【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
崑崙の仙人との交渉を行った十月の始めからしばらく、蓬莱島への来訪者や学徒として移住してくる者が徐々に増え、
いつもの如く思い付いたアイディアを形にするため、必要な素材採取としてはるばる足を運んできたのは、蓬莱島から遠く離れたユーラシア大陸はシナ地方、半終末の今現在的に言えば中華戦線のまっただ中である。
「うーむ……、流石に無限沸きしていると言われるだけあって、そこかしこにペ天使が蠢いてますね」
「しかし、これだけ広いと局地的な勝利は出来ても、全体としての勝利は望むべくもないな」
「今は何とかなっていても、いずれ確実に破綻するわよねぇ。ま、だからと言って私達が何か梃入れする訳でも無いんだけども」
「多少の延命にはなっても、根本的にはどうしようも無いですからねぇ。分水嶺は私達黒札が呼び込まれる前の時点で過ぎてましたから、私達に出来ることは少しでも次ぎに繋げられる様に被害を抑え、持ち越す準備をするぐらいですよ」
目的の物を求めて大陸内を彷徨き、目に付くペ天使を屠りながら探索する事数日。
掲示板の方では、幼女ネキが親戚を迎えに行くため大陸の方へ遠征しに行ったとか、その際にKSJ研究所が情報提供したとかの話を見かけたけど、今探索している範囲とは別の地域みたいだし、余り関係はしないところだろうか。
まあとは言っても、メシア教と言う共通の敵がいる関係から、中華戦線で戦っている者達に取っては、少なからず関係してくる話でもあるんだろうけども。
「それで、態々メシア教過激派の拠点を潰した訳だけど、目標はこの辺で良いのよね?」
「占術による結果だと、ここの近辺に有ると思うんですよね。まあ探す前に助けられる人員ぐらいは救助して、後方に送り届けますか」
「では救助の序でに、内部の情報も集めておくとしよう。私達には要らないが、ここで戦っている者達にとってはあって困る物でも無いだろうしな」
「研究資料などは碌な物が無いでしょうけど、作戦や計画関連の情報があればって所ですか」
占術で場所に見当を付けては現地に
出来るだけ気付かれずに殲滅したため、他の拠点が異常を察知するのはまだ先だろうけど、どんな因果が絡んでくるか分からないし、面倒が起きる前に早めに目的に取りかかりたいのが本音だが、それはそれとしてただの被害者を放置するのも、心情的に飯が不味くなる話なため、心の贅肉と割り切って対処する事に。
それにこう言う心の動きを抑え込んでいると、人間性が削れ〝人ならざるモノ〟へ落ちてしまうってのが、ショタおじやセツニキを含めた超越者共通の見解なため、人の範疇であるために人間らしい余分な感情を大事にしようってのも、高位霊能者の共通認識だったりする。
「さて、可能な範囲での蘇生や治療も終わりましたし、近くの前線拠点にでも運びたいところですが、場所情報とか有りましたっけね……」
「前にKSJ研究所から貰った情報だと、東へしばらく行ったところにあるみたいね。まだ町が残っていれば其処に持って行けば良いんじゃないかしら?」
「なら木分身で運んでいきましょうか。転移でいきなりよりは、空でも飛んで運んだ方がスムーズに行きますかねぇ」
「一応
基本的に武人然として静かに控えている久遠だけど、最初期の頃は色々と手続きなどを任せていたのもあってか、秘書的な細かい気配りも普通に熟してくれるのが有り難いところ。
場所の確認や連絡などはそのまま久遠に任せる事にして、私の方は運搬用に床面を柔軟素材にした籠を装甲護符で作って救助者を収容。
運ぶ準備が整ったところで、煙管に霊薬香を入れて一服し、霊力と混ぜ合わせた煙を静かに鋭く吹き出すと、淡く山吹色に輝く雲を形作っていく。
「仙人っぽさを演出するなら、場所的にも【
「それならいつもの様に術式改造したら?」
「正直なところ【神足通】で転移すれば良い話ですから、使用する場面なんて特に無いんですよね。まあ今回みたいな事が今後無いとは言い切れないですし、一応考えては起きますかね」
