【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

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083:裏方作業と贈り物

 暦は十一月となり、世界中に地獄がばらまかれた事件から半年、日本は情報規制されている事も有って、表面上は相変わらず平穏な日々が続いている。

 海外から入ってくる物資は段々と減少していってるが、ガイアグループを隠れ蓑にしたガイア連合の農業部や畜産部と言った、一次産業に力を入れてる部署の成果が上がっている事も有り、日本国内の物価上昇は意外と抑える事が出来ているけど、代わりに国内のどの産業でも、ガイアグループが影響しない所は無い程になっていて、一般のネットや掲示板で、暗黒メガコーポ扱いされるのも然もありなんと言った感じになっていた。

 そんな訳で、ガイア連合の物資を海外からの物として偽装するため、貨物船の港も整備されていたりする新ハワイ島にて、輸送する物資の予定などを確認していく。

 

「先月の搬出分がこれで、今月の予定と来月の予想分がこれだけ有って、島に貯蔵している分の残りがこれだけ、と……。やっぱり海外市場が死にかけてるだけあって、追加発注で輸送する分は増加傾向ですね」

「態々積み替えず直接、とは思いますが、そう簡単にいかないのも社会性が維持されている故の事なれば、何とも言えぬ話ですな……」

「世界の終わりは避けられないとは言え、メシア教連中みたいに加速させたい訳ではないですからねぇ」

「ガイア連合程の力があっても避けられませんか」

「メシア教と言う異端宗派が力を持った時点で、遅かれ早かれってところですね。今も月に数度は核ミサイルが日本に飛来してますし、来月はクリスマスに合わせて更に増えると予想されてる程ですから」

「日本は何とかなるでしょうが、嫌なクリスマスになりそうですな」

「メシア教の事ですし、世界中に追加でばらまくでしょうからね。海外との貿易は更に先細りするでしょうし、十二月はまだしも、一月からは更に多くの物資が必要になりそうですね。もう少し物資の増産にリソース回しますか」

 

 書類と在庫を確認してから輸送物資を補充したら、現場監督的役職に就いてるジル氏*1にデータを渡し、各書類にサインを入れていく。

 雑談程度に世間話を交わしながら仕事を進め、来月分で既に決まっている予定分や、追加されそうな予想分の補充について確認していると、話の流れから海外の荒廃が一層進む懸念に思い当たり、物資増産についての意見書や私が提供可能な分についてなどの情報もまとめることに。

 

「今でも一民間組織が用意してるとは思えない程の物資ですが、まだ増やす余地があるのですな……」

「霊能は突き詰めれば神話や伝承そのままですから、一般に流通出来る程度に抑えてるので、逆に生産量は落ちてるぐらいですけどね。っと、確認と補充はコレで良し、それじゃ私は戻りますね」

「お疲れ様です。探求ネキ殿」

 

 そんな表沙汰には出来ない裏仕事――霊能を駆使して増産した農作物を流通に乗せると言う意味で――を熟して新ハワイ島を後にすると、諸々のデータを事務に居る木分身へと送って、次ぎに向かうのは山梨第一支部の農業部区画。

 目的は先月に新しく創り出したクトゥルフ系食材の生育状況についてがメインだけど、先程思い至った一般に回す作物の増産に関しての確認も追加と言ったところ。

 

「こんにちは、穣子ネキ*2。クトゥルフ系食材の方はどんな感じです?」

「いらっしゃい探求ネキ、多少は慣れてきたけど、基本は式神任せね~」

「やっぱり【狂気耐性】無しだと厳しいですか」

「世話する必要が殆ど無いから何とかなってるし、創った理由が理由だから増産は協力してるけどって感じね~」

 

 虫の様に動き回り飛び回るメートル超えの茸とか、ぬらぬらとした玉虫色の巨大ミミズを、好き好んで世話したいと思う様な特殊性癖持ちは早々居ないと言う事だろう。

 まあ世の中にはゲテモノ食いを趣味にしてる様な人も居るため、一概には言えないだろうけども……。

 ともあれ、飼育状況についてなどのデータを見せて貰いつつ、実際に世話を担当した人達の意見なども確認していくと、霊格が低いと精神的なきつさも大きい様で、この辺は仕方の無い部分だろうか。

