【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく   作:緋咲虚徹

86 / 184
084:娯楽の火を絶やさないために

 予想されていたメシア教によるミサイルパーティーが、日本だけで666発(獣の数字)程降り注ぐと言う、異端者の自己満足が毎度の如く行われたクリスマスの日から数日。

 迎撃序でに因果と空間操作で、いくつかのミサイル発射地点へと攻撃を送り返した事も有って、年末年始ぐらいはメシア教に煩わされずに過ごせそうで一安心と言ったところ。

 まあその日本へ向けて発射されたミサイル自体、雑に組み込まれた悪魔召喚プログラムが干渉し合い、勝手に空中分解して行ったのもあって、当初考えてたミサイルの返却前に爆散したため、因果を辿ってお返しに【メギドラオン】を投げ込んで終わりとなったんだけども。

 

「幼女ネキ達とセッションしたキャンペーンは書き起こし終わりましたし、挿絵と合わせて最終確認したら、年明けには刊行出来そうですね*1

「年末年始の休暇序でに読めるから、仕事納め前に上がってきたのはまあ良いんだけどさ、何でTRPG部門だけじゃなくて、アニメ部門も担当になってんの?」

「いやまあTRPG部門の方にも渡して、確認はして貰ってますけど、システム内のコネNPCは陰陽寮の日常の登場キャラですから、挿絵とかの監修はアニメの制作陣が一番ですし、私の方のキャンペーンリプレイも、五河さんとかに試しに読んで貰ったら、幾つか指摘された箇所有りましたし……」

 

 クリスマスも過ぎた十二月下旬と言う事も有り、仕事納めの準備を進めているガイアアニメーションの一室にて、アルさんにリプレイの冊子を手渡すと、微妙な表情を浮かべて問いかけてくる。

 まあ、TRPG部門の方はシステム面の確認が主で、ストーリーやキャラクター方面となると、やはりアニメ部門で確認して貰わないと認識違い何かも起きると言う話。

 幼女ネキ達のリプレイ本も、ガイアグループ娯楽部門の公式本として刊行される予定なため、キャラクターの台詞回しや挿絵の内容なども出来るだけ齟齬が無い様にとの事で、今回は最初から監修に入って貰う事になったと言うところ。

 

「あー、瑞樹ちゃんのリプレイ本が製本直前でこっちに回ってきたのって、そう言う事?」

「私も設定とか声優として関わってますけど、全部を完璧にとは行きませんからね。とりあえずパッと気付くぐらいの齟齬は、最低限潰しておかないとってところです」

「そう言う事ならまあ……。にしても、やっぱりNPCは陰陽寮の日常に登場するキャラだけなのね」

「やっぱりと言うと、アルさんの方で何か有りました?」

「有ったというか何と言うか、陰陽寮の日常って元はショタおじ監修で、瑞樹ちゃんが設定資料集とか出してるじゃない?で、人外ハンターとかの霊能関係者から、アニメや資料集、そんで今回のTRPGのルルブとサプリのおかげで、まともな修行が出来る様になったってファンレターも結構来るのよね」

「まあ大多数の人にとって重要な、レベル30以下向けの情報をまとめた訳ですし、ファンレターまで送られて来てるのは驚きですが、想定通りの状況では有りますね」

「うん、そこは私も聞いてるから良いんだけどさ、アニメの設定もTRPGのシステムも、実際の霊能関係から持ってきてるでしょ?だからなのか、登場キャラのモデルがガイア連合、正確に言うと黒札の中に居るんじゃないか、モデルがいるなら教えて欲しいって内容が結構来るのよね。実際第一期から居る師匠の声は瑞樹ちゃんだし、見た目や能力なんかもかなりモデルにしてるしね」

「と言っても、明確にモデルがあるキャラはそれぐらいですけどね。流石に全く被らないなんてのは無理ですから、黒札の誰かと似た様な能力や戦い方なんかはあるでしょうけど、モデルにしたNPC何て居たら、キャラのスペックから付け込む隙を与える事になりかねませんし」

 

 そもそも情報管理の面からしても、誰かをモデルにとかは要らない危険を招く結果になりかねないため、少なくともTRPG側の公式としては、明確に誰かをモデルにしたNPCは設定しない方針になっている。

