【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
ガイアグループやガイア連合山梨支部の正月休みが明け、私も新年の挨拶回りが終わって、正月ガチャで素材を得た人からの依頼を熟したり、巌戸台支部利用者の管理に日課の影時間探索など、いつもの日常に戻った頃の事、蓬莱島では大規模な工事音が響いていた。
元々、
「ジュネスでも結構な大きさだと持ってたが、あれ以上の規模に携わる事になるとはなぁ」
「日本国内だと、大きな施設の建築なんてそうそう出来ませんからねぇ」
建設するイベント施設の設計図を手に、建設計画の擦り合わせと予定地の準備を行って、早速と建設が始まった現場で、ガイア連合山梨支部建設班の親方と言葉を交わす。
見つめる先の建設現場では、覚醒者としての身体能力や【
日本国内だと結界などで対策する必要が有る上に、建設期間が短すぎても周辺住人からの疑念が湧くため、
「とりあえず、差し入れと合わせて必要な資材を、多少の余剰分も入れて持ってきましたので、何かあれば連絡して下さい」
「あいよ、工期などの問題もねぇから、今んとこは大丈夫だな。気を付けるなら、工員の金札や銀札も霊能者としては兎も角、職人としての技術はあっちの方が腕は上だってとこか」
「散逸した過去の技法を学ぶために、態々やってくる人達ですし、その辺の情熱は高いでしょうからね。では、次は一週間後にでも様子見に来ます」
「おう、お疲れさん」
長々と話し込むのも邪魔になるため、差し入れ用と資材用それぞれの収納バッグを渡し、当面の問題が無いことを確認して暇を告げると、工事現場を後にする。
そうして外部解放区画から工房へと戻った後は、昨年末のガチャ景品作成時に、過去の制作物の改善点が幾つも出てきた事から、研究開発のリソースを割り振って行っている、過去制作物の見直し作業に取りかかる。
「やっぱり見本在りきの、スキルゴリ押しな部分が多いですね……」
今構成の見直しを行っているのは、ダンジョンコアと命名した異界の要として使用可能な霊具。
元々はブーストニキの地元で見つかった、〝鍛錬用異界の核〟と言う根願寺の秘宝――見た目が酷似している事から、黒札からはロゴスリアクトの通称で呼ばれる物――を見本として、地脈や周辺のマグネタイトを吸収して異界を構築し、事前に設定した悪魔を召喚する機能に限定して、何とか劣化複製に成功したと言うのが、ダンジョンコアの開発過程。
六年ほど前に作ったダンジョンコアを見ていると、当時はレベルも40に届いていなかった事もあり、技術も理解も足りていなかった事が良く分かる。
「当時は物理とオカルトを噛み合わない物と考えてましたから、無駄に術式を重ねた回りくどい方法になってますね。大きさも同じ性能なら、一畳ほどの箱から片手に収まる程度には縮小出来そうですし」
術式を効率化させ、操作方法も他端末を経由せず、空間投影と思考操作で直接動かせる様にして、ダンジョンコアの改良をささっと進めていく。
マグネタイトも電気エネルギーなどと同じエネルギーの一つと考え、物理学の派生として理論立てた霊子力学も有って、持ち運びも面倒な大きさから、ハンドボール程度の大きさに縮小し、それでもなお機能を追加可能な余裕を持たせられるぐらいには効率化に成功する。
「異界破壊の道具として使える機能を追加して、ロゴスリアクトのコピーにするのも良いですが、ダンジョンコアは異界作成用に特化させて、既存異界の破壊道具は出回らせない方が良いですかね。下手に流出して、管理してる異界を破壊されるテロ行為に使われるのも面倒ですし」
当時の目標だった鍛錬用異界の核の完全再現も可能になったわけだが、ダンジョンコア自体はガイア連合山梨支部の購買部でも購入可能にしている関係上、異界破壊に転用可能な機能は無い方が良いだろうって事で、空き容量はオプションを追加出来る枠として残す事にして、ダンジョンコアⅡ型として購買部へ卸す事にする。
「それにしても、ダンジョンコアの制御機能とかを考えると、何か引っかかる物が在るんですよねぇ…………あ、宝玉型五行器もそうですけど、結晶体にコンピューター的な役割持たせてますし、ナディアに出てきたブルーウォーターも行けそうですね。上手く出来れば、原案が同じラピュタの飛行石も創れそうですし」
思い付いたのは、ふしぎの海のナディアに出てくる青色の結晶体で、作中では金属位相体オリハルコンで作られた、三次元的基板の光コンピューターであるブルーウォーター。