 

「新人の修羅勢を中心に訓練要望は結構来てますけど、農業部での生産分で回せそうですか?」

「一回でスキル習得出来るなら何とでもなるけど、個人差はあるんでしょう?当分は人数制限しつつ数を増やして、釣り合いが取れたら、希望人数に合わせて増減を検討ってところじゃないかしら」

「霊格が高いほどスキル習得もし易いですし、上から順に回していけば何とかなりますか。国内生産が少ない香辛料とかの増産はどんな感です?一般流通に回す分の追加が必要になりそうな情勢なので、無理そうなら蓬莱島の方で対応しますが」

「半終末後に加入した人達で、スローライフしたいって人用の農地異界用意して、手間が少なくなる様に品種改良した作物を任せてるから、多少は余裕あると思うわ。でも、海外支部からの追加発注とか有ったかしら……?」

「十二月になったらメシア教過激派がまた盛大にミサイルパーティーしそうってところですね。今でもかなり減ってる輸入品が更に減りそうって予想でしたけど、海外支部への追加輸送も考えないと行けませんでしたか……」

 

 やはり自分とは別の視点が有るのは有り難い話で、穣子ネキが浮かべた疑問から、視点が抜け落ちてた事にはたと気付く。

 そんな訳で事務に居る木分身を経由し、海外支部の状況も追加で調べてみると、どうやら思っていた以上に本格的な増産が必要になりそうな試算が出ているのを見つける。

 

「半終末に入った時みたいなことがまた起きるって事かしら?」

「占術に長けた黒札の結果を突き合わせて導き出した物ですから、日本に大部分が集中するとしても、海外支部含めて各地の被害は更に拡大する見込みですね。今調べましたけど、運営陣の方は追加の増産にリソースを回すのも検討してるみたいですよ」

「それって多少どころの規模じゃ無いわよね?」

「香辛料関係を中心に、物によっては倍以上ってところですね。電脳異界での作物生産と物質化も可能ではありますけど、電脳異界産は性質上覚醒者用で、一般には流せませんし」

「そうなると、こっちで一般向けの割合を増やすことになりそうね~。まあ増産するのは良いけど、輸送の方はどうするのか決まってるのかしら?今は穏健派が輸送船団出してるのよね?」

「海外の連合員以外に関してはそうですね。COMPのDDSネット経由で人外ハンターに登録してるなら、データ化と物質化の組み合わせである程度は転送してますし、海外支部の方はセツニキ達修羅勢が廻って、大型ターミナルの接続経路を繋ぎ直しましたから、基本的な物資は何とかなってますね」

「あ、その辺は確り分けてるのね~」

「穏健派だろうと、メシア教に重要な輸送を任せる訳にはいかないですからねぇ」

 

 なお、海外支部を含めた幾つかの支部には、ブーストニキが開発したターミナルの大型版――消費MAGが多い代わりに、一度の転送量を増やした物――を設置しているため、半終末以降の物資輸送は格段に楽になってたりする。

 とは言っても、ターミナルだけで全ての物資輸送を賄える訳でもないため、転移系や陸海空での輸送を得意とする密輸課も、割と頻繁に海外と行き来していたりする。

 他にも個人やチームで手段を準備して、海外遠征する序でに輸送する何てことも有ったりするが、この辺は黒札らしい部分だろうか。

 

「輸送と言えば、宮城支部が来月にアメリカ遠征行くからとかで、輸送する物資の話とか来てたわね~。何でもユーラシア横断ルートと太平洋ルートで向かうとか」

「先月に中華戦線まで遠征してましたけど、今度はアメリカですか……」

「独自に輸送船持ってるってのは大きいわよね~。新潟の方は海上輸送でオーストラリアと独自に交易してるみたいだし」

「まあ船舶どころか、飛行船を建造したりは特殊側ですけどね。っと、そろそろ良い時間ですしお暇しますね」

「それなら私も作業に戻るわ~。またね探求ネキ」

 