 まあ公式以外でのセッションとか動画投稿などで、特定の誰かをモデルにしてキャラ作るのを咎めたりはしないけど、その結果何かしらの問題が起きたとしても、自己責任ってだけの話だしね。

 

「考え過ぎ、とも言い切れないのが面倒な話よねぇ。最近だと、低レベル組は護衛無しで外に出せない状況だもの」

「人が多くなると、変な思考に取り憑かれるのも出てきますし、メシアンや半グレとかも湧きますからね。運営や一般側の仕事をしてくれている組だと、修行する時間もなかなか取れませんし、ガイアニとか特にですよね……」

「そろそろ終末も見えてきた感じだし、年明けからは何とか覚醒修行させないとってところね。朝潮と五河はまだ未覚醒だし、向井は覚醒してるけど専用式神もまだ作って無くてレベル上げしてないし*2

「朝潮さんは確か、ゆかりネキ用にショタおじが監修したヨガ教室に通ってましたっけ?となると多少荒療治が必要なのは五河さんの方ですか、色々差し入れしてたのが裏目に出ましたかね」

「いや、五河の性格の問題でしょ。とっくに半覚醒までなってるのに、あと一歩踏み出す精神性が足りなくて、覚醒出来てないだけだもの。霊的食材で覚醒出来るのは相性の良い起源持ちぐらいでしょ?」

「霊質に影響を与えない範囲で、となるとそうなりますね。覚醒さえしていれば虹の実とか、最近のならクトゥルフ系食材辺りの耐性獲得修行でもレベルアップ出来ますが」

「虹の実は兎も角、クトゥルフ系食材は流石に遠慮したいわね……。と言っても、その内陰陽寮の日常で扱う事になるだろうし、覚悟だけはしとかないとかしらね」

「元ネタ通り退散させるしか対応方法が無い神格のイメージだと、実際の対処がより面倒になりますからねぇ。他の神格と同様に、神殺しも可能な範囲の認識に零落させたいところです」

「一応続編の企画として上げてはいるけど、ガイアグループ内でも娯楽部門の予算を減らして、武器弾薬なんかに回せって声が大きくなってるのよねぇ。対悪魔を考えると、一般認識を変化させるのってかなり影響が大きいんだけどね」

 

 アルさんが言う様に、霊能関係に明るくない一般側関係者などは、娯楽関係に使う労力を悪魔やメシアンの対処に使えなんて言ったりするけど、情報生命体である悪魔にとっては、大衆が常識と思い込む程の認識ってのはかなり影響するもので、それこそ〝施餓鬼米〟の存在と意味が知れ渡れば、未覚醒者がただのお米を施餓鬼米として施しても、実体化した【ガキ】を即死させられる様にもなる話。

 これは、集合的無意識に刻まれる程に、【ガキ】と言う存在は米を施される事で成仏する、との認識が普遍化する事により、概念が強化されると言う事でも有る。

 この〝そう言う存在(モノ)〟と言う認識は、人間が持つ最大の武器だと思うのだけど、物質界寄りの視点しか持たない場合だと理解し難い話なため、例え大局を見れるまともな政治家であっても、娯楽などの認識刷り込み媒体を切り捨てる様な結論になる*3のだから、ガイアグループ内の一般人が娯楽予算を減らそうとするのも分からなくは無い。

 まあ、だからと言って娯楽予算削減を認めるかは別の話だけれども。

 

「覚醒者しか使えない道具を増やすより、未覚醒者の何気ない日常の行動でも悪魔を退けられる様にした方が、費用対効果が大きいですからね。覚醒すれば更に効果が上がりますし」

「説明しても実感出来なきゃ無いのと同じだからねぇ。陰陽寮の日常で認識が広まって神道や修験道、陰陽術などの効果が上がったのも、因果関係を認識してないと分からない部分だもの」

「普通は自分の技量が上がったとか、霊格上昇の結果と考える範囲ですからねぇ……」

「ま、潜在的な情報の刷り込みは長い目で進めていくとして、そろそろ私も仕事納めと大掃除の手伝いに戻るわ」

「おっと、だいぶ話し込んでしまいましたか、私も蓬莱島に戻りますかね。では、良いお年を」

「そっちもね~」

 