光コンピューターってのは、現行の物が電流のオンオフで演算をしている様に、光のオンオフで演算処理を行わせる方法として、今世の機械工学でも研究されている物で、電子回路程には処理速度向上による発熱を起こさず、金属導体を必要とする電子より高速で、より小型化出来るだろうと目されている技術。
元ネタのブルーウォーターに関しては、動力源などがどうなってるのか不明だったりするけど、その辺はマグネタイトや日光などのエネルギーを動力に変換出来る様、術式を組めば解決するだろうか。
「素材は元ネタ通りにオリハルコンを使うとして、宝石の様な結晶体への精製と、結晶内部の光子回路、各種機能を搭載する方法を考えていきますかね」
結局のところ、新しいアイディアの研究開発になってしまったのはいつもの事として、オリハルコンのインゴットを取り出し、早速結晶化の製法を考えて見る。
まず、オリハルコンなどの霊的素材に限らず、この世界の物質は、それを構成する要素に霊子が含まれており、この霊子が情報的な質量、所謂〝概念〟を保持しているため、術式と言う手順で意味を持たせる事により、制作物が様々な効果を持てる話。
もしかしたら、前世でも確認する術が無かっただけで、霊子は存在していたかもしれないけど、まあ過去の話だから置いておこう。
兎も角、一般に出回ってる物質でも霊子は含まれているため、セツニキがした様に、市販のコピー用紙に霊符の記述を印刷した御札でも、技量があれば霊符として使える訳だけど、霊的な加工をしている訳ではないため、霊子には雑多な情報が含まれてる上、霊子の保持する情報量も不揃いな事も有って、技量が足りないとまともに霊力を通す事ができず、霊符として使用出来ないと言う結果になる。
そしてもう一つ、鉄や銅などの一般素材と、オリハルコンやミスリルなどの霊能素材の違いとして、物質を構成する原子が保有する霊子数の違いが有り、保有する霊子が多いほどより多くの情報を保持出来るため、より上位の霊能素材になると言う訳で有る。
「内部で光子回路を構築出来る様な結晶構造、それと霊子情報に術式プログラムを組み込んで、三次元基板に合わせた各種処理機能の設計をして……」
錬金術で結晶構造体や霊子の均質化、各種結合回りを弄って整え、それらの手順を一つの術式として組み上げ、職人技による一品物では無く、多くの人が習得可能で、同じ品質の量産も可能とする技術として、構築していく。
出来上がったのは、原作と同様に、光学顕微鏡で見れば何とか分かる程度の、微細な紋様にも見える光子回路を持ち、宝石の様な輝きを見せる、深い青色をした八面体の金属結晶。
「んー、とりあえずそれらしい形にはなりましたけど、問題はコンピューターとして稼働出来るかですね」
結晶体の構築自体は恙なく完了し、続いてコンピューターとして使えるかを確認していく。
動力源は予定通りに、周囲のマグネタイトや光エネルギーから得る事にして、モニタは空間投影を基本に、データ転送で普通のモニタに映すことも可能にし、キーボードなどの入力デバイス類は、思考操作での入力を基本としつつ、補助機能としてキーボードなども空間投影可能にする。
そうして基礎部分の組み込みと設定が終わったら、起動させて各種機能が動くかの確認に移る。
「BIOSの動作は問題無し、入出力関係も正常に作動……っと、ハード面は形になったと見て良さそうですね。BIOSを組むところから始めましたから、流石に時間掛かりましたし、ネットに繋げる事も考えると、独自OSを組むより既存のOSを使える様に設定しますか」
結晶内部には、光子の性質を利用した演算回路と量子計算機能を併せ持ち、光量子コンピューターとして稼働可能なソフトウェアを搭載、まあ流石にOSなどを全て一から自作なんてのは無理なため、既存のOSやソフトを稼働可能にする土台を組んだ程度の話だけど、それでもペンダントに出来る程度の大きさで、現行のスパコンを超えるぐらいの処理能力は発揮出来そうな性能になったと思われる。
そんな訳で、現行で使われてるOSや周辺機器なども使える様にして、〝ブルーウォーター*1〟が一応の完成となる。
「現状だと専用のOSも無いですから、性能を使い切れてるとは言えないのがアレですが、まあ完成は完成ですか。余剰能力に関しては、活用する機能なりを作って組み込んでも良いですし……やっぱり飛行石も作りますかね?」
出来上がったブルーウォーターを手に、何か機能を追加しようかと眺めていると、思い浮かぶのはやはり原案を同じとする飛行石。