 今日の人と会う約束はこれで終了、得た情報などは事務や拠点の木分身でそれぞれまとめているため、本体の私としてやることも一旦終わった訳だけど……。

 

「そう言えば、さっき宮城支部がアメリカ遠征するとの話でしたけど、確か幼女ネキの誕生日って十二月だったような?」

 

 さてこれから何しようかと考えたところで、意識に上ってきたのは以前何かの拍子で聞いた幼女ネキの誕生日のこと。

 私自身も今世は大概な生まれだし、施設時代には同じ月生まれの子をまとめてで、普段の夕食にケーキが追加される程度だけど、一応誕生日を祝われた事も有った。

 ただ、幼女ネキの生い立ちを聞く限りだと、そう言う機会は無かったみたいだし、今年は友達――から嫁に昇格した子や娘にその友達など、幼女ネキを祝いたいと思う人達は一杯いると思うのだが、その直前に海外へ行く様な遠征をすると言うのは、ちょっと驚く話。

 

「まあ幼女ネキ的に外せない理由なりでも有るのでしょうし……ふむ、今世初めての誕生祝いって事なら、何かしらプレゼントを贈るのも良いですね。問題は何を贈るかですが……」

 

 ちょっとした連想から創作のモチベーションが高まったのは良いとして、何を作ろうかと悩むところ。

 年齢的な定番で考えるなら、玩具やお菓子に果物などの所謂消え物系だけど、幼女ネキならどちらも普通に買えるのが微妙なところかな。

 装備系も基本はオーダーするなりだろうから、候補にするとしても何かしらネタになる物ぐらいか。

 

「確りと考えて選んだ物なら、普通に喜んでくれるとは思いますけど、どうしましょうかねぇ……。ただの飾りでも良いんですが、有ると嬉しい用途でも考えますかね?」

 

 いざネタになる物、と考えてみるとなかなか思い浮かばない物で、視点を変えて使用用途から考えて見ることに。

 よく在る物としては、幸運を招く招き猫みたいな拠点効果を持つ置物系に、戦闘以外で使う事を考えると何かしらの遊び道具、乗り物系は既に色々持ってるみたいなので省くとして、後は筆記用具辺りだろうか。

 

「筆記用具……、そう言えば今世でもパプワくんって発刊されてましたね。確か名前の由来が宮城県ですし、造ってみますか、生き字引の筆」

 

 連想からネタとしても実用としても使えそうな物を思い付き、元ネタの能力から必要そうな素材を考えていく。

 まず思い付いたネタの生き字引の筆についてだけど、これは南国少年パプワくんと言う漫画に登場するキャラ、東北ミヤギが持つ武器で、筆の尾骨と呼ばれる部分や掛け紐が付けられている部分、手に持つ軸の後ろに剣の柄と鍔がついた形状をした物。

 この筆で漢字を書き込むと、書いた漢字の通りに対象を変質させると言う、ギャグ漫画でなければ恐ろしい効果を持っていて、作中だと東北ミヤギが〝植物〟と書き込まれた事で、植物と同様に地中から栄養を得て、果実の代わりに仙台銘菓を実らせるとの、トンデモな描写がされている。

 まあ水で滲んだりして、文字を文字として認識出来ない状態になると解除されるため、永久的な変化とは言えないのがまだマシな話だけど、中国三千年の歴史の武器との謳い文句が、妙な説得力を感じさせるアイテムだったりする。

 

「ネタとして再現するなら、ちゃんと剣の様な柄とナックルガード付きの鍔も用意しないとですね。まあ中国系の武器にナックルガードは基本的に付かないですし、作中のネタ通り中国伝来なら、柄や鍔は後付けした部分になるんでしょうけど……」

 

 形状としては筆の尾骨部分を着脱可能にして、ナックルガード付きの鍔と柄を取り付けて振るったり、外して普通の筆としても使える様にするとして、作中だと大の大人が背負う程の大きさがあるため、幼女ネキが軸を持って使う事も可能な様に、鞘と合わせて大きさも変化させられる様にする。