「瑞樹、確認は取れたぞ。前に貰っていた情報の町からは既に撤退してるらしい、今はそこからもう少し東に進んだ場所に前線を構築し直しているとの事だ」
「日々刻々と状況が悪化しているのが分かりますね……。兎も角、救助者と集まった情報はそこに持って行くとして、こっちはこっちで目的の物を探しましょうか」
木分身が觔斗雲に乗って救助者を運んでいくのを横目に、当初の目的を果たすために探索を開始する。
探索範囲は主に地中、場合によっては地上に顔を出している可能性もあるが、伝承される話的にも地中の多少深い場所に存在する可能性が高いため、ソナーの様に霊力を打ち込んで探して回る。
「ふむふむ、反応的に建物から少し離れた山側の、地下十メートルって所ですか。【マグナ】」
「微妙な深さの場所ねぇ」
「上部の土が除かれて見えてきたが、確かに見た目的には肉の塊に見えなくも無いな」
「ざっと解析した結果としても、目当ての
地中から掘り出したのは肉霊芝や
なお、態々原生する古代から生き続けている肉霊芝を探しに来たのは、今回創ろうとしているテーマの〝食べられるクトゥルフ〟的に、古くから存在する粘菌が素材として使い易そうだからと言う理由。
序でにテーマを決めたのは、星祭の鍵板でクトゥルフ系の触手から滑りを取ったら、タコみたいに美味しく食べられないか?との書き込みに、私ならトリコ世界っぽい感じに食べられるクトゥルフも創ってるんじゃ無いか?なんてやり取りを見かけた物で*3、折角だから創ってみようと思い立ったのが経緯だったりする。
「それにしても、今回は素材探しにだいぶ時間掛かったわよねぇ」
「私の占術は情報集めて精度を上げていくタイプですからね。権能由来の因果をたぐり寄せる様なタイプなら兎も角、最初の取っ掛かりが無い探し物だとこんなものでしょう」
「さて、目的の物は回収出来たが、どうする?」
「さっさと帰りましょうか、長居して害鳥共と遭遇するのは怠いですからね」
そうして目的の肉霊芝の採取に成功して拠点へと戻れば、久遠や湯乃葉と別れて工房へ足を運び、早速研究開発へと取りかかる。
最初に行うのは、肉霊芝の霊力との親和性を上げて増産する事で、仙薬の素材として使用するのも含めて多めに増やしておく。
ちなみに、肉霊芝と似た名称の物で、
こっちのキノコも色々と薬効を持っているため、肉霊芝と合わせる事で良い感じに研究が進むのではと思うところ。
「肉霊芝の霊力適応は十分そうですね。後は、クトゥルフ名物の狂気関連ですけど、【狂気耐性】を得るための訓練食材的な立ち位置を目指す予定は良いとして、耐性を得られる様な段階分けやセーフティをどうするか、ですねぇ……」
私達
いずれ来たる終末後の環境的に、クトゥルフ的な狂気が蔓延る何て事も、可能性として捨てる訳にはいかないのを考えると、単なるネタに留まらない需要がありそうな気もするところ。
「問題なのは魅了とかの外部から付与するバッドステータスでは無く、感覚を鋭敏化させるグッドステータス扱いって所ですよね」
メガテン的な状態異常については、スキルなどで外部から影響を与える事で、一時的な変調を引き起こす物で有り、故にアイテムや【パトラ】などのスキルによって影響を除去したり、装備でそもそもの影響を遮断する事も可能なのだが、〝狂気〟と言う名称から状態異常と混同しがちだけど、これは正確に言えば思考の変化を表現しているだけであり、状態異常でも何でも無かったりする。
有名なSANチェックの過程を見ても分かる様に、正気を失う様な衝撃的な自体に遭遇した際、その衝撃の大きさによって箍が外れ、アイディアロールによって
【狂気耐性】にしても、発狂による思考の変化で狂気に墜ちるのを防ぐ効果であり、発狂自体を防ぐと言う物では無かったりするが、発狂その物を防ぐとなると、感覚自体を鈍くする事になり、それはそれで常時デバフ掛けている様な物になるため、狂気に関しては耐性までは在っても無効は確認されていないし、無効状態が在るとしたら、所謂SAN値を喪失している様な物だろう。
