【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「大地よ 我が意に従う傀儡と成せ
言の葉として紡ぐ意味と音に霊力の波動を重ね、人が観測する世界を揺らし、人々が思う世界の形に異物を差し込み、ソレが当たり前の事象であるかの様に錯覚させる。
紡ぐ言葉は少なく、術式としても意味持つ単語を繋げただけの簡素な物が、普遍を揺らす波動に乗せた想像により、大地を揺らし現世へ創造される。
「おお!見事なアースゴーレム」
「地面から生えてきた感じなのに、穴も空いてないのは実にファンタジーだな」
「霊符も使わず、短文詠唱でのゴーレム作成術式も可能か。探求ネキ、詠唱文はオリジナルか?」
「記憶してる限り、作中だと呪文名しか出てきてなかったはずですので、それっぽくイメージしやすい単語で構成した感じですね」
「うーむ、夢が広がるなぁ!まあまずは、
「霊力波動の変化が地味にきついよな。イメージを乗せるのは【言霊】の延長で、言葉の意味を取っ掛かりに想像を広げてやれば良いからまだ何とかなるが」
「んー、こんな感じか?すべての力の源よ 輝き燃える紅き炎よ 我が手に集いて力となれ
「おー見事な火球、これぞ魔法って感じだな。【アギ】でも同じ事出来るが」
「それを言っちゃお終いだろ……」
山梨第一支部に幾つかある鍛練場、その中でも結界による内部拡張や各種強化行われ、多少規模の大きい術の行使も可能な場所に集まり、隅の方でテーブルやら飲み物なども用意して意見を出し合う集団だったり、中央付近では身振り手振りを交えた術や技を試すグループがいたりと、各々好き勝手にワイワイやってるのは、ガイア連合山梨支部で趣味サークル分類されてる一団。
正確にはまとめて一つの団体と言うわけでは無く、いくつかのサークルが集まって交流してる集会イベントみたいな物で、前世今世問わず、創作の魔法だったり技だったりの再現を目指している各サークルが、再現に成功した術技を披露してドヤ顔したり、より再現度を高めるための意見交換をしたりする趣味の会合である。
基本的に毎月の初め頃に、会場となる鍛練場を押さえて開催されており、二月の開催前に
まあそんな趣味人の集まりではあるが、再現しているのが主に戦闘で用いる術技と言う事もあって、実のところ平均レベル30以上と言う、結構武闘派な面も有ったりする。
「あ、そう言えば探求ネキ、気になった事があるんだけど、
「とりあえず使える程度のレベルで良いなら、
「なるほどねー」
「まあ公式に数字を当て嵌めて答えを出せたとしても、何故そうなるか分からないと応用出来ないってこったな。
「実際の戦闘だとただの利点じゃね?まあ詠唱内容で気付かれたりなんてのもあるかもだが……」
「どんな技術も良し悪しは有るものでしょう」
「そりゃそうだな。とりあえず、探求ネキの指導を貰えるウチに
そんな感じで、新技法の習得指導をしつつ、折に触れて再現魔術を披露したり、休憩がてら意見交換をしたりして、そろそろ一度昼休憩を挟もうかと言った頃。
隅の方に並べられた机に、各々が持ち込んだ料理が広げられ、昼食をとる面々が端に移動したことで、午前中の雑然とした雰囲気から、趣味を探求する者同士のある種醸成された空気が醸し出される。
大部分が端に寄った事で空いた中央のスペースに、更に強度や空間拡張を重ねた結界が展開され、ここからはより大規模な再現術技の披露が行われる事になる。
「ほう、【
「確かあいつ、鳳凰天駆を完成させるためにフェニックス神と交渉までしたらしいな」
「テイルズの術技を色々再現してるグループだっけ?」
「ええ、私が所属しているサークルですよ。彼は火炎系の適正が低い様で、それを補うためにフェニックス神と交渉して、あの二つの技限定で力を借りる契約をしています。ああして披露していると言う事は、ようやく満足いく完成度になったと言う事でしょう」
「お、ジェイドニキ*1も来てたんだな」
「探求ネキが
