【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「えーと、
「よっし!依頼先の状況変化ダイスでファンブルした時はどうなるかと思ったけど、何とかなって良かったよね。ホントに……」
「正直クリア出来たのが不思議なくらいですけどね。元々のゲームバランス的にも、下手を打てばロスト、運が悪くてもロストで難易度高めですし」
「霊能業界の現状をTRPGのルールとして起こしてみたら、ただのクソゲーになったのは笑うしか無いんですよねぇ。これでもゲームとして成立する様、プレイヤー有利になる設定とか仕様を追加したんですが」
「ははは、まあ属性はごちゃごちゃしてるし、基本的に悪魔の方が強いし、メシア教モデルなテロ組織は外法で簡単パワーアップするからねぇ」
「安易な方法を選ぶとほぼキャラロスするのは、ゲームも現実も変わり無いですけどね。まあとりあえず、雑談はアフタープレイまで終わらせてからしましょうか。まずは琴音のPC一人目、湊君からですが――」
宮城での用事が終わって翌日、予定通りほぼ一年間に及ぶ異界籠もり二回目を実行している最中のこと。
基本的には各種修行をしたり、個人的な趣味娯楽の時間を過ごしたりなどして、順調に妊娠期間を過ごしている訳だけど、集まって遊ぶのも結構ある話。
そんな中で割と遊ぶ回数が多いのが、色々な閃きも与えてくれたりするTRPGな訳で、今回は遊ぶ序でにガイアグループ娯楽部門からの、アニメ陰陽寮の日常を題材にしたと言う事になってるTRPGのテストプレイ兼、キャンペーンリプレイでも作ろうってところ。
一通りアフタープレイまで終わらせて、諸々の後片付けまで終わったらお茶を入れ直し、次回のセッションに向けたキャラ成長などを行いつつ、相談込みの雑談へと移る。
「それにしても、琴音の湊君は相変わらず見事な主人公ムーブしますよね。ダイスの結果なんですが……」
「最初は無気力系の予定でしたよね?積極的に前に出ないけど、周りを支えられる縁の下な感じで」
「今でもそうするつもりなんだけど?!そもそも一セッション目の新人研修で、教官と分断された上にボス空間に飛ばされて、全滅するかと思ったら湊の手番に限ってクリティカル連発するし、教官が到着したターンに前世覚醒の判定成功してボス討伐なんてやらかすし!」
「そこはもう、琴音の運命力としか言い様が無いですね。ポジション適性を見るための研修目的でしたし、元々のPC1予定だった綴の
「強さを求める王道系主人公を目指したんですけどね……。まあ普段から失敗したりファンブルしますけど、重要な場面では失敗しないですし、戦闘中は湊君より安定してクリティカル出してますから」
「まあダイス運の事はそう言うもんだし、特徴的なキャラになったから良いとするけど、TRPGとしてはやっぱり難易度高くない?いや、コンセプト的に仕方無いんだけどさ」
「霊能と関係無い一般のプレイヤーにテストプレイして貰った時も、難易度の事は言われましたけど、ゲームの舞台自体がシビアな環境ですからね。ハードな世界観を前提としてるだけに、プレイヤー有利にし過ぎても違和感があるとも言われましたよ」
「確か、陰陽寮の日常のアニメ四期目が始まった記念に、新しいサプリ*1を加えたTRPGリプレイを出すって話でしたよね?」
「今年の夏前に基本ルルブ*2とサプリを幾つか出したら、以外と売れてるみたいですからね。紙媒体の設定資料集としても好評らしいので、少なくとも二期までに登場した技術系統のサプリは、冬の祭典を目安に出したいって言われましたから、序でにリプレイも付けて見ようかと言う話ですね」
「そう言やルルブ書いてる時は、何度もダメ出しされて頭抱えてたみたいだけど、新サプリ追加での調整はやけにあっさり終わってたっぽいのは、何か理由有るの?」
「基本ルルブの方は、最低限の業界情報と
「あ~、ルルブも技術系統別のサプリも分厚いもんねぇ。去年末からと前回の異界籠もりがあったとは言っても、よくまあ書き上げたもんだよね……」
