【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
調整に協力した修行場異界が正式に稼働し、そこからフォルマやマッカなどの生産素材を回収可能になり、当初は修行場異界=シュバルツバースか何かなのか?との疑問が噴出したが、ショタおじによると〝魔晶変化〟というマグネタイトが物質化する現象の一種で、悪魔と宝石を融合させる魔晶とは異なり、マグネタイトのみで結晶化した特殊物質とのこと。
結晶化する環境や元になった悪魔の情報などによってどんなフォルマが形成されるかが変わるらしく、逆に言えば環境や付与する情報を正確に再現出来るなら、望んだフォルマを作り出す事も出来るんじゃ無いかとも思うけど、それを研究するにしてもまずはマグネタイトのみで物質を構成する〝魔晶化〟が出来る様になってからだし、今は出来たら良いなと想像するだけだろうね。
そんな夢物語は横に置いて、同時期に動いていたショタおじ以外も使える式神についてだけど、試作一号は問題無く槍ニキと契約を結び、各種技術試験もクリアしてショタおじからゴーサインも出たため、最近はショタおじの分身式神の一体が常に式神製造を行い続けていると言う草も生えない状態に陥っている。
私もショタおじから色々と学んでいる弟子みたいな位置づけという事もあり、式神製作の降霊と術式の手順を覚えて可能な範囲で手伝ってはいるが、技量の問題はついて回るわけで……。
「一週間掛けてようやく一つ合格ライン……、習得したと言えるのはまだまだ先かなぁ」
「それも二人協力での儀式でやっての結果だものねぇ、回数こなすのはまあ当然の範囲だけど、修行場行ってレベル上げもした方が良いわね、これ」
「霊力量の向上もだけど、レベルという存在格が足りてないから上手く降ろせないってのはあるよね、絶対」
美波さんと二人揃ってため息と共に愚痴を吐き出し、出来上がった式神のコアを製造班に持って行くと、直ぐさま次のコアを要求されるが、製作に掛かった時間と技量の問題と製作速度向上のためのレベル上げに行くことを叩き付けた上で、文句があるなら自分で覚えてコアの製作をしろと突き返して部屋を出る。
正直なところ、他にも色々と学びたい技術もあるのだが、組織的な話として式神製造が急務なのも分かっているため、コア製作に回っているし、これはこれで高等技術だし霊力操作の技量は上がるし、何ならこれのおかげで魂の認識に関する理解も深まって、【リカーム】の精度が上がったり、自身の魂の解析も大いに進んではいるがそれはそれである。
流石に今日これからレベル上げと行くのは無理があるため、明日修行場へ入る予定の人員名簿に美波さんと二人でパーティ申請し、今日の仕事は終了にして休養することにした。
「それじゃ私は修行組の手伝いしてくるわねー」
と言って上機嫌に声を弾ませて歩いて行く美波さんを見送りつつ、今修行オフ会に来ている俺らの性癖が歪まない事を……祈る相手も特に無いので、手加減してあげてと美波さんに思いを送りながら、最近の瞑想場所にしている滝へと向かっていると、霊感による知覚に感じ慣れないナニカが触れた感覚から、反射的に発生源へと視線を向ける。
「な、なんか〝スタンド〟的なの出てきた!?えっ、これってもしかして覚醒したってやつ??!?」
「え?!あ、響さん!おめでとうございます。どうやら覚醒したみたいですし、神主のところ行きましょう」
視線の先にいたのは、何やらもの凄く混乱した様子の一見女性の様にも見える男性、ペットの亀が悪魔かも知れないから診断して欲しいと言う理由でやって来た立花響さん*1。