「ジェイドニキは指導する前からだいぶ出来ていましたけどね。普段から詠唱も含めた術行使をしているからですかね?他の習得が早かった人も、思えば普段から詠唱を含めた術式使ってるみたいですし」
「あと一歩届かず、今回は見送りになるかと思ってたところですから、私としてはとても助かりましたがね。それではそろそろ順番が回ってきますので、失礼」
ジェイドニキがそう告げて移動していくと、結界内の【緋凰絶炎衝】で発生した炎が収まった後、続いて場に出てきたニキがおもむろに跳び上がると、【ソードボンバー】の掛け声と共に、燃え盛る火球を幾つも撃ち放ち地面を爆散させていく光景が広がる。
「SO2のクロードの技だったか?単体火力、多少の範囲攻撃と考えれば悪く無さそうだな、
「そこは使う奴の技量次第じゃないか?元ネタがゲーム系の技って、俺らの認識的に味方には当たらないのも多いからな。特にアクションRPG系の戦闘だと、基本仲間には影響しないし」
「そう言えば、ゲーム系の再現術技で一番苦労しているのは、FFを無効化する部分って言ってましたね。ここで披露しているって事は、その辺クリアしてるって事でしょうけど」
「FF無効化出来るなら、後は地形への影響を減らせれば、使い勝手が更に良くなりそうだな。大概のゲームって、そこでそれ使って大丈夫か?って技や魔法も平気で使って問題無いし」
「敵認識してる相手だけとか、破壊対象に指定した物だけに効果発揮とかは、出来れば確かに便利だよな……」
「有ると便利な機能って言ったら、なのはの非殺傷設定とかもだよな。一応修羅勢にカウントされてるが、上位陣みたいに普段の鍛練や模擬戦でも、蘇生前提なんてしてられんし」
「原作設定だと魔力ダメージによる気絶らしいですが、こっちだと気絶に収まらず、精神崩壊まで行く可能性がありますからねぇ。FF無効化は霊力操作の技量次第で何とかなりますし、被害軽減などは結界で戦闘フィールドを展開でもすれば解決出来ますね」
「いやいやFF無効なんて、普通は多少の威力を犠牲にして術式に組み込んで、何とか可能な話なんですけど?よほど使い慣れた簡単な範囲魔法でも無いと、霊力操作だけで敵味方識別なんて無理なんですけど?」
「バトルフィールドの展開なんてのも、そう簡単にできる話じゃ無いんだが……」
「FF無効が難しいのは、術技に関する理論と理解が足りてない証拠ですね。影響を与える過程を理解していれば、対象の選択基準を差し込んで取捨選択可能になりますよ。フィールドの展開なんかは霊格が上がって行けば自然と発生してしまう物ですから、レベル50前後になる頃には、制御出来てないと普段の生活が難しくなりますよ?」
「レベル40もまだ遠いんだが……?」
「その辺は、霊格上昇による感覚の変化でなんとでもなる部分じゃね?俺も30前半の頃は結界とか良く分からんかったが、40超えた辺りから外と内を別ける感覚が分かって、結界系も多少出来る様になったし」
「そんなもんかねぇ……。お、ジェイドニキの番が回ってきたみたいだな」
【ソードボンバー】で爆散した地面や燃え上がった炎などを片付けてくのを見つつ、あれこれと雑談していたところで、次の披露者にジェイドニキが出てきたの見て、話を止め試技に注目する事に。
「天光満つる処に我はあり 黄泉の門開く処に汝あり 出でよ 神の雷 インディグネイション!」
「力の違いを見せてあげましょう インディグネイト・ジャッジメント!」
更に連結する様に詠唱が響き渡ると、迸る雷光の中心を穿つ様に巨大な剣が突き刺さり、爆光が結界内を埋め尽くす。
「おおぉ……って、おい!インディグネイションはインディグネイションでも、ジェイドの秘奥じゃなくジーニアスのじゃねぇか!!」
「そう言やTOAのインディグネイションは単体魔法だったな。インディグネイト・ジャッジメントがプレイヤー側で使えるのはシンフォニアまでだっけか?」
「アビスでインディグネイションが秘奥義になったからな。ジェイドの秘奥だと単体な分、威力がかなり高かった記憶だが」
