ、また一段と腕を上げられた様子。本日はどの様なご用件ですかな」
「こんにちは、イゴールさん。新しいペルソナが作れそうな感じがするから、ちょっと合体しようかと思ってね」
「私はいつもの様に場所を貸して貰えれば自分でしてますので、お気になさらず」
「後は、私がタルタロスの最深部を行けるか確かめるために、〝ペルソナ様〟を試しに来ました」
「なるほど、では合体の方はいつもの通りテオドアに任せましょう。探求者殿はご随意にお使い下され。そして超克を成し遂げ、あの方の試練へと挑むのであれば準備を致しましょうか、こちらへどうぞ」
そう言うイゴールに案内されて、綴が奥にある扉の向こうへ移動した後、代わりに一人の青年――テオドアが部屋に入ってきて、琴音のペルソナ合体の補佐を始める。
ちなみに、P3以降のゲームだとワイルドしか入室出来なかったベルベットルームだけど、今世では物質と精神の狭間に接続出来る能力があれば、部屋への扉を開くことが出来るし、ペルソナ能力の素養があれば入る事も可能なため、綴の方は以前から琴音と一緒に何度も訪れているし、私も超越者に至った後には頻繁に利用しているため、琴音がペルソナ合体に長時間籠もる事もあって、ある意味慣れ親しんだ場所だったりする。
それと綴が言ったペルソナ様に関しては、P1やP2でのペルソナ能力発現方法――フィレモン式と呼ばれたりもする方法で、この方式だと集合的無意識の中においても、自身の名前――己が何者であるか――を自覚し、名を問われて答えられる程の超自我を持っている事が前提となっているもの。
なお、表層的な価値観の一側面である、〝
そのおかげで私も、自身のシャドウとの対話により発現した物とは異なる、心の海――集合的無意識から汲み上げた、フィレモン式の
「潜在復活によるペルソナの
「お、そっちの合成終わったんなら、こっち手伝って貰って良い?」
「ええ構いませんよ。綴の方は新しくペルソナを増やせる様になったみたいですけど、何か作っていきますか?」
「琴音ちゃんが未だ続くみたいですし、意見も聞きたいので終わった後にお願いします。その間、お茶でも入れましょうか」
「ごめんね、もうちょいで終わりそうな感じだから、そしたら綴さんのペルソナ合体手伝うよ。お茶もありがとね」
私と琴音がそれぞれペルソナ合体をあれこれしている間に、無事ペルソナ様を乗り越えた様で、綴が読んでいた〝ペルソナ全書〟を閉じてお茶の準備に取りかかる。
なお、綴が読んでいた本については、ショタおじやカヲルニキに琴音などのガイア連合のペルソナ使い、特にワイルド特性持ちやフィレモン式の、ペルソナを切り替える事が可能な使い手用に、合体の組み合わせ情報だったり、各種カード系アイテムなどを使ってのスキルや耐性の追加方法に儀式手順など、全体的に数少ないペルソナ使いの戦力向上を目的として、情報を出し合って作成している物。
ちなみに、私もフィレモン式のペルソナを使える様になってからはお世話になってるし、情報の追加や検証作業なども行ったりしているけど、概念関係などは確定した正解が存在しなかったりもするため、認知的な
「よしよし、ようやく【オルフェウス・改】完成!突っ込むスキルに悩んでたけど、別シリーズからの継ぎ接ぎが出来たおかげで、【ネオ・カデンツァ*3】と【明けの明星*4】に【勝利の雄叫び*5】で普段使いし易くなったし、ボス属性持ちなら【ヒエロスグリュペイン*6】で雑に殴れるから、弱点属性がある様な相手以外は、とりあえずで使って行けるメインペルソナになったかな」
「【ヒエロスグリュペイン】のスキルカードを創り出すのも、ペルソナに突っ込むのも苦労しましたけどね。【ネオ・カデンツァ】は元々P5Rのオルフェウスが持つスキルですから、スキルカードを創れた後は簡単でしたが」
「何でもとは行かなくても、通常の合体以外にも手を加えられる余地があるのは助かりますよね。私はメインが火炎や核熱系統なのは変わらないとして、サブに万能やバフにデバフ系を入れておけば対応力も上がりますし」
そうして色々と状況を想定して、ペルソナやスキルを吟味して一先ずの組み合わせを作り終わった所で、ベルベットルームでの作業を終わらせ退出。
しばらくは次回の合成用素材を集めたり、作成したばかりの綴のペルソナを鍛える期間と言う事で、本格的な攻略再開前の慣らし運転気味に、タルタロス二百五十階を探索して一週間程経った頃、私達の姿は拠点から遠く宮城の地にあった。
「休みの日に時間を空けて貰って済みませんね、幼女ネキ。とりあえずまだ残暑もありますから、お土産にメロウコーラを持ってきました。ちなみに、食欲界での採取可能時期は六月から七月の間に調整してますので、取りに行くならその頃が良いですよ」
「おお!メロウコーラ出来てたのか!ああいや、お土産は嬉しいし、事前連絡貰ってるから休日に来るのはかまわんのだが、態々こっちまで来た理由がわからんのだが?」
「簡単に言えば、【螺旋丸】関係の資料をただで貰ってそのままと言うのは据わりが悪いので、合体技関連の情報を渡しに来たのと、悪路王異界で見つかった文献から、十四代目が使っていた仲魔との合体技の技術を発掘出来ましたので、伝えておこうかと」
そんな訳で、情報の対価は情報だろうとやって来た話。
後序でに、幼女ネキの娘のイズナちゃんがフィレモン式のペルソナ使いらしいので、ベルベットルームへの行き方とかペルソナ全書を渡したりしておくのも目的の一つ。
まあ思考能力は十分以上に高いとは言え、生まれたばかりで精神的な成長もこれからなことを考えると、新しいペルソナを作ったり、複数のペルソナを切り替えて戦ったりは、様子を見つつもっと後になってからの話だろうけども。
見た目に反して、確り父親している幼女ネキには、その辺も含めて情報を伝えておくのが筋だろうってのも、宮城まで足を運んだ理由だったりするが、とりあえず何所から話を始めましょうかね……。
ちなみに、子供が増える事になりましたが、年齢的にも終末までの本編中にメインで絡む予定は今のところ無い、フレーバー要素だったりします。
一応、子を産み育てる母となった事が、精神的に大きな成長となっているとの意味はありますけど、現状の人数でもキャラを活かしきれてる感じがしないのも理由です。
後、P3以降の自身のシャドウから変じたペルソナの使い手が、フィレモン式のペルソナ能力を後から得ている件については、フィレモン式の契約自体が、夢の中と言う集合的無意識の中でも自分の名前を答えられる事、つまりは己が何者かを意識出来る程の超自我を持っている事が条件らしいので、精神的な成長により確固たる超自我を持つに至って居れば、後からでも契約して心の海から可能性の仮面を汲み取り、被ることが可能になるのではないか、と言う拙作世界線での独自解釈です。