修行のためじゃないと言う割りと珍しい理由でやって来た人だけど、診断に一週間程掛かるからって事で序でに神社をのんびり見学して回っているそうで、その間に何度か話す機会もあって割と仲良くなったコミュ力の高い人でもあったり。
そんな経緯のある響さんと、その傍らに現れている某ドラゴンなクエストで有名な、愛されスライムな見た目の〝ペルソナ〟だろう存在を見たら、まあ驚くよねって話。
とりあえずこのままと言うわけにもいかないので、諸々の説明のためにもショタおじの元へ案内することにする。
「お、瑞樹ちゃん、こんにちは。さっきのってやっぱり覚醒したって事で良いの?」
「覚醒したのは間違い無いですね。多分ですけどペルソナ能力に目覚めた感じかと、正直なところ私もまともにペルソナ見たのは初めてですし、資料を読んだだけで詳しくは無いですけど……」
直ぐに引っ込んでしまった少し前までペルソナが存在していた場所を見つめていた響さんを連れて、ショタおじが今日いる予定の場所へ移動しながら、以前カヲルニキがショタおじに渡していたペルソナ関連資料の内、私にも閲覧許可が出た範囲の情報を説明していく。
まあ私が把握している限りではショタおじとカヲルニキの二人しか持っていない能力で、掲示板上でも〝精神力俺らがペルソナに目覚められる分けないだろう〟とネタにされる程度には稀少だしね。
「俺で三人目なのか……、そうなるとペルソナ関係で聞きたいことあったら、ショタおじかそのカヲルニキって人に聞くのが一番ってことか」
「ですね。ペルソナ関連の所謂シャドウ異界は通常の悪魔が居る異界とも違うらしいですし、集合的無意識が影響する認知世界と言う認識により物事が変化する概念が混ざるそうで、覚醒した異能者でも適正が無いと内部でまともに動く事も難しいみたいです」
「じゃあ悪魔とシャドウも別物って事?ペルソナシリーズだと悪魔と同じ姿してるのもあったりするけど」
「物としては別みたいですね。現世とは位相の異なる魔界に存在する情報生命体みたいな存在が、物質的な干渉も可能な状態で現世に現れたのが悪魔。人の精神に生まれる負の側面が形を持ったのがシャドウだそうです。異界の性質にもその辺の違いが言えるみたいで、通常の異界は現実が改変されて物質とマグネタイトが混じり合った空間ですが、シャドウ異界は集合的無意識により創り出された精神世界みたいな空間の様ですね」
「うーむ……、つまりシャドウ異界ってのは明晰夢の中に入り込むみたいな感じになるのかな?」
「概念的にはそんな感じなんじゃないかと、何でも思った通りになる様な夢では無いですけど、本物そっくりに作った竹光が実際に切断能力を持つぐらいの認識による影響は有るらしいので」
そうこう話している内にショタおじが居るはずの部屋へ辿り着く。
まあはずも何も、少し前まで式神コア製作関連で私達のチェックをしながら、分身式神と一緒になって式神コア製作をしていたわけで、逃走してなければまだここにいるだろうってことで、さっさと扉を開けると、感情が抜け落ちた表情で降霊術を行使しているショタオジと、完成品を棚に置いたところで過労死しているショタおじの分身式神が視界に飛び込んでくる。
「あ、神主の分身式神がまた過労死してますね。【リカーム】に【ディアラマ】やっぱりもう一回は必要ですか【ディアラマ】っと、よし!これでまた元気に働けますね」
「え?!いやっ、えぇぇ……??」
響さんがなんか宇宙猫っぽい表情になってますけど、分身式神はショタおじの分霊を被せることで、一時的にショタおじの技量や知識を再現出来る様にした式神ですが、中身自体はその辺の【地霊】や【妖精】辺りの霊片を元にした思考能力も無いスライム擬きですし、活動停止してもショタおじの姿を維持できている間なら