分厚いと琴音が表現する通り、釣られて視線を向けた先にあるのは、辞書か何かの様にも見える本が積み重なった一角。
ゲームシステムとして成立させられる範囲に何とか収めた、鈍器の様な厚さの基本ルールブック〝陰陽寮の教練書〟を初めとして、ルルブに掲載している基本クラスとしてるCOMPを使う
そして陰陽術に焦点を当てた追加サプリ〝星の占事略决〟、神道系のクラスや儀式を掲載した〝大和神奉録〟、修験道系のクラスに修行内容などを掲載した〝峻厳たる霊山〟、大陸は道教系のクラスに術技を掲載した〝悠久なる
なお、冬に発売予定なのが〝悠久なる
ちなみに今放送されてる四期目は、アイルランド周辺の神話を軸とした物で、ケルト神話にアイルランド神話、アーサー王物語の方が有名なウェールズ神話など、一神教の影響で衰退した神話群にスポットを当てており、メシア教をモデルにした
後、四期目に登場する技術については、冬に発売した分の売り上げ状況を見てとの話だけど、一応前衛系統を載せた〝戦士の誓い〟と、知識層であるドルイド関連を中心とした儀式や生産技術などを載せた〝深緑の指導者〟辺りの用意は既に終わってたりする。
「TRPGのサプリとしてなら、細かい設定が盛りだくさんでもそう言う物と、受け入れられますからね。流石に終末後でも、レベル30を超えられる人数はそう多くないでしょうし、30以下用の技術書が市販されていれば、ガイア連合に掛かる負担が少しは減るかも、程度の思惑でやってる事ですし」
「現実的に30以下向けで十分ってのは私も同意しますけど、純粋なゲームプレイヤーとしては、レベル31以降の追加ルールが欲しくなったりしませんか?」
「それは有るよね。まあ現実側だと発売してから二、三ヶ月ってとこだし、物足りなくなるのはまだまだ先だろうけどさ、確実に上級サプリの要望出ると思うけど、その辺はどうする感じ?」
「30以下の知識なら、ガイア連合山梨支部としては特に規制する必要も無い程度ですけど、流石に超人や概念域に差し掛かるレベル31以降の知識だと、多神連合やメシア教などに悪用されると面倒ですから、悩ましいところなんですよねぇ。いっそのことガイアポイントでの通販限定にして、購入手続きにガイア連合に対する悪用を禁止する契約でも組み込みますかね……」
「上級ルールなら、そもそも基本は持ってるか合わせて買うかって感じだろうし、それも良いんじゃない?ま、実際どうするかはちひろさんとかも含めて話す事だろうけどさ」
「概念領域のデタラメさを考えると、ゲームとしてなら情報を制限しても良いんじゃないかと思いますよ?実際に概念系の力を使える様になって、それが必要な闘いもしてるので、技術書としてなら概念関連の情報も、とは思います。けど、ゲームで概念系の言った者勝ちな理不尽効果とかは、それこそ極一部のギミックで使えるぐらいでないと、ゲームの態が破綻しませんか?」
「んー確かに……?ゲームシステム的な破綻を考えると、それも懸念するべき部分でしたね。ゲームとしてなら、最上位到達報酬的に概念系能力を一つ設定可能ぐらいにして、多少自由に効果を組める感じのシステムを考えますか。よし、草案とかは後で作るとして、次のセッションに向けてキャラ成長とか見ていきましょうか」
今後リリースするサプリに関しては一先ず置いておいて、進めてるキャンペーンの方に話を戻せば、今回のセッションで色々と予定の変わった成長結果から、次回セッションの難易度調整をどうしたものかと、頭を抱える羽目になったりとかもしたけど、それもまたTRPGらしさの一つかな。
まあその後、何とか予定数のセッションを熟した頃には、当初予定していたより壮大なキャンペーンになってしまったりもしたけど、異界を出た後に娯楽部門の担当者へ書き起こしたリプレイ渡したら、冬のサプリと合わせてそのまま出すことになったのを考えると、担当としても許容範囲だったという事だろう。