ちなみに、クトゥルフ系悪魔の特色であるSANチェックの強制みたいな特性は、感覚の鋭敏化と言うグッドステータスを与える代わりに、醜悪だったり悍ましく思う様な情報を大量に感じ取らせ、本人の防衛本能を暴走させる事で、有意な行動を制限させる能力と言うのが、ガイア連合山梨支部での見解になっている*5。
「感覚を鋭敏化させるのは、素材の薬効と合わせれば何とかなるとして、【狂気耐性】を習得させるとなると、後遺症が残らない形で一時的発狂させる感じになりますか。一歩間違えれば麻薬代わりになりそうですし、特定の調理方法か食べ合わせを条件にしますかね……」
考える事は色々在るけど、一番は悪用され難い様にすることだろうか。
トリコ食材にも麻薬食材なんてのは普通にある訳だし、そんなノリで手軽に洗脳だとか人格破壊だとかされるのも、寝覚めが悪くなる話なため、そう言う意味でもセーフティを設けておくことにする。
具体的には霊力を込めた調理と術式により、狂気の方向性や感覚鋭敏化の度合いを調整する事にして、特殊な調理法以外ではちょっと感覚が鋭くなり、一般人でも大量に食べなければ発狂しない程度に調整して、クトゥルフ系食材の基礎を創り出す。
「まあ物が在れば、いずれ見つけ出す人は出てくるでしょうけど、普通に食べるだけで無差別に発狂するよりはマシと言う事で、スキル獲得の修行に使う場合は、調理可能な監督者を必要とする感じにルールを決めましょうか。どの道発狂状態の対処人員は必要ですし、後遺症出さずに耐性まで持って行くには、精神分析系の技能者も欲しいですしね」
これが修行場異界の下層に潜れるぐらいに霊格が高ければ、その分精神も鍛えられているため簡単には発狂しないし、頑丈な精神構造のおかげで狂気に呑まれる前に耐性を獲得出来るのだけど、食材を使って鍛練する対象的に強靱な精神なんてのは望むべくもないと言うか、強靱な精神と成れる様に鍛練するのが目的な以上、トレーナーの様な専門家が必要なのも確かなところ。
食材以外の運用周りで必要な事項についても書き出し、並行して用意を進めながら、具体的な形の構築へと段階を進めていく。
正直なところ、将来に禍根を残しそうな厄ネタを創り出している様な気もするが、クトゥルフ的に考えると誤差の様にも思えてくるのは何故だろうか……。
「まずは先に用意していた霊芝も使った菌類繋がりとして、一先ず形になりましたかね」
とりあえずとして形になったのは、粘菌と茸を組み合わせ〝ミ=ゴ茸*6〟と命名した茸の様な何か。
食品として感覚が近いのはカニカマ辺りだろうか、蟹や海老などの甲殻類系を練り合わせた様な風味と、菌糸によってもたらされる繊維状の食感が特徴的な食材になっており、乾燥させて出汁を取ったりはもちろんの事、焼き・茹で・蒸し・揚げと様々な加熱調理でも風味が損なわれること無く、何なら刺身でも美味しく頂ける食材になってたりする。
最も、一番の問題点は悪魔でも何でも無い茸にもかかわらず、結構な速度で動き回り、空を飛ぶことも可能な事だろうか。
「参考元のミ=ゴからして、人間より地球の鉱物を求めてきてますから、栄養源を地球の主要な構成元素であるケイ素系鉱物*7にしてますし、攻撃力なども特に持たせてないので大丈夫ですかね……」
石英の塊と一緒に15cm角に切り分けたミ=ゴ茸を蒔いておけば、見て分かるぐらいの速度で再生していくため、見た目的に悍ましく感じる人も多いだろう点には目を瞑るとして、増産自体は楽なのが良い点だろう。
続いて取りかかったのは、テーマの元になった滑りを持った触手のような食材と言うことで、粘菌の肉霊芝をベースに加工肉植物で肉感を追加して、トリコの腸づめワーム*8みたいな見た目で玉虫色した〝ショゴスワーム*9〟。
なお肉食性である腸づめワームは、食欲界のトリコ層内に再現した物が繁殖しているが、地球側で野生化すると面倒な事になるため、生きている状態での持ち出しは厳禁になっているし、今回創り出したショゴスワームについては、本来のミミズと同じ様に草食性で、主食は落ち葉や倒木などである。