まあ、以前分身式神の術式とかについて教えて貰ったところ、元々は影武者的な用途として作られた術式だったそうですが、ショタおじが色々改造した結果として、神が分御霊を派遣するみたいな術になった様で、活動停止した時までの記憶とか経験も還元される様になってるとか言ってましたから、過労死するまでの経験が流れてきたショタおじの表情が死んでますけど、体力の方は問題無さそうなので大丈夫ですね。
「――と言うわけで、神主っぽいのが倒れていてもただの分身ですから、私とかの【リカーム】を使える人に報告するか、温泉にでも浸けておけばその内復活するので大丈夫ですよ」
「いやそれ大丈夫って言わないだろ!?」
「うん、まあ普通に大丈夫じゃないんだけど、瑞樹ネキはまだ積極的に手伝ってくれてる分マシなんだよねぇ……」
「神主は何でも無いようにやってますけど、降霊術って高等技術なんですからそう簡単にできる人増えませんって、私もコアの部分だけなら時間掛けて合格ラインにギリギリ乗せられる程度にはなりましたけど、神主みたいな戦闘に耐えられる体部分の構築はまだまだですからね。低級式神の製作法マニュアルも覚えましたけど、注文入ってるのは神主作成の上級品ばっかりなのが実際ですよ……」
「あー、その、なんだ。お疲れ様です」
「あ、ごめんなさい、今は響さんを案内してきたんでした。どうやらペルソナ能力に覚醒したっぽいので確認と説明お願いします」
ショタおじの悲哀が詰まった言葉についつい同調してしまったけど、今の主目的は別にあった事を響さんの慰めで思い出し、本題を切り出す。
「そうなの?……あ、マジで覚醒してる。ふーむ、アルカナは愚者でスライムか、今ペルソナ出すのはいけそう?」
「えっと、やってみます。んー、こう……、か?ペルソナッ!」
ペルソナシリーズでも色々とペルソナ召喚方法はあるけど、響さんはアルカナカードを砕くような感じで召喚する所謂P4形式ってところだろうか。
現出しカード状に集まった霊力塊を砕くことで、ペルソナというもう一人の自分、〝困難に立ち向かうための人格の鎧〟を纏うという降霊儀式の側面も有るのかもしれない。
そうして精神の鎧を纏う形式を取るからこそ、現出したペルソナは守護霊の様に傍らに在るのだろう。
「うーむ、まさにスライム」
「愛されオーラが凄いですよね、後レベル最大近くなったら大化けしそう」
「さっきは驚いててよく見てなかったけど、俺の心、スライム……?」
響さんが召喚したペルソナは、さっき覚醒直後にもちらっと見たとおりのスライムで、【アナライズ】結果としては耐性関係が【火炎・氷結・疾風・電撃・破魔弱点、呪殺無効】で、現在の取得スキルが【食いしばり】のみという残念な状況。
【食いしばり】が在る分だけまだましだけど、大概の人はこの時点で心が折れそうな気がする、少なくとも私はこれでポジティブ要素を探せる気がしないレベルなんだけど、響さんからは別段絶望したような気配を感じないのが不思議だ。
「ハンドルネームはスライムニキで確定しそうな感じだね、コレ。まあ【愚者 スライム】ってことだし、レベル的な成長か精神的な成長かしたら、本来のペルソナへ昇華する可能性はあるかもってところかな。多分ペルソナ、この場合は君のもう一つの側面が大きすぎて、今の君では耐えきれないから何者でも無く何者にもなり得る〝スライム〟なんだと思うよ」
「ペルソナ変化にはまあ期待するとして、でも瑞樹ちゃんから聞いた話も考えると、覚醒した能力が例えスライムでもペルソナだったのは不幸中の幸いなのか?未覚醒だったりペルソナ能力以外に覚醒した状態で〝マヨナカテレビ〟に遭遇して、適性が無かったりで何も出来ないよりはマシだよな!」
流石はペルソナ使いと言うべきか、精神力が強い……というか。
「え、スライムニキ待って?〝マヨナカテレビ〟在るの??」