そんな事も有りながら、遊んだり修行したり、日々育っていく胎児の様子を確認したりと、体感的にはゆったりとした平和な日々を堪能する時間が過ぎていく。
時間加速異界の中に居る今現在を含めて、生き急ぎ続けている現状の中で、半ば現実を忘れて休息出来た時間も、月日が経って綴が私との間の子である第二子〝
出産前後から体調が戻るまでのバタバタした期間が終わって、時間加速異界から出て現実へと戻れば、中に入っている間に起きた事の確認など、慌ただしい日常が再び始まる事になる。
ちなみに、〝
まあ現実側だと一日しか経過していないため、大事件でも起きてなければ、琴音と綴の二人については生まれた子供達の事と、体感一年前になる翌日以降の予定を再確認するぐらいだし、私はそれらに加えて、異界内でも思い付いて研究・開発したあれこれの登録作業なども有ったりするのが、多少大変と言ったぐらいだけども。
後、一年程時間があったとは言っても、私の方は休息がメインと言うか、妊娠中の二人の側で忙しく動き回るするのは問題ってことで、研究や開発も遊びや修行の合間にちょこちょこする程度だったため、結果として形になったのはそれほど多くなかったりする。
「そんな訳で、一年の異界暮らしの中で思い付いて、新しく創り出してみたのが〝遊球樹*3〟と、その果実を加工したこの各種ボールになります」
「精神と時の部屋やってたのはわかるが、それがなんで星祭の修羅勢集めてのバトルドッジ*4になってんだ?」
「いつもの様に農業部に持って行ったんですけど、レベル100前後でも使える事を前提にした植物は流石に栽培出来ないと言われまして、なので個人的な宣伝活動ですね。食欲界のトリコ層で自生させる事にしましたし、蓬莱島で購入出来る様もする予定ですけど、基本的に使う可能性が高いのはここの修羅勢ですから、存在告知と宣伝兼ねて提供したら」
「馬鹿共がはしゃいでこうなった、と……」
「フィールド区切れば出来ますからねぇ。それにどうせ、当たった当たってないの論争からリアルファイトになりますし、それなら倒れて動けなくなったら退場の方がわかり易いので。あ、良い感じにエネルギー蓄えたのは、試食用に出してますけど、どうです?」
「んじゃ一つ貰うか」
星祭にある鍛練場の一つを占有し、いくつかのフィールドに区切った結界の中で、修羅勢が各々好きな技名を叫びながらボールを投げ合い、ダウンや気絶状態になって退場判定され弾き出された人がorzしてたりと、騒がしくも楽しげな空間が広がっており、そんな鍛練場の入り口横で様子を眺めていると、ふらりと顔を出したセツニキからどんな状況か聞かれたのが先程の事。
とりあえず説明に合わせて遊球樹の実の試供品の内、霊的味覚の属性が偏っていないプレーンな物を渡し、食事中は会話しないセツニキの姿勢は知っているため、食べ終わるまでの間に実の加工に挑戦している面々の指導をしたり、追加分のドッジボールを用意したりして行く。
「ごちそうさんっと、果物としちゃドリアンやポポー*5が近いか?この二つより香りはだいぶ薄いが……。桃と林檎が合わさった様な感じだったし、そのままよりパイとかの素材にするのも良さそうだな」
「加工した遊球樹の実は最大で三メートル程まで大きく出来ますから、その分加えたエネルギー量によって果肉の最大量も多くなりますので、素材として加工に使い易い様、香りは控え目に創りましたね。生食でも十分美味しく食べられる様に、とも気をつかいましたけど」
「そんで、これが未加工の果実か。そのままでも指弾に使い易そうだな、弾力的にゴム弾の代わりになりそうだし」
「大きさも弾力もバラバラな各種ボールに加工出来る様に、初期状態は球技に使わないぐらい小さくした結果ですね。大きさはそのままに果皮を硬く加工する事も出来ますし、手元に帰還させる術式でも込めれば、使い回しも出来て、非常時には食料にもなりますよ」
「これがそう言う道具ってんならわかるんだがな。特殊な栽培どころか異界で自生させられるってのが、探求ネキのトンデモな所だよな」