肉質としては、ソーセージやハムなど複数の加工肉の特徴が混ざり合った物になっており、生食も可能になっているが、加熱調理する事でより一層旨味をます性質を持っている。
「ふむ、加工肉植物を加えただけあって、燻製すると旨味が際立ちますね。んーお酒が欲しくなる味ですが、何をあわせましょうかね……」
特にコレと拘りが有る訳でも無いため、収納バッグに保存してる酒の瓢箪を適当に引っ張り出してグラスに注ぐ。
「お、今回は
当初の研究予定としては、ミ=ゴ茸とショゴスワームの二種類が出来た所で一区切りとして、実際に受け付けられるかを確認したりする感じだったのもあり、ショゴスワームを味見してとりあえず問題無いだろうと結果が出た段階で、開発終わりの一杯にでもしようかと適当に取り出した瓢箪の中身から、いつもの様にふとアイディアを思い付いた事もあって追加で取りかかることに。
さて、唐突な思い付きはいつもの事として、〝黄金の蜂蜜酒〟と言えば、クトゥルフ神話でも有名どころのアイテムの一つだろう。
大体は黄衣の王ハスターの眷族であるビヤーキーとセットで語られるアイテムで、ビヤーキーを使役可能にしたり、飲むことで精神的・肉体的に静止状態にする、或いは肉体から精神を分離させた魂だけの状態で、宇宙空間を渡れる様にする効果が有り、その他にも精神の分離によるテレパシーや予知夢を見れたり、感覚が非常に鋭敏になる効果も有ったりするお酒である。
使う材料はハリナシバチの蜜、マルハナバチの蜜、祝福を受けた蒸留水にシルフィウムなど、アイテムとしての効果にブレがあったりするのと同様に、設定と言うか製法による使用素材の差異も色々と有ったりするが、黄金の蜂蜜酒を製造するための呪文を唱えながら
そのため一番重要なのは、黄金の蜂蜜酒の製法の呪文を術式としてどう構築するか、と言うところ。
「効果として目標になるのは、宇宙空間などの生身では生存不可能な場所でも、活動可能にする防護の付与ですが……。言ってしまえば【極限環境耐性】のスキルを一時的でも付与する様な物ですし、素材も相応の霊格が必要、通常の消費アイテムならまだしも、飲食するアイテムだとただの嗜好品になりそうですね」
必要な効果を付与する術式を構築していくと、効果が効果だけに対応出来る素材も上位の物に限られ、具体的にはガイア連合基準でもレベル50以上は無いと、服用した時点で即死しかねない劇薬になってしまうだろうと予想される程。
正直なところレベル50以上、修行場異界で言えば下層に挑める段階になっていれば、得意不得意は有っても、基本的に霊格だけでもある程度極限環境に対応可能になるため、黄金の蜂蜜酒を服用する方が、クトゥルフ系の影響を受けやすい穴を作る事になり、逆にマイナスになりかねないと言うのも微妙なところ。
食べられるクトゥルフの主目的を、【狂気耐性】獲得用の訓練食材に位置付けてるのも考慮すると、レベル30以下、可能なら15前後辺りでも使用可能にしたいと言うのが本音だろうか。
「【狂気耐性】訓練食材用の術式も流用して、感覚の鋭敏化による自己認識の強化を追加、一時的な霊感のブーストと合わせ、一段上の効果を得られる感じにしてみますかね。耐性持ちかペルソナ使いでも無ければ発狂しそうですし、造り方と運用も合わせて資格制になりそうな気がしますねぇ……」
幾つか術式を構築し、早速蜂蜜酒の試作に取りかかる。
使用する素材は低レベルでも使用可能にするため、基本はガイア連合の購買部で購入可能な素材からピックアップしていく。
「ミツバチの種族違いによる変化を検証するとして、水は【アクア】で蒸留水を出して祝福属性の付与で良いですし、後材料として情報があるのはシルフィウム辺りですけど、確か人類によって絶滅した最古の記録にある植物でしたっけ*10?トルコの一部で生息しているフェルラ・ドルデアナが、同じ物ではないかって話を前世で見かけた記憶はありますが……」
木分身の方で購買に直接向かい蜂蜜などを買い付けてる間に、思考の端に引っかかった情報を辿っていくと、思い出すのは前世でちらっと見かけた情報に、八月頃に作成した道具関連で扱った植物の事。