「あ、瑞樹ちゃんの中でもスライムニキで確定なんだ……。で、マヨナカテレビについてかな?それなら俺の地元で最近噂が広がり始めてるんだよね。後、地元のローカルニュースだと発狂者や行方不明者の報道もやけに多いと思っててさ」
転生者の誰かが流したのかとも思ったんだけどねーと乾いた笑いを浮かべるスライムニキの言葉に、顔が引きつるのが分かるし、なんならショタおじがアチャーと顔を覆っているのが状況の厳しさを物語っている。
「ショタおじ、顔を覆ってないで、カヲルニキに連絡とって対処して貰う事って出来ないの?」
「余裕無くなって僕の呼び方雑になってるじゃん、瑞樹ネキも分かってるでしょ」
「おっとぉ、なんかヤバそうな気配がしてきたんだけど、俺も聞いて良い話?」
「ペルソナ使いだからこそ聞かないといけない話かなぁ、前世だとライトプレイヤーだったから私も詳しくは知らないんだけど、この世界ペルソナ無印に出てくる企業も数年前まであったらしいんですよね。富豪俺らの一人から情報回ってきたし」
「え?」
「更に言うなら僕は当事者から〝神取〟や〝某邪神〟について、警告と相談を受けてる。そしてここ数ヶ月の間にもN案件はあったし、なんなら新しくそれっぽいのを見つけたと数日前に連絡があったばかりだ」
「マジです?」
「数日経って続報無いならN案件で確定っぽいですね……。異聞の2が実行されると対処しようが無いらしいので、事前に潰して回るしかない以上、カヲルニキをマヨナカテレビに回すのは無理でしょうし、N案件があるなら〝メメントス〟も発生するか既に存在するかしてる可能性があるわけで……」
「マヨナカテレビは原因が別だから無いだろうと思ったんだけどな……。とりあえず、そんな噂が出てるならN案件の可能性も考えて調べるしかないし、スライムニキには出来るだけ装備や消耗品回すから、それで何とかしつつ現地でペルソナ使いを仲間にしていってね」
そう、第一回富士山オフ会でカヲルニキがショタおじに相談していたことってのが、その潰れた企業が研究していた様々な関連資料とこのペルソナ関連の厄ネタについて、特に厄ネタの方は噂システムとか言う原因と結果を逆転させる厄介な仕組みを構築しようとする邪神がシリーズの2作目にいるらしく。
例えるなら、〝火の無い所煙は立たぬ〟が正しいなら〝煙の根元には火があるはずだ〟と言う噂を流し、それを信じる人が多ければ多いほど、煙の下には常に火が燃えている状態を作り出すと言うもの。
これの厄介なところは、〝煙という結果〟が発生した本当の原因が何であっても、原因は火元と信じ込んだ人々の集合的無意識が干渉して〝無かったはずの火元が発生する〟ことで、この辺は人の集合的無意識や認知世界、概念だとかの話が絡んでくるから詳しいことは横に置くとして、少なくとも認知世界の特性と共通する点が多いことから、5作目の問題は起こる可能性が高いと予想して対策を考えていた訳なんだけど、今回スライムニキからもたらされた情報から、噂システム経由でマヨナカテレビが発生したのか、或いは4作目の原因が干渉してきた事でマヨナカテレビとして発生したのか分からない状況になったと言うこと。
こうなってくると、同じ方法で〝タルタロス〟が出現するか、3作目の原因が干渉して発生する可能性も今までの予想より高くなりそうだという話にもなるわけである。
「3作目の舞台が湧いてたりしないか確認する必要がありそうですね。まあ別口で作られてる可能性が無いとも言えないのが頭の痛い所ですけど、それとマヨナカテレビに凸る可能性が高いなら、渡す装備もシャドウ異界を前提にした物になりますよね?」
「それは今の案件が終わった後のカヲルニキに任せようか。道具や装備関連はそうなるね、と言っても消費アイテム系はマグネタイト経由で効果が発揮されるからそのままでも問題無いよ。装備の方は認知世界的な影響も大きいからちょっと考えないといけないけどね」