 ガイアニでの用事が終わって、年末に向けたガイア連合山梨支部、及びガイアグループとしての仕事も片付けて回り、毎夜の影時間以外は仕事納めも終わった後の事。

 年末の祭典も中日を過ぎて、狙った成果が有ったり無かったりと悲喜交々な中、会場で遭遇した面子によるちょっとした女子会が行われていた。

 まあ場所は明日も会場へ向かうことを考えて、巌戸台支部こと葦原荘の大部屋だし、多少の酒やジュースにお茶を飲みつつ、お菓子や軽食をつまむ緩い集まりだけども。

 ちなみにメンバーは、私と琴音に綴、それから蟲姫ネキこと千代さんにミナミィネキ、イカネキの六人と、それぞれの専用式神や仲魔を含めた面子と言ったところ。

 

「それにしても、夏の頃はまだしも冬も開催出来るとは思わなかったゲソね~」

黒札(私ら)のサークル参加者も多いし、企業支援もしてるからね。意地でも中止に何てさせないでしょ」

「現在進行形でメシアンの企み潰して、祭典に影響しない様対処してますからねぇ。海外の過激派拠点は混乱してるはずなんですが……」

「クリスマスのミサイルパーティーで、瑞樹が幾つか発射元に【メギドラオン】投げ返してたけど、もう国内で動く余力あるんだ……。ホントに何所から湧いてくるんだろうねぇ」

「逆に海外との連絡が取れないから、普通に動いてるだけではないですか?」

「メシアンは穏健派なんて言ってても、簡単にペ天使――最近は穢教鳥(えきょうどり)*4と呼称する事になったっけ?まあアレらの言いなりになる人擬き連中だし、Gと同じで何所にでも居るしいくらでも湧いてくるでしょ」

 

 戦利品の確認や明日の狙いなどを話し合って、後は眠くなるまで適当に雑談でもと言った雰囲気になってきたところで、イカネキがふと感慨深げに溢した言葉になんとも言い難い空気が生まれる。

 まあそれも半終末に入ってからの、国内外で起きた大小様々な事件にGPの上昇、一般社会には情報規制されているとは言っても、漠然とした不安が蔓延している事は変わらない現状と、ある意味仕方のない話。

 実際、覚醒未覚醒問わず黒札も多く参加する夏と冬の祭典は、メシアンやダークサマナーにとって狙い目でも有る訳で、ガイア連合山梨支部の勢力が大きくなるに連れ、一般参加者も含めた被害を出さない様にする暗闘は、回を追う毎に激しくなっており、今もガイア連合の影響下にある組織や人員に依頼を出したり、私の木分身などの様に余力のある黒札で哨戒して、襲撃やら拉致やらを企ててる連中を見つけては、対処し続けていたりする。

 

「どっちも悍ましいことに変わり無いゲソね。実害と言う意味ならメシアンの方がより酷いゲソが……」

「シキガミちゃん達のおかげで虫も大丈夫になってきたけど、Gは流石にねぇ……あっ、Gは関係無いか」

「ま、微妙に気分が落ちる連中の事は置いとくとして、祭典期間中に何かしようとしてた連中って、結局何がしたいんだろうね?対応力の低い黒札も結構な数居るけどさ」

「娯楽に現を抜かせるガイア連合所属者への意趣返しだそうですよ。半終末の切っ掛けになった件などで、友人知人に家族を亡くしたとか、ここ半年近くの物価高騰などで生活が苦しくなったのを理由にした連中が大半です。正直逆恨みもいいところですし、そのために恨みの元凶であるメシアンと協力してるんですから、本末転倒ですよ。術的な洗脳はされてませんでしたから、普通に偏った情報で踊らされたピエロでしたし」

「得てして真実では無く、信じたいものを信じるのが人間とは言え、視野狭窄してるわね~。ん、このチョコも美味しいわね、見た目木の枝だけど」

「チョコの木*5ですよね、枝も美味しいですけど、根っこも歯ごたえ有って良いですよ」

「へー、確かにかみ応え有って美味いゲソね。……と言うかチョコの木って何でゲソ?!まず間違い無く探求ネキの創った植物ゲソけど、農業部のお知らせで見た記憶無いゲソよ?」