こちらも作中では、膨大な質量を持つラピュタを浮遊させて動かし、核兵器並の破壊力を発揮する程の動力だったり、城を構成する石材でコンピューター回路の様な物を作って、飛行石を操作用の端末みたいにしている描写がされてたりする架空物質。
ブルーウォーターの方は、あくまで光コンピューターであり制御装置としての役割が強い――原作では死者を蘇生したりとオカルト的な面もある――設定だけど、飛行石の方はそれ自体が強力なエネルギーを有する人工結晶で、特定の言葉に反応したりする程度には機械的な部分も有るけど、動力としての役割がメインっぽい辺りが相違点と言ったところだろう。
「飛行石としての機能を組み込むとするなら、超機人に使ってる重力制御を流用すれば済む話ですが、石自体にある程度以上のエネルギー生成能力を持たせないと、飛行石とは呼べないですかね……」
さて、いざ飛行石を作ろうと思ったところで、課題となったのは動力源になるだけのエネルギー結晶としての性質を、どの様に再現するかと言う点。
そもそも、自然に存在する鉱石である飛行石を、人工的に結晶化させて精製した物で、鉱石自体が青白い光を放ったり、他の鉱石をオレンジや緑色などに光らせたりするエネルギーを持ち、空気に触れた時点で反応を起こして力を失い、ただの石になる性質を持っていたりする物質。
飛行石の結晶化は、空気中でも反応を起こさせない状態にする技術で、鉱石自体がエネルギーを持っていたり、反重力を発生させる性質を持つ、と言う物になる訳で……。
「原案は同じでも、物質としてはオリハルコンが素材のブルーウォーターと、飛行石では別物って事になるんですよねぇ……。んー、あ、そう言えば、飛行石は他の飛行石と共鳴する性質も有りましたっけ?共鳴によりエネルギーの増幅が行われていると考えれば……」
思い浮かんだのは、波動増幅術式*2を用いたエネルギー増幅機構。
飛行石自体が共鳴し合い、個々が持つエネルギーを伝播させて増幅していると仮定すれば、原作世界において地中に存在する飛行石の量から、莫大な動力にも説明が付く話。
「結晶の共鳴、類感呪術的な影響……。均一化して同一の物になると、伝播共振はしても共有するだけで、エネルギーの増幅にならないですし、伝播してきた側を陰として、結晶内部で増幅する際に陽へ転換させて外部へ発する、太極炉の様な形式が良さそうですかね?」
多少強引な理論部分もあるけど、外から入り内に貯まる力を陰の性質、内より生じ外へ向かう力を陽の性質と捉えれば、太極炉と銘打っても、名前負けしない機能を持たせられるだろうか。
創り出したばかりのブルーウォーターを素体として、元の動力源としているマグネタイトや光エネルギー以外に、太極炉術式を持つ結晶同士でのエネルギー伝播を行う機能を組み込み、増大した出力の一部をフロートパネル*3と同様の方式で反重力発生に回し、光量子コンピューターとしての制御能力で重力操作を行うプログラムを構築する。
「前々から研究はしていましたけど、こんな経緯で太極炉が一つの形になるとは思いませんでしたね……。マグネタイトによる自己修復機能もありますから、物理的に大きく損傷でもしなければ、マグネタイトを生み出す生命が存在する限り動き続ける、永久機関になりますか」
出来上がった結晶体を手に持ち、重力制御プログラムを稼働させると、青白い光を放ちながらふわりと浮き上がり、対象を所持者のみや設定した範囲の空間など、問題無く制御出来ている事を確認し、飛行石*4と呼べるだけの物が完成した。
「良い感じに出来ましたね。重力制御と情報処理能力を考えると、超機人に組み込めば能力向上も出来そうですし、ちょっと試して見ましょうか。何かスパロボの強化パーツっぽい感じになってる気もしますが……」
機体整備を担当している木分身に飛行石を送り、機体性能が向上するかの確認を行う一方で、こっちは中断してしまっていた過去制作物の見直し作業へと戻ることに。
思えば色々作ってきた物だけど、今回みたいな脱線を考えると、終末到来までに見直しが終わるのか、ちょっと不安になってくる話である。
光量子コンピューターの三次元基板であり、術式による投影や音波の発生などを基本機能として搭載しており、光エネルギーやマグネタイトを動力源として稼働する。
光量子コンピューターとして作成したブルーウォーターに、取り込んだエネルギーを増幅し放出する太極炉術式と、同じ術式間でエネルギー伝播を行う類感術式、マグネタイトに重力子の働きをさせる回路と重力制御プログラムを組み込んだ物。