「えっと、結局どうなるので?」
「とりあえずスライムニキの滞在予定ってペットの亀の診断が終わる今日が最終日でしたよね、何日か延長出来ます?」
「うん、午後に診断結果を聞いてから明日帰る予定だけど、元々は初日だけの積もりだったし、今は夏休み中だから数日ぐらいなら伸ばしても大丈夫かな」
「それなら私の方で素材とか用意しますから色々試して良いですか?神主も良いですよね?」
「いや、流石に装備やら何やら用意して貰うのは悪いし、多少のお金はあるから代金は払うけど――」
「霊能装備になるから素材代込みだと三桁万は最低掛かるよ?依頼に合わせた貸し出しもしてはいるけど、シャドウ異界用となるとどのみち新しく用意しないといけないし」
「そんなに!?」
「その辺の知識も延長した滞在中に座学で教えようか。まあ瑞樹ネキの提案内容なら試作品のテストって方便が効くから無料提供しても問題は無いんだけど……」
「元々明日は美波さんと修行場行く予定でしたし、最近式神コア製作ばかりしてましたから、新しい技術に挑戦出来て実戦での効果確認までして貰えるんですから無料提供しますとも」
「本音はしばらく式神コア製作から抜けたいってところでしょ、それ」
「千本ノックは重要ですけど、たまには別の負荷トレーニングしないと伸びが悪くなりますからね!それじゃ私は構想練ってきますね」
「何か微妙に不安になってきたんだけど」
何かスライムニキから微妙な視線を向けられた気もしたけど、些細なことは横に置いて何を作るか考えながら部屋へと戻る。
覚醒したばかりで物理系のスキルも無かったし、何か武術をしていたようにも見えない体つきだったのを考えると、何が得意ってのもないだろうから一通り作って試して貰うのが良いかな?
持ち運んでも問題にならず、シャドウ異界で使うなら見た目や概念的に武器と認識出来るもの……。
「んー何が良いかな、武器種が多すぎても邪魔だろうし、近中遠のそれぞれで一つずつ試してもらう?後、防具とアクセ枠も何が良いかな……」
そうやってあれこれ考えて一応の案をまとめたら、技術相談系のスレを建てて草案を上げ意見を募集しておき、翌日は早速修行場へレベル上げと素材集めに向かい、技術班の手伝いをしつつエドニキにもスレの意見を含めて相談し、三日目にはとりあえずの形になったので、ショタおじの座学が終わる辺りに合わせて訪問する。
「と言うわけで、持ち歩いても職質され難くかつ誤魔化しのきく見た目で、シャドウ異界なら武器として機能するだろう装備が出来たので持ってきました」
「早くない?え、三日で出来る様なものなの?」
「実際の刃物としてより、見た目や術式の刻印と言った部分がメインですから、別に金属性である必要もそこまで無いので、まずは近接用〝呪符ハリセン〟シリーズです。一番外側の紙がそれぞれの攻撃属性になっていて、内側に並べた属性との間で循環増幅させることで攻撃時に生じるエネルギーの損失を減らし、属性攻撃を繰り返し行える様にしています。まあ性質上力依存では無く魔依存の攻撃になってしまうのが難点ですが、もしもの場合は霊力、ペルソナ使いなら精神力ですかね?兎に角MAGを込めて投げることで、中威力相当の魔法攻撃になる消耗品として使用出来るようにしてます。元々はアギストーンの様な消耗品として使用する符術の札を元にした名残ですね」
「基本の四属性に破魔と呪殺、地変と水撃も用意したの?で、物理のコレは前方に範囲攻撃か、通常の異界だと若干心許ないけど、シャドウ異界なら良い線いけそうかな?」
「通常攻撃で属性攻撃が出来るって普通に凄いことだと思うんだけど、俺がおかしいの?これ……」