「ふむ、術の制御が確り出来ていて、地面などへの影響も最小限ですし、影響対象の選別も上手く行ってる様ですね。行使した術を呼び水として、上位魔法に繋げる連結も見事です」
「術系の秘奥義ってのも、多段攻撃や複数回行動みたいな感じに出来ると考えると、実戦での使い勝手が変わってくるな」
「単属性でゴリ押しする時とかは良さそうだよな。ボス属性持ちとかだと、割とゴリ押しが正義な事も多いし」
披露された術技にツッコミ入れたり、実際の運用含めた所感を述べたりしながら食事を取ることしばらく、そろそろ集会も締めに入ろうかと言う辺りで、私の順番が回ってきたため中央へと移動。
まあ
なお、原作における黒魔術は、魔族と呼ばれる上位存在である精神生命体から力を借りて発動する魔術であり、現世的に言えば、
再現する際に重要な点は、ナニカから力を借りて発動する術で有る事、魂などの精神方面に直接作用する術である事の二点。
力を借りる方は、それこそ悪魔から力を借りる形でも良いし、専用で契約でも結べばより強力な術として構築する事も可能になるだろうけど、仲魔として使役するのは兎も角、ガイア連合山梨支部としても私自身としても、原作的な設定に準拠するためと言う理由で、明確に悪魔を上、術者を下に置く様な力関係は余りよろしくない話。
序でに言えば、創作内の精神生命体をどの悪魔と紐付けするかと言うのも難しいところで、その辺の解決策として、特定のナニカでは無く、ペルソナと同様に集合的無意識その物から力を引き出す形で術を構築したのが、今回再現した黒魔術。
引き出した力の関係から精神世界面への攻撃も可能だし、一石二鳥と言ったところだろうか。
黒魔術の理論構築を行った結果として、ペルソナ使い以外でも、集合的無意識から力を引き出す方法の確立が出来たのは、嬉しい誤算と言うか思わぬ副産物と言うか……。
兎も角、再現に当たって重要な点はクリア、原作において
そうして出来るだけ設定に準拠しつつ、再現してみた魔術の詠唱を開始する。
「
時の流れに
我等が前に立ち塞がりし すべての愚かなる者に
我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを」
原作のこの魔術において、力を借りる先である赤眼の魔王をイメージし、集合的無意識から引き出した力を束ね、標的として設置した岩山に向けて解き放つ。
「
元ネタの魔王が赤眼――ルビーアイと呼ばれるのも有り、ルビーを彷彿とさせる赤色系の輝きを放つ力の奔流が岩山に着弾、直後に展開してある結界が壊れかける程の爆発が生じ、砂煙が晴れた後には大きなクレーターが出来上がっていた。
ちなみに、原作の小説では大規模破壊が生じる魔術と言う事も有って、周辺被害から使用頻度がそれほど多くなく、アニメの方で決め技だったり爆発落ちの様に使われたことで、作品を代表する魔術と認識されている【
まあ今回は再現と言うことで、クレーターが出来るぐらいには力を引き出して行使したけど、元ネタとは違って威力の下限が決まってる訳でも無いため、攻撃対象に合わせて余剰エネルギーが少なくなる様に使えば、周辺被害も押さえられるため、再現魔術としてもそれなりに実用可能じゃないかと思われる。
「ふぅ、こんな感じで良いですかね?」
「探求ネキ乙ー、やっぱドラスレは使えんと様にならんよな」
「ハッハー、この場合もナイス爆裂って事でいいんかね」
「対象を爆破させる事に変わりは無いし良いんじゃね?」
「近接だと【
「お、スレイヤーズ系の再現もやってみるか?」
「それも良いかもなー。今回も色々見れたおかげで、そろそろ形に出来そうだし、終わったら次はそっちに挑戦してみるかね」
出来上がったクレーターを見て、再現としては上々と一息吐き、地面を均して会場の端へと戻ると、そこには披露した術への感想もそこそこに、今日の集会で披露された色々な術技に刺激され、気もそぞろな参加者達の姿があった。