「ああ、一部の幻想植物は要求される環境もあって、農業部じゃ栽培出来ないんですよね。なので、そう言ったのは私の食欲界で栽培してますから、農業部のお知らせには載らないんですよ」

「最近の作物だと遊球樹もそうだよね。一応蓬莱島の外部解放区画にある販売所で売ってるけど」

 

 軽食をつまみながらの話が愚痴っぽくなるのは年末だからか、或いは軽くとは言え酒が回ってきた影響だろうか、時にはテーブル上のお菓子などに話題が移りながら、ここ最近の話に花を咲かせていく。

 

「あ、そういや蓬莱島の外部解放区画ってまだ行った事ないんだけど、今どんな感じになってんの?」

「食欲界や学びの園(アカデミー)などの主要施設周辺に家や商店、工房なんかが出来て、ちょっとした集落ぐらいにはなってますね。まあ纏め役の方はまだ私がしないと回らないので、目標としてる区画の運営含めた全てを学びの場とするのは、当分先になりそうですが」

「最近だと、ファンタジーっぽく地下鍛練場とかのある冒険者ギルドを建てようって話になってたっけ。定住も可能な学徒証を得た人を中心に、シムシティ感覚で町作りしてるね」

「一からの町作りってのも楽しそうゲソ、でも良くそれだけの土地があるゲソね」

「蓬莱島自体が仙境ですから、瑞樹さんが土地面積を拡張した結果ですね。今の外部解放区画だけでも、元の島面積の二倍になってます」

「お、思った以上に広いわね。学園都市みたいなの作りたいって言ってたけど、真面目に形は見えてきた感じね~」

「当座必要な設備は作り終わってますから、一応集落として機能するぐらいにはなりましたからねぇ。後は娯楽関係の建物とかを用意する余裕が出来ればと言ったところですけど……」

「んー、今の情勢的に厳しいんじゃ無い?学徒証持ちと言っても、衣食住を支給してたりはしないんでしょ?」

「してないですね。素材迷宮とか食欲界で集めた物を買い取る仕組みは用意してますから、ガイア連合の相場に合わせた売買で生活費を稼ぎながら学ぶ感じにしてます。学んだ知識や技術は実践してこそ身に付くものですし」

「勉強して異界で生活費を稼いでとしてたら、娯楽を考える余裕も無いんじゃなイカ?」

「娯楽関係も相応に技術や知識が求められる学びの場ですから、場所の用意はしたいところなんですよね。それこそ夏や冬の祭典みたいな披露の場も用意したいですし」

「いっそのこと、瑞樹が管理する会場って事で建てた方が良いんじゃない?将来的に余裕が出来たりしたら他に建てれば良いんだし」

「それも手ですかねぇ。まあ直ぐさま終末って訳でもないですし、追々考えましょうか」

 

 終末にはまだ遠く、しかし確実に近付いている気配を感じながら、また一年が幕を閉じる。

 来年はどんな年になる事か、そんな思いを抱きつつ、それはそれとして明日の会場入りに備えて早めに解散する。

 明日もまた、別の意味での戦舞台が幕を開ける。

*1
『【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策』様より、〝転生ようじょ、足止めされる。〟にて行われた長期キャンペーンを、リプレイ本としてまとめた物。

*2
本家様の『小ネタ ガイア・アニメーション山梨スタジオ とある部署の日常』より、拙作世界線での、アル部長が色々用意して修行させる少し前の話。

*3
本家様の『小ネタ 魔都東京と政治家さんの現状』より、まともな政治家に正しい情報を正確に伝えた場合、ガイア連合を国有化して戦闘全振り何てことになるらしい。

*4
『【R-18】アビャゲイルの投下所』様より、セフィロスニキの魔王ウリエル覚醒事件以降、COMPのアナライズでも教えを穢す鳥として、一神教の教義に忠実な天使と区別する名称が設定された。

*5
果実はもちろんの事、花に葉っぱに枝、幹から根っこまで全てチョコレートで構成されている幻想植物で、食欲界にて生育されているお菓子な木シリーズの一つ。

交配によっては、複数種類のチョコレートが混ざったマーブル状になったり、他のお菓子な木と混ざったチョコクッキーの木など、多種多様な品種に育つ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。