呪符ハリセンは基本構造が五行相生で装備者の余剰精神力や霊力を回収して増幅する事で、作成時の状態を維持する様な仕組みにしており、本来一回使い切りな呪符をそのまま発動させるのでは無く、攻撃が当たった時に五行相生で増幅された分のエネルギーを外側の呪符に対応した属性の力として表出させる術式を組み込んだもの。
物理打撃では無く魔法攻撃の範疇になるため、前衛型の基本となる力のステータスが関与しない武器になってしまったけど、その辺は魔・速型みたいな変則型の成長をする人や速度型で、牽制や連携の起点にすると言った使い方も出来るんじゃないかと思ってる。
「思ったより好感触でしたね。属性攻撃出来ると言っても呪符のある側面を確りと当てないといけないので、ある程度向きを考えて振る必要がある部分が実戦慣れしてないと厳しいかな?とは思いますからね。そんなわけで次は中距離用ってことで、長柄武器〝組み立て式ハルバード〟です。こっちは属性関係の多様性は無いですけど、その代わりパーツを組み替える事で棒と槍、斧にハンマーと変えることも可能なハルバードです。まあ正確にはハルバードを使いこなせないなら、使える部分だけ残す感じのイメージですね。一応刃となる部分には金行で金属としての性質と切断力を強化する術を刻印してますので、シャドウ異界に入った後に刃のあるパーツへ触れる時は気を付けて下さいね」
「ネタ路線が続くかと思ったらガチ目なのが来た件、と言うかこの見た目で持ち歩いたら普通に職質されない?」
「そのために組み立て式ですね、分解したら棒以外は鞄なりで持ち運べるでしょうし、木製の棒なら登山で使った杖ぐらいのごまかしは出来るかと思った感じです。更に言えば全部木製ですから、万一聞かれても芝居の小道具とでも言えば誤魔化せるかと」
「ふむふむ、改良できそうな点は色々あるけど、シャドウ異界で使うならこれぐらいあからさまの方が良いだろうし、悪くないと思うね。まあ瑞樹ネキ自身も言ってた様に、ハルバードみたいな複数用途を合わせた武器って使うのにセンスがいるからね、基本は槍にでもしておくのが良いんじゃない?」
こっちの難点はそのまま複数用途のある武器を使い熟すのが純粋に難しいって事、ゲームとかでは定番な武器だけど、実際に使うとなると槍部分で突くのか或いは薙ぎ払うのか、斧部分を叩き付ける又は斧部分での薙ぎ払いをするのかみたいに、状況が目まぐるしく変わる戦闘中にどの種類の攻撃が効果的かを考えるなり感じ取るなりして振るえないといけないわけだから然もあらんってところ。
後は通常の異界で使用することは全く考えてないので、認知世界以外だと木刀を振り回しているのとさほど変わらないってところだろうか、まあ霊的武器なのでただの日本刀よりは効果あるだろうけど。
「最後の遠距離用は木製のモデルガン、シャドウ異界の認識補正を考えて某怪盗三世の凄腕ガンマンが愛用するリボルバーをモデルにしてます。弾倉に弾丸を込めている状態という認識も必要だろうと思って、通常弾と他にも各種属性弾や状態異常弾も予備含めて十二発ずつ用意してます。一応撃鉄に起動、雷管部分に点火、薬莢部分にも推進力変換の術式を刻んでますし、ライフリングの正確な角度など分からない部分は術式でそれっぽく螺旋回転させる様にしてます。実際に弾丸を発射すると言うより、撃つ意志を持って引き金を引く事を始点として、装備者の霊力や精神力をごく少量注ぎ、術式の起動から発動までの流れを構築してみました」
「うーむ、ギリギリ想定した動きをするかなってところ?まあ僕も銃には詳しくないからそもそも真っ直ぐ飛ぶかも分からないけど、シャドウ異界で使うなら一応銃として機能はすると思うよ。実際に弾を発射するわけじゃないから下手したらエアガンより威力が下がるかも知れないけど、その分精神力が続く限り弾切れしないし、消費する量も魔法系スキル使うより少ないだろうね」