まあ、それぞれ個人的な趣味が高じて術技の研究をしている連中なだけあって、披露予定の術技が一通り終われば、そそくさと帰っていく者や空いたスペースで早速実験する者、そんな様子を肴に酒盛りを始める者達など、終わりの挨拶なども無く、自然解散的に集会が終わるのもいつもの事。
そんな訳で、適当に残ってる参加者へ披露した術の感想を聞いて回り、逆に尋ねられた術技への感想を伝えたりなどして、改善点の参考になりそうな情報を集め終われば、酒盛りしてるグループに差し入れ持って混ざりに行くのも、私的ないつものパターン。
「ここでも相変わらずですねぇ、呑兵衛の会」
「ガイア連合山梨支部の酒好きはイコール呑兵衛の会だから仕方無いな!」
「それはそれ、集まりがあれば酒を酌み交わすのが礼儀さ」
「そう言う探求ネキも、毎度酒とつまみ持参で参加してる呑兵衛の一人だろうに」
「否定はしませんよ。こうして騒ぐのも好きですからね。ただまあ集会のほぼ最初から飲んでるのと同じ、と言うのは頷けない話ですけどね?」
「HAHAHA!それもそうだな!」
「とりあえず今回持ってきたの出しますから、スペース空けてください」
「お、待ってましたぁ!」
とっくに出来上がってる酔っ払いをあしらいつつ、持参した小樽入りのワインや日本酒などを呑兵衛共に渡し、テーブルにつまみとして燻製や刺身などを適当に追加して席に加わる。
「ま、俺らは【酔拳】とか、酒が入っているのを前提とした術技がメインだからな。これも術技披露のために必要な事って事で一つ」
「と、酒を飲む理由にしてるのが七割ぐらいだがな」
「趣味の集まりですし、言い訳しなくても殆どは気にしないと思いますけどねぇ」
「いや、嫁式神からの小言がなぁ……」
「それが良くてそんな性格にしてんだろ、お前は」
「それもそうだがな!ワッハッハッ!」
「性癖的な齟齬がないのは良いことですよ。で、今回披露された中で気になった術技はありました?」
「んーまあ色々有りはしたが、俺的には【鳳凰天駆】が見栄え的にも酒の肴として良かったな!あれ、攻撃対象への追尾と貫通も入ってたし、実用的にも悪く無さそうだしな」
「強いて挙げるなら、【ジゴスパーク】再現した奴かねぇ。今日出てきた奴はⅥの特技仕様なのか、電撃呪殺複合の力依存物理技みたいだし」
「【ジゴスパーク】は魔法版のが前に出てたから、目新しさ的にはなぁ。同じサークルのだから分かってやってるんだろうし、やってる事はかなり高度なんだがな……」
「電撃系って言や、ジェイドニキのも良かったな。発動した術からの連結はかなり難しいはずなんだが、やっぱ
「ジェイドニキもそんな感じのこと言ってましたね。多分、実戦を想定した発動時間中に、連結する術式を起動出来る技量には届いてなかった、と言ったところでしょう。詠唱とイメージで補完出来ますから、霊力の制御技術が上がれば、威力なども更に向上出来るでしょうね」
「なるほどなぁ、俺も
「お、良いな。俺もしばらく新技の再現してなかったし、何か挑戦してみるか」
「おー頑張れー。俺は終わったばかりだから、当分はネタ探し兼ねて他やるつもりだがな!ちなみに、探求ネキの方はどうなん?いつも何かしらやってるイメージしかないんだが」
「今も拠点に居る木分身で研究とかはしてますからねぇ。今日の集会でも色々ネタは得られましたし、ちょっと術技と言うか、システム的なのを再現してみようかと思ってます」
「また何か作るのか、ホント好きだよな……」
「私なりのストレス解消方法の一つですからね。遊びに行ったり食べ歩きしてる木分身も居たりしますし」
「確かに色んな宴会に顔出してるもんな、その度に酒やら料理やら持参してくるから有り難いんだが」
「拠点で色々作って溜め込んでますからねぇ。適度に放出してないと保管場所も圧迫しますので、まあ消費を手伝って貰ってる訳ですね」
「ほほう、それは良いこと聞いた。つまり、まだまだ酒の追加があるって事だな!」
「まあそう簡単には飲み尽くされない程度には貯蔵してますよ」
「なるほどなるほど、そんじゃ、探求ネキの酒を飲み尽くすつもりで、乾杯!」
『乾杯!』