 効果に関しては、どんな対象にも書き込める事と、当て字の様な漢字の連なりでも意図した読み方に合わせた変化を起こさせる概念を持たせる事の二つになるだろうか。

 

「記載した文字と読み方、それぞれの意味に力を持たせるとなると、言霊や認識の上書き関係の概念系になりますか。シャドウ異界の素材も混ぜ合わせた方が良さそうですね」

 

 大きさを変化させるとの部分から、素材の基礎には神珍鉄を用いることにして、先の会談以降ちょくちょく交流している崑崙山の仙人から、技術交流で得た神珍鉄の製法により必要量を精製、合金木や合金樹皮繊維にする事で土台を形作る。

 次ぎに、マグネタイトを物質化させる【魔晶変化】などを応用し、霊力を込めて筆を振るう事により、軌跡に合わせて墨を具現化させる術式と、言霊系の概念効果を発揮させる術式を組み込んでいく。

 

「水を掛けるか文字部分の破損で解除される制約を入れて、その代わりに概念効果を上昇させてっと、こんな物ですかね」

 

 出来上がった筆で適当な金属インゴットに〝動物〟と書き込むと、四つ足が生えて動き出すイメージをしていたからか、イメージ通りにインゴットから金属の脚が生えて犬の様に動き出す。

 文字部分に水を掛ける事で、脚が消えて元のインゴットに戻るのを確認したら、今度は人の様な二足歩行するイメージで再度〝動物〟と書き込み、イメージ通りにインゴットが立ち上がって二足歩行し、文字の一部を削る事で元のインゴットに戻るのを確認する。

 

「よし、記述宝貝〝生き字引の筆*3〟としては一応の完成ですね。後は不具合確認の作業ですし、適当に動画でも流しながら作業しますかねぇ」

 

 試作品が出来上がったところで、今度は不具合などが無いか、色々と書き込んで確認する単調な作業へと移る。

 ちなみにこの手のデバッグ作業に関しては、下手に集中して行うより動画などでも見つつのながら作業をしたり、作業以外の刺激を受けた方が突拍子も無いアイディアが浮かんで、予期せぬ不具合が見つかったりするため、割とデバッグ時間がイコールでアニメや動画、配信などの視聴時間になってたりする。

 

「ん?目測ミスったと思いましたけど、何か空中にも書けてますね、コレ……。そう言えば、書き込む対象を物体のみに指定はしてませんでしたか、コレはコレで色々出来そうですけど、ネタ再現なら物体のみに限定するべきですね。その方が効果も上がりますし」

 

 早速見つかった想定外の挙動内容と、序でに思い付いた内容も書き残したら、該当箇所の術式を調整して引き続き確認作業へと戻る事に。

 まあ概念系の道具と言う事も有り、ガチガチに制限を掛けると、それはそれで自由度が損なわれるため、程々のところで区切りを付けるつもりだけども……。

 

「とりあえず、元ネタ通りのギャグっぽい感じの結果になる様に、効果発動の方向性は調整しておきましょうかね」

*1
本家様の『16話 小ネタ』にて登場した智ニキの父親。

*2
拙作〝032:年度が変わっても日常はたいして変わらない〟で登場した、豊穣系固有スキル持ちの農業部員。

*3
元ネタは南国少年パプワくんに登場する東北ミヤギが持つ武器で、この筆により漢字を書き込むと、書いた文字通りの存在に変化する概念系宝貝。

毛や軸に神珍鉄を混ぜ込む事で、霊力操作により筆の大きさを自由に変更可能とし、霊力を込めながら振るう事で毛先に墨を具現化して、あらゆる対象に文字を書き込む事が可能になる他、霊力消費による自動修復機能も備えている。

また、当て字でも効果を発揮させる事が可能であり、使用者の知識と発想によって使い勝手が大きく変わる一品となっている。

なお、文字として認識出来る事が効果発動の条件であり、水が掛かったり直接削るなどで、文字が読めない程に破損すると、効果を失う。

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