「見た目普通の拳銃にしか見えないんですけど??」
「持ってみたら分かると思いますけど、未覚醒者には普通に木製としか見えないですよ。覚醒者だからそれに込めたフォルマや術式の影響で本物っぽく感じるだけですし」
「あ、ホントだ。うわー、持った感触や重さは木製なのに、金属製を持ってる様な感覚もある……」
ショタおじにも色々言われたけど、そう言った部分を試す意味でも試作品ってのは本当の話、上手く術式を作用させられる様になれば、銃で弾丸を発射する概念の術式化が可能になるかもしれないし、そうなれば覚醒スキルが銃撃系だった人達が使える銃の代用品を作れるようになるかもって構想からエドニキに手伝って貰った作品でもある。
現状覚醒して自分の適性も分かっているけど、適した装備が無いから十分に力を発揮出来ないって人も居るからね、技術班としてはそう言った人のための装備開発も進めていきたいところ。
まあ一番は実銃を使える様になることだろうけど、ゲームでそれが出来たのは国が崩壊してたり軍事組織所属だったりしたからだしね。
「武器はこの三種類として、防具とアクセサリ枠は一種類ずつですね。陣羽織風に仕立てたベストとお守りになります。ベストの方にはスライムニキにメタルな加護があればと思って刺繍してあるぐらいですが、お守りの方は厄除けを元に各属性それぞれと、陰陽五行で一纏めにしてみた物も作っています。一応形代としての役割も持たせているので致命傷の肩代わりも期待出来るかと思います」
「防具として何処まで効果を期待出来るかとなると未知数だけど、選択としては悪く無さそうだね。お守りも形代としての機能は十分、厄除けに関して属性個別は良いとして、一纏めにした方は浅く広くになってしまってるのがちょっと残念かな?」
「三日でこれだけの量と種類作ったの?マジで……?」
「まずはこれらの装備を渡しますので、実際にマヨナカテレビへ突入することがあったら使用感を報告して貰えれば助かります。後は明日までに持ち帰る分の消耗品を各種用意しておきますね。シャドウ異界での実用テストが出来るって分かった技術班からのお土産もあるので、遠慮せず持ち帰って使ってみて下さい」
満面の笑顔を浮かべていたはずなのだけど、スライムニキからは乾いた笑いとショタおじの苦笑いが印象的でした。
ちなみに後日、渡した装備毎の実使用データ、どの敵にどんな効果があったかや、消耗品を使用した際の効果量など、【アナライズ】付きのゴーグルを渡していた事も良かったのか、事細かな情報が送られてきて技術班から歓声が上がったのは別の話。
また、『ざこそな! 第8話』より〝やる夫の女装=ビッキーは実は当初から考えていた〟とあるため、本名〝立花響〟として、見た目は男装したビッキーと設定。
感想にて、オリキャラの容姿などについて○○そっくりなのはメタなのでは?との話があったので、作者の解釈と今作での設定について。
本家様の『・神だけど何か質問がある?』にて、転生者の〝俺ら〟は前世世界において【超高位の悪魔の転生体】で在ることから、前世〝俺ら〟がサブカルなどに触れた後、今世世界へ再度の転生をした際に、霊的起源と相性の良いサブカルのキャライメージが干渉し、容姿や因果関係などに影響したと想定してます。
特定のキャライメージが無いタイプは、相性の良いキャラを知らなかったか、複数該当するためどれかに寄せきらず、足して割った様な容姿や環境になったのではないかと推測。
序でに、ごく少数いるとの話があった、日本以外に転生したパターンは、この干渉による因果関係で他国に生まれたと解釈してみる。