「あ、そう言えばセリ科の植物で、オオウイキョウ属に類する植物でしたっけ。確か火口を作る際の素材候補として栽培した物が在ったはず……いえ、ガイア連合農業部の香辛料確保計画でも栽培してたはずですから、購買部で買えるはずですね」
現実的には入手が困難な植物では有るのだけど、そこはガイア連合農業部なら異界での環境調整や、豊穣系スキルに権能なんかも駆使して増産するのも可能な話。
古今東西の香辛料を、終末後にも安定して供給可能にする計画も順調に進んでいるとは聞いているため、よほど大量でも無ければ普通に購入可能な訳で、レベル30以下を対象にする素材に関して言えば、よほど特殊だったり稀少でも無ければ手に入るとの環境は、だいぶ準備が整って来た事を感じさせる。
そうして買い集めた素材を工房へ転送した後は、基本となる術式の出来を確かめ、素材の組み合わせや配合などを調べ、目標範囲に収まる黄金の蜂蜜酒の製法を確立させていく。
「蜂蜜は花の種類による違いより、異なる種のミツバチから取れる蜜をブレンドする方が効果が高くなり、蒸留水は別段祝福属性を付与して無くても問題ないけど、そこらの水を蒸留するより【アクア】で出した純水の方が良く、それよりも星祭神社から星の水を汲んできて使うのが一番効果が高いっと、蜂蜜と水が有って霊力を多めに使えばギリギリでも形になりますね。他の素材は造りやすくする添加剤と言ったところですか、フェルラ・ドルデアナの乾燥した根っこの粉末と樹液を加えるだけで、格段に造りやすく効果も上がりましたし、風味も豊かで味も良くなりましたから、基本の製法はこれで登録しておきますかね」
時間加速で醸造時間を短縮する事で、本来は一週間ほどかかる時間を数分程度に短縮し、味や香りに効果などを確かめ、目標とした効果を持つ〝黄金の蜂蜜酒*11〟が完成する。
主に必要となるレベル帯を考え、50未満でも作成と使用可能な素材に抑え、レベル10も有れば最低限の物は作成出来る技術になったと思う。
まあ必要な技量は低くても、簡単に悪用可能なアイテムである以上、製造や運用には相応の資格と契約が必要になるだろうけど、そこは必要とする当人がどうにかする部分と言う事で、レシピに加えて運用関連の意見書に、【狂気耐性】訓練食材の調理監督を行う式神用のスキルや術式も添えて、いつもの様に登録申請を出しておく。
「ふぅー……、今回はちょっと素材で手間取りましたけど、いつもと方向性の違う物を創るのも良い感じですね」
後から追加で思い付いた分の開発も終わり、一段落と煙管を取り出し一服、背もたれに体重を預けて霊薬香を吹かしながら、次は何をしようかと思索に耽る。
渦巻き状で楕円形の頭部に見える部分から胞子を排出して増殖するほか、体積にして1L程度の塊があれば再生可能なため、調理の際には10cm以下に切り分けるか、十分に熱を加える必要がある。
また、蝙蝠の様な一対の翼と甲殻類系の手足を持ち、明確な自意識は存在しないが、自己増殖に丁度良い場所を探して、動物の様に翼で飛んだり手足を使って動き回る性質を持つ。
食味は蟹やエビなどの甲殻類系を練り合わせた風味豊かな物で、生で刺身にしても熱を通しても絶品だが、乾燥させると薬効が凝縮された濃厚な出汁を得られる。
太さは10cm~50cm、長さは最大で10m程まで成長し、体積にして1L程度の塊があれば再生可能なため、調理の際には10cm以下に切り分けるか、十分に熱を加える必要がある。
体表面の目に見える部分は粘液放出口で、地中を移動し易くするのと同時に、粘液に含まれる成分によって微生物を活性化させ、栄養豊富な土へと変えていく効果を持つ。
食味はタコやイカのような弾力と、合い挽きソーセージの様な多彩な肉感を併せ持ち、燻製にすると薬効と旨味が凝縮され、極上の肴となる。
70cc程度を飲用する事で、宇宙空間などの生身では生存不可能な領域でも、霊力を代償にする事で活動可能にするが、感覚を鋭敏化する効能もあるため、【狂気耐性】を持つか相応の霊格や強靱な精神が無ければ、狂気に呑まれる可能性を考慮しなければならない危険物でも在る。