「権能として使い始めたのも経験も、一番年季が入ってるのが植物改造関連ですからねぇ。あ、そう言えば〝
続いて取り出したのは、トリコの第一話からあちこちで登場し、タバコの代わり感覚で描かれている葉巻樹。
実のところ前世だと煙自体が苦手だったもので、今世になって霊薬香などを嗜む様になるまで興味も無かったんだけど、ペルソナ組への嗜好品供給として、タバコ栽培や各銘柄に近いフレーバーの再現なんかでも散々試してきた事も有り、忌避感も薄れてきたため、一念発起して創ってみた品種になる。
なお、タバコと同様の品という事も有って、葉巻樹にもニコチンは含まれているけど、含有量は未覚醒者でもヘビースモークしなければ問題無い程度で、タバコとしての肉体的な反応よりも、ニコチンを触媒とする事により、タバコにより生じるプラスの反応を、霊薬的な効能として強化増幅する目的のため。
後、霊能者で有ればニコチンによる肉体影響もさほどでは無いし、神道系の浄化術式で禊ぎでもすれば、多少体内に残る毒素も払えるから、問題になる事も無いと言うのも、葉巻樹の再現に取りかかる気になった理由だったり。
「ほぅ、なら一つ試して見るか」
ある程度吸いやすい様に、枝の太さを調節した葉巻樹の枝を入れたシガーケースと灰皿を渡すと、成れた手つきで火を付け一服。
軽く吸って口内で香りと煙を味わった後、鋭く煙を吐き出す様は、セッツァーの見た目もあって実に様になっている。
「……ふぅ、確かに俺好みだな。ただまあ、間違い無く良いものなんだが、普段から吸うなら、やっぱりいつもの銘柄になるだろうなぁ」
「まあでしょうね。その辺、好みに合うだけが選ぶ理由じゃ無いのが、嗜好品の難しい所ですよねぇ」
「ま、タバコが大丈夫な奴なら、霊薬として常備する価値はあるだろ。世の中禁煙ブームだが……」
「私も子供達が居る場所だと、ニコチン含まない霊薬香ぐらいしか吸わないですからね。必要があってタバコ関連を研究した結果、タバコも煙も大丈夫になりましたけど、前世だと嫌煙家でしたし」
「愛煙家としては、理解者が増えて嬉しい話だな。そんじゃ俺もバトルドッジに参加してくるか」
吸い終わった葉巻樹を灰皿に落とし、足取りも軽くセツニキがフィールドへ歩いて行く。
程なくして、セツニキ参戦を知って沸き立つ修羅勢の喧噪が、一段と楽しげに跳ね上がり、最終的にはチームも何も無い、バトルロワイヤルドッジボール*7になっていたのは、ある意味いつもの修羅勢と言ったところか。
「些細な事も楽しめる心があるなら、まだ大丈夫ですかね……」
修羅勢だ何だと言って笑っていられる日が何時までも続けられる様に、そう願いながら今日もまた一日が終わり、影の時間が始まる。
果肉はクリーム状になっており、果実に加わる衝撃や回転によって美味しさを増し、込められた霊力の属性によって霊味が変化していく性質になっているため、本来の味にプラスして火炎と電撃をミックスした味などを楽しむ事も可能。
また、果実の大きさや形状、弾力の度合いに果皮の硬さなどは、霊力を込めながら操作する事により変化させる事が可能で、変化を開始した際の霊力操作が、途切れた時点の状態で基本形が固定され、以降は霊力を込めて一時的に変化はしても、操作が途切れた時点で基本形に戻る様になるため、加工の際には注意が必要。
なお、果皮は霊力操作しながら剥く手順以外では破れたりせず、果実に加わったエネルギーを果肉の質量や味に変換するため、基本形として硬いボールに固定した物を投擲武器として使う事も可能。
葉っぱを付けず枯れ木の様な状態で、周囲のMAGを吸収しながら成長する性質が有り、MAG濃度の高い異界程、上質な葉巻樹が育つ。
また、葉巻樹の煙は呼気に含まれるMAGと反応して、喫煙者の好む香りへと変化し、身心のストレスを軽減や思考力・回復力を向上する効果を発揮する。
この香りの変化は、質が上がる程好みの合致率が上がり、各種効果も上昇する。
アイテム効果:ストレス軽減効果、品質に応じた時間中の思考力上昇・回復力上昇効果